第三十三話【クレイジー・クレイジー】
シャイン:「カヲス……。僕の勝ちだ」
シャインは、白メダリアとコスモスのメダルをカヲスへ見せつけた。
カヲス:「…………ッ!」
カヲスがシャインへ飛びかかる。
阻止しなければならない。
だがカヲスが辿り着くより早く、シャインは二つを重ね合わせた。
そして。
融合が始まった。
白メダリアと重なったコスモスのメダルから、純白の光が溢れ出す。
輝きは瞬く間に広がり、フユーンの天蓋を白く染め上げた。
シャイン:「クククク……」
シャインは、その光を恍惚とした様子で見つめていた。
だが。
――ピィィィィィン……。
光が、急速に弱まっていく。
やがて完全に消え、天蓋に静寂が戻った。
シャイン:「な……。何故……。復活しない……!?」
シャインが動きを止める。
シャイン:「何故だ!? 全てのピースは揃ったはず……。これで神は……。何故だ……何故……何故ぇ……!!」
何も起こらない。
白メダリアとコスモスのメダルは、沈黙したままだった。
カヲス:「私にとっても……意外だったな……」
カヲスも、コスモスのメダルを見つめる。
カヲス:「私の理論でも……それでライトは復活する……はずだった。……もしかすると……」
カヲスがしばらく黙る。
そして。
カヲス:「……ライト自身が……復活を……拒んでいるのかもしれない……」
シャイン:「……何?」
カヲス:「あいつは……自分のせいで同胞たちが争うことを……望まない」
二年前。
最後の戦いで、N・G・ライトは自らの軍を退かせた。
これ以上、自分のために同胞たちが散ることを望まなかったからだ。
カヲス:「もし……自分が再び現れることで……また争いが起きると分かっているのなら……。あいつは……戻ることを望まないのかもしれない……」
それは、かつてN・G・ライトと共に過ごしたカヲスだからこその推測だった。
シャイン:「そ、そんな……神……! 神……、神……神……神……神……神……神ぃぃぃ……!」
シャインがその場へ崩れ落ちる。
カヲスは、そんな彼女を静かに見つめていた。
カヲス:(激しいライトへの執念……。狂っているな……)
その姿を見て。
ふと、二年前の自分を思い出す。
N・G・ライトを復活させるためだけに研究を続けていた、自分自身を。
カヲス:(フッ……。私も……相当、狂っているな……)
カヲスが西の空を見る。
夕日は、もうほとんど地平線へ沈みかけていた。
その時。
シャイン:「 違 う ! ! 」
シャインの絶叫が響く。
シャイン:「お前だ! お前が神の復活を邪魔しているんだぁ!! お前が……お前がぁぁぁ~~~~!!!!」
シャインがクサナギソードを構えた。
そして、残された力を振り絞ってカヲスへ突撃する。
カヲスもまた、すでに機体はボロボロだった。
それでも逃げない。
右腕からゴーストを放ち、一振りの剣へ変える。
シャイン:「はあぁぁぁああああぁあぁぁぁああぁーーーー!!!」
カヲス:「ぬぅん……!!!」
――ズガァァァァァンッ!!
二つの刃が激突する。
一瞬の競り合い。
そして、シャインが後方へ吹き飛ばされた。
フユーンの天蓋を激しく擦りながら転がり、力なく倒れる。
シャイン:「ク……ククク……クククク……」
倒れたまま、シャインが笑う。
クサナギソードを動かそうとするが、左腕はもうまともに動かなかった。
カヲス:「無駄だ……。もう……貴様に私は……貫けない」
コスモスのメダルは、まだシャインの傍にある。
カヲスがゆっくりと近づいていく。
シャイン:「クククク……クァア~ハァ~ハッハッハハ!!! ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! フヒヒキャッキャッキャッ!!!」
突然、シャインが狂ったように笑い始めた。
その異様な様子に、カヲスが足を止める。
シャイン:「クククク……。僕は……僕は、なんて愚かだったのか……。クヒヒヒッ、ヒヒヒ……」
シャインが、動かしにくい左腕を無理やり持ち上げた。
そして、クサナギソードを、自らの腹部へ突き立てる。
――ガギィィッ!!
カヲス:「……何をしている?」
シャインは笑いながら、自分の腹部装甲を強引に切り開いていく。
火花とオイルが飛び散る。
シャイン:「クククク……魂……メダル……へへ、ヒャヒャヒャ、ヒヒヒヒ、クカカカカッ!!」
そして、白メダリアと重なったコスモスのメダルを見る。
シャイン:「最後に必要なのは『体』さ!! 神よ!! クククク……僕の……僕の体をお使いください!!」
カヲス:「な……!?」
シャインは、自ら切り開いた機体内部へ、それを押し込んだ。
瞬間。
――シィィィィィィィン……!!
シャインの全身が、激しい光を放ち始める。
その身体がゆっくりと宙へ浮かび上がった。
カヲス:「…………ッ!」
先ほどとは比べものにならない光が、フユーンの天蓋を包み込んでいく。
シャインの姿さえ見えなくなるほどの、白い輝き。
そして。
丁度その時だった。
西の地平線へ残っていた最後の夕日が、完全に沈んだ。
夜が来た。
神の如き威光がフユーンの天蓋を震わせる。
月が昇る……一点の欠落も、一点の曇りもない、完全なる満月が。
第三十三話【クレイジー・クレイジー】終わり