第三十九話【 Night・God VS Nanigenaru・Gambler 】
もはや、互いに力を抑える段階は過ぎていた。
空中要塞フユーンの天蓋。
そこで繰り広げられる一撃一撃が装甲を歪ませ、二機は月光の下を縦横無尽に飛び交う。
かつて人類を終焉へと導いた神。
そして十一年前、その神を討った死神。
二機の完全なる再臨が、今ここで激突していた。
その戦いを、少し離れた空域から見つめる者たちがいた。
フユーンの周囲を旋回する一機の軍用ヘリ。
その中から、青と黄色の二機が眼下の戦場を眺めている。
先ほど高速道路の出口を爆破し、二つの命を「削除」してきたばかりのエデン女王直下諜報員、セルヴォとビートだった。
セルヴォ:「さてさてさてさて……、一体、どうなってやがんだ、ビート?」
ビート:「……知らん」
セルヴォ:「さて、まぁいいさ。俺たちの任務はあくまで〝F・G・シャイン〟の抹殺だ。N・G・ライトが甦ろうがジョーカードが舞い戻ろうが、何気に……いや、直接的には関係ねぇ」
セルヴォが改めてフユーンへ目を凝らす。
セルヴォ:「さて……。しかしだ。肝心のターゲット、F・G・シャインは何処にいやがる?」
ビート:「……知らん」
セルヴォ:「デュオさんの話じゃ、カヲスもこの近辺にいるらしいんだが。そっちはどうだ?」
ビート:「……知らん」
セルヴォ:「…………」
セルヴォは戦場へ視線を戻した。
セルヴォ:「さて、この仕事を始めて随分経つが……。ここまで意味の分からねぇ事態は、初めてだな、おい」
ビート:「……知r……そうだな」
セルヴォ:「…………。今、『知らん』って言いそうになったろ?」
ビート:「……知らん」
セルヴォ:「………………」
遥か先では、神と死神の戦いがさらに激しさを増していた。
―
ヴァレン:「何気に行くぜ! この
ヴァレンが指を鳴らす。
その周囲に、巨大なトランプが次々と現れた。
再び指を鳴らすと、カードは一斉にN・G・ライトへ襲いかかる。
ライト:「下らぬ芸だ」
ライトが右腕を構える。
ライト:「所詮は道化のやる事だなッ!!」
その身体が勢いよく回転した。
巨大化した右腕が迫り来るトランプを薙ぎ払い、次々と粉砕していく。
だが。
ヴァレン:「ナニゲラーーース!!!」
カードの陰からヴァレンが飛び出した。
L字型の鎌剣を、ライトの頭上へ振り下ろす。
ライト:「フン……」
ライトは振り返ることなく、片腕を騎士剣のような形へ変え、その一撃を受け止めた。
――ギィィィン!!
ヴァレン:「まだまだぁーー!!」
ヴァレンは鎌剣を押し込んだまま、右腕『マーブラー』をライトの脇腹へ押し当てる。
複数の砲口が、至近距離からライトを捉えた。
――ドドドドドドドドドドッ!!
無数の弾丸がライトの装甲を叩き、激しく火花を散らす。
ライト:「チッ……!」
ライトの左腕が動いた。
一本の指先が槍のように鋭く伸び、ヴァレンを貫こうとする。
ヴァレン:「お~っとぉ!」
だが、その直前。
ヴァレンの背後に巨大なトランプが現れ、その身体がカードの中へ消えた。
少し離れた空域に別のカードが現れる。
そこからヴァレンが飛び出した。
ライトは即座に腕を伸ばし、再びそのメダルを狙う。
ヴァレンは空中で身体を捻り、寸前でかわした。
そのままライトの周囲を不規則に飛び回る。
マーブラーから撃ち出される弾丸。
飛び交う巨大なトランプ。
ライトは次々とそれらを払い落としていった。
ヴァレン:「ラァーー!!」
ヴァレンがL字型の鎌剣を投げる。
だが、その刃はライトではなく、正面に浮かぶ巨大なトランプへ吸い込まれた。
直後。
ライト:「……ッ!」
ライトの側面に浮かぶ別のカードから、鎌剣が飛び出す。
ライトが身体をずらしてかわす。
鎌剣はそのまま別のトランプへと消え、今度は全く違う方向から再び飛び出した。
さらに。
――ドドドドドドドドッ!!
ヴァレンがマーブラーを別のカードへ向けて乱射する。
撃ち込まれた弾丸が、ライトを取り囲む別のトランプから次々と飛び出した。
ライト:「大道芸ならばよそでやれ!!」
ライトの装甲に弾丸が当たり、火花が散る。
それでもライトは飛び回る鎌剣を掴み取った。
そのまま力任せに振るい、周囲のトランプを一気に薙ぎ払う。
ヴァレン:「この大道芸の代金は、何気に高いぜ!!」
散らばるカードの向こうから、ヴァレンが一気に距離を詰めた。
左腕『スバル』。
そこに備わる白銀の長刀を振るい、ライトへ斬りかかる。
ライトは奪い取ったL字型の鎌剣で、それを受け止めた。
――ギィィィンッ!!
刃と刃がぶつかる。
その瞬間。
ヴァレンが空中で身体を翻した。
ライトが握っている鎌剣を蹴り飛ばす。
宙を舞う、自らの得物。
ヴァレンは漆黒の翼を広げ、一気に追いついた。
そして再び、その柄を掴み取る。
力で押し切ろうとするN・G・ライト。
速度と手数で翻弄するヴァレン。
二機は常識外れの次元で、互いの鎬を削り合っていた。
ヴァレンが急降下する。
狙うは、眼下のN・G・ライト。
ヴァレンは、いくつもの展開を頭の中で読んでいた。
――避けられた後の次撃。
――受け止められた場合の反撃。
――サクリファイスを仕掛けられた時の離脱。
どんな手を出されようとも、その先へつなげる。
それが
だが。
ただ一つ。
ヴァレンにも想定していなかったものがあった。
N・G・ライトの身体を、青白い光が包み込む。
ヴァレン:「……?」
ヴァレンの動きが、僅かに鈍った。
この気配を彼は知っている。
かつてコスモスが、自らの身を砕いて放った究極の自壊奥義。
だが、今ライトから感じる圧力は、あの時とは桁違いだった。
ライトが静かにヴァレンを見上げる。
ライト:「 ジ ・ バ ク ! ! ! 」
――シィィィィィィィィン……ッ!!
夜の帳が、白濁した光に塗り潰された。
第三十九話【 Night・God VS Nanigenaru・Gambler 】終わり