【完結】REAPPEARANCE   作:土地_0000

7 / 48
第七話【さり気に、そして情熱的に】

第七話【さり気に、そして情熱的に】

 

 

 ――竜探偵事務所。

 

 夕暮れの静かな事務所に、突然、ガラスの割れる音が響いた。

 窓を破って現れたのは、オレンジ色の装甲を持つ女型メダロットだった。背後には八本の赤い柱が浮かび、炎が揺らめいている。

 女王襲撃事件の主犯格として指名手配されている、F・G・シャインである。

 竜とタインは、突然の侵入者を前に言葉を失った。

 

シャイン:「神様を隠していないか聞いてるんだけど?無視しないでほしいね」

 

 シャインは、二機が黙っていることに苛立っているらしい。

 竜が先に口を開いた。

 

竜:「神様……それは白メダリアの事ですね?」

 

 シャインの言う「神様」が、N・G・ライトに関係する白メダリアを指していることは、竜にも分かっていた。

 

シャイン:「隠しているのかい?隠していないのかい?」

 

竜:「残念ですね……。ここにはありません……」

 

 竜は表情を変えずに答えた。

 すると、シャインは楽しそうに笑い始めた。

 

シャイン:「クククク…まぁ仮に本当に隠していたとしてもそう言うだろうね」

 

 シャインは、最初から素直に答えが返ってくるとは思っていなかったようだ。

 

シャイン:「クククク…だからさ、僕、自分でここを探るから少し気絶しててよ」

 

 シャインが腕を上げる。

 

竜:(まずい…ここで戦闘されると大切な機械や装置が……)

 

 事務所には、竜が改造したスーパーコンピュータをはじめ、調査に使用する機器や資料が数多く置かれている。

 ここで戦闘になれば、無事では済まないだろう。

 竜が対処を考えた、そのときだった。

 

 ――ガアアアアアアアアアアッ!!

 

 隣の「椅子」……タインが、突然シャインへ飛びかかった。

 不意を突かれたシャインは、咄嗟に防御姿勢を取る。

 

 しかし、タインは殴りかからなかった。

 そのまま両腕でシャインの胴体を抱え込み、割れた窓へ向かって突進する。

 

 二機は勢いよく窓から飛び出した。

 事務所は建物の二階にある。地面までは数メートルの高さがあったが、かつて十二使徒のエースと称されたタインにとって、その程度の落差は問題にならなかった。

 

竜:(助かった……しかしタイン……何故……?タインにここの機器を心配するような知恵があるとも思えない……いや、この場合は……)

 

 竜は窓際へ駆け寄り、階下を見下ろした。

 シャインは着地の直前にタインの腕から抜け出し、少し離れた場所へ降り立っていた。

 一方、タインはそのまま地面へ着地すると、シャインを指差して怒鳴った。

 

タイン:「バトルがしたいならさり気に相手してやる!!だが、事務所の中は駄目だ。なぜなら…………あそこのイスが1つ壊れる毎に、竜のオレへのドS行動がさり気に悪化するからだぁ!!!」

 

竜:「やっぱりそれですか……」

 

 竜は溜息をついた。

 日頃の自分の「教育」が、結果として事務所の機器を守ることにつながったらしい。

 それならば、これからもタインに対する折檻の手を緩めてはならない。

 竜は、静かに心に誓うのだった。

 

 シャインは左腕の手刀『クサナギソード』を構えた。

 

シャイン:「クククク…まぁいいさ、どちらにせよ君達は邪魔者さ……」

 

タイン:「竜、邪魔はするなよ。さり気にタイマンでやるからな!」

 

竜:「勝手にしてください……」

 

 タインが地面を蹴った。

 

タイン:「さり気ぇぇぇぇーーーーーー!!!」

 

 強靭な拳から、連続パンチが繰り出される。

 シャインは左腕のクサナギソードで、その攻撃を次々と受け止めた。拳と手刀がぶつかるたびに、金属音が響く。

 タインの連撃を防ぎきると、シャインは後方へ跳び、頭部パーツ『オクトバーン』を起動させた。

 

 ――ゴォォォォォォォッ!!

 

 八本の赤い柱から、広範囲に炎が放たれる。

 タインは回避することもできたが、あえて炎の中へ飛び込んだ。

 

 装甲が熱を帯び、損傷していく。

 それでもタインは勢いを緩めず、炎を突き破ってシャインの懐へ入り込んだ。

 

 ――ドガッ!!

 

 渾身の右ストレートが、シャインを捉えた。

 シャインの身体が後方へ吹き飛ぶ。

 

タイン:「さり気……それは漢の極意なり!!!」

 

 タインは拳を突き出したまま、得意げにポーズを決めた。

 しかし、倒れたシャインはすぐに立ち上がった。

 右腕の『ヤサカニボール』から光が放たれ、タインの攻撃によって生じた損傷が修復されていく。

 

タイン:「ゲッ!お前、さり気に回復とかできんのかよ!?」

 

竜:「馬鹿ですね……」

 

 二階の窓から戦闘を見ていた竜が、呆れたように言った。

 

タイン:「んだと!?」

 

竜:「得体の知れない敵に突っ込んでいって、挙句、敵に与えたダメージは回復され、自分にはファイヤーのダメージが残る……最悪です」

 

 タインの格闘能力は、元十二使徒のエースに相応しいものだった。

 だが、相手の能力を確かめずに突っ込むだけでは、今回のような相手には通用しない。

 

タイン:「だったら、お前ならさり気に勝てるのかよ!?」

 

竜:「いえ、難しいです。身体能力では明らかにタインの方が上ですから。そこでタイン、今から私の指示に従って動いてください……」

 

 普段は自分を罵倒してばかりの竜が、身体能力では自分の方が上だと認めた。

 タインは少し嬉しくなった。

 

タイン:「おうよ!!じゃあさり気に頼んだぜ!!」

 

 竜は頭部パーツ『ブラックインコム』を起動させた。

 このパーツは、敵の動きなどを探る『索敵』を得意としている。戦闘力よりも戦法を重視する竜にとって、重要なパーツだった。

 

 さらに、索敵によって得た情報を味方へ送信することもできる。

 竜はここ数年の鍛錬によって、その能力を応用し、簡単なメッセージも送れるようになっていた。

 

 竜はシャインの動きを観察しながら、タインへ指示を送る。

『右45度へ回避』『左にフェイント』『また右』『ジャンプ』『2秒後にアサッシン』『右腕で防御』……。

 タインは次々と送られてくる指示に従った。

 

 シャインの攻撃を避け、隙ができれば反撃する。

 先ほどまでのように、ただ正面から突っ込むだけではない。

 竜の判断とタインの身体能力が組み合わさったことで、シャインも容易には攻め込めなくなっていた。

 

シャイン:「クククク…君の指示が厄介だね!」

 

 シャインは標的を変えた。

 浮遊脚部で一気に上昇し、二階の窓際にいる竜へ向かう。

 竜は、その動きを見ていた。

 

 シャインの進路と、タインの反応。

 そして、自分が射線から退避できる位置。

 それらを確かめたうえで、竜は新たな指示を送った。

 

『3回まわってワンと言え』

 

タイン:「よし!3回まわって……ってさり気にするかぁーーーー!!!」

 

 タインは反射的に『タイムアタック』を放った。

 光線が、竜のいた窓際へ向かって飛んでいく。

 竜はすでに窓際から身を引いていた。

 そして、その射線上には――竜へ斬りかかろうとしていたシャインの背中があった。

 

シャイン:「!!?」

 

 不意を突かれたシャインは、空中で姿勢を崩した。

 そのまま地面へ叩きつけられる。

 

竜:「計算通り……」

 

 竜は、シャインの進路とタインの反応を見越していたのである。

 もっとも、多少の危険を承知で、タインをからかって遊びたかった面もあったのかもしれない。

 シャインはすぐに立ち上がり、『ヤサカニボール』で損傷を修復し始めた。

 

シャイン:「クククク…これがある限り僕は負けないのさ。君達を倒した後ゆっくりと事務所の中を探させてもらうよ」

 

 しかし、シャインも竜の指示を警戒するようになっていた。

 タインの身体能力に、竜の戦術が加わる。

 

 正面からの戦闘だけで、簡単に倒せる相手ではなくなっていた。

 戦いは、長引くかに思われた。

 

 そのときだった。

 風を切る音と共に、赤い影が戦場を横切った。

 

 

『お竜さん、なんやよー分かりませんけど…助太刀させてもらいますわ!!』

 

 

第七話【さり気に、そして情熱的に】終わり

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。