REAPPEARANCE   作:土地_0000

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第九話【ビッグブロックの死闘、再び!】

第九話【ビッグブロックの死闘、再び!】

 

 

 吹き荒れる熱風の只中、戦場に降臨した赤いマントの男。

 ビッグブロック近郊の荒野に屹立するその異様な影を、ナギサは視覚センサーを焼き切らんばかりに凝視していた。初めはその姿に困惑を覚えたナギサだったが、マントの隙間からのぞく装甲の継ぎ目、そして発せられる独特のエネルギー波形を感知した瞬間、彼の思考回路に戦慄と歓喜が同時に走った。

 

ナギサ: 「まさか……君なのかい?……2年前、生の終着点であり新たなる旅立ち……死を迎えたと聞いていたけれども……」

 

 彼はかつて、ナギサと同じ『十二使徒』の位階に列せられていた男。そして二年前のビッグブロック戦、あの日、壮絶な自爆を遂げてこの世界から消滅したはずの伝説。

 

マイル: 「クッ……お前ぇ、何者だぁ?」

 

 メッシュの放った衝撃波で大きく弾き飛ばされたマイルが、空中で姿勢を制御し、砂塵を巻き上げながら着地した。奪われた『斬鉄剣』を見据え、鋭い声を投げかける。

 問われた男は、不敵な笑みを称えたまま、歌舞伎の役者の如く力強く足を踏み鳴らして見得を切った。

 

メッシュ: 「ファーーーファッファッファ!!これなるは、誇り高き時空の旅人……その名もメッシュ!!次元の狭間に身を委ね、あらゆる時空を行き来する……噂のアイツがここに見・参!!」

 

 ファーストエースの『メッシュ』。二年前の爆死により、そのメダルは塵となったと思われていたが、彼は奇跡的に生存し、今や「次元の狭間」という超越的な領域を渡り歩く旅人へと変貌を遂げていた。

 

マイル: 「……メッシュ? 十二使徒のメッシュか? 死んだんじゃなかったのかぁ?」

 

 マイルは瞬時に思考を巡らせた。相手は死に損ないの英傑。だが、その背後に漂う圧力は、データ上の記録を遥かに凌駕している。マイルは地を蹴り、弾丸のような速度で肉薄する。

 メッシュは未だ現状を完全には把握していなかったが、向けられた殺意に応じるのに躊躇はなかった。

 

メッシュ: 「行くぞ! カリパー、キドゥ、ゲンジ! 我が心の友よ!!」

 

 メッシュの号令。空間が歪み、三体の影が躍り出た。

 一閃の剣へと変ずるジャッカルの『カリパー』。

 慈愛の杖へと形を変えるメイクイーンの『キドゥ』。

 鉄壁の盾として展開されるガンキングの『ゲンジ』。

 そして、メッシュが、そのパープルの外装装甲を爆ぜるようにパージした。

 剥き出しになった高機動フレーム。左右に割れたマスクの奥から、不気味に輝くピンクの星型の瞳が露出する。

 パージされた装甲が周囲にビットとして浮遊する中、メッシュは仲間たちが変じた「三種の神器」をその手に取った。この合体(トランプ・フォーメーション)こそが、メッシュに規格外の戦闘力を与え、二年前にラヴド軍L班の面々を苦しめたのだ。

 

 

 マイルは一気に間合いを詰め、スピードを活かした高速の連撃を繰り出した。ソードとハンマーが空気を切り裂く。対するメッシュは、三体分の重量が加算されたことで機動力が著しく低下していた。

 マイルはその鈍さを嘲笑うように、ゲンジの盾の僅かな隙間にハンマーをねじ込む。

 

 ―――ド、ォォォォォォォォォンッ!!

 

 実に四体分のメダロットの質量を持つメッシュの巨躯が、物理法則を無視したかのように十メートル後方へ吹き飛ばされた。巨岩に激突し、崩落した岩石の山が彼を完全に埋め尽くす。

 

マイル: 「なんだぁ、お前の実力はこんな程度かぁ。」

 

 マイルは呆れたように肩をすくめると、獲物を取り戻すべく岩の山へと向き直った。勝利を確信し、冷淡な足取りで近づく。

 だが、岩陰に沈んだ男は、そんな生温い一撃で沈むほど柔な旅人ではなかった。

 

 ―――バ、ー、ンッ!!

 

 内側から爆ぜるような衝撃。幾千の岩の破片を弾き飛ばし、土煙の中から傷だらけのメッシュが這い出してきた。

 

メッシュ: 「オレが悪かった……」

 

 メッシュは、右手の斬鉄剣をキドゥの杖へと持ち替えた。

 

メッシュ: 「オレの剣をかわせるヤツ相手じゃ……」

 

 キドゥを軽やかに一閃。放出されたナノマシンの発光が、メッシュの機体に刻まれた傷を瞬く間に修復していく。

 

メッシュ: 「手も足も出ないぜ……」

 

 再び斬鉄剣を右手に戻し、メッシュは膝を僅かに沈めた。

 

メッシュ: 「……てのはウソだけどな!!」

 

 爆発的な跳躍。

 メッシュの巨体は重力を振り切って上空二十メートルへと突き抜けた。

 

メッシュ: 「くらえ!! 我が"次元剣技"!!」

 

月 沌 激 突 (げっとんげきとつ)

 

 天頂で斬鉄剣を構えたメッシュは、落下の加速度をそのままエネルギーへと転換。カリパーによる強制的な軌道修正を加えながら、マイルの頭上へと一直線に降下を開始した。

 その姿は、衛星軌道から「月」が降ってきたかのような重圧を発していた。

 

 ―――ズ、ドドォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!!!

 

 大地を叩き割る衝撃波。

 半径七メートルに及ぶクレーターが瞬時に形成され、膨大な砂埃が荒野を飲み込んだ。着地と同時にメッシュはゲンジの盾を展開し、衝撃の反動を完全に無効化する。

 

 だが、爆煙が晴れる寸前。メッシュの手にあったのは、確かな手応えではなく、冷たい空虚だった。

 

マイル: 「ふん!!」

 

 視界を奪う砂埃の中から、マイルのハンマーがカウンター気味に突き出される。メッシュは反射的にゲンジでそれを受け止めた。

 

メッシュ: 「ファファファファファ……『月沌激突』をかわすとはかなりの強者と見た。」

 

 驚異的な反応で死地を脱したマイル。

 荒野の真ん中、次元を越えた英雄と女王襲撃の実行犯、二つの影が再び睨み合った。

 

 クレーターの底から飛び退いたマイルは、メッシュとの距離を常に一定に保ち始めた。接近すれば圧倒的なパワーに叩き潰され、離れればその鈍重さゆえに手出しができない。メッシュが歩を進めればマイルは風のように遠のき、メッシュが足を止めればマイルは幻影のように近寄る。

 一向に攻撃の機会を掴ませぬ、冷徹なまでのアウトボクシング。だが、メッシュはその「理」さえも嘲笑うように、斬鉄剣の刀身を小刻みに震わせた。

 

メッシュ: 「まさか、近づかなければオレの剣を受けなくて済むと思ってないか? ファファファ……こんなときにはこの次元剣技だ!!」

 

双 母 黒 昴 (そうぼこくぼう)

 

 ―――シュシュシュシュシュ……ッ!!

 空気を切り刻む超高速の素振り。放たれたのは、五条の異質なエネルギーの奔流だった。

 青き龍の咆哮、紅き朱雀の飛翔、白き虎の疾走、黒き玄武の重圧。そして、それらを束ねる黄金の麒麟。五柱の神獣を模した衝撃波が、回避不能の包囲網となってマイルを襲う。マイルは死に物狂いで身体を捻り、装甲を焦がしながらも紙一重でその暴威を掻き潜った。

 

メッシュ: 「なかなか、やるな」

 

 メッシュは不敵に笑うと、右手の斬鉄剣と、背中にマウントされていた愛剣(親友)『カリパー』へと持ち替えた。使い慣れた相棒を握り、正眼に構える。その様子を見たマイルが、挑発的な声を飛ばした。

 

マイル: 「なんだぁ、その剣使えたのかぁ……ただの飾りだと思ってたぜぇ」

 

 その言葉に、メッシュのセンサーがムッとしたように明滅した。彼は精神を一点に集中させ、カリパーの刀身に次元の歪みを蓄積させていく。

 

メッシュ: 「この手に握りしカリパー、飾りではないぞ!!!!」

 

煤 竹 転 参 (すすたけてんさん)

 

 大振りな一閃。だが、その刃が向けられたのはマイルではなく、足元の「大地」だった。

 ―――ドカンドカンドカンッ!!

 連鎖爆発。地面を伝う凄まじい衝撃波が、地割れを伴ってマイルを足元から突き上げる。抉り取られた土砂が舞い上がる中、メッシュはさらなる追撃の構えに入った。

 

メッシュ: 「カリパー……一閃!!!」

 

一 輝 皇 戦 (いっきこうせん)

 

 加速。四体分の重量など存在しないかのような、光速の突進。

 メッシュは一直線にマイルの懐へと飛び込み、鋭い太刀筋でその胴体を横一文字に薙いだ。……しかし、刃は僅かに空を切る。マイルは極限の反応速度でその斬撃をかわし、勝利を確信したかのように薄笑いを浮かべた。

 

 だが。

 

メッシュ: 「……消えろ!」

 

 メッシュの合図と共に、カリパーが通り過ぎた空間に不気味な『一閃の裂け目』が浮かび上がった。

 一撃目の斬撃を起点として、新たなる主人公が生まれたかのような衝撃。

 ―――ド、オォォォォォォォン!!

 時差を置いて発生した空間の爆発。直撃こそ免れたものの、マイルは逃れようのない熱波に叩きつけられ、装甲をボロボロに損壊させながらも必死に立ち上がった。

 

メッシュ: 「ファッファッファッファッ!! 『一輝皇戦』は時間差攻撃なのだ!!」

 

マイル: 「チッ……お前ぇ一体いくつ技をもってるんだぁ?」

 

メッシュ: 「我が次元剣技は……次元の数だけ存在するのだ!!……それでは、さっき習得したばかりの新・次元剣技いくぞ!!」

 

 メッシュは短く助走をつけ、天高く舞い上がった。

 空中で右手のカリパーを力任せに握りしめると、周囲の光が剣先へと吸い込まれていく。

 ―――ポンッ、ポンッ、ポンッ……。

 戦場にはそぐわない、どこかポップでクールな電子音が不気味に響き渡る。カリパーを中心に形成された光の球体は、虹色の放電を撒き散らしながら臨界点へと達した。

 

メッシュ: 「いくぞ! 必殺剣!!」

 

異 新 型 真 (いしんぎょうしん)

 

 カリパーに込められた異世界のエネルギーが、一気に開放された。

 放たれた複数の光線がマイルの立っていた場所を容赦なく撃ち抜き、周囲の砂埃を一瞬で蒸発させる。凄まじい火花が荒野を赤く染め上げた。

 

 土煙が収まった時。そこには、抉られた地面があるだけで、マイルの姿はどこにもなかった。

 

メッシュ: 「逃げられたか……。」

 

 メッシュはカリパーを収め、独り言のように呟いた。直撃の寸前、死の予感に突き動かされたマイルは戦線離脱を選んだのだ。

 勝利の余韻に浸るメッシュの元へ、ナギサがゆっくりと歩み寄ってきた。

 

ナギサ: 「やぁ、メッシュ。それにカリパー、キドゥ、ゲンジ。まさかこんなところで君達と再会するとは運命……デスティニーを感じるよ……フフフ。」

 

メッシュ: 「ナギサか……お前、相変わらずだな。」

 

 旧友との再会。

 メッシュは何故自分が生存し、次元の旅人となったのかを語り、ナギサはこの二年の間に起きた悲劇と復興、そして現在の窮状を説いた。

 通常であれば数分で済むはずのその説明が、ナギサ特有の詩的な遠回りによって、二時間近くを費やすことになったのは言うまでもない。

 

 ……ところで。先ほどメッシュが口にした言葉。

 『異新型真』――さっき習得したばかりの新・次元剣技。

 

 果たして、時空の旅人はどのような「次元」を彷徨い、その力を手に入れたのか。

 物語の焦点は、一時、この世界から離れてメッシュが『次元剣技:異新型真(いしんぎょうしん)』を習得した経緯へと向かう。

 

 

第九話【ビッグブロックの死闘、再び!】終わり

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