第九話【ビッグブロックの死闘、再び!】
――ビッグブロック近郊の荒野。
赤いマントの男が、ナギサとマイルの間に立っていた。
ナギサは、その姿をじっと見つめた。マントの隙間からのぞく装甲、そして覚えのあるエネルギー反応。見間違えるはずがない。
ナギサ:「まさか……君なのかい?……2年前、生の終着点であり新たなる旅立ち……死を迎えたと聞いていたけれども……」
かつてナギサと同じ十二使徒として戦い、二年前のビッグブロック戦で自爆したはずの男だった。
マイルは、先ほどの衝撃波で吹き飛ばされた身体の姿勢を立て直し、地面へ着地した。奪われた斬鉄剣を持つ男へ、鋭い視線を向ける。
マイル:「クッ……お前ぇ、何者だぁ?」
問われた男は、不敵な笑みを浮かべたまま、歌舞伎役者のように足を踏み鳴らして見得を切った。
メッシュ:「ファーーーファッファッファ!!これなるは、誇り高き時空の旅人……その名もメッシュ!!次元の狭間に身を委ね、あらゆる時空を行き来する……噂のアイツがここに見・参!!」
ファーストエースのメッシュ。
二年前の自爆によって死亡したと思われていた彼は、奇跡的に生存していた。そして今は、次元の狭間を渡り歩く旅人となっているらしい。
マイル:「……メッシュ? 十二使徒のメッシュか? 死んだんじゃなかったのかぁ?」
マイルも、その名は知っていた。
しかし、目の前にいるメッシュがどれほどの実力を持っているのかは分からない。マイルは地面を蹴り、一気に間合いを詰めた。
メッシュはまだ現在の状況を完全には把握していなかったが、向かってくる相手を前に、構えを取った。
メッシュ:「行くぞ! カリパー、キドゥ、ゲンジ! 我が心の友よ!!」
メッシュの呼びかけに応じて、三機のメダロットが姿を現した。
ジャッカルのカリパーは剣へ。
メイクイーンのキドゥは杖へ。
ガンキングのゲンジは盾へと、それぞれ姿を変えていく。
続いて、メッシュの水色と紫色の外装が分離した。装甲は周囲へ浮遊し、内部の高機動フレームと、左右に割れたマスクの奥にあるピンク色の星型の瞳が現れる。
メッシュは、仲間たちが変形した剣、杖、盾を装備した。
この合体――トランプ・フォーメーションこそが、二年前にラヴド軍L班の面々を苦しめた、四機の力を集約する形態だった。
マイルは速度を活かして間合いを詰め、ソードとハンマーによる連続攻撃を繰り出した。
対するメッシュは、四機分の重量によって通常の機動力が低下している。マイルはその鈍さを見逃さず、ゲンジの盾の隙間へハンマーを打ち込んだ。
――ド、ォォォォォォォォォンッ!!
強烈な一撃を受け、メッシュの身体が十メートルほど後方へ吹き飛ばされた。
背後の巨岩に激突し、崩れ落ちた岩石がメッシュを埋めていく。
マイル:「なんだぁ、お前の実力はこんな程度かぁ。」
マイルは肩をすくめ、斬鉄剣を取り戻そうと岩の山へ近づいた。
そのときだった。
――バ、ー、ンッ!!
岩の内側から衝撃が走り、破片が周囲へ飛び散った。
土煙の中から、傷だらけのメッシュが姿を現す。
メッシュ:「オレが悪かった……」
メッシュは右手の斬鉄剣をキドゥの杖へと持ち替えた。
メッシュ:「オレの剣をかわせるヤツ相手じゃ……」
キドゥの杖から、柔らかな光が放たれる。
その光がメッシュの身体を包み、岩に叩きつけられた際の損傷を修復していった。
メッシュ:「手も足も出ないぜ……」
メッシュは再び斬鉄剣を右手に持ち、膝を軽く曲げた。
メッシュ:「……てのはウソだけどな!!」
次の瞬間、メッシュは勢いよく跳び上がった。
四機分の重量を持つ身体が、上空二十メートルへと舞い上がる。
メッシュ:「くらえ!! 我が"次元剣技"!!」
『
上空で斬鉄剣を構えたメッシュは、マイルの頭上へ向かって急降下した。
落下の勢いに加え、カリパーによる軌道修正が、その一撃をさらに強力なものにしていく。
――ズ、ドドォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!!!
凄まじい衝撃が大地を揺らした。
着地地点には半径七メートルほどのクレーターが生まれ、砂埃が周囲へ広がる。
メッシュは着地と同時にゲンジの盾を展開し、反動から身体を守った。
しかし、斬鉄剣には手応えがなかった。
マイル:「ふん!!」
マイルは直撃を避けていた。
砂埃の中からハンマーが突き出され、メッシュは咄嗟にゲンジの盾で受け止める。
メッシュ:「ファファファファファ……『月沌激突』をかわすとはかなりの強者と見た。」
マイルはクレーターの底から飛び退き、メッシュとの距離を取った。
接近すれば強力な攻撃を受ける。だが、四機分の重量を持つメッシュは、通常の移動ではマイルの速度についていきにくい。
マイルはその点を利用し、一定の距離を保ちながら隙をうかがう戦法へ切り替えた。
メッシュが近づけば離れ、足を止めれば再び接近する。
なかなか攻撃の機会を掴めないメッシュだったが、やがて斬鉄剣を構え直した。
メッシュ:「まさか、近づかなければオレの剣を受けなくて済むと思ってないか? ファファファ……こんなときにはこの次元剣技だ!!」
『
――シュシュシュシュシュ……ッ!!
メッシュが斬鉄剣を高速で振るうと、五つの衝撃波が放たれた。
青い龍、赤い朱雀、白い虎、黒い玄武。そして、それらを束ねる黄金の麒麟。
五つの神獣を模した攻撃が、マイルの逃げ場を狭めるように襲いかかる。
マイルは身体を捻り、次々と迫る衝撃波をかわしていった。いくつかの攻撃が装甲をかすめたものの、どうにか直撃を免れる。
メッシュ:「なかなか、やるな」
メッシュは不敵に笑うと、斬鉄剣を背中へ収め、愛剣――親友であるカリパーを手に取った。
使い慣れた剣を構え、マイルへ向き直る。
マイル:「なんだぁ、その剣使えたのかぁ……ただの飾りだと思ってたぜぇ」
その言葉に、メッシュは少しムッとした。
カリパーを握り直し、刀身へ次元の力を集中させる。
メッシュ:「この手に握りしカリパー、飾りではないぞ!!!!」
『
メッシュが大きく剣を振るった。
しかし、刃が向けられたのはマイルではなく、足元の大地だった。
――ドカンドカンドカンッ!!
地面を伝って衝撃が走り、次々と爆発が起こる。
地割れと共に土砂が跳ね上がり、マイルの足元を突き上げた。
メッシュは、さらに追撃の構えを取る。
メッシュ:「カリパー……一閃!!!」
『
メッシュが一気に加速した。
四機分の重量を感じさせないほどの速度でマイルの懐へ飛び込み、カリパーを横一文字に振り抜く。
だが、マイルはその斬撃を紙一重でかわした。
刃は空を切る。
マイルが薄笑いを浮かべた、そのときだった。
メッシュ:「……消えろ!」
カリパーが通り過ぎた空間に、一本の裂け目が浮かび上がった。
一撃目の斬撃を起点として、新たなる主人公が生まれたかのような衝撃。
――ド、オォォォォォォォン!!
時間差で、裂け目から衝撃が爆発した。
マイルは直撃こそ避けたものの、広がった熱波を受けて吹き飛ばされる。
装甲に大きな損傷を負いながらも、どうにか立ち上がった。
メッシュ:「ファッファッファッファッ!! 『一輝皇戦』は時間差攻撃なのだ!!」
マイル:「チッ……お前ぇ一体いくつ技をもってるんだぁ?」
メッシュ:「我が次元剣技は……次元の数だけ存在するのだ!!……それでは、さっき習得したばかりの新・次元剣技いくぞ!!」
メッシュは短く助走をつけ、再び空高く跳び上がった。
右手のカリパーを構えると、周囲の光が剣先へ集まり始める。
――ポンッ、ポンッ、ポンッ……。
戦場には似つかわしくない、どこかポップでクールな電子音が響いた。
カリパーを中心に光の球体が生まれ、虹色の放電を散らしながら、その輝きを増していく。
メッシュ:「いくぞ! 必殺剣!!」
『
カリパーに集められた異世界のエネルギーが、一気に解放された。
複数の光線がマイルの立っていた場所へ降り注ぎ、周囲の地面を抉り取る。
激しい火花と砂埃が、荒野を覆った。
やがて土煙が収まると、そこには抉られた地面だけが残されていた。
メッシュ:「逃げられたか……。」
メッシュはカリパーを収め、呟いた。
マイルは直撃を受ける寸前に、撤退を選んでいたのである。
メッシュのもとへ、ナギサがゆっくりと歩み寄ってきた。
ナギサ:「やぁ、メッシュ。それにカリパー、キドゥ、ゲンジ。まさかこんなところで君達と再会するとは運命……デスティニーを感じるよ……フフフ。」
メッシュ:「ナギサか……お前、相変わらずだな。」
旧友との再会だった。
メッシュは、なぜ自分たちが生存し、次元の旅人となったのかを語った。
ナギサも、この二年の間に起きた悲劇と復興、そして現在の女王襲撃事件について説明する。
もっとも、ナギサの説明は、いつものように詩的な言葉が次から次へと続いた。
普通なら数分で済むはずの話が、二時間近くかかってしまったのである。
……ところで。
先ほどメッシュが使った『異新型真』。
あれは、つい最近習得したばかりの新たな次元剣技だった。
メッシュは、いったいどのような次元を旅し、その技を手に入れたのだろうか。
物語の焦点は、一時、この世界を離れ、メッシュが『次元剣技:
第九話【ビッグブロックの死闘、再び!】終わり