スラム街で絶望してひとりぼっちになった優しい少年が、血出してボールを蹴り続けていつかチャンピオンズリーグで頂点とる話読みたくない?俺は読みたい!!   作:やゆゆゆゆ

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ノースロンドンよ、永遠に。

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

小さな小さな僕らの家、ロンドンの端っこで父さんと母さんと三人。

 

お金はなかったから僕の家にはものがない。

 

くしゃくしゃの新聞紙と空き缶がいくつか。

 

その真ん中に父さんが小さな段ボールのゴールを作ってくれた。

 

上手に当てたら褒めてくれるんだ、それが、何より嬉しかった。

 

母さんはそれを見て笑っていた。

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

僕んちにはお金がなくて、だから前よりもいくつか家具が減って家は一層広くなった。

 

父さんは仕事をすると言って朝から晩まで外に行っている。

 

だから、最近は母さんが僕にパスを出してくれるのだ。

 

擦り切れた段ボールにはボールの跡が無数に残った。

 

破れたボールは母さんが縫ってくれるんだ。

 

だから、僕はサッカーができるのだ。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

外で学校のやつらがボールを蹴る音が聞こえる。

 

どうにもうちが貧乏だから、家に来てああやってボールをぶつけて帰っていくんだ。

 

母さんは最近前と比べて言葉が減った。父さんがいなくなってずっとそうだ。

 

僕は母さんを喜ばせようと足の甲にずっとボールを乗せて、浮かせてみせた。

 

びっくりさせようとずっと練習してきたんだ。

 

母さんはその技をみると小さく笑ってくれた。

 

僕は、だからボールが好きなんだ。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

うちはいつも通り、何も変わらない。

 

母さんが家でたくさんの紙の薔薇を段ボールに作って、僕も隣で手伝って、余った段ボールに僕がボールをぶつける。

 

最近じゃあ前よりも早く作り終わるから、怖いおじさんが家に来ることもなくなった。

 

おじさんはたまに家に来ては母さんと僕をぶって、家にあるお金を持ってまた、ズタズタと去っていく。

 

母さんはそのたびに泣いてしまうから、僕はそのたびにボールを蹴って母さんを笑わせるんだ。

 

あぁ、そうだ。

 

そういえば最近、近くの公園でサッカークラブが始まったという話を聞いた。

 

コース料?というのが払えないから僕はいけないけど、遠くで彼らを見ながらボールを蹴るだけで僕には満足だ。

 

そう言うと母さんはごめんね、と涙を流して、また僕はサッカーボールを蹴ったけれど、今度は母さんはいつもよりもずうっと長くないていた。

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

学校のやつらが来ないから僕は最近家の壁にボールをぶつける。もう、段ボールじゃあすぐぺしゃんこになってしまうんだ。

 

母さんは前と比べてずうっと多くの薔薇を作ることが多くなった。あと、家に変な男の人が来ることも。

 

男の人は母さんと二人で奥の部屋に入っていった後、暫く二人で大きな声を出した後出てきて、それを繰り返すとうちの玄関の机にはたくさんのお金が貯まるんだ。

 

「これでサッカー教室に行けるわね」

 

そう言われて財布をもらったけど、僕はスーパーでたくさんのじゃがいもを買ってきて母さんにシチューを作ってあげた。

 

最近、母さん痩せてきてるよ。

 

僕はサッカークラブなんかより母さんのほうが好きなんだ。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

母さんが倒れてどれくらい経っただろう。

 

美味しいシチューを食べても、母さんが痩せていくのは止まらなくて、お医者さんが働くのは無理だと言っていた。

 

市役所?で書類を書いたら少しお金をもらえたけれど足りなくて、最近は僕がたくさんの紙のバラを作るんだ。

 

僕は学校に行けなくなった。

 

薔薇をたくさん作ったら、もう夜になってしまうんだ。

 

でも、大丈夫。大丈夫だからね、母さん。

 

振り返れば遠くの公園は夜光ライトに照らされて、あの時、僕んちにボールをぶつけた奴らが綺麗なスパイクを履いていた。

 

僕はより一層強く足の甲を振り抜いた。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

右足、左足、足の甲、足の背、かかと、太もも、頭。たくさんの場所でボールを蹴って、近所をずうっと走り回るんだ。

 

息を吐く僕の前であいつらが言った。

 

「父ちゃんが首吊っちまうと子供ってのはこうなっちまうんだな」

 

あの日、父さんの首から固いロープを外した感触。苦しかっただろうに。悲しかっただろうに。

 

「おまえらに、なにひとつだって、わかるもんか」

 

小さくつぶやいてボールの音を響かせた。

 

母さんが、こいつらの声を聞かないように。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

母さんは遠くの病院に入っていって、うちにはもう、誰もいやしない。

 

バラを作る量も少し減って、学校に行くこともできたけど、僕にはなんだかボールを蹴っていたほうが性に合っているんだ。

 

強くボールを蹴れば、返ってきた玉は綺麗に胸に収まった。

 

「すごい、うちのコは天才だ!!」

 

そう言ってくれる声はもうどこにもなくて、寂れたスラム街にはカラスが何匹かいるだけだった。

 

涙は、涙は、流してやらない。

 

流しは、しない。

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

病院から連絡が来た。

 

 

 

母さんが、死んだ。

 

 

 

もう、なんだっていいや

 

 

 

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

雨の日。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

風の日。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

僕は

 

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

なんのために

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

なんのために

 

 

なんために、

 

 

サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

 

なんのために

 

 

 

サッカーボールを、蹴っているのだろうか。

 

 

 

 

 

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サッカーボールを蹴っていた。

 

 

 

灯の消えた公園。クラブの人たちがいなくなったその後。

 

 

誰もいなくなったゴールに向かってシュートを打つ。

 

 

冷たくなった地面がボロボロの足に当たって血がにじむ。

 

なんのために、ボールを蹴っていたかなんて、そんなのもうわかりゃあしない。

 

ボールを蹴るんだ。それだけが………それだけが。

 

何本目だろう。

 

強く蹴ったボールはポストに反射して道路の方へと転がった。

 

冷たい空気を突き刺して、複雑な軌道をたどるボールを目で追いかけるが、その先にはこちらをじっと見つめる男の人がいて………いて、いてって……………、それってつまり……………

 

 

「あぶない!!」

 

 

 

そう叫んで走り出すと、男の人はなんてことのないようにボールを胸でまっすぐに収めた。

 

 

ピタリと止まるボールと吸い付くように足元に転がっていく軌道。

 

魔法のようなコントロールだ。

 

謝りながら、驚きながら走っていくと、長いロングコートを着た男の人はじっと僕と、僕の蹴ったボールを見つめた。

 

長く見つめ合う目線。

 

そう、じっと見つめられると、少し気まずいんだけど………

 

背の高いおじさんは、ゆっくりと口を開く。

 

 

「ずいぶんと」

 

 

「ずいぶんと、長く使ってきた、ボールなんだね」

 

思わる言葉だ。

 

 

言われてとっさに恥ずかしくなったけれど、だけど正直に僕はこれまでどうやってボールを使ってきたかを話した。

 

ボロボロだけど、母さんがくれた、だいじなボールなんだ。

 

 

「そうか………そうか……………」

 

 

男の人、「ミケル」と名乗った男の人は何度もつぶやいて「だからこそ………」とかなんだとか、そういう意味ありげなことをいくつかつぶやいたけれど、背が僕よりもずうっと高かったから分からなかった。スペインなまりが入っていたことも、原因だったかもしれない。

 

しばらく時間が経って、「あの、ボール返してください」と、痺れを切らして僕は切り出した。また、練習しなくちゃあいけないんだ。

 

 

 

「なんのために?」

 

 

そう聞かれたけど、すぐに答えは返せた。

 

 

僕にとって、ボールを蹴ることが、人生のすべてだからだ。

 

 

なぜなんだろう。

 

返す言葉の先、ミケルの目は僕の何倍も大きく見え、僕はこれまで会った誰よりも彼の姿が大きく感じられた。

 

だけど、僕も負けじとずっと声を張り上げる。

 

 

フットボールは、僕の、人生だ。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

ミケルは答えを聞いてしばらく黙って、そうしてしばらくどこかにメッセージをしているようだった。

 

カチカチと長い指先スマートフォンを叩く。

 

 

「君、これから、時間はある?」

 

 

スマホを見つめながら、突然にそう問われて戸惑った。彼のキラキラと輝く視線が僕を見つめて、暖かそうなロングコートだけどこんなスラムに来て盗まれないのかなと的外れな心配がよぎった。

 

あぁ、そうだ。時間はあるかって質問だったな……

 

 

えっと、これからノルマのシュートのメニューを1時間くらいやって、ランメニューをして……………あぁ、近所のおじさんに教えてもらったトレーニングのメニューをしなくちゃあいけないし、それに、

 

 

「あぁ、分かった!分かったから………」

 

 

「しかたない、今日はこれで妥協すべきか…………」

 

 

ミケルはため息をつくと、ぶつぶつと「こんなの柄じゃないんだが………でも、確かに合理的だし………」と文句を言いながらポケットからくしゃくしゃの紙ナプキンを取り出し、サラサラとそこに文字を書きぼくに差し出した。

 

なに、これ。

 

こんなナプキンもらっても………僕って口元が汚れてる?

 

「違うよ、違う。これは契約書だ。」

 

 

 

「君をうちのクラブに勧誘したい」

 

 

 

唖然とする。契約?契約とはなんだろう。昔、うちに来た怖いおじさんがそんな事をよく言っていたことを思い出す。

 

 

「冗談じゃない!これは、まぁ、そうだな………何と言うべきか…………」

 

 

「君を………君を、」

 

「君と、サッカーがしたい。そのお誘いのようなものだよ」

 

 

おさそい…………ぼくと、僕と、一緒に?

 

 

「あぁ、そうだ。君と、一緒にサッカーがしたい」

 

 

僕は、僕の気持ちは、この時、どのように説明すればやかったんだろう。胸が張り裂けそうで、頭がどうにかなりそうで、ふわふわとして、なんだか収まりがつかなかった。

 

こんなの初めてだ。

 

今まで遠くで眺めていただけなのに。

 

それだけだったのに。

 

「サッカーしたい!ミケルと、サッカーしたい!!」

 

僕は公園に響き渡るように大きな声で叫んで、受け取ったペンでサインをした。でっかいでっかい文字で、あやふやなスペルで。

 

ミケルは「まぁ、ちゃんと説明すると、私がプレーするわけではないんだが………」と呟いたが、まぁ、そんな事はどうでも良かった。

 

僕はは喜び勇んでミケルの手を取って駆け回り、公園をぐるりと駆け回った。

 

 

うれしかった。

 

 

こんな日が来るなんて思っていなかったから。

 

 

あの日、父さんがいなくなって、母さんがいなくなって、一人でずうっとボールを蹴って。

 

 

ずうっと一人で死んでいくもんだと思っていたから。

 

だから、こうやってサッカーに誘われることがこんなにうれしいんだなんて思っていなかったから。

 

 

だから、こんなの初めてなんだ。

 

 

 

僕は、これまでの僕は。

 

 

やっと、なんだ。

 

頭が爆発しそうだ!!!

 

 

ボールを蹴って、走って、回って、疲れたミケルがたまに転んで(でも、ミケルは相当に運動ができるようだった)僕らは迎えが来るまではしゃぎ続けた。

 

僕の遊びに付き合ったミケルのポケットからさっき書いたナプキンとぽとりと落ちて、風にさらわれる。

 

 

春一番にさらわれるその1枚は。

 

後の世では。

 

 

それは、いつか100万ポンドの価値がつく契約書だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




評価と感想くれたら続き描くからおくれ!!
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