スラム街で絶望してひとりぼっちになった優しい少年が、血出してボールを蹴り続けていつかチャンピオンズリーグで頂点とる話読みたくない?俺は読みたい!! 作:やゆゆゆゆ
ミケルと会ってから3時間後。
僕は迎えに来た車に乗せられて、大きな大きな芝生のある場所(たくさんのゴールやコートもあるみたいだ)へと連れていかれた。
僕らを出迎えたブラウン色の髪をした男の人(はじめは名前が分からなかったがジャックと呼ばれているらしい)はその芝生の真ん中で僕に何度もボールを蹴らせ、コートを走り回させた。
ミケルと遊ぶんだと思っていたから少しがっかりしたけど、こんなに綺麗な芝でボールを蹴ったことはない。
僕がたくさんボールを蹴ったり、いろんな技を見せてあげるとジャックはその度にじっと僕の動きを見て、周りの人たちとひそひそと話し、メモを取っていた。
遊びが終わった後、ここから家までどう帰ろうかと相談すると、ジャックは驚いた顔でこの施設にあるという部屋の鍵と、あとちょっぴり変なあだ名をくれた。
「マラドーナ?」なんてあだ名、ここら辺じゃああんまり聞かない名前だ。「変な名前だね」とミケルに言うと可笑しそうに彼は笑った。
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ミケルと会ってから3日後。
温かい布団と美味しいご飯を毎日食べられる生活なんてどれだけ久しぶりだろう。
母さんもすごく料理が上手だったけど、家じゃああんまりお肉は食べられないから、初めて食べるステーキにはびっくりした。
ミケルは毎朝僕にご飯を届けてくれて、こんなに素敵な部屋もくれて、なんて優しい人なんだろうと思うけど、だけど、サッカーをしている子たちみんなにこんなステーキをあげていたら、きっと彼はお金がなくなってしまうに違いない。
朝食が終わると、僕らは外のコートに出かけてずうっと一緒にボールで遊んだ。ミケルをボールで抜く遊びや決まられた通りにシュートを打つ遊び、言った通りに動くとたくさん褒めてくれるんだ。
周りを見渡せばミケルと同じユニフォームを来た人たちが、たくさん僕らの遊びを見て、時たまジャックの名付けた僕の変なあだ名を囁いた。
僕はミケルが熱心にビデオで教えてくれた動きを真似しながら、「明日もステーキは食べられるんだろうか」と切実な悩みを抱えていた。
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ミケルと会ってから7日後。(ステーキはこの間に3回も夕飯に出た。世界にこんな場所があるなんて!!)
この芝生ばかりの場所に来て1週間が経ち、変わらずサッカーボールを蹴りながら僕は何となくこの場所がどんな所かを理解した。
「ヘイルエンド」
そう呼ばれるこの場所は、ぼくとおんなじ位の年の子たちがみんなで集まってたくさんサッカーをする場所のようだ。
いつものように朝食を食べ終わりサッカーを始めると、昼頃から遠くのコートでたくさんの赤いユニフォームを来た子たちがボールを蹴り始める。僕に変なあだ名をくれたジャックはそこで先生のように大きな声を出していた。
あんまり、同じくらいの年の子と僕はサッカーをやったことがないから、ジッ見つめる。
「…………あの子たちと、サッカーがしたい?」
ビデオを止めたミケルが隣で尋ねてきたけど、僕の頭には昔に母さんを笑ったクラスの奴らのことばかりが思い出された。あの日、僕んちから遠く見つめたサッカークラブの子たちの中に、どうしても自分を描けなかったのだ。
わからない、と正直に伝えると彼はがさがさと僕の頭を撫でた。
温かい手だ。
そして、僕よりずっと大きい手だった。
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side:????
最初、グラウンドにそいつが入ってきた時、暗そうなやつと思ったのは間違いない。
俯いた顔、目元にかかった髪、みすぼらしい服。
滅多に来ることがないトップチームの監督がアカデミーに来るということで緊張した俺達は、じっとその背に隠れた奴に目をやった。
黒い髪は目元付近まで伸びて、アジア人らしい顔。
身長は160少し程しかないから大きい方でもなく、体はひょろ長かった。
一見すればそこら辺を歩いているようなつまんないやつ。
ちっぽけな少年がそこに立っていた。
「みんなに挨拶を」
監督の声に震える体。
何か喋ろうとして、でも口が詰まって、そうして名前も知らないそいつはどもった様子で自己紹介をした。
「えっと」とか「あの、」とか自信なさげな拙いハキハキしない発声だ。
「……………………アーセン・アダムス」
拙い口調でされた自己紹介は正直ほとんど聞こえなかったが、そいつの名前だけはかすかに聞き取れた。
監督はアダムスの自己紹介が終わった後、いくつかのことを説明した。
今日からこの子がアカデミーの練習に参加すること。
大勢とサッカーすることには慣れていないから、色々教えてあげてほしいこと。
今の年齢は15歳であること。
出身はロンドンであること。
諸事情で今はアカデミーの施設に住み込んでいること。
自分が拾ってきた子であること。
ステーキが好きなこと。
勉強はあまりできないから教えてあげてほしいこと。
そうやって長々と説明が続いて、そうしてようやく最後。
一呼吸置いて監督はおしまいに付け加えた。
この少年がクラブのレジェンドになるということ。
だから、君たちの仲間に入れてほしいこと。
普通の人が聞けば馬鹿だと監督に叫んだんだろう。
でも、僕らは誰も何にも言わず、じっと風が吹く芝生の上で真剣そのものの監督と小さな少年を見つめていた。
だって知っていたから。
少年が「マラドーナ」と言われていることを。
評価と感想くれたら続き描くからおくれ!!