次世代魔法少女養成所 作:匿名
「ママー!」
「あらあら、どうしたのー?」
大きな子供が母親を呼ぶ。先ほどまで遊んでいた場所は、すごく散らかっている。
「ママ、片付けておいて」
「また新しいオモチャで遊んでたのね。あらー……? 新しかったのに、すぐに壊しちゃうんだから。もう、しょうがないわねー」
子供が壊したものは母が処理をするのは、どこの世界でも共通であった。汚した物は母が綺麗にしてくれる。誰にも教わっいないのに、そうすることを知っている。そういう生き物なのだろう。
「おい、お前。早く飯作れよ?」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね」
父親というのは、子供と同様に自分勝手だったりもする。自分のご飯のことばかり考えているのは、これまた、どこの世界も共通事項。
「早くしないとお前を食べることになっちまうからな?」
「あー、はいはい、ただいまやりますよー」
しょうがない。お父さんが怒っちゃうから、お片づけは後かな……。
見える範囲だけでもサッと片付けようと近寄る。先ほど子供が遊んでいたオモチャは意外と可愛い趣味をしているようだった。
「あなた、フリルを付けてるの? 可愛いわね。これは最近の流行りだったのかしら?」
オモチャに向かって話しかけると、答えてくれる。
「に、人間がいる……!? た、助けて!? ここから早く逃がして!!」
必死になって助けを求めてくるオモチャ。
太もも辺りから潰れている、きっと骨は粉々になっていることだろう。
「動けなくなったのね。可哀想にね。どうする? 今すぐ楽になる?」
「楽にって……、うぅ……、私は人間界に帰りたい……」
「うーん、けど、その足じゃあ、ダメでしょうね。絶対に帰れないわよ。そもそも、なんでこんなところに来ちゃったの? 力も無いのに?」
「わ、私は魔法少女だから……。怪人は殲滅されるべき……」
「ふーん」
オモチャと話していると、後ろから声を掛けられる。
「おい、早くしろ!! 本気で食うぞ!!」
「あ、はい。ただいま行きます」
とりあえずオモチャは置いていく。魔法少女の訓練を受けているなら、しばらくは生きていられるだろう。そのくらいの実力も無いようであれば、自業自得。
長い間怪人の世界にいると、怪人が食べるご飯を作るのにも慣れてきた。最初はグロイものを食べるなと思ったけれども、食べてみると案外美味しかった。
怪人と同じ味覚を共有しないと、怪人の舌を満足させるのは難しいから。
「ママー、早く!!」
「僕お腹ペコペコだよー!!」
食べ盛りの子供が七人。
よくもまぁ、私もこれだけ産めたものだな。肝っ玉母さんだわ。
とりあえず騒がしいので、作り置きしていた食材から子供とお父さんにご飯を与える。お皿へ餅つけたら出してやると、すぐにバキバキと骨を砕く音を立てながら食べていく。
食卓を囲んで、私も同じものを口へと運ぶ。
「そう言えば、また今日も魔法少女が来たようですね。怪人と人間の友好関係の話はどうなったんでしょうかね?」
「あっちが仕掛けてくるから仕方がない」
「こっちは平和に暮らしているだけなのにね。たまには私も抗議に行こうかしら?」
「あはは、それもいいだろう。今度連れていてやろうか」
「やったー、ありがとっ!」
怪人の頬へチュッと口づけをする。怪人もまんざらでもない顔をしてこちらを見つめてくる。
「八人目、作るか?」
「もう……、八人目はここにいますから……」
怪人の子は体内にいる時から大きい。今までよく七人も産めたたなって思うけれども、私は耐えれるから。ここで耐えることが私の役目だから……。
「ん、どうした? 涙なんか流して?」
「ふふ……、嬉し涙だよー……」
怪人の世界へきて十年は経とうというところ。
私は、怪人と仲睦まじくやっている。
思い描いていた生活とは違うけど、私は自分の街を守ることができたって思えるから。ここで、出来るだけ長く生き延びるんだ。
魔法少女として、人間世界の平和のために……。
「薊ちゃーん、遊びに来たよー」
いつでも元気な朱里が遊びに来たようだったこの世界に来ても、朱里はどうにか元気でいるようだった。
「いつもだけど、今日も楽しそうだね?」
「へへへ。今日も魔法少女狩ってきたんだよー。また弱かったからボコボコにしてやったけど」
際どい衣装ををつけている朱里。先日、幹部に昇格して、衣装もグレードアップしたのだ。
色合いは黒色だけれども、大人な風格を帯びたドレス姿。朱里の希望から、裾には可愛いフリルを付けてもらっている。
「薊ちゃんも今度行こうよ。魔法少女狩り!」
「そうそう、私も行っていいって言われたの! ふふ!」
怪人の世界は、非常に住みずらい。
悪臭が立ち込めており、太陽の光も届かないような異界。この世のものではないような、生物が空を飛んでいたり、地面から出てきたりする。その度に吐き気を催す。
それらを叩き殺して、怪人たちの食事にするのだ。これがこの世界でのエネルゲンだからしょうがない。
グロテスクな見た目で、味も食べれたものではない。けれども、食べないと生きていけないから、作り置きの料理を腹へ流し込む。
これを無理やり食べていると、自分でもなんで生きているのかわからなくなる時がある。
けど、これが私の戦いだ……。
「腹ごしらえも終わったかな? そしたら早速行こう!
「それじゃあ、あなた。行ってきます!」
「おう、行ってこい。身重だからな無理するなよ?」
いたわってくれる優しさは、本当に泣けてくる。これが私が選んだ幸せなんだって……。
◇
悪の幹部の座に着いた朱里は、魔法少女を活かさず殺さず痛めつけるのが得意だ。
人間界へやってくると、依然と変わらない新宿の街が広がっている。
以前は汚いと思っていた夜の街も、こんなにも綺麗なのかと地面を舐めて這いずり回りたいくらい。落ちてるゲロでもすすって食べたいくらい。生きてる虫を貪り食いたいくらい。こんなにも恵まれたところだったんだな……。
「おい、怪人! 私たちが成敗してあげるわっ!」
「悪は絶対に許さないんだからっ!」
調子よく魔法少女らがやってくる。
何が魔法少女なんだか……。
人間界の平和を守ってるのは、誰だか知らないただの小娘が、自分の正義を振りかざすだけ。
「いいよ、少しだけ相手してあげるよ。本当の幸せが何かも知らない餓鬼が……」
魔法少女になりたいものは後を絶たないのだろう。
定期的に怪人の世界にもやってくるのだから。
けれども、どれも中途半端。
旧時代の魔法少女養成学校は何を教えているというのだろうか。
そんな彼女らを諦めさせるのが、今や私たちの使命となっている。
「お前らを倒して、幸せな世界を作るんだから!!」
「……無知な若者は、そうやって自分の考えを押し付ける。若い子特有の盲目だね」
「美晴ちゃん! 悪の言うことには耳は課さなくていいよ!」
「……はぁ。旧世代の魔法少女の考えは、捨てな。どうやったら、平和が訪れるのか、次世代の魔法少女養成所で学んできな。世界を救う、本当の魔法少女になる気があるならね……」
怪人の世界の食物を食べると力が溢れてくる。
魔法少女と呼ばれるものは、私たちの手にかかれば瞬殺だ。
ただ、やり過ぎない。心が折れるくらいの傷を負わせてやるだけでいい。
「くっ、なんだよ……。本当の魔法少女って……。お前らになにがわかるってんだよ……!」
「んー、私たちにもわからないけどさ。どんな形であっても、世界の平和を守っているのが魔法少女ってヤツなんだよ」
世界の平和を望んでいたから。
それを叶えられたら、なんでもするって思ってたから。
どんなにひどいことをされても、それが幸せに感じるまで耐えれば、幸せだから……。
「世界の平和ってさ、すごく単純だよ。自分を諦めればいいだけ。受け入れればいいだけ……。私があなたたちを本当の魔法少女にしてあげるね?」
そうだよね。
魔法少女を志している子を、みんな次世代の魔法少女にしてあげれば、世界平和がすぐ訪れる。
そうすればいいんだ。我ながら、私頭いいなー。
「この子たち、うちの息子のお嫁さんにピッタリな年齢かもだよ。ふふふ、早く孫の顔が見たいなー?」
Fin
これにて物語終わりです。
最後までお読み頂きまじでありがとうございました。
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