次世代魔法少女養成所   作:匿名

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第2話 排尿

「……おいコラ、一年が。見てんじゃねぇぞ!?」

 

機嫌の悪い天龍院と、その取り巻きたち。新しい所長は寮だろうがお構いなしに、どこにでも現れるのだ。それを避けれる場所――トイレだけが唯一の逃げ場となっていた。

所長からのペナルティにより服を脱がされた上級生もトイレの中にいるようで、天龍院たち上級生はそれを隠しているのが見て取れる。

 

所長による罰の大半が、服を脱がせること。

暴力による体罰は行われないが、罰として服を脱がせる。

 

施設内で所長に出会うと、その場で咄嗟の判断が求められる。いつ、いかなる状況で怪人が襲って来るかもしれない。それにも対応できるように、ゲリラ的な訓練をしているという話をしていた。

求められた対応が所長の気にそぐわないとペナルティが課され、その場で服を脱がせられる。そして、一日中その状態で過ごさなければならないという罰を受ける。

 

「貴様、ペナルティ」

 

声のする方へ目線をやると、所長が現れたようだった。一年生の仲間がペナルティを受けていた。

 

「これだけで済んで良かっただろう。もしも俺が怪人だとしたら、お前は死んでいた」

 

身を縮める一年生へ叱責する所長。

一年生は震えながら服を脱いでいく。所長はその様子を仁王立ちしながら眺めている。服を脱ぎ終わると、一年生はその場で直立する。

 

「次の訓練時間、お前はここで立っていろ」

 

所長がそう言い放つと、一年生は目に涙を浮かべているようだった。

その様子を一瞥すると、所長はその場を去っていった。

 

上級生からの虐めが緩かったと錯覚してしまうくらい酷い仕打ち。新しい所長が就任してから、こんな生活が続いているのだ。

 

この状況になってから、上級生はフラストレーションが溜まる一方であるようだ。

 

 

「一年はココに入るのは禁止だって言ったろ? 人の話も理解できねぇのか?」

 

所長の動向を観察していたことで、トイレの前で立ち止まってしまっていた。そんな私に対して、天龍院は怒りを向けてきた。

 

「お前らは、一生トイレでの排尿禁止だからな。いつ何時でもだ。全員に言っておけ」

 

怒りに任せた、ただの嫌がらせだろう。

それ以外にも、自分たちの居場所を守りたい、安全な場所は渡したくないということもあるだろうが、理不尽さは以前よりも高くなっていると感じられる。

一緒にいた朱里が驚いて言い返す。

 

「えっ? 訓練中だけ禁止だったはずですよね? 訓練の合間の休憩時間や、訓練終わりには許されていたはずですよね?」

 

「ルールが変わったんだ。新しい所長だって言ってただろ? いつ何が起こるかわからないから備えておけって」

 

「けど、そんなことされたら、どこかで漏れちゃうじゃないですか……」

 

「身体に入れた水分をすべて消費すれば問題無いだろう? 全力で訓練でもすればできるだろ?」

「はははは。確かにそうだな。手を抜いて訓練してんのか、お前ら?」

 

上級生から一年生への虐めは変わらないようである。やはり、どうにかして自分たちの威厳を保ちたいという表れだろう。

新しい所長が就任したことによって、安全だった上級生自身の立場も脅かされているのだから、自分達よりも立場が低い存在を明確にして、どうにか罰を下級生の方だけに向けるようにしている。そうすることで、相対的に自分達は優秀だと誇示するのだろう。

身体的にも精神的にも一年生を追い詰める。

 

「もしも出来ないようなら、漏らせばいいだろ? 人間、漏らしても死なないぜ? ははは」

 

高笑いしている天龍院。周りの上級生も釣られて笑い出す。

しかし、それは長くは続かなかった。

 

天龍院の笑いが引きつったかと思うと、私の背後から声がした。

 

「なにをサボっている?」

 

トイレの中にいた上級生たちは、迅速に外へと出てきて、背筋を伸ばして正しい姿勢をとる。既にペナルティを受けて裸となった上級生も、自身の姿を気にせず綺麗に起立している。

 

「ペナルティを受けた者が、なぜこんなところで休んでいる?」

 

「…………」

 

裸の上級生が気になったのだろう。

所長が問い詰めるが、それに言い返せないでいる。

所長は裸の上級生に向かっていく。

 

「貴様、魔法少女になる気があるのか?」

 

「……はい」

 

重い空気が辺りを包み込んだ。

所長は裸の上級生をしばらく見つめると、口を開く。

 

「こんな休憩室があるからいけないのだな。本日より封鎖する」

 

「えっ、あの……、封鎖って……?」

 

「私たちはどこで用を足せということですか!?」

 

思わず天龍院が言い返す。

 

 

「排尿行為自体が禁止だ」

 

「…………はぁ?」

 

「先ほどのやり取りを聞いていた。天龍院、貴様の提案を採用しよう」

 

所長はこの場にいる全員に伝えるように声を高くする。

 

「漏らしたくなければ、全てを使い尽くせ。身体に取り入れたものは全てエネルギーに変えろ。尿が出てくるようであれば、まだ鍛錬が足りていないという証だ」

 

「はぁ?! そんなの出るに決まってるだろ!」

 

言い返す天龍院。所長は天龍院の方へと向きを変え、顔色を変えずに言う。

 

「できないなら、次の実践訓練はお前を除外する」

 

「い、いや、そんな……。私は正当な主張を……」

 

威勢の良かった天龍院が徐々に声を萎める。

 

「私からの命令が聞けない者は戦場には出せない」

 

「……!?」

 

その言葉を聞いた上級生たちは、すぐにその場に跪き始めた。正座になり、頭を床へと付ける。

裸となっている上級生も、同様に頭を床へと付ける。

 

「やらせていただきます……」

 

ワンテンポ遅れて、天龍院も正座をして頭を下げる。

 

「私もやります……」

 

 

この場では、所長が最高権力者。

作戦に従えないものは、戦場での死が待っているということだろう。私たちを虐めていた上級生たちさえも惨めに従っている。

 

「天龍院、お前はいい」

 

所長は天龍院に向けて言う。

 

「お前は溜まっているものがあるだろう。我慢しなくて良い。出していいぞ」

 

「えっと……、出すって言うと……?」

 

所長の言葉に対して、頭を上げる天龍院。

散々文句を言ってきたからなのか、天龍院に対しては待遇が違うようだった。

 

「お前には、出すことを許可する」

 

「あ、ありがとうございます……?」

 

戸惑いながらも、特別待遇を受けた天龍院の顔がほころんだ。

 

「私は貴様に、『今出せ』と言っている」

 

「…………は?」

 

「今、ここで、溜まっているものを全て出せ」

 

「……えっと、それって……。トイレで出すようなものを、今出せってことですか? トイレの前の廊下で……、皆に見られながら……?」

 

「戦場で時間があると思うなよ。一瞬の気のゆるみ、一瞬の判断が命取りだ」

 

天龍院は目だけを動かして辺りを見回したが、すぐに状況を理解したようだった。決心したのだろう、戸惑いの表情が消えた。

正座をしてひざまずいた状態、天龍院の周りに水が溢れ出す。

 

「うむ。正しい判断だ」

 

天龍院の匂いが香ってくる。正座で頭を床に付けたままの周りの上級生たちは、天龍院から漏れ出した水分が来ても耐えている。

 

「他に出したいやつはいるか? 今ここでなら出すことを許可する」

 

所長の言葉を聞いた上級生たちは、率先して天龍院と同じ水分を垂れ流し始めた。

辺りに酷い匂いが充満していく。

 

「良い仲間に恵まれたな、天龍院。私に口答えしたことは大目に見よう。温情だ」

 

「ありがとうございます……」

 

天龍院は上げていた頭を水浸しの床へとつける。

所長はそれを満足そうに眺めている。

 

 

「…………なんで、こんな状況で平然としていられるの?」

 

私の隣にいた朱里が、この状況を見て声を漏らした。私はすぐさま朱里の口を塞ぐが、所長の耳には届いていたようで、所長の鋭い視線が私に向けられた。

 

――一瞬の判断が命取り。

 

 

私は、すぐに水浸しの床に膝をつく。そして、床へ頭を擦り付ける。

 

「下級生からも、お礼を言わせて頂きます。ありがとうございました」

 

「……うむ。良い心がけだ。だが、友人の言動を聞かなかったことにするには、行動が足りないのではないか?」

 

「……はい。既に実施済みです。ただ、今日は厚着をしていましたため、多少時間がかかっているように見えるのだと思います」

 

ゆっくりと私の服を伝っていく水分。じわじわと広がり、下着、衣服と濡らしていく。床へと流れ出すころには、下半身のほとんどが濡れていた。

流れ出た水分は床を伝って、上級生のそれと混ざり合う。

 

「なるほど、一理ある。貴様の判断の早さに免じて、先ほどの言動は不問とする」

 

「……ありがとうございます」

 

少し遅れて、朱里も床に膝をついて頭を水の中へと付け、周りと同じ行動をする。

 

「うむ。統率が取れている」

 

所長は満足したのか、ペナルティを課さないで去っていった。

ゆっくりした所長の足音を聞きながら、残された私たちは水たまりに顔が浸かるのに耐えていた、

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