次世代魔法少女養成所   作:匿名

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第8話 母親

「おもてに怪しいヤツらがいたんで、捕まえました」

「ん、私に言ってんの? 今、接客中なんだけど? なんで裸の女の子なんて捕まえてきてんの? 犯罪じゃん?」

 

「こいつらが、ママの知り合いだと言い張るんで。しょうがないから、ママに会わせる」

「あー、はいはい。たまにいるよね、そういうの。……裸なのは珍しいけど」

 

盛りに盛ったメイクをした女性は、私たちの身体を視姦したあと、触れてくる。

 

「……うっ」

 

「ふーん、反応はするから、薬やってはなさそうだね。……じゃあ、ただの変態?」

 

「……ん!」

 

「こっちも反応するじゃん。意外といい拾い物じゃない? お手柄〜♪」

「ただ、ママの審査が無いとまだわからない」

 

「まぁそうね。いってら〜♪」

 

私と朱里は、ゴリゴリのマッチョの二の腕に首を締め付けられながら店の中へと運ばれてきた。店の中に入っても、締め付けを緩めようとしないため、思うように息ができない。

知らないキャバ嬢に身体触られるし、最悪だ。クソが……。

 

「あか……り、つかま……、ってるけ」

「だいじょ……、ぶだよ。作戦……、どおりだから……」

 

 

どうにか路地裏を進んで、朱里が言う店へと辿り着いたのだ。そこで、店の前にいた用心棒のような二人に捕まった。どうにもできないまま、見せしめのように店の中を通りながら、ママと呼ばれる人がいる控室まで運ばれているらしい。

 

この店は高級なキャバクラなのだろうか。薄暗い店内にはキラキラと光るドレスを身に着けた女性が大勢いる。お客さんと思われるおじさんたちの隣に座って、楽しそうに話している。

おじさんたちも楽しそうにしていたのだが、裸の私たちがそばを通ると、こちらに興味を持ったようでキャバ嬢そっちのけでじろじろと眺めてきていた。身体を隠したいが、マッチョの腕にしがみついていないと、締め付けにより息を吸うことができないので、息を吸うことを優先する。

キャバ嬢からは鋭い視線を向けられた。

 

 

店の奥へと進むと、他のキャバ嬢とは違う女性がいた――一人だけシックな着物を纏っており、白い煙を吐き出していた。

綺麗に整った顔立ちの女性は休憩しているのか、お客さんに見せるような笑顔はなく、座ってこちらを睨んできた。

 

「なに」

「ママの知り合いというヤツが来たので、念のため連れてきました」

 

「じゃあ、一回離して」

マッチョに腕を話されて、床へと降ろされる。

 

「……ゲホッ」

「……ゴホッ……ゴホッ!」

 

ママと呼ばれる女性がこちらに近づいてくると、冷たい指で顎を持ち上げてきた。肺に息を入れているところだったが、凍てつくような瞳に息を飲んだ。

 

「あら、誰かと思えば。朱里じゃない? どうしたの、その姿?」

「ママ……、助けて欲しいの!」

 

ママの瞳に温かさが戻ったのがわかった。

 

「なにがあったのかしら? 話聞こか?」

「ママ、聞いて!」

 

 

朱里はママに対して、魔法少女養成所の経緯を話した。

裸での生活を強要されたこと、排泄を禁止されていたこと。逆に排尿を強要させられたことも全て、洗いざらいママへ話した。

ママは、こちらを労わるような表情をしながら頷いていた。

 

「大変だったわね」

 

きっと話のわかる人なのだろう。この人の助けを得られれば、今回の訓練はクリアできるだろう。服と多少のお金を工面してもらって、買い物をして養成所へと帰れる。シンプルに作戦Aで上手く行きそうだ。

 

 

「まぁ、アンタが今でも『魔法少女』を目指してるのはわかったよ」

「そう、私の夢なの。魔法少女になって、街を守りたいの」

 

ママの瞳から光が消えていくのがわかった。急激に冷えた瞳は、朱里のことを鋭く刺す。

 

「よくこの店に帰って来れたよね? アンタがどれだけ損害出したか覚えてんの?」

「…………」

 

いつも明るい朱里の表情に陰りがでた。

 

「根性だけは認めてるよ。図太さだけは一流」

 

話の雲行きが怪しい。

朱里はココへ来ればどうにかなると言っていたのに。どうにも、このママが味方になってくれる雰囲気は感じられない。どちらかと言うと、敵になりそうな気配さえある。作戦Bに切り替えか……。

 

「ママ、昔は応援してくれて……」

「養成所の費用を貯めたいってことじゃなくて、ここで働いてくれることを応援してたよ」

 

 

「け、けど……、魔法少女になって怪人たちを倒したら、ママだって嬉しいって……」

「ココで働きながらだね。魔法少女と兼務してキャバ嬢やってくれたら、売上が上がっからね」

 

朱里は今にも泣きそうな声をしている。今まで信じていたママの本当の気持ちがわかったからだろう。今まで信じてた人に裏切られる……。

この状況だと、さらに心に響くことだろう。朱里は心が折れかけているようだった。少なくとも、私の目からはそう見える。

 

「私……。どうしたらいいの……。身寄りのない私を拾ってくれて……。本当のママだと思って……」

「帰ってきたら考えなくもない」

 

 

ママは条件を突き付けて来た。

 

「すぐに養成所を辞めてうちで働きな。しばらく給料は無しで使ってやるから。あと、アンタ意外に、そっちの子とか他の『魔法少女崩れ』を連れてきな。そうしたら、考えてやる」

「…………」

 

「今聞いた話だと、その所長、誰も卒業させる気は無いよ。詐欺養成所のやることだね。高い金だけとって、適性が無かったと言って訓練だけさせて終わるっていう」

「……そんなことない……もん……」

 

「夢見るだけ無駄だね。養成所に入ったら魔法少女になれるなんて、騙されてんだよ」

「……だって、実績があるって」

 

「魔法少女が、アンタたちがいる要請所どこかから卒業したかって聞いたことあるかい?」

「…………」

 

「……そのクソ所長と、私とどっちを信じる?」

「……うぅっ……」

 

ママの言ってることはもっともだろう。

私も同じ考えが頭をよぎったけど、考えないようにしていた。これはゲリラ戦のための訓練で……。

まさか、全員を警察に捕まえさせて退学しょうだなんて、そんなこと……。

 

「早く大人になりな。私が迎えてやるから」

 

ママは、朱里の頭を優しく撫でる。本当に朱里のことを思っているのかもしれない。

ママの言う通り、この魔法少女養成所は詐欺なのかもしれない。万が一、本物だとしても、魔法少女になったら命の保証はない世界だ。戦い続ける日々で、幸せになんてなれないかもしれない。

ここで大人しく働く方が朱里のためになるかもしれない……。

 

朱里の瞳に涙が溢れた。

 

「……うぅ、ママーー……、私、どうしたらいいの……。魔法少女が夢なのに……、うぅ……。小さい時からの夢なのに……」

「大丈夫。新しく見つければいいから。一緒に探していこう?」

 

朱里はママに抱き着いた。

もはや朱里は、魔法少女になることを諦めてしまったのかもしれない。

 

こんな時、友人としてどうするのが正しいのか……。

私自身は、どうすればいいのか……。

 

 

「あんたも私の店で働くかい?」

 

優しく語りかけてくるママ。

私の答えを待つママは、手を広げて待ってくれている。私も朱里と一緒に抱きかかえてあげようということだろう。

 

ただ、私の答えは決まっている。

 

「使えない女は無価値。私たちの『夢』を邪魔してくるヤツは、全員敵」

「ん……? それは、私に向かって言ってるのか……?」

 

「そうだよ、おばさん。大人になって狡賢くなってるみたいだけど、どんな汚い言葉を浴びせようとも、夢見る少女の心は砕けないから」

「お前……、今の状況わかってんのか? ここは私の店で、そこに用心棒もいるだろ? ここから逃げれるとでも思ってんのか?」

 

「んー、そろそろかな?」

 

――警察だ!

――ここに裸の少女が入っていくのを見たぞ!

――早く引き渡すんだ!

 

 

作戦通り。

まぁ、やや遅いけど、

 

この店にやってくる道中で合流した天龍院たち。彼女らが上手く立ち回ってくれたのだろう。警察を店内へ侵入させればこっちのもの。ママは私たちを一刻も早く警察へ差し出すしかない。もはや、そこにメリットはない。

 

 

「昔、朱理がタダ働きされてたっポイから、その代金はもらっていくね。まぁ、今から警察が来るから、すぐに被害届でも出すといいよ。保険降りるっしょ?」

 

これで、私たち二人を逃がすことのメリットが生まれる。

頭の回る狡賢い大人なら、これだけで伝わるだろう。

朱里もママの元から離れる。

 

「ママ、ごめんね? 時間稼ぎだったから。けど、損もないでしょ? ウィンウィンだよねー!」

「……けっ。朱里もグルかい。……お前らは、汚い魔法少女にでもなりなっ!!」

 

警察が入ってくる前に、控室にあったキャバ嬢の出勤服やドレスを奪い、裏口から出ていくと天龍院たちが待機していた。

持ってきた服を急いで着ながら、朱里がケタケタと笑っている。

 

「どうだった? 綺麗なママだったでしょ?」

「ははは、すげー、綺麗だったな。大人のお手本みたいな、クッソ汚いけど綺麗なヤツだったよ」

 

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