次世代魔法少女養成所   作:匿名

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第9話 次世代魔法少女

新宿の街中を大腕を振って歩く。

警察は私たちのことを服の着てない集団としか認識できてない。服を手に入れた私たちは、もはや、ただ夜の街を歩いてるだけ。郊外訓練はもはやイージーモードだ。

 

「天龍院、私たちに感謝しな?」

「はぁ? どっちが感謝すべきなんだよ、オイ? 私たちが警察呼んでなかったら、今頃骨の髄までしゃぶりつくされてただろ?」

 

「まぁまぁ、あのキャバクラに勤務したことがある私がいたからこそできた作戦なんだから、みんな私に感謝するように!」

 

天龍院と言い合いしていたが、一番調子がいいのは、朱里だった。確かに、一番活躍したのは朱里かもしれない。絶体絶命の中で、九死に一生を得られたのも朱里のおかげだろう。

 

「ゲリラ戦、これで完勝だね」

「そだな。じゃあ、早いとこ帰ろうぜ!」

「チッ……。上級生に、もっと感謝しろよな?」

 

舌打ちをして文句を言いながらも、一緒に歩く上級生たち。少し前では考えられなかったような結束を感じる。

 

「マジで、あの所長なんなの?」

「ですよね、ふざけるなって感じですよねー」

 

朱里も上級生たちに溶け込んでいる。この郊外訓練、私が考えている以上に効果があったのかもしれない。私も、この訓練を通じて、少し大人になれたかもしれない……。

 

「天龍院、ありがとう」

「はぁ……? いまさら? 遅くね?」

 

天龍院は相変わらずの口調で変わりがない。正直腹が立つ野郎だけれども、不貞腐れながら握りこぶしを私の目の前に近付けてくる。何をしようとしてるかわかったので、私も握りこぶしを作り、天龍院のそれに近付けた。

 

「一年にしてはやるじゃん。桐生薊」

 

どうやら私の名前を憶えてくれているようだった。

 

 

 

 

魔法少女養成所の正面玄関へ着くと、そこには所長が立って待っていた。

 

「遅い」

「は、はい!」

 

ペナルティの言葉が発せられる前に、私たちは服を脱いだ。借りてきた服は、十分役目を果たしただろう。その場に投げ捨てる。

私たちの姿に、所長は頷いた。

 

厳しいことがあったとはいえ、この訓練を無事に達成できたことで、どこか自信がついた気がする。こんなことが出来るのなら、私たちは怖いものなしだろう。これで魔法少女にかなり近づけたことだろう。

 

この訓練を通して魔法少女で活躍するための大事なこともわかったつもりだ。一人の力じゃできないことは、団結すればできる。仲間がいるからこそ、達成できる課題もある。

私をはじめ、満足気な表情が並ぶ。所長が口を開く。

 

「この先の訓練、どんな理不尽なことが待ち受けているかわからない。それでも心折れずに進めるものだけ残れ」

 

所長の言葉に、誰一人として、この場を動こうとしなかった。どんなことがあっても、私たちは魔法少女になることを諦めないという気持ちが固まったのだろう。何があっても、私たちは挫けない。

 

「よし……。お前らの決意はわかった……」

 

所長はゆっくりと歩きながら私たちの顔を見て歩いた。訓練を無事に耐え抜いた私たちの事を誇りに思ってくれるに違いない。

 

 

「では今より、お前らを怪人組織へと引き渡す」

「…………はぁ?」

 

「決して逆らわず言いなりになれ。どんな要望にも応えろ。身体を穢してでも、希望が無くなろうとも生き延びろ」

 

「……それって、どういうこと?」

 

所長の言葉が少ないのはいつも通りだけれども、いつもと様子が違う。なにかに怯えているような気がする……。

不思議に感じていると、所長の後ろの空間が引き裂かれた。次元の狭間のような異空間から、得体のしれない大男が出てくる。

 

「おお、所長さん。準備は出来たか?」

「あぁ……」

 

大男は、大きな音を立てながら、一歩一歩と歩みを進める。

 

「あ、あの、所長……。もしかして、そこにいるのは……怪人なんじゃ……」

 

所長よりも一回りも二回りも大きい男は、所長の横に立つと肩をポンポンと叩く。

大男の顔を見れば一目でわかる。鬼の形相と言われるような、この世の物とは思えない顔をしている。これが、怪人……。

 

「どうして、所長が怪人と話してるんですか……?」

 

怪人は大口を開けて笑う。

 

「ハハハ。もしかしてお前ら、コイツを信頼してたのか? コイツは奴隷を怪人へ横流しする業者だぞ」

 

「もしかして、所長は……、怪人と繋がってる……?」

 

上級生たちはすぐに身構える。魔法少女へ変身するブレスレットは返されていないから、素手でしか戦えない状況だけれども……。

全員で飛びかかればワンチャン倒せるかもしれない……。

 

「お前ら、抵抗するな!!」

 

普段は冷静な所長が、声を荒げた。

 

「今言った通りだ。こいつらに従え。どんな要望にも応えろ。そして、生き延びろ……。それが、訓練……」

 

「ハッハッハ!! 傑作だな。なんでも言うことを聞く上玉を作り出してくれるから、お前は信用しているぜ。『訓練』って言っておけば、なんでも喜んでしてくれるオモチャだからな! いつも世話になってるぜ!」

 

こちらを舐めるようなイヤな目付きをして、下衆な笑い声を響かせる。

 

「所長、『訓練』って言っても……。これじゃあ、無防備で怪人に攫われるのと同義じゃ……」

 

「俺の他にもあっちの世界で待ってるやつらは大勢いるぜ。アレが初めてな魔法少女でも、優しくは出来ねぇヤツらばかりだがな。ハッハッハ!」

 

所長はただただ繰り返す。

 

「耐えろ……。お前らが生きてる限り、『生贄』は追加しない契約だ……」

「い、『生贄』……?」

 

「怪人たちから、この街を守るための存在――お前らは今から『魔法少女』になるんだ」

 

「えっ……、所長……? 『魔法少女』って……、怪人を倒す存在じゃ……?」

 

「人間と怪人は友好関係を築いている。倒すなんて御法度。友好関係を結んでくれ」

 

「ハハハ。いつまで『魔法少女』なんて呼んでるんだ? こいつらは、ただの『奴隷』――死ぬまで遊べる俺らのオモチャだろ?」

「あぁ……」

 

所長は怪人の言うことを否定もせずに、生返事を繰り返すのみ……。

もし言ってることが本当だとしたら、抵抗する気も起きない……。

怪人との力の差は明らかだ。

 

ここで死ぬか、今と同じような人権の無い生活をしながら少し生き延びるか……。

 

「お前らの活躍に期待している。出来るだけ長く生き延びろ……」

 

所長はそう言うが、絶望しかない……。

『魔法少女』になることを夢見ていたっていうのに。『魔法少女』とは、怪人の奴隷の総称という事実を突きつけられたのだ。

そんなことなら魔法少女になんてなりたくなかった……。

 

「薊ちゃん、嬉しいねー。私たちは晴れて、『魔法少女』になれたみたいだよ……」

 

朱里が笑いながら涙を流している。いつにもまして明るい、夢が叶ったような涙声……。

 

「養成所の皆と仲良くなれて良かったね。あっちの世界に行ってからも、仲間がいるって頼もしいなぁ……。私たち、死ぬまでこき使われるのかなぁー……」

 

朱里は明らかにオカシイ。これから先のことを思って、精神が壊れかけてやがる……。

 

「オラ、その中に入れ!!」

 

次々と時空の裂け目へと入っていく。もはや、誰も抵抗もしなかった。

 

こんな状況、誰かに嘘だって言って欲しかった。せめて、何か意図のある訓練だと言って欲しい……。

こんなんじゃ、私たちは何のために頑張ってたのか……。養成所で鍛えた力って一体なんのために使うの……。

 

「所長の育てた『魔法少女』は、ションベンもしないで生きてられるし、どんな汚いことにも耐えられるからか。そんな人間を作り出せるんだから、所長の育成能力は最高だな!!」

 

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