強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「お、アリスはとんかつ御膳か。一切れ私のポテト5本と交換しない?」
「えぇ良いわよ」
あれから3人に試着標本にされる事数時間。こちらの精神保護機能を貫通する程の猛攻撃を凌いだ俺は、最終的に今着ている黒色のパーカーと灰色のバギーパンツ他、各種衣服を購入し、食事を摂るために移動してきていた。
「おいしー♪」
「ハルカ貴方食べ過ぎでしょ…お金は大事に使いなさいよ…」
「ふぇ?」
通算5杯目となるラーメンを啜る月宮ハルカに、品川アリスが文句を言う。どう考えても平均的な16歳女性の食事量では無い、満腹中枢の機能が低下しているのだろうか?
(いや、魔法少女は魔力という形で大量のエネルギーを消費する。なら食事量が同年代の平均から逸脱していてもなんら不自然ではないか)
思いながら2人から視線を外し、目の前に置かれた超加工食品、ハンバーガーと呼称されるサンドイッチの一種を見やる。
内在エネルギーは525
そこでふと、対面に座る八雲スズから生温い視線を向けられている事に気付く。
「ビックマッグを真顔で見つめて分析するのちょっとシュールかも…」
「む、すまない。口に出ていたか」
「あぁいや、口には出てないけど、ホントにじーっと見てたから」
「…そうか」
俺の悪い癖だな、知的好奇心が湧くと周囲に意識を向けられなくなる。これだけ興味が唆られるのは、最後に食事を摂ったのがいつか思い出せない程長い間、《食》から離れていたためだろうか。
幸い、俺の機能の中に消化器系は存在する。総て人工物に置き換わり、エネルギー還元率がほぼ100%なのを除けば普通の人間と変わらないだろう。
味覚も同様に、物質構成から味の推測は可能だ。その物資や組み合わせで伴う感想なども既にデータとして残っている。最も、これら一連の機能は、対人類国家への隠密任務に使用するために搭載されたものであるが。
「…いただきます」
学習したこの国の文化に倣い、両手を合わせて言葉を紡ぐ。今はまだ形式だけのものであるが、いつかは。
具材が落下しないよう注意を払いつつ口腔部の高さまで持ち上げ、口内に適切な大きさで切断、咀嚼。味覚物質のデータが集まり次第、嚥下する。
「どう?」
微笑みながら問いかけてくる八雲スズ。何かを期待するような眼差しで見つめられると少し、身構えてしまうが…
-
(……)
「…美味しい」
「ふふっ、なら連れて来て良かった」
自然と口から出た言葉。この感想が人工的なものか、それとも
だが、少なからず今後の為になるはずだ。
◇
「久しぶりに来たけど、やっぱ景色良いね〜」
「駅の方向以外はまだまだビル少ないから」
食事を終え再び街中へ出た俺達は現在、栄町の中心に存在する〈中部電力 MIRAI TOWER〉の展望台に居た。
地上90mの展望台からは、開発が進む名古屋駅方向を除くかなりの範囲を見渡すことが出来、詳細なマッピングには好都合だ。
-マッピング進捗率67%-
実際に観測してみると、砂原から渡されたデータとの差異もやはり存在するため、少し申し訳なさも感じつつ作業を進める。
またそれはそれとして、眼前に広がる景色に僅かながら安らぎも感じて居た。
「ごめんみんな、ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あ、私も行くわ」
「了解した」「行ってらっしゃーい」
4人揃って椅子に座り、他愛も無い会話が交わされている途中、八雲スズと品川アリスが立ち上がり移動して行った。
そして後に残された俺と月宮ハルカの間に沈黙が降りる。任務上で会話は幾度か交わしたが、やはり打ち解けるレベルには達していない。
(コミュニケーションを取るチャンスと捉えるべきか、だが…)
などと上手く行くかは不明ながら、俺から会話を振るべきか悩んでいると…
「こうやって2人きりで話すのは初めてだよね、イナズマちゃん」
「あぁ、普段はあの2人が居るからな」
「特にスズちゃん、君にめっちゃくっ付いてるもんねぇ…」
苦笑交じりに言われ、肩を竦めて返す。何故八雲スズがここまで俺に親愛を示しているのかは数度考えてはみたものの、思い当たる節も無く一度意識の端に放置して居た。
「…こりゃ苦労しそうだぁ…ま、あの娘なら大丈夫でしょ」
「?なんの話だ?」
「んーん、気にしないで。それより、私からまだちゃんとお礼言えてなかったよね」
言うと月宮ハルカは、先程と打って変わって真剣な表情になると、俺へ頭を下げた。
「スズちゃんを助けてくれて本当にありがとうございました。もし貴方が来てくれなかったら、多分…」
その
ならばあの時、八雲スズとやや異なる絶望感や無力感を感じていたのは想像に難くない。それ故の感謝だろう。
だが俺の思考は、感謝より利益を求めてしまう。…それを抑え、静かに礼への返答をする。
「礼を受け取ろう。今後も頼りにしている」
「っ、ありがとう…」
彼女は緊張の糸が切れたのか照れ臭そうな笑みを浮かべ、再び椅子に腰をおろした。これで一旦話は終わりか…
「さてじゃあ、今度こそちゃんと話すよ〜?」
「…何?」
「趣味とかはさっき聞いたから…あ、そうだ…」
こちらの声を全く意に介さず、身を乗り出し、ニヤリとした笑みを浮かべつつ詰め寄ってくる。何故だろうか、敵の罠に向かっている時と同様の感覚があるのは。
(何がくる…)
思考領域を全力稼働に備えさせ、マッピングを中断。
…だが、次の言葉に対して俺は反応を返す事が出来なかった。
「イナズマちゃんのタイプとか、教えてほしいな♪」
………?
タイプ、種類、型……質問の意図が分からない。俺の兵科を問われている訳では無いだろう。第一に強化人間だと明かしてない上、そんな事に興味を持たれるとは思えない。
ならば一体何を聞かれている?
「ちなみにスズは大人しいけどいざという時は頼りになる人で、アリスは自分と対等に接してくれる人らしいよ?」
「…なる…ほど?」
続け様に意図が不明な発言をされ、この世界へ降り立った時以来の混乱の渦に叩き込まれる。どうにか返答は返したが、適切な会話とはとても言えたものでは無い。
また俺が困惑している間にも、「あ、バラしたの2人には内緒ね」とウインクと共に言ってきて、余計に処理が追い付かなくなった。
(タイプ…自分をどう認識しているのか、という話か?だがそれでは、品川アリスの「自分と対等な人」という情報と矛盾する。それに暴露されて不都合が生じるのなら、尚更…)
思考が纏まらない。
こうなった元凶は相変わらずこちらを笑みを浮かべながら眺めている。
どうすれば良い。
(……やむを得ん、質問の意図を問うか…)
このままでは拉致があかない。月宮ハルカの望む答えと掛け離れているだろう言葉を返す事にはなるが…
思い、口を開いた瞬間だった。
『緊急事態発生、首都圏に居る全魔法少女へ通達。名古屋市栄町においてS級魔獣の反応を探知。繰り返す…』
通信機から緊迫した声が聞こえ、同時に巨大なアラートが館内に響き渡った。