強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました   作:Yura0628

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EP.12 来たる絶望

 

 

 

 

『巨大な魔獣が出現しています!栄町付近にお住まいの方は直ちにシェルターへ避難してください!』

 

「A級以上の魔法少女を回せるだけ回して!」

 

イージス日本支部のオペレーションルームにて、正面の画面に映し出されたニュース映像を横目に砂原は部下に指示を出していた。

 

「ですが、殆どが新潟戦線でウロボロスの対応に追われて…向かっている魔法少女も直ぐには…」

 

「岐阜に居る〈双刻の魔法少女〉なら来れるはずで…『もう向かってる』ッ、分かった、状況は一刻を争うわ。出来るだけ急いで」

 

『あぁ、了解だ』

 

通信を切り、思わず椅子に座りそうになるのを留め、砂原は視線を戦場が映し出されたホログラムに向ける。

 

「現状栄町周辺以外での魔獣の出現は確認されてない…やはりヒュドラが出現した事による副次的魔力集約点が現れたと見て良さそうね」

 

もしこれで栄町以外の首都圏内にも魔獣が出現していたら、守りの薄い首都はもっと甚大な被害が発生していたかもしれない。最悪の場合、魔獣の流出を防ぐ為に木曽川等を境に支配権を手放す必要に迫られる可能性もあったかもしれない。自国の首都を、だ。

 

かつて日本政府は、北からやって来た魔獣の大攻勢に多くの都市や地域を放棄し、これを防ぎ止めるために東京を防衛都市と改め、魔獣の脅威から遠ざかるために名古屋を首都と定めた過去がある。無論、住人の対応や都市の整備など、数え切れない程の苦慮する場面もあっただろう。

 

だが、やり遂げた。

 

 

…今回の事案は、そう言った過去を無に帰しかねない可能性も秘めている。

 

それでも今の砂原に出来る事は、防衛に当たる魔法少女達に指示を出す事だけだ。

 

「イナズマやリンとの通信はまだ繋がらないの?」

 

「先程から試していますが、周辺の魔力濃度が高過ぎて魔力通信が困難です。これなら電波通信も併用しておけばと悔やまれます」

 

「後悔しても仕方ないわね、けれど、このテレビの映像が現状唯一の情報収集の手段になるなんて」

 

言って再びテレビの映像に視線を向ける砂原。

 

画面の向こうでは、灰色の少女がヒュドラと睨み合いを続けていた。

 

 

 

 

 

「合わせる!」

 

「分かったわ…!」

 

頷き合い、同時に突撃。

 

私のレイピアと、アリサの氷の剣がドレイクへ振るわれる。鱗に守られ、更にその下も魔力強化された筋肉で刃は簡単には通らない…けど!

 

「よし、傷は負わせた!」

 

「じゃあ行くよー!」

 

先程合流して後ろで待機していたハルカの声が響く。それを聞いた私とアリサは急いで後ろに下がり、姿勢を低くした。()()()()()()()()()()()()()()()()()しね。

 

「天賦解放、戦爆轟(デトネーション)ッ!!」

 

爆炎。

 

ハルカの居る場所まで下がったにも関わらず、熱波が私達を襲う。流石は〈轟炎の魔法少女〉…魔法出力じゃ逆立ちしても勝てない。

 

それにアリサも、私のレイピアが弾かれた鱗を切り裂いた。本当に凄い仲間達だ。

 

まぁ、だからと言って劣等感を感じる事はない。私にしか出来ない事だってある、例えば—————

 

「っ!来るよ、避けて!」

 

間一髪。私の警告で2人はその場から飛びずさり、数瞬遅れて紫の炎が元いた場所を焼き尽くした。

 

「天賦解放…空の眼(スカイアイ)

 

 

スカイアイは一定濃度以上の魔力を視る事が出来る魔法だ。

 

発動すれば、魔力の散らばり具合がサーモセンサーみたいに視界に映るから、今みたいに視界が悪い状況で不意打ちを避ける事が出来る。

 

「まぁでも…今はちょっと役に立ちにくいかもなぁ…」

 

ヒュドラが放出する魔力のせいで視界が真っ赤っかだ。さっきのドレイクのブレスも精々赤紫程度にしか見えなかったし、逆に言えば、あれより弱い攻撃で不意打されたら避け切れず食らってしまうかもしれない。

 

攻撃は最大の防御…今の状況では激しく同意だ。攻撃される回数が増える程、こっちが不利になって行く。ならさっさと倒して余計なリスクを背負わないようにした方が良い。

 

…なんて、イナズマちゃんが話してた事の受け売りだけど。

 

「ふぅー…」

 

レイピアを握り直し、ヒビだらけになったアスファルトを踏み締めて一歩前に出る。

 

横ではアリサが自分の周囲に氷柱を浮かべ、その後ろでハルカは手のひらに魔力を集めていた。

 

「…行くよッ!」

 

自分、そして仲間達に掛け声を上げ、私は煙の中から姿を現したドレイクに向かって駆け出した。

 

「Guuaaaaaaaaa!!!!」

 

ハルカの攻撃により背中に大きな傷を負ったドレイクは、怒りの形相で再び口を開く。…そこへ私はグリントノヴァを撃ち込み、生じた隙で接近、一気に右足を斬り付ける。

 

かなりの重量を支える足でも、すれ違いながら鱗の薄い裏側を斬れば…

 

「よしっ!」

 

「やるじゃない!私も…天賦解放、白雪刃(スノウエッジ)!」

 

筋繊維を断たれたドレイクはバランスを崩して転倒。畳み掛けるようにアリサの氷柱が背中の傷に突き刺さり、内部から体を蝕んで行く。

 

「Gyuuaaaaaa!!!!」

 

痛みに悲鳴をあげるドレイクに、少しだけ胸が痛む。だけど、見逃すわけには行かない。

 

もし戦ったのが私だけだったら、貴方が勝っていたかもしれない。でもね、例えそうなっていたとしても貴方は独りで、私は1人。

 

結局は、死ぬ運命は変わらなかったと思う。

 

だから———————

 

 

「え?」

 

 

視界が、()に染まる。

 

同時に目の前のドレイクが痙攣を始め、その体が急速に膨張し始めた。

 

 

『八雲スズ!直ちにソイツから離れろ!ッ邪魔だ——』

 

今までに聞いたことの無いイナズマちゃんの声が通信機から聞こえたと思ったら、すぐに切れる。何かに襲われているみたいだったけど…今の私に、そんな事を気にしている余裕は無かった。

 

スカイアイ発動中に、紫に染まった視界が示す物は、一つしかない。

 

 

魔力集約点。

 

 

「ね、ねぇ…あれって…」

 

「いや、2体目は流石に…」

 

アリサとハルカの呟きがやけに遠くに聞こえた。2人には、今の私の景色は見えていないから確信がないのかもしれない。だけど、私は確信を持っていた、ううん、持ってしまっていた。

 

9つの首をもたげ、私達を睥睨するこの魔獣は。

 

「………ヒュドラ」

 

同じS級魔獣なのに、シャドウアメーバとは比べ物にならない威圧感。18個の金色の瞳には、凄まじい憎悪が宿っている様に感じた。

 

イナズマちゃんは、こんな魔獣と1人で…?

 

普段通りの声音だったから普通に承諾してしまったけど、さっきの通信であれだけの動揺を見せた…あの冷静なイナズマちゃんが取り乱すって事は、何か怪我でも負ってしまったのかもしれない…?

 

 

…敵が眼前にいるにも関わらず、余りにも呑気な思考。頭を振り、雑念を追い出す。

 

「勝てるかはわからないけど…やるしかない…!」

 

「っ…そうだね」

 

「こうなったら最後まで、付き合ってあげるわ」

 

3人並んで立ち、各々の魔法発動を準備する共に構える。

 

「Guuoaaaaaaaa!!!!!」

 

ヒュドラが咆える。応じる様に私達も駆け出し、そして最初に撃つのは、ハルカの魔法。

 

「天賦解放、炎爆(フレイムバースト)…喰らえッ!」

 

巨大な炎の竜巻きが、ヒュドラ目掛けて放たれる。でも…

 

「嘘っ!?」

 

一つの頭が口を開き、そこから迸った光条が炎の竜巻きを跡形もなく消し飛ばした。やっぱり一筋縄ではいかない…!

 

「天賦解放、轟雪崩(アバランチ)!」

 

「天賦解放、臨光(スパークル)!」

 

爆光がヒュドラを包み込む。今の私達が出せる最大クラスの魔法を打ち込んだけど、少しくらいなら効果は…

 

「ハルカ、危ないッ!!」

 

瞬間、耳を劈く轟音とアリサの叫び声。咄嗟に振り返ると、ハルカの立っていた場所に紫の光の柱が昇っており、肝心のハルカはその更に奥で横たわっていた。

 

「ハルカ!」

 

「Gyuaaaaaa!!!!!」

 

「リン、来るわよ!」

 

っ、そうだ。今はまだ戦闘中…悲しむのは勝ってから—————

 

「か…はっ…」

 

「……アリ…サ…?」

 

…おかしい。なんでアリサは口から血を吐いて私の前に倒れてるの?

 

なんで、私は地面に横たわってるの?

 

なんで、巨大な口が迫ってきているの?

 

 

…いや、何もおかしくない。ヒュドラの攻撃に私もアリサも吹き飛ばされただけ。

 

そして眼前に迫るヒュドラの顔も、魔力の塊である私達を捕食しようとしているだけ。

 

そう、何もおかしくはない。筈なのに…

 

「たす…けて…」

 

思わず口から零れる、小さな言葉。だけど…

 

ギュッと目を瞑る。シャドウアメーバの時から何も成長していない。死を前にしてただただ怯えて、助けを請うだけ。

 

そんな自分が、心底嫌になる。

 

でも、覚悟した最期は、いつまで経っても訪れなかった。

 

 

「すまない、少し手間取った」

 

 

声が聞こえた。安心する様な、高揚を覚える様な声。…目を開ける。

 

私の目の前には、灰色の機械を纏った少女がいて—————

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()、ヒュドラの動きを止めていた。

 

 

 

 

 

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