強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
EP.00 Fight, Survive, And Win
日本国 旧福島県 猪苗代湖近郊
栄町での戦闘から約1ヶ月。俺は再び魔獣の支配領域へと足を運んでいた。
タリスマンと会った後、メディアへの僅かな露出や月宮達への訓練を行う等をする傍で、俺やタリスマンのライフルと同様の存在について調査を行っていたんだが、現状では成果は芳しく無い。
無論、イージス日本支部も協力してくれてはいるものの、やはり同様に難航している。
そして今は、協力への対価を遂行している最中だ。
『信号発信地点まで120m』
「イナズマより〈隼〉。方位1-1-5、距離50mに敵影探知」
『分かった。〈燕〉、〈大瑠璃〉。対応しろ』
『『了解』』
俺の通信で全身にアーマーを纏い、対魔獣用ライフルを構えた男達が動き出す。
現在俺…いや、俺達が遂行している任務は、魔獣支配領域に調査に出た魔法少女2名の救援任務だ。
事態が発生したのは5日前、新潟戦線でのS級魔獣大量発生に遡る。
既にウロボロスへの対応に追われていた新潟戦線に、ヘル・ドレイクやデッド・ガルム始め多くのS級魔獣が押し寄せ、一時防衛線の突破を許しかける状況にまで陥った。
幸い現地の魔法少女及び国防軍の奮闘により状況は収束したが、日本支部や東京所属の魔法少女に出撃待機が命じられるなどかなり逼迫した事態になっていた事は確かだ。
これを受け、イージス日本支部は魔獣支配領域で何らかの異常自体が発生していると推測、調査を決定し、S級魔法少女及び準S級魔法少女それぞれ1名が派遣された。
結果は、現状が示しているだろう。
S級魔法少女は基本的にS級魔獣に単独で勝利出来る事が条件であり、また派遣された魔法少女は両名とも機動力に優れていた事から恐らく遭遇したのはS級魔獣〈ワイバーン〉、それも複数。
新潟戦線からこれ以上S級魔法少女を引き抜くわけにもいかず、ヒュドラに勝利した俺が派遣されるのは必然と言えよう。
『燕より隼、目標排除完了』
『了解。合流しろ』
尚、俺の後ろでライフルを構え、フルフェイスマスクを装着した男達は、日本国国防陸軍特殊救難部隊〈濡羽〉。各自で専用化された武装を持ち、対魔獣戦闘に特化した彼等は初の実戦任務として、俺に同行する事になっていた。
『信号発信源まで60m』
風で俺の左腕部分に装着した灰色の防布がたなびき、バタバタと音を立てる。ヒュドラ戦で失った左腕は依然復旧の目処は付いておらず、剥き出しになった
以前は世論から隻腕になっても俺を戦わせる事に批判が集まっていたが、俺自身がメディアに露出して戦う意思を見せた事、隻腕となった後の実際の戦闘を見せた事で大多数の批判的意見は消え去った。
何れにせよ、亜空間ハンガーの復旧が急がれる事には違いない。
『救助対象捕捉』
崩壊しかかった建造物の向こう、瓦礫にもたれかかった1人の魔法少女が俺達の視界に入る。水色を連想させる衣装に、手に持ったステッキ…恐らく要救助者の1人〈風塵の魔法少女〉だろう。
「…う…?あっ…」
「大丈夫か。返答は出来るか」
-目標ユニット スキャン開始-
濡羽に周囲の警戒を任せ、近くに歩み寄り意識の有無を確認する。外傷はかなり酷いが、致命傷と言えるほどの傷は見当たらない。また魔力強化の影響か出血は傷の割に少ないため、今すぐ危篤状態に陥る事はないだろう。
-目標脳活動状態 良好-
「大丈夫…です…」
(脳にも問題なし)
ならもう1人の魔法少女を捜索するべきか…護衛は濡羽に任せれば…っ!
瞬間、轟音が鳴り響き、即座に俺と濡羽はそちらを向いて構える。
視線の先では土煙が立ち昇って、煙の中を蠢く魔獣の姿が垣間見得た。
-警告 方位0-4-7 距離80 脅威度8 スティール・アードヴァーク捕捉-
ワイバーンじゃない?アードヴァークは地下からの急襲こそ脅威だが、S級魔法少女ともある存在が攻撃を予知出来ないとは思えない。
「貴官を襲ったのはあの魔獣か」
「ち、違います…もっと疾くて大きかったです…」
やはり。となると、あれは後から来た魔獣と考えて良いだろう。本命は…上か。
空を見上げると、雲の合間を飛ぶ黒い影が視界に入る。同時にセンサーに不明飛行物体、間違いないな。
-方位3-1-1 高度1500 脅威度8 ワイバーン-
「イナズマより隼、これより俺はワイバーンの撃墜に当たる。アードヴァークへの対応を」
『了解した』
-身体性能変更
腰を屈め、足元の地盤強度を確認…問題無し。
「イナズマ、殲滅を開始する」
-
◇
先程のアードヴァークが立てた音を軽く超える轟音を立て、宙に打ち上がったイナズマ。それを地上から見送った濡羽は、直ぐにアードヴァークへ向き直り陣形を構築する。
「Buruoooooooooo!!!!!」
『燕、鴉は両翼に展開。目標を挟撃しろ。大瑠璃は要救助者を回収して後退、翡翠は俺と正面から目標を迎え撃つ』
『『『了解』』』
隼の指示で即座に分散する濡羽。
先ず大瑠璃が〈風塵の魔法少女〉を抱え上げ後退を開始。アードヴァークは逃げる者を追うという本能に従い動き始めるが、その前に隼と翡翠が立ち塞がった。
『撃て』
瞬間、2門の銃口からマズルフラッシュが迸り、曳光弾の軌跡がアードヴァークへ突き刺さる。…本来、国防軍で標準装備となっているライフルでS級魔獣の薄い外皮を貫く事すら困難だ。
だが対魔獣用に設計され、量産が困難な部品を使用した高威力ライフル。そして放たれる魔導弾は、アードヴァークの頭部外皮を貫徹、その内部組織に損傷を与える事に成功した。
「Bruaaaaaaa!?!?!?」
思わぬ痛みに悲鳴をあげるアードヴァーク。そこへ畳み掛ける様に両脇の瓦礫の山上から燕と鴉がライフルを連射。ただ、アードヴァークの背面外皮は戦車砲弾すら容易に跳ね返す硬度を誇るため、頭部や外皮の薄い箇所を狙った先の攻撃と異なり、火花が散るのみで損傷を与えられない。
最も、与える必要がないとも言えるが。
『大瑠璃から注意が逸れた。このままキルゾーンへ誘導する』
射撃を継続しつつ、ゆっくりと移動を開始する濡羽。アードヴァークが反撃を試みても直ぐに他のメンバーが大威力の連射で妨害を行い、例え攻撃を許しても行動を完全に予測している濡羽に当たる事はない。
『リロード』
『カバー』
一行に途切れない弾幕に圧倒され、ゆったりとした前進以外の行動が困難になったアードヴァーク。
魔獣支配領域でのコンバットレスキューに特化した世界初の部隊の力が、存分に発揮されていた。
やがて、アードヴァークをキルゾーンと呼称したエリアに誘導する事に成功した濡羽は、ライフルを構えたまま目標に悟られぬ様後退を開始。
「Bruoaaaaaaa!!!!」
攻撃が途切れた事でアードヴァークが咆哮による威嚇をするが、全く動じずに一歩一歩着実に距離を稼ぐ。そして————
『やれ』
隼の声が響くと同時、アードヴァークの足元で
爆炎で腹側の外皮は全て灼け、内臓まで達した損傷は容易に生体機能を破壊。また4脚全てが大破した影響で姿勢を維持出来ず、アードヴァークは地響きと共に地面に伏した。
無論、このまま放置すれば魔核が破壊されていないため何れ回復してしまう。故に、隼は背負っていた筒状の物体をアードヴァークの背中に押し付け…引き金を引く。
すると、バスン、と言う音が響くと共に、筒から射出された杭がアードヴァークの魔核を破壊。今度こそ完全に沈黙させた。
『3式衝撃搥、通常作動。目標撃破』
隼はそう宣言すると共に上空を見上げ、