強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
廃墟と化したビルを背景に、蒼髪の魔法少女が戦っている様子を瓦礫の下から私はじっと見ていた。
巨大な龍の片翼を断ち、ボロボロになりながらも戦う姿は何処までも眩しくて、幼い私——八雲スズは危機的状況にも関わらず、驚嘆の様な感情を抱いたのを覚えてる。
…やがて、魔法少女は魔獣に打ち勝ち瓦礫の下に隠れていた私へ手を差し伸べて来る。
『怖い魔獣は倒したよ、出ておいで』
恐る恐るその手を掴み瓦礫から這い出ると、周囲の景色は一変していた。
馴染みのあった街並みは跡形も無く、よく遊んだ商店街も、人で賑わっていた駅前広場も、全てが失われていた。
けれど、不思議と涙は出なかった。隣で手を握ってくれている魔法少女が居たからか、はたまた最初から思い入れが無かったのか…今となっては分からない。
ただ、見上げた魔法少女が太陽を背に佇んでいる姿に強く、そう強く、憧れた。
その時からだ。私が魔法少女を志す様になったのは。
幸い、私に魔法の才能がある事は分かっていて、赤ん坊の時にお父さんとお母さんを失っていた私の引き渡しはスムーズに行われる。
先ずは私を助けてくれた蒼髪の魔法少女…〈東雲カグヤ〉の元で1年間過ごし、7歳の春。イージス日本支部が運営する学園に入学。そこでハルカと出会い、魔法少女になるための生活が始まった。
当然、死と隣り合わせになる魔法少女の訓練だから、辛いなんてモノじゃ無い。カグヤ姉さんの元で多少の訓練を受けてきた私ですら、気を抜けば根を上げてしまいそうな程。でも、毎日目にするカグヤ姉さんの活躍を知らせるニュースが、共に努力する仲間たちの存在が…私を奮い立たせる。
そして気が付けば、背はカグヤ姉さんを追い越し、魔法少女になるための最終試験に合格していた。
『よくここまで来たね』
かつて憧れたカグヤ姉さんと一緒に戦える事に、私は幸せの最高潮に居た。
長くは、続かなかったけれど。
私が魔法少女になって5回目の任務で、カグヤ姉さんはS級魔獣〈ファフニル〉に殺された。逃げようとした民間人を、魔力切れ寸前の状態で庇って。
…当時の光景は、今でも鮮明に思い出せる。
『危ない…っ!』
私がA級魔獣〈ストームウルフ〉に苦戦してる間に、彼女は走り出した。
速く行け。
何をしてるの、魔力強化が無い魔法少女はただの少女。S級魔獣の攻撃を受ければ簡単に死んでしまう。
早く往け。
彼女に助けられた事を忘れたの?今こそ動く時じゃないの?
「邪…魔ッ!!」
レイピアでストームウルフの頭部を貫き、私は引き抜く手間も惜しんで走り出した。視線の先ではカグヤ姉さんが幼い女の子を抱きしめて、背中をファフニルに向けている。一刻の猶予も無い。
「カグヤ姉さん!」
間に合わせろ。疾く間に割り込め…!
ファフニルの爪が、姉さんの背中、に—————
「っ!!はぁ、はぁ、はぁ…」
-神経同調に異常発生 稼働停止-
目を開いて最初に目に入ったのは、イージス日本支部の地下に備えられた仮装訓練ルーム。最近私は、ここでずっと訓練に明け暮れていた、
手術の許可はまだ降りて無いし、砂原支部長が許可を出すとも思えない。だけど、少し前にここを訪れた〈創造の魔法少女〉…ソフィアさんからセンチネル計画の関係者に連絡を取り、テストの約束を取り付けることは出来た。
それに備えて、私はここで仮想空間上ではあるもののセンチネルの操縦訓練と、
あぁ、汗で湿った髪がおでこに張り付いて気持ち悪い…吐き気もする…長時間の仮想接続は心身に悪影響を与えるのは知っているけど、ここまで辛いとは思わなかった。
でも、これも罰なのかもしれない。
大切な人を目の前で失って、2度と同じ過ちを犯さないと誓ったのに、またしても大切な人を失うところだった。しかも今度は、私のせいで。
「もっと、強くならないと」
イナズマちゃん、待っててね。絶対そこに辿り着くから。
◇
『着陸した。離脱してくれ』
ヘリコプターのパイロットの言葉で、俺はシートベルトを外し直ぐ横で座っている魔法少女に肩を貸す。
「すまねぇな…」
「気にするな」
痛みに顔を歪めながら腕を回して来るのは、〈双刻の魔法少女〉…日名川ヒナ。準S級魔法少女である彼女は、〈風塵の魔法少女〉がワイバーンに撃退された後、俺達が来るまで上空で時間稼ぎをしていたのだ。
ただ、あくまで準S級魔法少女である彼女がワイバーン、それも複数体相手に無傷でいられるはずも無く、俺が介入した時には既に戦闘を継続出来る状態では無かった。
ヒュドラ戦の後、意識を喪失した俺を回収したらしい彼女を今度は俺が回収する事になるとはな。
『ハッチ解放』
ヘリコプターのハッチが開くと、外には何名もの支部職員が詰めている様子が視界に入り、更に救急部隊が担架を持って待機していた。
「頼んだ」
日名川ヒナに肩を貸しつつ彼等の方へ歩みを進め彼女を引き渡すと、今度は支部上層部の人員が俺に耳打ちしてくる。一体何だろうか?
「イナズマさん、支部長がお呼びです。2時間後支部長室に」
「了解した」
2時間後、言われた通りに支部長室に足を運ぶと、深刻な面持ちをした砂原ユキが椅子に座って待っていた。
「来たわね」
「丁度良い、俺も伝達すべき事柄がある。ただ濡羽へのフィードバックレポートを書かねばならないため、手短に頼む」
「分かったわ、まぁそこまで長話にはならないと思うけど」
とだけ前置きし、砂原ユキは水を口に含んだ後再び言葉を発する。
「先ず、貴方達が救助した魔法少女2人が送信していたデータを分析した結果、魔獣支配領域での平均魔力濃度がかなり高まっている。これなら、魔力集約点が多数発生していてもおかしくは無いわね」
「だろうな。俺達が現場に着いた時、予想していたワイバーンだけで無くスティール・アードヴァークにも遭遇した。確実に高脅威度魔獣の数は増えている」
「えぇ、それとこの高濃度魔力が現れている原因と思われるのが…」
言葉と共に、ホログラムによって山脈が机上に投影され、その中心部付近が赤く光った。
「これは?」
「2人が数百kmの単位で動き回ってくれた結果ね。極めて高濃度の魔力が、定期的にこの奥羽山脈、正確には栗駒山付近の太平洋側にある一点から放出されている」
間隔は40分程度で、観測機の定期偵察では中々見つけられないでしょう。と砂原ユキは言うと、再び椅子に座る。
この魔力放出点は、明らかに人為的なモノだ。この世界の情報はまだ集めている最中ではあるが、この様な自然現象を記載した資料は目にしていない。それに…
「俺から伝達する事も言おう。…現場で交戦したワイバーンに、人の手が加えられた形跡があった」
撃墜したワイバーンにはいずれも、部位移植や機械部品が確認出来た。こちらもまた、自然にはあり得ないモノだ。
「あら、私の予想通りだったわね」
「ならば」
「えぇ、この件には先ず間違いなく〈セイヴァー〉が関わっているわ」
セイヴァー。
魔獣による人類根絶論を信じ、世界中で破壊工作などを行っている危険組織だ。彼等は高度な隠密技術を誇り実態は依然把握出来ていないが、イージスと同じく幾つもの支部を保有すると言われている。
そんなセイヴァーが、今回迂闊にも痕跡を残した。
また、セイヴァーはイージスの保有していない魔法関連技術を数多く保有しているとも推測されており、もし連中の支部の一つが奥羽山脈にあるのなら…
強襲する価値は十分にあるだろう。