強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました   作:Yura0628

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EP.03 未知への回廊

 

 

 

その要請が入ったのは、やや冷え込み始めた秋の朝だった。

 

『出頭要請、八雲スズ以下、チーム〈ツルギ〉のメンバーは支部長室へ』

 

「ひゃっ!?び、びっくりした…」

 

「今日非番なのに起こされたぁ…」

 

部屋に設置されたスピーカーから大音量で声が響き、未だ眠りについていた3人へ容赦無く起床を強いる。気の毒ではあるが、こればかりはどうにもならないだろう。

 

-データ処理 一時停止-

 

慌てて身支度を始める3人とは対照的に、俺はイージス指定の制服に袖を通しながら要請の内容へ予想を立てる。

 

(戦果報告に誤りがあった等なら支部長室に呼ばれることは無い、また休暇関連も該当無し…ならば恐らく…)

 

「あれ?私の歯ブラシどこ?」

 

「昨日新しいの買いに行ったでしょう」

 

…仮にも支部長に呼ばれているのだからもう少し緊張する物だと思うのだが、彼女達の様子は相変わらずだ。無論魔法少女達と、砂原ユキを始めとしたイージス日本支部の上層部との距離が、軍のそれより圧倒的に近いのは分かっている。

 

ただ、以前いた世界で10年以上従軍して来た癖とでも言うべき感覚が、未だ俺に違和感を覚えさせていた。こればかりは、簡単に抜ける物ではないだろう。

 

むしろ、いずれ戻る可能性がある事を考えると抜けない方が良いのかもしれないが。

 

 

 

 

「来たわね、座って頂戴」

 

促され、俺達はここ数ヶ月やけに座る頻度の高いソファへ腰を下ろす。対面には砂原ユキ…では無く、()()()()()()()()()男が手を組んで待っていた。

 

階級章を見るに、この男は国防陸軍大将…日本国国防陸軍の実質上のトップが、俺達の前に居る。この事実から、俺の予想は概ね当たったと見て良いだろう。

 

陸軍のトップがイージス日本支部を訪れる用事など、そう多くはない。

 

「紹介するわ、彼女達が我々の擁する魔法少女チーム〈ツルギ〉よ」

 

「そうか、噂に違わぬ覇気を感じる…先ずは自己紹介からだな。私は国防陸軍大将、〈桐谷トウヤ〉だ、よろしく頼む」

 

立ち上がり、自己紹介をしてくる桐谷トウヤ。座っている姿勢から予想は出来たが、かなり体格が良い。それに胸元の徽章も数が多く、かつては優秀な兵士だったのだろう。

 

今日の国防陸軍の活躍も、彼の功労あってこそとまで言われている…信頼には足りそうだ。

 

「貴官らの活躍は、砂原殿から聞き及んでいる。特に栄町事案の際、貴官らの奮闘で市民への被害は最小限に抑える事ができた。この場を借りて礼を言う」

 

「…さて、では早速この場に来て貰った経緯を説明しよう」

 

そう桐谷トウヤが前置きすると、目の前の机に以前見た奥羽山脈のホログラムが映し出され、同じく栗駒山付近で赤い点が明滅していた。

 

「既にご存知とは思うが、現在魔獣支配領域で魔獣の出現数が大幅に増加している。そこで派遣された魔法少女2名から得られたデータを元に、我々は空軍と連携して、より詳しい原因の解明に当たった」

 

ホログラムがズームアップされ、赤く明滅する点がより詳細な起伏として現れた。先ず目に付くのは、山肌に建築された巨大なゲート。

 

高さ20m、幅は10m程だろうか。また周囲には用途不明な人工物や建造物が幾つか存在しており、周囲の風景から浮いた明らかに異質な場所であった。

 

「この施設がいつ建築され、何故一定間隔で魔力波を放っているのかは未だ不明だ。だが、現場付近に降下させた無人機及び観測機から、〈セイヴァー〉の拠点である事が判明した。今回貴官らを呼んだのは、この拠点に対する強襲作戦への協力を得たいと思ったためだ」

 

……やはりか。

 

規模で言えば世界屈指の日本国国防陸軍といっても、大部分は未だ新潟戦線。それに魔獣支配領域の深部へ多数の戦力を送り込む事は、流石に困難なのだろう。

 

この要請に他3人がどう答えるかは分からないが、俺は既に作戦参加を表明するつもりだ。

 

セイヴァーに自ら迫れる機会を、みすみす逃す訳には行かない。

 

 

 

 

 

 

「おい、あれって…」

 

「魔法少女だ…」

 

(…やはり注目は集まるか)

 

桐谷トウヤから協力要請を受けた3日後。俺達は日本国国防軍の一大拠点、小牧駐屯地に足を運んでいた。

 

今はヘリコプターから降りて案内されるがままに歩みを進めているが、エプロンで訓練をしていたと思われる兵士達からの視線が集中していて、前を歩く八雲スズは居心地が悪そうにしている。後ろの2人はあまり普段と変わった印象は受けないが…少し歩行動作が固いな。

 

メディアを通じて大勢と接する事はあれど、こうして生で接するのは初めての機会なのだろう。…仕方ない。

 

「それほど緊張するな。メディアに出演した際は現在の状況より数千倍多い人目に晒されているはずだ」

 

「っ!?!?そ、そう…だね」

 

前を歩く八雲スズへ耳元で小声で伝えると、何故か体を少し跳ねさせ前方を向いたまま頷いた。反応がやや奇妙だが、伝わったなら良い。

 

個別名称八雲スズ(この無自覚タラシは) 皮膚表層の血流増加を確認(いつ治るのでしょうか)

 

(…なぜ今八雲スズのバイタル情報が?)

 

ここ最近、システムが俺の予測外の行動を取る事態が増えて来ている。亜空間ハンガーや左腕の復旧も未だの内に故障など考えたくも無いが…この様な事を考え始めたらキリがないだろう。

 

 

 

「お待ちしておりました。〈ツルギ隊〉の皆さん」

 

しばし歩き、ミーティングルームへ入った俺達を数名の兵士が出迎えて来る。またルーム内には30人程の兵士が詰めており、中にはあの濡羽の姿もあった。

 

「こちらへどうぞ」

 

促されるまま用意されたパイプ椅子に座ると、部屋の電気が消え正面に用意されたスクリーンへ映像が投影される。同時にスクリーン脇の壇上に制服を着た男が登り、ルームを見渡して言葉を発した。

 

「総員傾注。これより奥羽山脈に存在するセイヴァー拠点への襲撃作戦…〈アキサメ作戦〉の概要を説明する。だが先ずは、本作戦に協力して頂ける事になった魔法少女チーム、ツルギ隊へ感謝を。…では説明を開始する」

 

男の視線がこちらに向いた時、軽く頭を下げて俺達は説明に耳を傾ける。一応桐谷トウヤから参加の是非を問われた際に説明を受けてはいるが、より詳しいものは未だ知らなかった。

 

「先ず本作戦に参加予定の人員は、第一空挺団25名、ツルギ隊4名、そして既に目標付近に潜んでいる特殊作戦群6名を合わせた計35名だ。この場にいる濡羽5名は飽くまで非常事態に備えて上空待機を行う。最初から当てにはするなよ」

 

ふむ、概ね事前情報通りの編成だ。これなら敵の情報次第では、俺達の仕事は無いかもしれない、国防陸軍最強格の部隊が二つ、S級魔獣が複数体現れたりでもしない限り、彼等だけで事足りるだろう。

 

「作戦経過として、空軍のC-2輸送機へ18:30に全員搭乗完了し、19:00に離陸。降下予定エリア到達と同時に目標から2km離れたポイントαへ空挺降下を行う。そこで全員降下し次第、目標へ向けて移動する。またこの際、各員はツルギ隊の後方から追従しろ、彼女達が魔獣の攻撃から守ってくれる…特戦群と合流後は、彼らと共に目標内部へ突入、制圧を行え。ここまでで、何か質問は?」

 

男が問い掛けるが、質問は出ない。ただ全員が黙って続きを促す。

 

「続けて敵施設の現在把握出来ている戦力だが、先ず150人前後の通常構成員と、確定で1人の幹部…コードネーム〈プロフェッサー〉が居る。通常構成員は、魔法少女換算で精々B級までの強さだが、プロフェッサーに関しては準S級相当…米海兵隊一個大隊を無傷で退けている。決して楽な相手では無いぞ。…質問は?」

 

男の言葉に、やや動揺した空気が広がる。だがすぐに収まると、再び沈黙が戻った。

 

質問は、尚も出ない。

 

「…構成員はセイヴァーの生体手術を受けていて、魔法を行使してくる。だが弾丸が当たれば死ぬし、爆発に巻き込まれても死ぬ。この中にはセイヴァーと交戦した事のない隊員もいるだろうが…臆するなよ。奴らは()()だが、我々は()()だ。その事を胸に刻み、任務遂行に最善を尽くして欲しい。…私からは以上だ」

 

言って、壇上から降りる男。拍手などは無く、ただ全員が兵士としての矜持を自覚している事だけが俺には分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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