強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
『
アラガミ及び特戦群と合流し、歩いて移動する事数十分。俺達は目標施設から200m程の距離で狙撃班からの通信を待っていた。
ここから確認出来る限りでは、山肌に埋め込まれた門の前は広場の様になっており、鉄柵やコンクリート壁等で囲われていた。また周囲には監視塔やセントリーガンが配備されていて、傍目に見れば軍事基地と勘違いするだろう。
『目標付近に監視員12名確認。30秒後に射撃する』
『了解。当初の予定通り、我々は施設内に侵入後、4つの班に分かれて情報や資料の収集を行う。その間狙撃班は警戒しつつ待機』
「最初の突入時、セントリーガンはツルギ隊で引き受けます。私達の合図で出て来てください」
『了解した。任せたぞ』
肉体に魔力強化を施した魔法少女は、無論一概には言えないがこの世界の戦車砲…それも徹甲弾頭ですら耐えられる。その為、法整備が万全で無かった時代は国家紛争に魔法少女が強制的に利用されて来た歴史もある。…体の良い防壁として、だ。
今でこそ国家紛争などしている場合で無い上、イージスの設立によって魔法少女の人権が侵される事は無くなった。ただやはり、対魔獣戦や対人戦で魔法少女が先陣を切る事は珍しく無い。
現行戦車以上の耐久力と、エクソスケルトンを纏った兵士以上の機動力。そして、最低でも完全武装の兵士以上の攻撃力。これだけ要素が揃えば、倫理的に多少問題があっても目は瞑られてしまう。
戦争でこそ無いが、追い詰められた人類は文字通り何でもすると、改めて感じさせられる。
——————聴覚センサーが、銃弾が空気を裂く音を捉えた。
ほぼ同時に、目標周囲にて警備に当たっていたセイヴァー構成員の2人が倒れ、続け様に1人、また1人と倒れて行く。
「なっ!敵しゅ…」
最後の1人は異常に気付き通信で危険を知らせようとした様だが、叶う事なく地面に倒れた。
「行くぞ」
「うんっ」「おっけー」「始めましょう」
声を掛けつつ立ち上がり、俺達は眼前の施設に向かって走り出した。
植物が消滅し剥き出しになった山肌を一気に駆け登ると、直ぐに施設を囲う壁に辿り着く。そこで後ろを振り返り、アラガミと特戦群が50m程距離を空けて追従している事を確認した俺は、コンクリート壁を破壊して敷地内に侵入する。
また3人が後ろに続き、兵士達が通れる様に破壊痕を拡張しつつ同じく広場に降り立った。
-無人銃座 8機確認-
途端に複数のセントリーガンから銃弾の雨が俺達に浴びせられるが、小銃弾程度で俺の外装に傷は付かないし、魔法少女達も鬱陶しそうにしつつ無傷。
逆に射撃型の魔法を行使して、俺が動くまでもなく一瞬で全てのセントリーガンを沈黙させた。と同時に八雲スズが、外壁の外で待機している兵士達に合図を出す。
それに気付いた特戦群隊長〈紅〉がここからは見えない兵士達に指示を出し、一斉に俺達の側まで移動して来た。
『感謝する』
「いえ、これ位ならお茶の子さいさいですよ」
会話を交わす八雲スズと紅を横目に、俺は閉ざされた白い巨大な門…もとい扉に向かって歩き出し、解析を始める。淡い紫の光が表層に展開されているのを見るに、恐らく…
-魔力障壁を確認 強度不明-
(なるほど、やけに施設外に戦力が少ない訳だ)
試しに触れてみるが、一定の距離まで近付くと扉に触れていないにも関わらず掌が停止した。俺の知っているエナジーシールドなら触れただけで装甲に損傷を与えたりしてくるが、こちらにはその様な特性は無いらしい。
だが問題は、このシールドをどうやって破るかだ。
-インパクト-
通常の殴打では効果無し。許容エネルギー量が不明な上、時間にも余裕が無い今殴り続ける訳にも……あれは。
-施設内 高エネルギー体6体探知 敵構成員の可能性高-
扉の向こうに敵が居る。こちらが侵入した瞬間に一斉攻撃を仕掛けてくるつもりか?なら少しマズイ。
『魔導防壁を確認、3式衝撃縋を用意』
「待て」
いつの間にか隣に立っていた〈紅〉へ制止の言葉を掛け、俺はより詳しい情報を所得するべくスキャンを継続する。現状確認出来るエネルギー体の魔力はA級魔獣よりやや少ないが、魔法出力次第では捨て身覚悟の大火力攻撃が行われる可能性も0では無い。
故に迂闊にシールドを破って扉を開ければ、吹き飛ぶのはこちらだろう。ただ、敵が扉の向こうで動かないのなら
『どうした?』
「…扉の向こうに居る敵ごと破壊するだけだ」
-右前腕部 C.I.S起動 エネルギー充填開始-
-使用兵装 C.I.S モルガン-
『ッ…』
突如内部構造が露出した俺の腕を見て、一瞬息を呑む紅。後ろの隊員達もやや動揺した様子を見せ、既に知っている魔法少女3人も表情を曇らせつつこちらを凝視して来る。
-C.I.S モルガン エネルギー充填率50%で発動 現充填率28%-
扉の奥の施設構造を破壊しない様に、されど念を入れて50%まで出力を上げ、そのまま火花散る右腕の砲口をシールドへ押し付けた。
-C.I.S モルガン エネルギー充填完了 インパクトコア全力稼働 仮装バレル状態安定-
-インパクト ナウ-
◇
『2班3班は施設の南側を探索、4班はここで待機して出入り口の確保を。我々1班は、このまま正面奥へ突入する』
『『「了解」』』
扉を突破して施設内に突入したは良いが、眼前で待ち構えていた構成員以外にも複数人がすぐに襲いかかって来た為、落ち着くまでやや時間が掛かってしまった結果だ。
幸い、こちらに被害を出す事は無く終わったが。
「イナズマちゃん、気を付けてね」
「あぁ」
ツルギ隊に割り振られたのは、1班が俺。2班が八雲スズ。3班が品川アリス。4班が月宮ハルカだ。現状ツルギ隊の中で最も単独戦闘力が高いのは俺であり、プロフェッサーと交戦する可能性が最も高い1班に当てられた。また特戦群も同様に、1班と4班に2名、2班と3班に1名が当てられている。
『よし、では各班行動開始。行くぞ』
紅の掛け声で、全員が一斉に動き出した。
各魔法少女の後方にアラガミの隊員が追従し、特戦群の隊員が殿を務める形で各々の担当する区画に向かって移動を開始する。
この施設内の構造は既にある程度把握出来てはいるが、防衛機構や敵の抵抗を併せて考えた場合順調に行動する事は困難だ。それに、対人武装がない現状の俺では迂闊に攻撃すれば資料の破損や落盤にも繋がる可能性がある。
『紅よりイナズマ。貴官の能力は聞き及んでる。もし敵に遭遇した場合は貴官の指示に従うぞ』
「…了解した」
指揮権を俺に与えるか。隠密任務の指揮などやった事は一度も無いが…最前は尽くすとしよう。それに、この国最高峰と言われる軍人達の能力を推し測るには自ら指揮した方が都合が…
「…ネルねぇ…」
「む?」
『どうかしたか』
「…いや、何でも無い」
一瞬何かの声が聞こえた気がしたが…
今はそれより、廊下の奥から響く足音に備えなければ。
「………やっぱり魔力がないネル、アイツ何もんだネル?」