強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「グァァッ!!」
『左クリア』
「了解」
銃声が轟き、部屋から飛び出そうとして来た構成員が一瞬で倒れる。左腕が使用不能である都合上、左側の警戒及び対応を重点的に担ってもらっているが、敵構成員にここまで殆ど攻撃を許していない。
エネルギー感知を用いて攻撃を察知している俺とは異なり、彼等は経験と長きに渡る訓練で対処している所を見るに、やはり対人戦闘においては一日の長がある様だ。
「死ねぇぇぇぇ!!!」
廊下の奥から構成員が短機関銃をこちらに乱射して来る。走りながら、それも片手で当たるわけが無いだろうに…急速接近して胸部を殴打。即座に絶命した構成員は壁にめり込み沈黙する。
…だが、その掌では魔法が既に発動されており、こちらに向かって水の刃が無数に放たれた。
「避けろ!」
幾つかは俺が相殺出来たが、抜けた水刃は廊下の壁面や床を切り裂きながら後ろの隊員達へ迫り—————総て回避される。そして一定距離を移動した水刃は形を崩すと同時、魔力へと戻って宙に霧散した。
『…被弾無し。このまま進もう』
「あぁ」
紅に答え、再び移動を開始する。既に施設出入り口から400m程移送して来ているが、未だ施設最深部を捕捉出来ない。事前情報では奥行きは精々数100mだったはずなんだが…
『イナズマ…だったか』
「何か用か?」
突如紅が俺の名前を呼び、視線を向けて来る。マスクとゴーグルをしていて顔は見えない上、声音も平坦で意図を予測する事は困難…一体何だろうか?
『いや…従軍経験が無いにも関わらず、纏っている雰囲気が軍人のそれだったからな。少し不思議に思っただけだ』
「…そうか」
確かに、例え魔法少女だとしても人死を眼前にして一切揺らがないのは、少し不自然に見えるだろう。ただ、魔法少女達も
その上で、俺の本来の姿を感じ取った可能性もある。特戦群の軍人は戦闘力だけで無く様々な技量を要求されるとは聞くが、この様な所でも顕れるのか。
などと思いながら、進む事数分。
…構成員の情報を淡々と伝えて来ていたシステムが警告を発して来た。
-警告 同深度 方位0-2-6より高エネルギー反応-
何?その方向から今俺達が居る通路に移動する為には大回りする必要がある筈、まさか地中を進んで来ているのか?
「総員警戒」
かなり速い、それに振動も急速に強まっている…来る。
「オラァァァッッ!!」
瞬間、目の前の壁を突き破って土砂と共に巨大な男が飛び出して来た。即座に反応して隊員達が発砲するも、その体表は魔獣が如く弾丸を弾き有効打を与えられ無い。
高度な魔力強化、恐らく幹部級だろう。だがプロフェッサーの外観情報と一致しない。となると、この施設に居ると確認されていなかった戦力か。
「なんだァ?そんな豆鉄砲でオレを殺せるとでも思ったのかァ?」
獰猛な笑みを浮かべ、こちらを眺め回す大男。内包魔力量はA級魔法少女に匹敵するか、ならば魔法を行使される前に…仕留める。
「おらどうした?ビビって動けねェか?腰抜け軍人ど……ガハッ!?」
懐に潜り込み、鳩尾へ殴打。続けて吹き飛んだ巨大な体に上方から天井を殴っての踵落としを加え、一気に刈り取りに掛かる。
が。
「痛ッてェ…なァァ!!!」
「チッ」
振るわれる剛腕を躱し、後方へ跳ねて距離を取る。
このまま床に叩きつけて頭部を砕くつもりだったが、途中で回復されたか。施設へのダメージを考えると加減の塩梅が中々…
「難しい所だなッ!」
繰り出される蹴りを腕で受け流し、壁にめり込ませる。破片が飛び散る中腰を屈めて突貫、顎を打ち抜いてそのまま体当たりを行う。
それでも、コイツは倒れない。耐久力で言えばS級魔獣にも匹敵するかもしれないだろう。これだけの強さを持っているなら、確実にイージスのデータベースにも登録されている筈だが…俺の所得した情報で合致する存在は、コードネーム〈タイタン〉。
事前情報では確実に確認されていなかった、それに特戦群が監視していた以上どの様にこの施設に移動して来たかが不明。転送やそれに類する技術があるならば、絶対に確保するべきだ。
「グッ…ハッ、小娘だって舐めてたらトンデモねぇ奴だなァ。今まで戦って来た奴らはチマチマ魔法で撃って来るばかりで近寄れば簡単に狩れたんだが…お前、名前はなんだ?」
「貴官に名乗る名前など無い」
「そうかァ、オレァタイタンってんだ。セイヴァーの中では…」
「そのまま喋り続けていろ——————死んでも良いならな」
-エナジーブレード展開 状態安定-
壁を蹴りながらブレードを振り翳し、上段から振り下ろす。…手応えはあったが、咄嗟に腕を交差させて後退したか、戦闘力を削ぐには至っていない。
だが、姿勢は崩した。これなら…
『捉えた。射撃する』
銃声が、響く。
「はァ…?」
「だから言っただろう。死んでも良いなら喋り続けていろと」
頭から血を流して倒れ伏すタイタン。目の前の敵に夢中になって、背後からの射撃に気付かないなど愚かとしか言いようが無い。
いや、気付いた上で豆鉄砲と油断していたのか…どちらにしろ、迂闊にも程があるだろうに。
「進むぞ」
◇
「このッ!」
『伏せろ!!』
銃撃が頭の上を掠めて
「ッふぅ…」
…施設の南側へ移動していた私達は、広い空間の様な場所に出て来て魔獣の襲撃を受けた。多分待ち伏せられたんだと思う。
それで今は、国防軍の軍人さん達と一緒に、通路から次々湧いて来る魔獣を何とか食い止めている最中だ。
「減らしても減らしても…また…!」
「ホントに…!」
「「天賦解放—————」」
「
アリスと背中合わせに魔法を行使し、取り囲んでいた魔獣達に撃ち放つ。軍人さん達は後方通路から射撃を続けていて、私とアリスが広い空間に出て盾になっている様な状況だ。
湧いて来る魔獣はゴブリンやコボルドなど弱い魔獣ばかりだけど、何処か普通のと違う。動きは早いのに攻撃が弱かったり、動きが遅い代わりに銃弾1発で死ななかったり…
『リン、シルフィ。このままではキリがない。一時後退し別ルートを探す事を進言する』
グールの首を刎ねると、後ろにいる軍人さんの1人〈蒼〉から通信が入った。確かに魔獣の波は終わりが見えず、このままだと軍人さん達は弾切れになるし、私達も最悪魔力切れになるかもしれない。
今は一回退いた方が「あらあら、私の子供達に何て酷い事をしているのですか?」
「え?」
瞬間、魔獣達の動きが止まり正面が割れる様に退いて行く。そして奥からコツ…コツ…と足音を立てて歩いて来るのは、紫がかった黒髪の女。
「セイヴァー幹部が1人、〈マザー〉と申します」
マザーと名乗った女は仰々しく頭を下げると、こちらに視線を向けて嗤った。
「以後、お見知り置きを」