強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
『ッ!撃てッ!』
突然現れたマザーに対して、軍人さん達が一斉に発砲する。
…だけど、マザーは魔力障壁を間に張って銃撃を防ぎ、効果は無い。
「スズ!」
「うん」
なら、私達で防御を崩さないと。
「あら?」
そう思うが早いか、同時に魔獣の群れを突っ切ってマザーに突撃。私は右から、アリスは左からそれぞれ手に握った得物を振りかぶる。でも、マザーは自身の両側に魔導障壁を展開して攻撃を弾き、後ろへ飛びずさった。
「もう、危ないじゃない!怪我したらどうするのよ…」
着地し、文句を言って来るマザー。豊満な肢体と妖艶な雰囲気を纏っていて、一見魔法主体で機動戦は苦手な様に思えたけど…魔法の展開速度が異常に疾い上、瞬発力もある。
それに…
「邪魔ッ…!」
纏わりついてくる魔獣達が邪魔で仕方ない。魔力強化していれば傷を負う事は無いけど動きが制限される事には変わりないし、何より返り血で足元が滑る。
攻撃のために踏ん張れないのは、かなりしんどい。そう簡単に逃がしてくれるとも思えないけど、一度立て直すべきだよね。
……なんて考えは、直後に響いた声で打ち砕かれる。
『リン、シルフィ。悪い知らせだ。我々の後方にあった隔壁が閉鎖された。力尽くでの突破も不可能では無いだろうが、敵に背後を取られた状況で悠長にしている時間はない。このまま交戦を続けるか、それとも無理矢理退くか。命令を待つ』
咄嗟にマザーの方を向くと、相変わらず嫌な嗤いを浮かべていて…それがより一層深まった。
退路を失った私達をこのまま押し潰すつもりなのだろう。また仮に退却を選んでも、隔壁を突破する間に何人かは確実に死んでしまう上、幹部の1人を野放しにする事になる。
これなら魔獣だけの時にハルカ達と合流しておけば良かったけど…今更後悔しても遅い。
「このまま交戦を続けます!幹部の1人を討ち取れば、それだけ味方が楽になる!」
『…了解した』
背後のゴブリンを切り裂きながら、軍人さん達へ叫ぶ。少し意外だったのか、返答が遅れていた。
まぁ自分でも、大分イナズマちゃんの考え方に侵されてるのが分かるけど…今はそれが心地良い。
「あらあら、退かなくて良いの?子ども達と戦って既にヘロヘロに見えるけど———」
「うるさい」
心地良さに浸っている時に話しかけないで欲しい。そんな怒りを込めてレイピアをオークに突き立てる。
でも、押し寄せる魔獣達で消耗しているのは確かだ。私とアリスはまだ戦えるけど、軍人さん達が問題だ。弾が無くなれば戦う術が近接戦闘だけになって、魔力強化が使えない彼等は確実に傷を負ってしまう。
…弾切れが起こる前に、マザーを倒す。
その為にはまず、周囲の魔獣を一掃しないと。
「アリス、
「ッえぇ、任せて頂戴」
アリスの返答を聞きながら、私は魔獣の群れの中で足を止める。この魔法は威力こそ控えめだけど、今みたいな状況には絶大な効果を発揮してくれる。その分デメリットもあるけど、アリスを信じて両手を掲げた。
「天賦解放、
光が、昇る。
手の平から天井付近まで上昇した光球に魔力を供給し続けながら、私は目の前で戦うアリスに声をかけた。
「10秒…いや8秒持たせて!」
「…オイタはダメよ?」
魔獣の群れが押し寄せ、マザーからの魔法攻撃も飛んでくる。けれど…
「ハァッ!!」
白銀の剣閃が、全てを切り裂いた。
屈指の近接戦闘能力を持つアリスの本懐は、魔法発動を試みる私達の護衛。周囲を浮遊する氷刀と彼女自身の攻撃は敵の魔力を侵食し、魔法を完全に打ち消す事ができる。
普通の魔法や得物では攻撃を打ち消すと言っても、飽くまでエネルギーとエネルギーのぶつかり合いだから完全に相殺は出来ない。そうなると散らした魔法を被弾したり、弾いた魔法が仲間に当たったりみたいに損害が出てしまう。
けれど、魔力を侵食して相殺するアリスなら…
「天賦解放、
アリスが剣を振るうたびに氷雪が舞い、同時に魔獣の放った低出力魔法は全て防がれる。マザーの魔法も例外では無く、戦場の只中に私を中心とした安全地帯が出現していた。
だけど、これも長持ちする魔法じゃ無い。身体強化系の魔法は基本的に持続時間が長いけど、アリスの場合は魔力に対する侵食効果も相まって、時間経過での魔力消費が指数関数的に増えてしまう。
本当はフルチャージで放ちたい所だけど、仕方ない。
「アリスッ!」
「分かったわ!」
私の声でアリスはバックステップ。軍人さん達は通路に居るから問題無し…行ける。
「喰らいなさいッ!」
瞬間、頭上にあった光球が閃光を放ち————無数の光の矢が飛び出した。
「「「Gyuoaaaaa!?!?!?!?」」」
光の矢はそのいずれもが魔獣目掛けて飛び、貫く。途端に私達の周囲に魔獣の死骸が積み上がり、マザーへ至る道が開けた。
「行くよッ!」
血濡れの床で滑らないように思い切り踏み込んで、加速。それを邪魔しようと飛び出してくる魔獣達を蹴散らしながら、私はマザーに肉迫する。
レイピアを軋むほどの力で握り、思い切り突き出した。
「天賦解放、
「疾いわね。でも…」
「ッ!」
躱された、でも予測範囲内!
「天賦解放、
オーロラでの速度を保ったまま、ライジングでマザーが現れた通路の入り口を破壊。崩落する天井に巻き込まれないように下がり、眉を顰めるマザーに笑いかける。
「…どういうつもり?」
「貴女も逃げられなくしただけですよ。負けそうになって逃げられたらバカらしいじゃ無いですか」
「言ってくれるわねぇ…」
マザーは言いながら両手に魔法陣を顕現させて、迎撃の体制を整える。込められている魔力をスカイアイで見ると…赤紫。まともに食らえばタダじゃ済まないし、もし今のマザーに真正面から突っ込めと言われたらかなりしんどいのは確実。
でも、私は1人じゃ無い。
「喰らいなさ————なッ!?!?」
『命中確認。目標出血』
銃声が轟き、マザーの胸から血が噴き出す。見ると自分達の方に群がっていた魔獣を全て倒したらしい軍人さん達が、銃を構えながらこちらに向かって来ていた。
「私も居るわよ!」
「くっ…!どうやって私の魔導障壁を…」
アリスの剣撃を躱したマザーが胸の傷を治しながら聞いてくる。そしてその目は、最初は見向きもしていなかった軍人さん達にも向けられていた。
まぁ当然だと思う。攻撃が効かないと思って油断していたところに傷を負ったから。でも私達が答える事はない。
何故なら今放たれた弾丸は特殊作戦群?の人達がそれぞれ1発ずつしか持っていない特殊な弾丸。つまり、軍人さん達の多くは有効打を持っていないという事。
基本的に魔導障壁を破るためには魔力を帯びた攻撃か力押ししか無いから、実質はブラフだ。バレたら…少し不味い。
「答えると思う?」
「ッ…!」
なら、考えさせる隙を与えないのが最善。少しでも意識が軍人さん達の逸れていれば、それだけで私達は格段に戦いやすくなる。
「天賦解放、
「天賦解放、
アリスと息を合わせ、こちらを睨むマザーに突撃。まだ胸の傷も回復し切ってない、今ならッ…!
「——————
その、瞬間。
何処からか声が響くと共に、巨大な衝撃が私達を襲った。
「ッ…何が…」
どうにか転ぶ事なく踏ん張って耐え、顔を上げると…マザーの姿は無かった。そして、無線からこんな言葉が聞こえてくる。
『こちら狙撃班。山の裏側から巨大な爆炎が上がった。中で何が起こっている』