強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「うっ!」
『リン!もうやめて!』
「ダメだよ…私が止めなきゃ…」
通信機にそう返し、私は震える手を押さえながら立ち上がる。手に握ったレイピアは中途から折れ、魔力も殆ど残ってない。
だけど…
「ハァッ!!」
掛け声と共に地面を蹴って、目の前で蠢く魔獣…シャドウアメーバに渾身の一撃を放つ。魔核さえ貫ければ、勝機は—————!!
「Gyuo?」
「…嘘…でしょ…」
しかし、私の攻撃はシャドウアメーバに軽く弾かれ、途端に魔力の光も消え失せた。
何で攻撃が効かないのか、
頭の中を様々な事が巡る。でもシャドウアメーバは、そんな思考する時間すら与えてくれない。
「痛…っ!」
振るわれた触手を打ち付けられ、私は思わず悲鳴を上げてしまう。
だけど、絶対後ろには下がれない…否、下がらない。調査隊の避難が終わってない今下がったら、魔法少女でない彼等は一瞬で殺される。
そんな事させない。
「…ここは…通さないっ…!」
全身が痛い。魔力欠乏症で頭も回らない。
………だからなんだ。
「私は…魔法少女……皆を守るって……決めたから……っ!!」
レイピアを握り締め、舐めた様に蠢くシャドウアメーバを睨み付ける。
勝つのはもう無理だ。でも…死ぬ前に与えられた役割は果たす…!
自分を鼓舞し、残った魔力を一滴残らずレイピアに込めて、叫んだ。
「天賦解放、
瞬間、光に体を包まれた私はアスファルトが割れるのも構わず全力で踏み込み、シャドウアメーバに突貫。
迎え撃つ触手全てを打ち払い、その懐に潜り込む。
「ハァァッッッ!!!」
そして—————魔核のある中心部目掛けてレイピアを突き出した。
「……Gyuoooo!!」
カラン、と手からレイピアが零れ落ちた音が、私の耳にやけに大きく聞こえた。
全身から力が抜け、立っているのもやっとの中シャドウアメーバを見上げる。ボロボロの私とは対照的に、目の前のコイツは戦いなど最初から無かったかの様に振る舞っていた。
「ダメ…かぁ…」
考えてみれば当たり前の話だ。瀬戸際まで追い詰められて最後に逆転などあり得ない。それに、数多の魔法少女が返り討ちにされる魔獣相手で中堅程度の私が敵うはずが無かったのに。
「ホント…嫌になる…」
物理攻撃にも魔法攻撃にも耐性があるとか、何よそれ。こっちは攻撃当てるのも大変なのに、理不尽が過ぎるでしょ。
「Guuoooo!!!」
「キャッ!」
ジェル状の器官を打ち鳴らしながらの体当たり。避ける事も防ぐ事も出来ずにまともに食らってしまった私は、地面に倒れ込んだ。
…シャドウアメーバが、捕食形態に変貌する。
『リン、調査隊の避難完了したわッ!早く逃げて!!』
耳につけた通信機からそんな言葉が聞こえる、よかった、全員逃げられたんだ…
だったら、私の戦いも無駄じゃ無かった…かな。
思い、私が死を受け入れようとした…
その瞬間。
「Gyuooo!?!?」
全身に機械を纏った女の子がシャドウアメーバを殴りつけ、私との間に割り込んできた。
「チッ、余り効いていないか」
その娘は舌打ちすると、蒼く輝く瞳を私に一瞬向けて直ぐにシャドウアメーバに向き直る。
……そこからは一瞬だった。
腕から蒼い光の剣を伸ばした女の子にシャドウアメーバは斬り刻まれ、終いには魔核を引き抜かれて消滅。私がどう足掻いても勝てなかった相手を、歯牙にも掛けないなんて…
(一体、何者なの)
記憶を辿ってみても、これだけの強さを持っている魔法少女が居た覚えはない。私を助けてくれたと言う事は味方ではありそうだけど…
などと私が思っていると、女の子はこっちを向き硬質な足音を響かせながら近づいてくる。無表情な顔は私から見ても整っていて、蒼い光を放つ瞳に思わず見入ってしまった。
「言葉は通じるか」
「え?」
唐突に質問されて変な声をあげてしまう。言葉が通じるかってどう言う事?
そのまま黙って佇んでいる女の子に、私は恐る恐る答える。
「つ、通じてます…」
「そうか。なら幾つか質問したい事があるんだが、構わないか」
「どうぞ…」
質問したい事…一体何を。
「この惑星…いや、この世界について教えて欲しい。ここは、どの様な世界だろうか」
◇
「この世界について…ですか…」
「無論人間や社会といった存在は理解している。俺が主に知りたいのは、先程まで交戦していた不明生物や、これに関連する事柄だ」
「なるほど」
(…さて、どう答える)
呟く少女を眺めながら、そんな事を思う。
自分でも余りに抽象的すぎる質問だという自覚はある。だが元いた世界と別世界である可能性が高い以上、手っ取り早く情報を得るには最適だと判断した。
またこの質問は、俺がこの世界にとって異物であるという意味も含めている。それらを汲み取った上で答えられるなら、今後一定の有用性を見出す事も出来るだろう。
無論、敵対しなければの話だが。
「…先ず、助けて頂いて感謝します。貴方が来てくれなければ私は死んでいたかもしれません」
少女はそう前置きし、少し考える仕草を挟んだ後に再び口を開く。
「この世界は、先ほどの黒い生物の様な存在…〈魔獣〉が跋扈している世界です。そして私の様な〈魔法〉を扱える〈魔法少女〉と呼ばれる存在が、魔獣から人々を守っています」
「魔獣…それに魔法少女…か」
遥か過去に生み出された創作物に、確かその様な単語があったはずだ。それに魔法という言葉も俺のデータベース内に存在する。
断定はまだ出来ないが、もしかしたら当初の予想より容易にこの世界について理解が出来るかもしれない。
「魔法があるならば、魔力という概念もあるのか?」
「はい、もちろん。魔法少女や魔獣は自分の体内にある魔力を使って魔法を発動します」
「なるほど」
中々興味深い…だがやや話が脱線して来ているな。
「話を戻そう。この世界には人類を統治する機構、或いは国家という概念は存在するか」
「存在します。また私達魔法少女を管理する〈イージス〉という組織も存在していますね」
よし、ならばそのイージスという組織に接触できればより詳しい情報を得ることが出来るかもしれない。
頭の中で次の行動目標を定め、俺はへたり込んでいる少女に手を伸ばす。するとやや迷う仕草を見せつつも、少女はこちらの手を取り立ち上がった。
「情報提供感謝する」
「いえ…あ、自己紹介してませんでした。私は〈リン〉と言います。魔法少女としての名前しか明かせませんが…」
「構わない。むしろ俺から名乗るべきだった。俺は…」
-警告 方位1-5-6 高度300 距離4700に回転翼機探知-
しかし俺が名乗ろうとした瞬間、レーダーシステムが警告を発し、同時に回転翼機特有のローター音が辺りに響き始める。
「あっ、お迎えが来ましたね」
「お迎え…回収機か」
となると、魔法少女による魔獣対策はイージスによってある程度組織化されていると見て良いだろう。それに周囲の街並みから推察は出来ていたが、回転翼機が存在する程度には文明が発達しているという事。
脅威度が不明な魔法少女に加えて、通常の軍事力が存在する可能性もある。
仮に俺とこの世界の人類で武力衝突が起こった場合、不確定要素次第では……
(まぁ、今は考える時じゃないか)