強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「えっと…多分ここが何処かって質問に答えても、直ぐには貴方はそれを理解する事が出来ないと思うんです。なので少し長くなりますが、こっちの話を聞いてくれますか?」
「それが必要だと当機が判断するならば。それと、現在周囲で交戦している武装勢力及び不明生物についての情報も併せて伝達して貰えると助かる」
一応話は聞いてくれそう…かな?
イナズマちゃんの時と違って、声音が無機質で人と会話してるって感じがしなくてすごい違和感あるけど…まぁ、どうにかなるはず…
「…なるほど、ここは当機が居た世界とは違う…と」
戦闘はまだ終わってないため手早く説明を終え、私はホッと息を吐く。
イナズマちゃんと初めて対面した時もそうだったけど、何で話すだけでこんなに疲れるの…手汗も凄いし。威圧感と言うよりは、銃口を突きつけられているかの様に錯覚する。
「概要は理解した。ただ、貴殿の説明だけではやはりこの世界について詳しくは分からなない」
「はい、イナズマちゃんに聞けばもっと理解しやすくはなると思うんですけど…生憎今どこにいるのか…」
「その、先程から時折出るイナズマという名詞…一体何を意味しているんだ?」
「あっ…えーっと、少し前にこの世界に来た貴方と同じ強化人間の子です。名前は聞いた事ないですか?」
「当機のデータベースには、悪天候時の放電現象にかつて用いられていた呼称としか無い。推測するに貴殿は別の用途で使用しているのだろうが…ここから166km程離れた地点に友軍機、イーグル1の反応がある。これの事を言っているのか?」
「そうです!って166km!?」
イナズマちゃんそんなに遠くに居るの!?い、いや、転移したとか言ってたから不思議じゃないのかな?
でも思いがけずイナズマちゃんの居場所が分かった、ひとまずは安心…「先ずは合流を図るべきか」
「スズ!」
「え?ウッ!?」
アリスの声が聞こえた瞬間、ドンっと体が吹き飛ばされる。
後ろに数度転がり、顔を顰めながら視線を戻すとあの子の姿はどこにも無くて…大きな穴が地面に開いていた。
◇
「ハァッ!!」
魔力で強化された腕を以て殴りかかってくるプロフェッサー。コードネームが持つ印象とは異なり、体術、近接格闘に於ける膂力が高いレベルで整っている。
それに加えて、時折織り交ぜられるアンプル投擲と伴う質量攻撃。また、施設の防衛機構と思しき火器による攻撃、そして何より、俺が動いたことによる余波で、施設が崩壊しかかっている事が戦闘の膠着化を招いていた。
「流石だねぇ!かなりの手加減をしつつ私と同等!素晴らしい戦闘能力だ!」
「お喋りだな…」
戦闘が始まって高揚しているのか、プロフェッサーの声が昂り心拍数もかなり上昇していた。高脅威度魔獣の様に戦闘を好む…と言うより、俺の専用兵装を開発した技術者が、兵器試験で興奮しているのに似ている。
元来は研究者と言うより、技術者の様な性質なのかもしれない。
-警告 施設崩壊進行中-
「チッ、マズいな」
システムの警告を認識し、プロフェッサーの拳を受け止めたまま頭上を見上げる。
天井に貼られた特殊合金板は多くの箇所が歪み、一部では剥がれて崩落していた。
(このままでは…)
戦闘実験施設と言うだけあって、最初の数度は俺のインパクトを受け止めても施設の壁や天井にあからさまな損傷は多くなかった。だが、プロフェッサーの質量弾衝撃と俺の拳や踏み込みで次第に施設が損傷し、既に施設構造にすら歪みが生じている。
「ハハハッ!!良い!実に良いィ!!もっとだ!!」
実験施設であるならば貴重な情報も数多くあることだろう。だが、魔獣支配領域で施設から埋まった資料を回収するのはリスクが高過ぎる。
先程は隊員も転移させるべきだと思ったが、俺がこうして戦っている最中に回収は確実にこなせた…そう考えると、資料を奪われたくないプロフェッサーが転移させなかったのは納得はいく。
「これはどうかな!!」
「ッ」
-敵武装解析 タングステン 魔力回路搭載の模様-
何処から取り出したのか、魔力を纏ったガンランスを手に握り振りかぶってきた。素材の段階ではこちらの装甲の前では無力だが、魔力が絡むと途端に結果が予想出来なくなる。
顕著な例は、ヒュドラの牙だろう。元々の素材では俺の装甲はおろか、人工皮膚にすら損傷を与える事は困難だったはずだ。
だが現実として俺の左腕は失われ、今こうして予測時間を超過して戦闘している一因になっている。
「どうしたんだい?実験中に考え事は禁物だよ、先ずはしっかり記録を取らなくては。考察など後から幾らでも出来る!」
「飽くまでこれを実験と称するか」
それも恐らく本気で言っている。先程から自身の命に届きうる攻撃を受けておいて尚、この姿勢は変わらない。
確かに研究に危険は付き物ではあるが、限界まで安全対策を行なった上、危険を承知で行うのであって、今のコイツの様に自ら飛び込むものでは無い。
…何れにしろ、このまま戦闘を継続する訳にはいかない事は確かだ。
「ふぅ…」
「おや、どうしたんだい?足を止めて…ッ!?!?」
-方位2-2-1 距離600 接近中の機体 IFF応答あり-
「目覚めたか」
呟きと共にプロフェッサーの懐へ一気に飛び込み、そのまま右腕で抱え背後の壁を突き破って屋外へと離脱する。背中を強打させられたプロフェッサーは呻き声を上げるが、直ぐに立て直したのか俺の拘束から逃れて距離を取った。
だがその顔に衝撃による苦痛などなく、ただ一面に悦びを浮かべている。理由は恐らく…
「フフフ…ハハハッ……!聖神体が目覚めたかぁ!!マザーは良くやってくれたよ!起動が最終段階まで至っていたにしても、まさか守り切るとは!」
聖神体…十中八九、ファルコン4の事だろう。先の戦闘中に
以前タリスマンが持ってきたRF-5に登録されていた情報から、この世界に到達した機体がAH-533と言う呼称である事、コールサインがファルコン4である事は既に把握しており、また母機の位置情報が奥羽山脈近郊にある事も分かっていたからだ。
同時に、このプロフェッサーが何らかの干渉を行っているであろう事も。推測ではあるが、機能を停止したファルコン4の頭部へ自身が生み出した意識を挿入し、さらに自身の駒として扱おうとしていたのだろう。
-友軍機 急速接近 接触まで10秒-
遠方で響く炸裂音。また微細な振動源が接近して来るのが分かった。
これが不明物体だったら少々身構える所だが、交戦するにしろ共闘するにしろ、少なくとも手札は判明している。無論、勝率の高低には関わらないが。
そんな事を思っていると、プロフェッサーは顎に手を当て何かを事案する様子を見せた後、余りにも認識が甘い言葉を発した。俺が思わず、
「…丁度良いね、聖神体と君の戦闘実験と行こうか」
「…はっ」
「ん?何かおかしいかい?」
「いや、失敬。流石に現実が見えていない様だったのでな」
衝撃。
振り返らなくても分かる、今俺の背後にはこの世界に於いて最も危険な存在が佇んでいる。
隻腕であるこちらに対し、向こうは全力戦闘が可能だ。戦えば敗北は必至。先ずは出方を伺うべきだろうが……
「まさか、同郷の機体に会えるとは思っていなかったぞ。ファルコン4」
「イーグル1、状況説明を求める」