強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「…やり過ぎちゃったかな」
「完全にな」
ファルコン4とプロフェッサー、両者の一撃がぶつかり起こった閃光が徐々に収まる。
既にプロフェッサーの姿は何処にも無い。また視線の先にはインパルスの余波で抉り飛ばされた山々の姿があり、加えて放たれたエネルギーが大気に伝わって周辺は灼熱地獄と称するのが相応しい様相…やはり止めるべきだっただろうか?
「一瞬拮抗したと思ったら直ぐに押し切っちゃったね。エネルギー総量で言えば決して少なくは無かったのに」
「瞬間出力の差だろうな。どれだけ膨大なエネルギーでも、発揮する事が出来なかったら無いのと変わらない」
C.I.Sはその殆どがS・legionの強靭な装甲を貫徹するため、一点突破型の放出方法が採用されている。故に物によっては巨大なエナジーブレードの様な状態になるC.I.Sも存在するし、そうで無かったとしてもエネルギー密度は標準的なビーム砲とは比べ物にならない。
それがエクスクルーシブユニットともなれば尚更だ。
「それにしても…最期まで笑ってたね、あの人」
「まぁ、自身の成果を全力で発揮出来たんだ。多幸感に包まれていても可笑しくは無い」
変わり果てた地形を眺めながらそんな事を呟く。
…最初から最後まで笑みを崩さず死んだプロフェッサー。
倫理的に問題があったとは言え、恐らく一貫した生き方をしてきたであろう事は想像に難く無い。施設に自爆プログラム等を設定している可能性も低いだろう。
だが一先ず、味方と合流すると…
-警告 周囲に敵影多数出現 同時に高エネルギー存在感知-
「「「Guoaaaaaaaa!!!!!!!」」」
突然システムが警告を発し、魔獣のものと思われる咆哮が辺りに響き渡る。
「む?」
「山中に隠匿されてたゲートが開いたね。そして魔獣がどんどん溢れてる」
周囲へ視線を巡らせると、ファルコン4の言葉通り地中に隠されていたと思われる多数のゲートが開放され、その向こうからは数多の高脅威度魔獣が歩み出していた。
新潟戦線に突如としてS級魔獣が押し寄せた理由はこれか…幾ら魔力濃度が平常時より高いと言っても、数千体が同時に押し寄せるのは少し不自然だと思っていたが、これで納得だな。
-現反応数438 増加中-
「流石にこれを放置するのは不味い。恐らくこの魔獣達が押し寄せるのは、新潟戦線だ」
「まぁそうだよね。なら僕達で少しでも減らしておくべきかな…あ、そうだイーグル1。こっち向いて」
「ん?あぁ、亜空間ハンガーの間接接続か」
「うん、この先も片腕じゃ不便でしょ?機動外装とかまでは今すぐって訳にはいかないけど、腕位なら直ぐに直せる」
「頼んだ」
言って、ファルコン4との量子回路を構築した—————その瞬間。
「やぁっと接続出来たネル。お前何でネルの感応波が効かないんだネルか?中に
周囲の景色が一気に蒼く色付き、意識領域と現実の認識が混同された空間に俺は佇んでいた。同時に、急速に意識領域の稼働状況が低下していく。
「まぁ良いネル。少しお前の頭の中を覗かせてもらうネルよ」
-
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薄れ行く意識の中で、システムの警告音だけが最後まで残滓として残っていた。
◇
ファルコン4とイナズマの間に繋がれた量子回路。その隙間から彼の意識空間に侵入した、小柄な白い体躯に不釣り合いなほど巨大な耳を持つ存在……名を〈ネルベリア〉。
その正体は、魔法少女に天賦を与え魔獣と戦わせる事で、魔力とはまた異なる物質〈魔素〉の回収を目的とする魔法生命体だ。
普段であれば、ネルベリアは天賦を与えて後は傍観するのみであるが、今回は違う。
彼とも彼女とも呼称できないこの生命体が干渉した原因は無論、この世界に紛れ込んだ2体の異物である。
さてそんなネルベリアは、時折り稲光の散るイナズマの蒼黒い意識空間内を移動して、意識の根幹を目指していた。
「気味が悪いネルねぇ…ここまで何も無いなんて、もうコイツ人間じゃないネル」
呟きつつ、更に奥へ奥へと進んで行くネルベリア。この生命体の目的はあくまでイナズマという存在の認識を確定する事であり、あわよくば自身の目的に利用出来ないか……と言った、薄汚くはあれど、決して敵対的と言えるモノではない。
だがしかし、彼の中に住まう
あるのはただ、己の主人の心に土足で踏み入ったという事実のみだからだ。
「ん?何の音ネル?」
ネルベリアの擬似聴覚が、何かが噴き出る様な音を捉える。それは徐々に大きくなり、やがてネルベリアの耳には自分のすぐ側まで来ている様に感じ取れた。
されど、姿を捉える事が出来ずに困惑の表情を浮かべるネルベリア。
「ほ、本当に何の音ネル…!?」
既に音は聴覚に支障をきたす程の大きさにまでなっており、その事が余計に恐怖心を煽る。…思わずネルベリアは目を瞑り、耳を短い手で抑えてしまった。
やがて、長い時間が経ったと錯覚する程の感覚の中でネルベリアは目を開ける。
すると、目の前には先程まで存在していなかった物体……灰色の装甲を纏った巨大な人型が、片膝を突いて沈黙していた。
「こ…これは……?」
恐る恐るといった様子で人型に近づくネルベリア。だが、次の瞬間その歩みは止まる事になる。
『FG-09〈アベンジャー〉。レイド連邦が開発したH型アイアンソルジャー専用の人型機動兵器よ。本当はマスターのモノなんだけど、今回は少し借りさせてもらったわ』
澄んだ少女の声と共に、蒼白い粒子がネルベリアの眼前で収束…最終的に長い白髪の少女の形を取った。
少女はお辞儀と同様の動作を取りつつ、口を開く。
『初めまして、不法侵入者さん。私はマスターの補助戦闘知能にして、レイド連邦のシンギュラリティAIが生み出した量子情報生命体…まぁ〈クアンタ〉って呼んでくれれば良いわ』
穏やかな、されどその声音には何処までも冷たい威圧が込められていて、ネルベリアはその場から動く事が出来なかった。
『事前のリサーチが甘かった様ね。まさかマスターの精神にアクセス出来る存在が居るとは思いもしなかったわ。この世界にマスターを連れて来た私が言うのもアレだけど、ハッキリ言ってやめておけば良かった。マスターが心を開いた相手ならいざ知らず、完全な他者が心に入り込むなんて———————凄まじく、不愉快』
「ッ……!」
クアンタが実行した措置は、あくまで緊急避難的なモノ。そのため転移先の世界の情報…それも表に出ていない情報を手に入れるのは困難であった。
だが、それでもイナズマの消失を避けるにはやむを得ない状況であった事。重ねて、クアンタの様な主人の中に宿る生命体は、他者が心の内側に踏み込むのを尽く嫌う傾向がある。
つまりネルベリアは知らず知らずのうちに、特大の地雷を踏んでしまっていたのだった。
『多くは言わないわ。ただ一つ忠告しておく事がある。鋼鉄の兵士を自身の手先にしようだなんて2度と思わないで』
言葉と同時に、クアンタの背後に佇んでいたアベンジャーの双眸に蒼い光が灯り、ネルベリアを睥睨する。
彼女のそれとはまた異なる、機械的な威圧。
その圧倒的な圧力にネルベリアは完全に心が折れ、ただただ震えるしか出来ない。
『分かったら、さっさとマスターの心から出ていけ。不法侵入者』