強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「やめっ…おい良い加減離れろ。それから自分の膂力を…」
「いーやーだー。僕はキミのお姉ちゃんなんだよ?」
「理由になっていない上に仮の関係を免罪符にするな」
「……ふぅ」
胸元でギュッと手を握り、物陰に隠れて目を瞑る。
心臓がズキズキと痛い。呼吸も安定しない。
「……」
瞑った瞼の裏に映るのは、イナズマちゃんと翠眼の子が一心同体で魔獣達を倒して行く姿。そして、たった今目にした親しい様子を見せる2人。
あんなにくっ付いて、心なしかイナズマちゃんも楽しそうで…彼女達の頭から離れない。
勝手に私が想っているだけなのは分かってる。それにまだ数ヶ月しか一緒にいない私より、同郷の子の方が親しく接せるのは当然だろう。
「でもやっぱり…苦しいなぁ……」
己の内に巣食う醜い感情、自己嫌悪、無力感がごちゃ混ぜになってただひたすらに苦しい。だけど、どれだけ苦しくても愛おしさは消えなくて、それ故に手足が震える。
「そう言えば、僕の名前ってどうするの?」
「ッここで聞くな…!支部に帰還し次第砂原ユキとも協議しつつ決定する、今は黙ってろ」
「はーい」
魔力で強化された耳に、そんな言葉が聞こえてきた。私と話す時は殆ど表に出ないイナズマちゃんの感情を易々と、あの子は簡単に引き出している。
……まぁ、当然だよね。
私のせいで失われた左腕を治した上、隣で戦える実力を備えた翠眼の子。
対して私は、逆に足を引っ張っている。一方的に寄せるこの想いも、イナズマちゃんにとっては迷惑以外の何物でも無い。
…比べる事すら烏滸がましい。
いっそ諦められたらどれだけ楽なのだろうと思う。
ただでさえ届かないのに、隣に居たいと言う欲求だけは日に日に強くなって行く。
自分でもどう考えたっておかしい事は分かるし、絶対に諦めるべきなのに、感情がそれを許さない。
夜眠るたびにもう1人の自分が現れて、本当にそれで良いのかと、ずっと問いかけてくる。
そして夢の中の私は決まって言うんだ、良い訳がないって。
だったら…
「覚悟は決まりましたかねぇ…八雲さん」
「篠田さん…」
背後から白衣に身を包んだ男の人が声をかけてくる。
この人はセンチネル計画でソフィアさんの補佐をしている、〈篠田レンタ〉さん。私がテストパイロットに志願している事を知り、センチネルの搭乗訓練機器を渡してくれた恩人でもあった。
篠田さんのお陰で、私はイナズマちゃんに近付く事が出来る…少し変な人ではあるけど、目的に比べたら些細な事だ。
同じく、この体に対する頓着も。
「覚悟なんかとうに決まってます。私は、
「…それを聞けて安心しました。主任はテストパイロットに反対の立場でしたが、実際に協力者が現れたとあってはそう簡単に止めることは出来ないでしょう」
「…なら良かったです」
そう答えると共に、少しの申し訳なさと胸の痛みが走る。
あれだけ私を心配してくれた砂原支部長の気遣いと、仲間達の思いを無碍にする事になるからだ。けど、もう止まらない。止まれない。
だって私は、イナズマちゃんに——————
「やれやれ、
人生は分からないモノですねぇ…と、敵味方など関係ない狂った科学者は、そうして1人嗤うのだった。
◇
「ハヤブサか…良いね!」
「即決…それで良いなら良いが…」
「大丈夫だよ、よろしく!」
あれから支部に戻り、俺はファルコン4の名前を思案しつつ、情報共有を行いながら過ごしていた。
無論、ツルギ隊のメンバーへの完全な説明を済ませた上でだ。ファルコン4のその見た目から、同型機であると言うことはすでに察しはついていたために然程長く話す事もなかったが。
ただ気になるのは、八雲スズの感情がやや不安定になっていた事。俺達から少し遅れて支部に帰還した彼女は、何故かバイタルが平常時より上昇気味であり、また目線をメンバーの誰とも合わせる事なく俺からの説明を聞いていた。
話が終わると、デブリーフィングで提示する情報を纏めて直ぐにヒュドラ戦の時同様支部地下にある訓練施設に移動して行ったが、何が彼女をそこまで掻き乱しているのか、原因が分からない。
自然に聞き出せれば良いんだが、メンタルに問題を抱えているとなると俺の対応出来る範囲の外だ。下手に聞きだしたりすれば悪影響を与えかねない上、感情という存在への理解が足りていない俺がカウンセリングを行うなど言語道断。
そのため同じく少し遅れてきた砂原に、八雲スズの現状を伝えておいた。もし彼女が不味いと判断すれば、直ぐに動く事だろう。
一先ず今は……
「へぇー、イナズマかぁ…キーパーから良い名前貰ってたんだね」
「ファルコ…ハヤブサの所ではその様な処置は無かったのか?」
「僕の所は完全に堅物だったからねぇー…名前はおろか、一切プライベートな話をした事無かったと思うよ」
「そうか」
まぁ彼等の仕事はあくまで俺達の管理管制。戦闘性能に関しても感情抑制機構を用いれば精神的影響が出る事は決して無い。ならばどの様な対応をしていたとしても自然だ。
「そう言えば、イナズマはどうやってこの世界に来たの?僕は乗ってた航空母艦が撃沈されて気が付いたらこの世界にいたんだけど…」
「俺はSilent・Lgionが築いたミサイル発射施設で、対宙弾道弾へ自爆特攻を仕掛けた結果この世界に転移した。原因は未だ不明だが、やはり時空を飛ぶには莫大なエネルギーが必要である事は確定だろう」
「なるほどね。だったら僕達が元の世界に帰るためにはこの世界の人類の手助けが必須な訳か」
「そうなるな。俺の胸部に格納されていた融合弾頭は失われているし、仮に残っていて使用したとて、戻れるとは限らない。理想的なのは時空湾曲波長を解析して空間ポータルを設ける事なんだが…」
「最低でも艦載融合炉クラスのエネルギー源は必要だね…」
幸い、この世界には通常の発電方法の他、魔法を用いて莫大なエネルギーを生産する手段は数多く存在する。もしこの世界の文明レベルがそのままに、魔法が無ければ俺達はかなり手段が制限されていたはずだ。
アイアンソルジャーのリアクターは外部にエネルギーを供給出来る様に設計されていない、加えて核融合炉ではエネルギー不足は確実。
場合によっては、技術開示する必要にも迫られていただろう。
「まぁ、時空を跨いで同士と会えたんだし、帰還する手段もきっと見つかるよ」
「だと良いが…ん?誰か来たか。………おい」
話の途中で扉がノックされ、俺は開こうと立ち上がる。
するとハヤブサが腕に抱きついてきて思わず声を上げてしまう。この身体的接触には一体何の意味があるのだろうか。
『イナズマ、支部長がお呼びだ。姉を連れて10分後に支部長室に』
「了解した」
向こうの用事も終わったか。
少し忙しそうにしていたため、ハヤブサの名称登録は後でも良いと言っておいたんだが、まぁ良い。それに恐らく、用事はそれだけではないはずだ。
「アメリカに…か」
「そうよ。今回の事で流石に本部も動いた様ね。申し訳ないわ」
「構わない、まだ俺達が魔法少女じゃない事はバレていないのだろう?ならばこちらでどうにかする」
ハヤブサと共に赴いた支部長室で言い渡されたのは、アメリカ合衆国での合同訓練の要請…もとい命令だった。
確かに、ヒュドラを立て続けに撃破し今回S級魔獣の大規模侵攻を防いだ俺達を放置して置くはずもない。今までは砂原始め日本支部上層部がどうにか躱していた様だが、流石に厳しかった様だ。
「本部か。面倒ごとが起きない事を祈ろう」
これにて、第2章「彼方」は完結となります。後半少し巻きになってしまって申し訳ないです…
さて、本来長々と後書きするのは好きじゃないんですが、今回は重要なお知らせがあるためご了承下さい。
先ず本作は、これから
理由として、文字数10万文字に達した事。2章完結という区切りの良い事。そして…作者が受験生であるためです。
出来る事なら夏頃までは連載を続けていたかったんですが、日々の生活や勉強に追われて執筆時間を捻出する事が厳しい状況で、クオリティを維持したまま連載するのは不可能と判断しました。現時点でも、少しボロは出てきていると思います。
なので、これ以上この作品に不誠実な事をしてしまう前に休載と言う措置を取らせていただきます。申し訳ありません。
ただ、これは打ち切りでは決してなく、受験が終わった際には必ず再開します。どうかその日をゆっくりと待っていただければ幸いです。
最後に、ここまで読んで下さった読者様方。コメントをよく残してくれる方々にこの場を借りて感謝申し上げます。いつも本当にありがとうございました。
………っと、堅苦しく長ったらしく書きましたが、要は休載するから忘れんじゃねーぞって事で笑
ではまたお会いしましょう。以上ユーラでした。