強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「強化…人間」
「そうだ。見た目こそ俺は普通の少女だが、中身は生物と呼称するのは少しばかり怪しいモノになっている」
八雲スズに答えつつ、俺は並行して砂原ユキに渡された魔獣の情報を分析していた。
-獲得データによる戦闘シミュレーション脅威度判定 進捗率67%-
-現最高脅威度魔獣 〈ウロボロス〉への対応案構築中-
分析に使用しているデータは戦闘時の映像や解剖資料等を参考にしているため、実際に戦ってみるまで本当の脅威度は不明だ。だが少しでも事前に備えておく事で、効率化を図ることは出来る。
同時に、戦闘で連携を取るため同じチームである八雲スズ、月宮ハルカ、品川アリスの戦闘スタイル、魔法名及び効果、各種技能の評価などを所得、分析を行う。
(総評として、八雲スズは全距離万能型。月宮ハルカは遠距離支援型。品川アリスは近距離攻撃型。バランスはかなり良い。となると俺は…)
「あの…イナズマちゃんは別の世界に来て怖くないの…?」
「先ず、そもそもとして俺は恐怖を感じない。感情自体が失われている訳では無いが、戦闘に支障を来たすモノは全てオミットされた」
「え、じゃあ悲しくて泣いたり、嬉しくて喜んだりも出来ないって事?」
「そう捉えてもらって構わない。やや語弊はあるがな」
「そんな……」
実際は任務後に達成感を感じる事はあるし、〈感情抑制機構〉が作動してない際に、多少の感情の発露を観測する事も少なく無い。が、表に現れるかと言われると話は別だ。
(イーグル2達にも無感情過ぎると言われたが…魔法少女として戦うなら改善すべき点だな)
無論優先度は高く無い。しかし、機械的な少女が民衆に受け入れられるか不安が残る。ただでさえ〈魔法少女〉という存在から掛け離れているのに、そこを怠れば排斥運動が起こる可能性すらある。
考え過ぎかもしれないが、余計な事に時間を取られたくは無い。
「一先ず、俺の感情の有無については気にするな。これは俺自身の問題点であり、俺が解決すべきモノだ」
「でも…」
「この件に関して押し問答をするつもりは無いぞ。もう少し建設的な話題を……何故泣いている?」
隣に並んだベッドの上、こちらを向く八雲スズの顔に月明かりに照らされた涙滴が見えた。キラリと輝いたそれは、重力に従って布地に落ちる————理解が出来ない。
(今の会話の何処に涙を流す様な箇所が在った?)
他者の感情など本来なら思考を割く価値も無いが、今後チームとして戦闘を行うに当たって精神面で問題があれば戦闘に支障が出る可能性がある。メンタルケアなど専門外にも程があるが…
-戦闘シミュレーション終了 全魔獣データ総数58 脅威度判定完了-
-ウロボロス対応案 並びに〈ヒュドラ〉対応案 構築完了-
「まぁ良い、俺は貴官達の期待に応える。貴官達は俺の期待に応える。それだけだ」
返答は無い。眠ったか…後に尾を引かなければ良いんだが。
◇
翌日。
俺は輸送機のプロペラ音が響く機内にて、対面に座る品川アリスとこれから向かう戦場について情報を確認していた。
「…から、真っ直ぐ新東京に向かっているらしいわ。確認された魔獣は雑魚ばかりだけど、数が多いから私達に要請が来たみたいね」
「なるほど、見たところ関東北部は全て魔獣の掌握下にある様だが、奪還作戦などは行われなかったのか?」
「国防軍はここ1ヶ月、殆どが新潟北部に集結している。そして北関東が陥落したのは半年前、後は分かるわね?」
「…あぁ」
(放置されている、という事か)
などと思いながら俺は液晶端末…タブレットに表示されたマップを眺める。
マップにはイージス日本支部がある現日本国首都の名古屋を中心に栄える人類生存圏。黒く染まり、魔獣の支配下になっている事を示す東北地方や北海道が映し出されていた。
旧首都圏である関東地方において、黒いエリアは利根川を境に人類生存圏へと変わっており、これから俺達が向かうのもその近辺だ。
無論、人類生存圏だからと言って魔獣が出現しない訳じゃない。むしろ魔法少女が主に対応するのは、人類生存圏に出現した魔獣と言えるだろう。
「降下エリアはつくば町。防衛ラインの向こう、魔獣支配下に降りて敵の軍勢を叩き潰す」
「そして俺の戦闘力評価も同時に行う、だろう?」
「よく分かってるじゃない、じゃなかったら新東京の魔法少女が出張る様な任務だしね」
言いながら笑う品川アリスにタブレットを渡し、ふと窓の外に視線を向ける。すると遠方から2つの灰色の点が徐々に近づいて来る様子を視認出来た。
点はみるみる内に接近し、やがてそれが戦闘機と判断出来る程の距離まで近寄ると、急速に高度を上げ輸送機の上空を通過していく。
否応無く感じる、戦場の匂い。
「厚木基地から新潟戦線への増援ね。彼等が安心して戦える様に、私達も頑張らないと」
「…了解した」
返答すると同時に輸送機のカーゴドアが開き、赤いランプが瞬き始める。外には朝焼けの空が広がっており、素直に美しいと、そう思った。
「あ、聞きそびれてたけど、貴方空挺降下出来るわよね」
「無論だ。パラシュートも必要ない」
「なら良いわ、先に行ってるわね」
それだけ言い残し、輸送機の外へ飛び出す品川アリス。少し扱いが雑な気がするが…まぁ良い。
「メインシステム起動」
-了解 メインシステム起動 戦闘モードに移行 身体性能最適化-
人工音声が告げると同時に、相変わらず妙な姿となった灰色の強化外骨格を身に纏う。また頭部にはヘルメットの代わりに、映像記録機器兼イージス側からの情報伝達端末として蒼いバイザーゴーグルを装備。
(開発部門の趣味だか知らないが、何故ツインブレードアンテナを採用した…)
最後に個性を分かりやすくするべく腰部から大型スラスターを下げ、出撃準備を完了する。
-動力炉出力上昇 脚部駆動部 対衝撃措置-
-降下予定ポイントまで10秒-
「…行くか」
呟き、俺は輸送機のカーゴの床を蹴って思い切り空へと飛び出した。
途端に視界が開け猛烈な風圧が襲い来るが、姿勢を崩さぬ様制御し、真っ直ぐに地面を睨み据える。
-高度3216mより降下開始します-
-スタビライザー起動 空中姿勢安定化-
戦闘機型のTYPE-
などとくだらない事を考えてる間にも、高度は急速に下がっていく。
-2000m-
『聞こえる?私もう降りたから早くして頂戴——』
「了解」
落下傘を使用したにしては早い、直接降下したのか?これだけの高度から落下して着地できる魔法を持っている…凄まじいな。
-1000m-
「あれか」
視線の先、魔獣と思われる生物と交戦中の品川アリスを捉えた。どうやら
通信機を破損したか、或いは通信出来る状況に無いのか判断しかねるが、どちらにしろ救援に向かうべきだな。
-スラスター起動 コンバットブースト 実行-
スラスター全開。落下速度を急速に早めた俺は一直線に品川アリスへと向かう。そして拳を握り締め—————落下の瞬間と同時に突き出した。
-インパクト-
轟音と同時に土煙が上がり、数秒後視界が晴れると、俺の下にはクレーターが如き窪みが形成され、更に紫の肉塊が横たわっていた。
「あ、貴方…」
「すまない、降下が遅れ貴官を危機に晒したのは俺の責任だ」
「いやそれより、あんな落ち方して体は…!?」
「?だから空挺降下出来ると言ったろう?」
何故言ったことを実行しただけなのに驚いているんだろうか。