強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました 作:Yura0628
「それで、俺はコイツらを全て殺せば良いんだな?」
-敵影捕捉 残数43 確認最高脅威度4-
「え、えぇ。私は最低限の自衛しかしないからそのつもりでお願い」
「了解した。イナズマ、殲滅任務を開始する」
「…
宣言した俺は、地割れを起こす事も構わず大地を蹴り、スラスター噴射を伴って魔獣群に急速接近を行う。そしてその勢いのまま、最も至近にいた〈グール〉へと拳を振り抜いた。
「Gyu?」
「逝ね」
突如自身の眼前に機械の拳が出現し、一瞬困惑した様な姿を見せたグール。無論反応出来たとは思えない、精々そよ風が吹いたと感じた程度だったろう。
次の瞬間には、バラバラに砕け散ったのだから。
-敵撃破 残数42-
「次」
呟きつつ、今のグールと行動を共にしていた〈ゴブリン〉へ視線を向ける。グールが斃れた事に驚きはすれど、未だこちらの姿を認識出来ていない様だ。
そこへ、俺は拳を叩き込む。
装甲に覆われた拳はゴブリンの体にめり込み、数瞬の間ではあるが段階的に骨折、内臓損傷、組織断裂を引き起こした。
…辿る結末は同じ。
頭部や脚部など、インパクトの中心から離れた部位は原型を留めたが、胴体は廃材散らばる大地に赤い染みとなる。
「脅威度3以下の魔獣に打撃は有効…だが殲滅速度で難あり…か」
やはり数の多い相手には、機動外装を用いた大火力火器が最適。出来るだけ早急に亜空間ハンガーとの安定接続を確立する必要がある。
「…そう言えば、
-身体性能変更
視点が上がる。強化外骨格や生体が拡張されて身長がやや伸びると同時に、脚部や肩部にスラスターが顕現。反対に腰部にあった大型スラスターが光の粒子となって消失した。
-エナジーブレード展開 状態安定-
両腕から伸びたブレードが、腕部に付着していた血糊を蒸発させ、アスファルトを削る。
物音がして振り向くと、顔を歪めた魔獣達が俺を囲い魔法の発動準備をしていた。一定の距離から近づいて来ないのを見ると、知能指数は決して低く無い様だ。
しかし、彼我の距離は精々30m。家屋の残骸を考慮したとしても、アイアンソルジャー相手にその距離は決して安全では無い。
「容易く終わらせてくれるなよ」
前に出した右脚を…踏み込む。残骸を吹き飛ばしつつ一気に距離を詰め、両腕から伸びたブレードを振るった。
瞬間、手に魔法陣を浮かべていた〈コボルド〉2体の首が飛び、流れる様に俺はゴブリンやグールを両断していく。
『すごい…』
続けて全身に配置されたスラスターを噴かし、極低空ながらも空中戦闘機動を以て別の魔獣の群れに肉薄。ブレードでの攻撃に加え、脚部による回し蹴りも織り交ぜた攻撃で、瞬く間に魔獣21体の殺害に成功した。
-残敵数22-
「ふぅー…」
息を吐きながら駆逐した魔獣の骸を見渡す。
囲う様に積み上がった骸は何も原型を留めておらず、俺の持つ武装では過剰威力である事が容易に見て取れる。…対人武装を装備していないのが仇になった形だ。
(これならやはり、低脅威度魔獣への対応は魔法少女に一任し、俺は高脅威度魔獣への対応に専念した方が戦力配置としては最善だな)
しかし飽くまで戦力配置という観点からの最善であり、1人の魔法少女が主戦闘を担い周囲が露払いすると言うのは、
思いながら上空を見上げる…すると小型のUAV、ドローンが飛行している姿が視界に入る。ドローンは搭載したカメラをこちらと品川アリスに交互に向け、何をしているかは明白だった。
(魔法少女の戦闘を配信し、魔法少女、ひいてはイージスへの親交心を高めるか。本当に効果があるのやら…)
あると判断されたが故の体制だろうが、どうにも理解が出来ない。
組織の活動のため、資金が必要なのは分かっている。だが戦地に赴く兵士をエンターテイメントにするのは、価値観の相違を考慮しても歓迎は…
「まぁ、迎合している時点で俺も同じか……ッ」
-警告 センサー探知範囲内に大型魔獣の侵入を確認 数3 目標識別 脅威度6〈ミノタウロス〉-
突如システムが警告を発する。咄嗟に手近にあった瓦礫に身を隠し様子を伺うと、倒壊しかかったビルの影から牛頭を備えた巨大な人型が現れた。
「「「Bumooooooo!!!!」」」
◇
「すごい…」
眼前で繰り広げられる蹂躙劇に思わず声が漏れる。
両腕から蒼く輝く剣を伸ばした彼女が、光の軌跡を残しながら魔獣の群に突っ込んだ途端、紫色の血飛沫が上がった。…同時に、魔獣達の断末魔も。
最初に拳で魔獣を攻撃していた時と比べ物にならない殲滅速度、これが、彼女の本気なのかしら。
むしろそうあって欲しいと言う願望が首をもたげるのを、首を振って追い払い記録に戻る。
……けれど、さっき〈オルトロス〉に不覚を取った時の事を思い出し記録の手が止まる。
通信機を取り落とし焦りが出たところを殴打されてしまったが、彼女が上空から直接攻撃する事で難を逃れた…誰かに助けられると言う経験が殆ど無かった私は、咄嗟に感謝の言葉を言えずにいたからだ。
「お礼を言えば良い…のよね」
しかしこの思考を邪魔してくる存在が、眼前の家屋を破壊して現れる。
「Guooooo!!」
「ブラッドオーガ…また面倒な相手ね…!」
皮膚に赤い血管がこれでもかと浮き出た巨人。オルトロス程じゃ無いけど、決して油断は出来ない相手。
さっさと片付けて記録に戻らないと。
「天賦解放、
魔法を発動すると、私を中心に円状に猛吹雪が吹き荒れ始める。
この魔法は、特定エリア内で敵の五感を塞ぐと共に、魔力によって強化されている肉体を脆くさせる効果を持つ。肉体強度で上回る相手でも戦える優れものよ。
「Goooooooo!!!」
咆哮と共に振り下ろされる豪腕。まともに食らえば
…でもね、暴塵雪で肉体強度が下がっているのにそんな激しい動きをして良いのかしら?
「Guooaaaa!?!?!?」
「あら?ご自慢の腕がボロボロになっちゃったわね?天賦解放、
瓦礫散らばる地面に思い切り叩きつけられたブラッドオーガの腕は、見るも無惨な姿に変貌する。さっさと殺して楽にしてあげるわ。
右手を押さえて蹲るブラッドオーガの首筋目掛けて、氷結剣を振り下ろす。肉体強度が下がっている首は容易く刃を通し、ストンと頭が地面に落ちた。
「はぁ…」
ため息を吐き魔法を解除する。…その瞬間だった。
「「「Bumooooooo!!!!」」」
辺り一帯に響き渡る、巨大な咆哮。
即座に視線を向けると、血濡れたイナズマの向こう、近づいて来る牛男が視界に映った。
「ミノタウロス…!?何で…!?」
『品川アリス、少々面倒な事態になった。俺は脅威度6の魔獣、それも3体を同時に相手にするのは困難だ。恐らく殺害する間に、1体の突破を許す』
『1体引き受けてくれるか』
「……あぁもう!」
通信機から響くイナズマの声を聞き、私は再び冷気を自らに纏わせるのだった。