悪夢が参る!   作:海鵜白鷺

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大変遅くなりました。

申し訳ない・・・
リアルでくっそ忙しく手がつかなかったこと、話の構成に時間がかかったこと、そして物語をどう進めていこうか迷った挙句にどう書けばいいのかも考えられなくなり二ヶ月近くかかってしまいました。
久々の更新になりますが、どうぞ!


決別する覚悟

帝国の周辺の国々には異民族と呼ばれる者たちがいる。

帝国の民ではない人間を総じて呼ぶ名だ。

この異民族たちは帝国に対して良い感情を持ち合わせていない。

そのため、国境近くでは小競り合いや帝国軍と異民族との戦いが多く行われる。

しかし、傭兵として帝国から雇われるものも少なくはない。

異民族すべてが帝国と敵対しているわけではないのだ。

それでも、帝国に対して従うことはなく幾度となく侵攻を繰り返し、帝国軍との戦いは過激さを増していた。

 

その異民族の一つ、西の異民族の治める地にほど近い村。

ほんの小さなこの村は帝国からは離れ、戦争が起きているとは感じさせないほどのどかな場所である。

一年を通して穏やかな天候に恵まれるこの土地は作物が多く取れる場所でもあり、山に囲まれ自然の豊かな場所だ。

そんな村の住人とみられる一人の男が西の異民族の首都ともいえる都市へと走っていた。

軽装ではあるが鎧に身を包みがっしりとした体系ではあるが、森の中を進んでも一向に走るスピードは衰えない。

素人が見ても強者と思われるだろう。

しかし、そんな男は恐怖で顔を歪ませ一心不乱に駆けていく。

まるで、肉食動物に追われる草食動物のように。

森の中を走っていた男は崖のようになった場所を飛び越えると枝を使って衝撃を和らげ地面へと着地し、また走る。

やがて深い森の奥までたどり着いた男は周囲を確認すると荒くなった息を整え体の力が抜け落ちたように木に寄りかかって座り込んだ。

体中から汗が噴き出し全身の震えが止まらない。

だが、ようやく自分を追っていた何かを撒いたと理解し、ほっと息をつく。

そうして休息を取っていた男の腹部にふと、何かが当たる感触がした。

男は閉じていた目を開き目線を下に向ける。

 

男の目には刀のように見える鉛色が自身の体を深く貫く光景が映し出されていた。

 

何が起きたかわからない。

だが、その状況を知覚した瞬間に口から大量の血を吐きだす。

いや、それすらもなぜかわからない(・・・・・)

いつこの塊は自分の体を貫いたのか、どこから飛んできたのか。

自分よりも小さく細いこの塊はなぜここにある。

頭の中を何かに邪魔されているような感覚にただ疑問を浮かべ続けるしかできない。

そんなことを考えていた男の目はその塊が強烈な光で埋め尽くされ、耳にはただ一言だけ、風の音を聞くように運ばれてきた。

 

「あばよ、名もなき兵士(モブキャラ)さんよ。てめぇの人生、派手に終わりな」

 

黒い煙が空へと登り、灰と黒焦げになった場所はその惨たらしさを余計に引き立たせる。

大きな音を立てて爆発した後の光景を見ていた男は自身の上着であるコートのポケットに手を突っ込みながらその場所をあとにする。

ただ気だるげに帝都へと続く道を進み始める氷のような冷たい印象を受ける彼の外見とは裏腹に、その鋭い眼光には荒々しい怒りの炎が燃え盛っていた。

 

「せいぜい首を洗って待ってろ…必ず、必ず殺すからなぁ…!」

 

誰かへの明確な殺意。

それこそがこの者を動かす最大の目的。

冷徹な激情を抱き、男はまもなく舞台に上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都から北に10キロほどはなれた山中。

崖を切り開いて小さな要塞のように作り上げた建物。

それがナイトレイドのアジトだ。

黒い鳥のようなマークを小さく見せるアジトを背にし、トウヤは一人佇んでいた。

本来はサヨとイエヤスの墓があったかもしれない場所だが、ここにそんなものはない。

転生者というイレギュラーによって起こるはずだった悲劇もないものとなった。

 

「…安堵したいのか…はたまた別の感情なのか…なんでか気持ちは晴れないな…」

 

そう零さずにいられない。

陰るトウヤの心を際立たせるように、空は雲一つない晴天だった。

トウヤの姿はナイトレイドに対して初めて相対した姿に戻っている。

だが、今は仮面をはずしフードを深くかぶっているだけなので、普段見ることはない紅く染まった瞳と整った顔を見ることができた。

ナイトレイドと共にアジトまで半ば無理やり連れて来られたトウヤだが、ここに来るのには目的もあった。

それを確認するためにもナイトレイドとどうやって遭遇するかを考え、アリア一家の暗殺の際に乗り込むことを決めたのである。

剣を交えるつもりはなかったが、こうしてアジトまで来れたことを考えれば僥倖だろう。

それもあのキサラギという転生者のおかげか…とトウヤは一人考えていた。

 

(まぁ、そう思うのは勝手だが俺様のおかげだってことを忘れてもらっちゃ困るんだが?)

 

一人思考の海にもぐっているとクルードが話しかけてくる。

トウヤは一旦考えるのをやめてクルードとの会話を始めた。

 

「相変わらず図々しいなお前…まぁ、もう慣れたけど」

 

(分かってきたじゃあないの、物分りのいいやつは好きだぜぇ?ケケ!)

 

「それで?何のよう?」

 

(特に用はねぇが、お前がなんでここに来たのかだけは気になってよ。ナイトレイドにでも入るつもりか?)

 

「それはどうかな…でも…」

 

(でも?)

 

そういって空を見上げて何も言わず、やがて首を振ってため息をつく。

 

「…………いや、なんでもないよ」

 

(…あっそ。ま、好きにしろや。俺様はちょっと寝るぜ…どうやらお前も呼び出しみたいだしな)

 

「あぁ、そうだな」

 

クルードが自分の奥へと引っ込むのを確認したトウヤは再び手に持っていた仮面をかぶる。

足音に気づく振りをして後ろに顔を向けると、そこにはタツミたちを連れたレオーネとキサラギの姿があった。

 

「こんなところにいたのか、少し探したぜ」

 

『…あまり好かれていないようだからな。それに、一人でいるのは居心地がいい。それで?何の用だ?』

 

他人に興味のないように振舞うトウヤに対しても、キサラギは人懐っこい笑みを浮かべて声をかける。

 

「ちょうどタツミ達にアジトの案内をしてたところでさ。うちのボスが帰ってきたから召集がかけられててね。お前も呼んで来いって言われてたから呼びにきた」

 

『そうか』

 

そう言うとトウヤはキサラギたちの元へ歩いていく。

それを確認したキサラギはみんなを連れて動き始めた。

 

 

 

 

 

side:トウヤ

 

会議室。

大きな空間にナイトレイドのシンボルが描かれたフラッグが中央に掲げられ、机はなくフラッグの下に椅子があるだけの簡単なつくりだ。

俺達たちが入ったときにはすでに他のナイトレイドの面々が集まっており、椅子には右手が義手で眼帯をしたスーツ姿の女性が座っている。

彼女がナイトレイドのボスであるナジェンダだろう。

俺は入ってすぐの柱に寄りかかり腕を組んで話だけを聞く態度をとる。

タツミたちはナジェンダの前に立たされた。

 

「…改めて、私がナジェンダ。ナイトレイドのリーダーだ。皆からの報告で大体の事情は分かった。まずはサヨにイエヤス、君たちを助けることができて本当によかった。そして改めて君たち三人に問いたい。ナイトレイドに加わる気はないか?」

 

そうして話し始めたナジェンダの話は帝国の現状、革命軍の目的などを踏まえた上でタツミ達にナイトレイドに加わるかを問う。

国を変えるための殺し屋集団。

俺はそれを聞きながら自分のあり方についての再確認をしていた。

同時にナイトレイドとは目的も考えも違うとはっきりと理解してしまっていた。

どこかで似ていてほしいとは思っていたが、どうやら俺は認め切れなかったらしい。

やがてそう思っていると笑い声が聞こえてくる。

タツミの正義の殺し屋という言葉に笑ったようだった。

殺しをやった時点でそこに正義はない。

そうやって笑われても、タツミたちはその大きな目的とやらをかなえるためにナイトレイドに入るらしい。

まぶしいな…そう思わずにはいられない。

俺とは、何もかも違う…そう考えずにはいられない。

 

「さて…タツミたちについてはこれにて終わりだ。次は」

 

そう言葉を切ったナジェンダの目線は俺に向けられる。

ナジェンダだけではなく会議室にいる全員の目が俺に向けられていた。

…正直やりにくい。

 

「名前を聞いていないが、まぁこの際気にしないことにしよう。キサラギから報告は聞いている。実力もあり、帝国に対して良い感情を持っていないそうだな」

 

『今のこの国を住み心地のいい場所だというやつは、よほどいい暮らしをしている害虫か甘い蜜を独占している毒蜂だけだろう』

 

「その通りだ。説明はさっき聞いてもらっていたはずだ。改めて君にも問いたい。ナイトレイドに加わる気はないか?」

 

義手をこちらに向けて伸ばし、そう言ったナジェンダ。

俺はその手を、その眼を見て強い人だと思った。

この手を取ってしまえば俺はまだ取り戻せるのではないかとも思ってしまう。

だからこそ…俺は。

 

『悪いが断るよ』

 

その誘いに頷けなかった。

その言葉はナイトレイドの全員が一気に警戒を募らせキサラギは目を丸くしている。

 

「…理由を聞いても?」

 

『君らは革命軍だ。今の帝国を変えようと汚れ仕事を引き受ける。それはそれは大層立派だろうさ。その心意気も素晴らしい。殺しをしている限り常に誰かに恨まれ妬まれ命を狙われる。そこに正義もなにもありはしない。報いを受けるのは当然だ。見事なものだよ』

 

「ならばなぜ…?」

 

『目的も、思想も、何もかもが違うから、としか言えないな』

 

俺はそういいながら出入り口のほうへと歩いていく。

その俺にナジェンダが声をかける。

 

「待ってくれ、君の目的と私達革命軍の目的の違いは何だ?大臣を討ち取りこの帝国を変え『そこだよ』…何?」

 

思わず足を止めて言い返してしまう。

どうやら思った以上に俺は血が上りやすいようだった。

落ち着けと思う心とは違い勝手に言葉が出てくる。

 

『帝国を?変える?確かに大臣を討てば帝国は少なからず変わるだろう。だが、その後の国が本当によくなるのか?なぜそう言いきれる?ただでさえ今の帝国は大臣のおこぼれや自身の立場を利用して甘い汁をすする豚どもの巣窟だというのに…もし革命が成功したとして大臣を討つことが出来たとしよう。現皇帝はどうする?幼いからという理由で無罪放免か?駆除できなかったダニどもはどうする?新体制の帝国の名で殺すか?』

 

仮面の下に隠れて見えないであろう表情はきっと今まで生きてきた中で一番怒りに飲み込まれているだろう。

一度あふれた水が戻らないように洪水のように溢れ出す。

 

『そもそも、革命でこの国を変えようとすること自体が間違ってるんだよ…この国は変わらない、変えられない!帝具という存在を始皇帝が生み出したときからこの国の歯車は狂っているんだ。一度歪みきった歯車を変えるには新しい歯車を用意して取り替えるしかないように、この国を変えたいなら一度壊すしかないんだよ!俺の元いた場所もそうだった!偉そうな政治家どもは自分の保身しか頭になく、市民は自分の身を守るために他人を犠牲にする!それが家族でも友人でもだ!お前たちは聖人か神にでもなったつもりか?人間の本質は欲望だ、だからこそ今ある物が壊れてからでしか自分の意識を変えられない!』

 

そういいながらナジェンダに向けて殺気を向けながらにらみ続ける。

ナイトレイドの連中が俺に向けて武器を向けているがそんなことは知ったことじゃない。

 

『俺の家族は、幼馴染は、村は!帝国という猛獣に!害獣に!殺されたんだ!腐りきった土台に何を乗せようと支えるまでもなく崩れていく!それが今の帝国の現状だ!誰もが管理され食いつぶされるだけの監獄でしかない!革命のための殺し?笑わせるなよ、俺はこの帝国を変えたいと思ったことは一度もない!』

 

そこまで叫んだ俺は一度呼吸を整える。

目の前にいるナジェンダは何も言わない。

ナイトレイドの面々は帝具を構えて殺気を向ける。

だが、お構いなしにもう一度ナジェンダを睨みながら俺は自分のあり方を言う。

 

『革命なんてものに興味はないし、加担するつもりもない。ただ壊すだけだ。この腐りきった世界ごと帝国という檻をな…そのために俺はこの力を使う。他の誰でもない自分のためにだ。お前らの邪魔をするつもりもないし協力するつもりもない、だが大臣は殺すし帝国は潰す。これは革命じゃない、復讐だよ…たとえ誰にも認められなかったとしても、最後にこの身が悲惨な運命を辿ろうと知ったことじゃない。誰かが俺を悪だと罵るならば、俺は俺の(正義)を示してやるだけだ』

 

武器は構えない。

掴み掛りそうになる体をわずかに残った理性で押さえつける。

そう、革命なんて大層な目的で行動できるほど今の俺にそんな余裕なんてなかった。

でも…それでも認めたくなかった。

どこかでナイトレイドと一緒になれると思っていた。

だけど俺にはその光が眩しすぎる。

誰かを助けることに理由はいらないと俺の好きなゲームの主人公のように言いたかった。

それでもこの場で、今のやり取りで嫌というほど理解させられた。

彼らは覚悟をもってこの仕事をしている。

でも俺はどうだ?

駄々をこねる子供と一緒だろう。

でもそうせずにはいられない。

あれだけ守りたいと思ったものはもうこの世にない、ならば何をもって生きていけばいい?

俺の心は、もうすでに復讐というものに取りつかれ誰かの破滅を願わずにはいられないのだから…

 

『たとえなんと言われようと大臣は殺す。安心しろ…お前たちの邪魔はしない。だが、俺の邪魔をするなら…その時はそれ相応の覚悟を持つことだ』

 

―――――――――――――――――side:トウヤ to be continude

 

 

 

 

覗き込むようにナジェンダと相対するトウヤ。

溢れ出る殺気とトウヤの告白にナイトレイドの面々は武器を構えつつも戸惑いの色を隠せなかった。

一方ナジェンダも怒るトウヤから目を離さずにただその言葉を受け入れた。

両者の間に少しの間沈黙が訪れる。

やがて、ナジェンダが折れるように息をついた。

 

「…君の意見はよくわかった。我々も無用な争いをするつもりはない。君がこちらと敵対するつもりがないのならそれでいい」

 

『……………そうか』

 

その言葉を聞いたトウヤは顔を近づけるのをやめ、今度こそアジトから出ようと歩みを進め始めようとした。

 

その時だった。

 

急にラバックの腕に巻かれていた帝具であるクローステールが何らかの反応を示した。

それに気づいたラバックは驚きながらも報告する。

 

「ナジェンダさん!侵入者だ!」

 

「!」

 

瞬間その部屋にいる全員に緊張が走る。

トウヤはそれを聞いてクルードに確認をした。

 

(敵の数は?)

 

(さぁな、気配から察するにおそらく8人ってところだろ。後はお前の()で見たほうが早いさ)

 

(それは確かに…じゃあ、さっさと動こう)

 

そうして、ナイトレイドが行動を開始する前にトウヤは歩き始める。

それを見たタツミが声をかけた。

 

「お、おいあんた!どこに行くんだよ!?」

 

『どこへの何も決まってる。その侵入者とやらの顔を拝みに行くだけだ』

 

「てことは、あんたやっぱり!」

 

『どうとでも思うが良いさ。俺には関係ない。だが…』

 

そこで言葉を切って振り返る。

 

『言っただろ?お前らと敵対するつもりは今はない。この場所も秘密にする。ただ君らに貸しを作るだけだ』

 

そういって再び歩き出し、右手を前に掲げて鍵を外す。

 

『…”蒼天疾駆”』

 

その言葉と共に服装も変化していく。

今度は迷彩柄の忍者のような服装に変わっている。

それを見たナイトレイドのメンバーは帝具の類かと疑い、一方キサラギはやはりといった感じで口元に手を当てて思考を始めていた。

そんな彼らを尻目にトウヤは外へと向かう。

若干の期待と不快な怒りに身を包まれながら、仮面に隠れた顔が狂喜に崩れる。

 

『帝国に対しての前哨戦だ…傭兵諸君、ゆっくりと堪能していくといい。死ぬことよりも恐ろしいという意味をね…』

 




はい、というわけで更新しました
お久しぶりです皆様。
話が進まない!まだ本編の序盤からも動かない…
ひどい有様です。

さて、今回はナイトレイドとの決別、そしてトウヤの目的というものを出すことができました。
復讐という概念でしか動けなくなったような形ですね。
それでも、どこかで復讐ではなく人助けのために行動したいという葛藤は一応ありますが。
境遇から来る負の意識と憧れから来る正の意識。
7:3と言ったところでしょうか。
そんな彼が今後どう動いていくのか。
一応展望は考えてあるので頑張って書いていきます…
ペースは落ちるとは思いますが…

では、また次回に。
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