お待たせした方いたら申し訳ない。
ようやく少し進みました…
―――――――――――――ナイトレイドアジト付近
時を遡ること数分前。
とある集団が森の中を駆け抜けていた。
彼らは帝国に雇われた南の異民族の傭兵だ。
帝国に対して反乱を企て無残な末路をたどった者たちは多い。
一方で、帝国に雇われ帝国の犬として働き大金を手に入れた者たちも多く存在する。
後者である彼らにとって今回舞い込んできた依頼は至極簡単なものであった。
「帝都を騒がせるナイトレイド、そのアジトの探索」
これをこなすことで今まで請け負ってきた任務の倍以上の報酬が出されるのだ。
当然彼らはこの依頼を快諾。
すでにその彼らの顔には余裕という名の慢心が見え隠れしていた。
そのうちの一人が言う。
「どうやら、居場所がばれちまったらしい。だが、このあたりにあることは間違いねぇ」
駆け抜けながらも息を乱すことはない。
それだけ鍛錬されていることの証拠だった。
言葉を発した男に対して共に行動していたもう一人がにやけた顔を隠さずに言い返す。
「楽な仕事だぜ、アジトを探せば今まで以上に遊んで暮らせる」
「この調子なら追加報酬も狙えそうだ…いくぞ」
浮足だつ彼らは駆け抜けながら仲間との連絡を取ろうとした。
その時最初に言葉を発した男が異変に気付く。
自分たちの走っている前に何かがいた。
「おい、何かいる―――」
仲間に対してかけようとした言葉はまるで飲み込むように襲い掛かってきた不定形の泥のようなものに飲み込まれ逃げることもできなかった彼らの意識は途絶えた。
『――――――ろ。さっさと起きろ』
「ぐぁ!?な、なんだ…!?」
強い衝撃が頭を襲う。
その痛みで途絶えた意識が徐々に鮮明になっていった。
目の前には仮面の男がこちらを見下ろしていた。
何が起きたかまだ理解できていない。
だが自分の体の自由が利かないことはすぐに理解することができた。
同時に視界に入ったあるものに気付くことになる。
「ひっ…」
思わず声が出る。
無理もないだろう。
彼の視界には、彼と共に行動していた傭兵たちが無残な
あるものはあらゆる部分の骨が身体を突き出し、あるものは首と四肢がバラバラ、あるものは原型もとどめないほど擦りつぶされていた。
人間の死に方というにはあまりにもむごすぎる。
そんな死に方をした仲間たちを見て男は震えが止まらなくなった。
「た、頼む!命だけは…命だけは、助けてくれ!」
命乞いを始める男に対して黒を基調としつつもピンク色が印象に残る中性的な衣装を身にまとった仮面の人物は淡々と言い放つ。
『悪いが、それはお前の態度次第だ。それ以上騒ぐなら即あいつらと同じようにしてやる。俺がいいというまでしゃべることは許さん。いいな?』
「――――ッ!」
冷徹。
そんな言葉では生ぬるい鋭い視線が男を貫く。
その視線に怯えるように男は首を縦に振った。
『よし、では質問しよう。まずは一つ目、お前たちを雇ったのは誰だ?』
「オネスト大臣だ…」
『二つ目――――』
仮面の人物―トウヤと傭兵の男とのやり取りが短い間だが交わされる。
最後の質問が終わり男はやつれたように言った。
「…これが俺の知ってるだけの情報だ…頼むから命だけは『あぁ、わかってる』ッ!?ほ、本当か!」
その言葉を聞いて男は内心ほくそ笑んだ。
生きて帰りさえすれば仕事は成功。
謎の人物の情報も渡せばナイトレイドの首ほどとはいかないが報酬も出るだろう。
「あ、ありがてぇ!この恩は忘れ『ただし』な…え?」
そんな間抜けな声を出した男を無数の手が襲う。
どれだけ抜け出そうと暴れても身体の身動きが取れない。
先ほどまで浮かんでいた安堵の表情は一変して恐怖一色に染まっていた。
「ま、待て!!話が違う!命だけは助けてくれるといったはずだろう!!?」
『あぁ、言ったな。命だけは助けてくれって』
「なら!?」
『だがこうも言った。俺がいいというまでしゃべるなと。それに…』
そういう男に対してトウヤは冷たく言い放った。
『俺は一言も、
その言葉とともに男を拘束していた腕たちはまで雑巾を絞るように男の身体を捻じ曲げ始める。
ゆっくりと、一滴の雫をも絞り出すように確実にその力は強くなっていく。
最初はそれに抵抗していた男だったがついにはこらえきれなくなり自身の体が限界を迎える直前。
「ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!??!?」
骨が折れる音とともに果実が潰れたような音を立てて男は絶命した。
『…これが…人を殺した感覚か…ははっ…何にも感じねぇや…』
(自分の手で殺してないからだろうな。ま、最初にしちゃ上出来だわな)
その様子を見届けたトウヤは自嘲的な笑いを仮面の下で浮かべ、周りに残っている
『”覗け音の海”』
告げられた言葉に連れられたように空間が開きそこから不気味な瘴気と共に怨念たちが死体を飲み込んでいく。
その様子をみても何も感じないことにトウヤはすでに慣れ始めていた。
これから歩む道、自身の在り方。
その血に塗れた世界に今自分が踏み入れたことを実感する。
(迷いはない…決めたんだ。この国は俺のやり方で壊す。例えナイトレイドと敵対することになっても…必ずこの復讐を果たして見せる…)
「なんだよ…これ…?」
目の前で根の国に沈みゆく何かを見て思いに更けていたトウヤはその声の方に振り向いた。
驚きをあらわにしたナイトレイドの面々である。
サヨに至っては口元を抑え腰が抜けたように座り込んでいる。
『…あぁ、遅かったな。もう終わったよ』
気だるそうに声をかけるトウヤの言葉にこの衝撃的な光景からいち早く立ち直ったナジェンダが鋭い目をしてトウヤに問いかける。
「……これは、君が全部やったのか」
『そうだが、何か問題があるか?遅かれ早かれこいつらは死んだ。所詮帝都に戻って仕事を終えたとしてもすぐに始末される。こいつらの運命は帝国の犬に成り下がった時点で人としてじゃなく物として帝国でこき使われる。今死ぬのと後で死ぬのに大した変わりなぞありはしない』
「…確かに、こいつらは生かして返す予定はなかった。だがこれでは『まるで帝都の貴族たちのようだ、とでもいいたそうだな?』…ッ!」
『君は勘違いしている。拷問なんてしていないし俺にはそういう趣味もない。ただ、聞きたいことは聞かせてもらった。だから殺した。それだけだ。惨たらしい?何を今更…』
ナジェンダの言葉を鼻で笑う。
そして、背を向けて歩き出しながらトウヤはいう。
『悪人に死に方が選べるはずがないだろう。例えそれが無残な死に方だろうが、綺麗な死に方だろうが関係ない。人を殺したその時から、そいつは
後ろを見ることなく言い放つ。
言葉を交わすことももうない。
そんな雰囲気を出すトウヤと言葉を投げられるナイトレイドとの間には今、大きな見えない壁ができていた。
「―――ねぇ…」
かすかに耳に入る言葉。
そのかすかな言葉にトウヤは足を止めた。
「認めねぇ!あんたと俺たちが一緒だなんて認めてたまるか!」
トウヤの足を止めさせた言葉。
それは今はまだ、修羅の道に踏み込んだばかりの非力な少年の言葉だった。
side:タツミ
咄嗟に出た言葉だった。
でも、それでもここで否定しなきゃいけないと思った。
目の前にいるあいつは怖い。
俺の知らない何かを持ってる。
俺はきっとそれに恐怖してる。
でも、言わなきゃいけないと思った。
確かにあいつのいうことは正しいのかもしれない。
だからこそ俺はいった。
俺たちナイトレイドとあいつは違うってことを!
『…ほう?俺に恐怖して動けなくなる奴がよく言った。それで?どう俺を否定する?』
「過去にあんたに何があったのかは知らねぇ!でもな、ナイトレイドの…俺たちがこれからやってくことは今ある帝国を変えていけるって信じてる!過去に縋り付いて壊そうと、今を変えることを拒んで否定するだけのあんたとは違う!俺たちは…俺たちは本当に守るべきもののために戦うんだ!!その覚悟をあんたと一緒にするんじゃねぇ!!」
『何を言うかと思えば、まるで癇癪を起した子供だな。だが、変わらない。変えられないんだよ、人間が人間である限り。例えお前たちが革命を成功させたとしてもいずれまた同じことが起こる。ましてや殺し屋。守るべき依頼者たちが裏切るかもな。そら?守るものがどこにある?』
「たとえそうでも!今に苦しんで今この時に助けを求めてる人がいる!俺はそいつらを見捨てねぇ!例えその先にあんたが立ち塞がったとしても、俺はあんたを超えていく!!!」
俺の言葉を否定するようにあいつは言い返してくる。
だけど関係ない。
俺はこの帝国を変えてみせる。
大臣をぶっとばして村を、苦しんでるみんなを救って見せる!
『俺を超える?帝具も持ってない非力なお前に何ができる』
「今は無理だ。でもいつか、立ち塞がったあんたを倒して証明して見せる!俺は、俺なりの答えと信念をもって超えてやる!!」
周りにいるナイトレイドのみんなも同じ気持ちだと思う。
不思議と体の震えが治まっていた。
顔だけをこちらに向けているあいつは鋭い視線をこっちに向けたままだった。
にらみ合いが一瞬なのかそれも何時間も経ったのか。
俺には緊張でわからなかったけど、やがてあいつは背を向けて不気味な影の中に消えていきながらいった。
『…だったら超えてみろ。お前たちが出した答えを持って……………だが覚えておくといい。俺の前に立ちはだかった時は…』
『容赦はしない…!』
たった一言。
その一言と共にこちらに向けられた殺気による重圧はすさまじいものだった。
それでも歯を食いしばって耐える。
だけど影と一緒に気配が消えるとさっきまであった重圧が嘘のようになくなっていた。
その開放感に思わず座り込んでしまった。
うぅ…情けねぇ…
「よく言ったタツミ!お姉さん見直したぞぉ~?」
「いやぁ~、よくあんな啖呵切れたもんだ。俺なんか久しぶりにビビって動けなかったわ…とほほ…」
そんな俺の周りにナイトレイドのみんな…いや、仲間って言った方がいいのか。
仲間たちがそれぞれ労いの言葉をかけてくれる。
そうだ…俺は決めた。
もっと強くなって…絶対あいつを超えてやる!!
――――――――――――――――side:タツミ to be continude
食事処 風鈴。
その店の地下に広がる部屋には誰一人としていなかった。
しかし、その静寂を破るように突如その部屋に人が現れる。
この店の主、トウヤである。
ナイトレイドとの邂逅を果たし用を済ませた彼は自身の家に帰ってきた。
そしてそのまま数歩歩くと糸が切れた人形のように崩れ倒れた。
息も荒く動くのもつらそうにしている。
彼の身に纏っていた黒とピンクの女性物にも見える軽装な鎧と仮面が徐々に影のように消えていき、右目に眼帯をした普段の彼の姿が現れる。
同時に彼から離れるように消えていく影たちは人型へとなっていった。
【おうおう、まだ力の加減に慣れてないくせに休憩もせず一気に力を使いすぎたなこの阿呆め。もう少し冷静さをもつこった】
「ハァ…ハァ…そうは、いうけど!…ここまで、だとは…思ってなかっ、たんだ…ッハァ…!」
汗だくになりながら自身の相棒ともいえるクルードに向けてトウヤは言う。
しかし当のクルードはそんなことを知ったことではないと言いたげだった。
【まぁ、しばらくは休め。そしたらうまく扱えるように特訓なり修行なりすることだ。俺も眠いし】
そう言い残してトウヤの中へと入っていくクルード。
最後は自分のわがままかよ…と思うトウヤではあったが怠そうに体を反転させ仰向けになりながらタツミの言葉を思い返していた。
「…あんたと一緒にするな…か。主人公に真っ向から言われると結構傷つくもんだ…」
自嘲的な笑いしか出てこない。
それでも、自分のうちにある覚悟を変える気はなかった。
ナイトレイドとは違うやり方で帝国とたたかう。
自分の守りたかったものを奪い去り今もなお人の命を嘲り笑う帝国をトウヤは許さない。
「…例え悪魔と罵られても…復讐の鬼となって人の心を失うとしても…その果てに死んだとしても…俺はもう止まれない…止まるわけには、いかないんだ…」
そういいながら必死に体を動かして自身の寝室へと向かうトウヤ。
これからの決意の先にあるものが虚しいものであるとしても彼は止まることはないだろう。
だがその頬に流れた一筋の小さな雫が、まだトウヤの心が壊れていないことを表していることにトウヤを含めた誰一人、気付くことはなかった。
はい、というわけでナイトレイドとの邂逅終了です。
原作よりも悲惨な死にざまだった傭兵さんたちに敬礼をしつつ…
本当にお久しぶりです。
最新刊、個人的に予想したことが当たっててこうなったかと思いました。
それより全然書けなくてなおかつ忙しくてずっとおろそかにしてましたがね。
それはともかく、ようやく悪夢が参る!の物語が進みそうです。
ま、就活とかいろいろあってたぶん更新するのまた遅くなりそうですけど…
まだ一巻が終わってない!
早く二巻に行かないと…
そして内容を少し変更した結果3つ目の特典明かせないということに…
まぁ一つヒント出すとすれば「目」です。
これに関しては色々元ネタを逸脱した結構なチート能力になってますけど。
考えてみてください。
さてと、ショウイさんのところに乱入する様を書かないと(露骨な次回予告)
それでは、また次回にて