悪夢が参る!   作:海鵜白鷺

7 / 14
覚める序章と始まる悪夢 2-始

言葉が出なかった。

ただ目に映りこんでくる絵を見るしかなかった。

 

体中に剣が刺さったまま今も血を体からポタポタと落とす父さん(フレール)

衣服を剥がれ暴力と性行為の痕が誰が見ても分かるようにされて息絶えた母さん(アルティシア)

足を失い首を切られ白が基調になっている服を赤くした老執事(クロード)

片目を目を潰され血を流し胸に矢が刺さり口からも血を流して目を閉じた親友(ハル)

母さんと同じように衣服を剥がれあちこちに傷をつけられあげく胸に大きな穴を開けられた幼馴染(ミーナ)

そして、右の肩から腰にまで大きな傷を負い内臓がぐちゃぐちゃになって飛び出し、まるでこの世の絶望を見ているかのような顔のカイの姿もある。

 

それだけじゃなかった。

その周りには頭のない死体、下半身を失った死体、全身を玩ばれたように全裸で横たわる死体。

ナイフが突き刺されたまま目を見開いて死ぬモノ。

毒を飲んだかのように苦しんだ表情で死ぬモノ。

お互いを抱きしめあっていると思える黒焦げのモノ。

体がバラバラにされ内臓をまるで市場のように並べたり槍で死体を突き刺して並べている。

日常とは程遠く、地獄というのも生ぬるかった。

 

昨日笑いあっていた人がいた。

一週間前に久々に帰ってきた人がいた。

明日結婚式を挙げようとしていた人がいた。

もうすぐ子供が生まれそうな人がいた。

 

そのすべてが、まるで幻であったかのようにその光景はただ静かに広がっていた。

もう言葉にも出来なかった。

あれだけ暖かい世界が、あれだけ大切だった思い出が、あれだけ求めていた願望が。

目の前で蝋燭の火を消すかのように一瞬で消えていた。

 

その現実を、俺は認めたくなくて。

 

この現実を作ったこいつらを俺は許せなくて。

 

何より、何も守ることが出来なかった俺をおレは後悔するシカナくテ。

 

 

 

――――――――――ソウ思ッタ瞬間、(オレ)()ヲ拒ンデ”  ”ニナッタ

 

 

 

『…アハ、アハハハッ アヒャヒャハハハハ!ヒャーハハハハハ!!!どうだね!家畜君!素晴らしい光景だろう!』

 

リーダー格の男は目の前の光景に興奮を抑えきれず叫ぶように言う。

仮面によってこもった声はあたりに響くように拡散する。

 

『実は、私には他人を殺して眺めるなんていう嗜虐的な趣味はこれっぽっちもなかったのだがね。以前あったとある貴族の遊びにハマッてしまってねぇ!以来拷問した死体を使ったちょっとした芸術(アート)を作ったら癖になってしまったんだ!それにしてもこの村の素材は今までで最上級といえる極上の素材だったよ…女は泣き喚き男は恐怖を叫ぶ!子供はただ泣いて助けを求め続ける!鮮度も抜群、リアクションも最高ときたもんだ!堪らないよぉ!』

 

まるで演劇のように両腕を広げながらくるくる回り狂い笑う男。

その男を見て周りにいた部下たちも面白そうに笑う。

 

『さぁ!君もこの作品に…あぁ?』

 

トウヤの目の前に来た男は顔を覗き込みさっきまでのテンションとは打って変わってひどくつまらないものを見たかのように態度を変える。

 

『心が壊れているだと?おいおいさっきまであんなに生き生きしてたじゃねぇか…やめた、おいそのゴミをそこで捨てとけ。もう殺す価値もねぇわ。どうせすぐ動かなくなる』

 

男はトウヤを拘束していた部下に指示する。

その指示通りに無造作に投げ捨てられたトウヤは糸が切れた人形のように地面に伏す。

それをみた男は舌打ちをして部下を連れて歩き出した。

そこに音もなく男たちと同じような格好をした集団が現れた。

 

『……また派手にやったな、ジール』

 

『白けちまって台無しだ。おかげで最高傑作だと思ってたもんが最悪の駄作になったぜ…こっちに情報を流してた内通者だったバカも一緒に始末したしこれぐらいいいだろ?それよりもてめぇこそ仕事をしてたんだろうな、クレー』

 

語りかけてくる一人に男-ジールは答える。

少しいらだちながら語りかけた一人-クレーに言う。

 

『愚問だな、この村に生存者はもういない。あらかた片付けてきた。後始末はもうすぐ来る本隊に投げる。ちょうど北の異民族を狩るための軍がいるから途中まで一緒だろうからな。それよりも地が出ているぞ』

 

『いいんだよ、堅苦しいやつだなてめぇは…』

 

『任務だからな。大体…ん?』

 

話している最中にふと何かに気がついたクレーが足を止める。

ジールも足を止めクレーを不思議そうに見たがすぐに違和感を覚えあたりを見回し始めた。

周りにいる部下たちも何かを感じたのか同様にあたりを見る。

一番後ろを歩いていた集団の一人がふと後ろを向きある地点を指差した。

 

『だ、誰かが立ってるぞ!』

 

その声に全員が反応し武器を取って構える。

ジールとクレーもナイフを取り出しその地点を見据えた。

 

『…生存者はいねぇんじゃねぇのかよ?クレーさんよぉ』

 

『お前こそ、作った作品とやらの出来が悪かったんじゃないのか?』

 

口では言い合うが互いに視線は一点を見つめたままだった。

先ほどまでトウヤが倒れていた場所に何者かが立っている。

火に包まれ煙でよくは見えないが間違いない。

やがてその影がゆっくりと動き出すと徐々にその姿が目に見えるようになってきた。

 

出てきたのは、トウヤだった。

 

一歩ずつ足を引き摺るようにゆっくりと歩いてくるその姿はまるで生気を感じない。

右腕はただぶら下がっているだけのようで動く気配はない。

俯きながら歩いてくるため表情を伺うことも出来ない。

だが、その足元から何か赤黒い煙のような何かがトウヤへと集まり纏わりついていた。

やがてその歩みを集団から10mほど離れた場所で止める。

集まっていた何かは地面だけからではなくトウヤの体の周囲からも現れ始め満身創痍だった体を癒し始めていた。

その光景には数多くの死体を見てきたこの殺しのプロたちであっても用意に動けずにいた。

 

その何かがトウヤの中に吸い込まれると同時に背筋の伸びていなかった姿勢を直し顔を上げる。

燃え盛る火の中顔は影で隠れているというのに、そこから見える二つの赤い瞳は炎よりもただ赤かった。

その瞳を見た途端、全員に言い表せない気配が自分を包んだのを感じ取った。

恐怖。

そう、今まで感じたことのない恐怖という感情がまるで形を成して目の前に現れたようだった。

ジールとクレーは自身の体が蛇ににらまれた蛙のように動けないことを理解したと同時に目の前にいる存在が危険すぎるものだと即座に判断した。

事実自分たちより前にいる部下も震えていたり倒れそうになっている。

早く指示を出さなければ殺される。

 

『………ぁ……ぁぁ、ぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!』

 

そう思ったときだった。

一人の部下が錯乱したように武器を構えて走り出してしまう。

周りが止めようとしたが遅そすぎた。

叫びながら未だ動かない自分にとって得体の知れない存在に切りかかる。

だが、その寸前先ほどまでの鈍重な動きしか見せなかったそれがいきなりカウンターのように切りかかってきた一人の顔を掴み地面に叩きつける。

そして先ほどまで体を覆っていた何かがその腕を通して飛び込んできた餌に食いつくように一気に侵食する。

男も抵抗しようとするがそれも数秒で収まり動かなくなってしまった。

トウヤは手を離すと立ち上がる。

掴まれた仮面は衝撃で壊れまるで炭のようになった男の顔があらわになった。

 

『な、なんだ?何をしたんだあのガキ!?』

 

『とにかくまずい…本隊と早く合流したほうがいい!』

 

ジールが思わずそう言った。

クレーは今起こった出来事を驚愕しながらもその場から立ち去ろうとする。

しかし統率が乱れ、恐怖に陥った部下たちにその声が届くことはなった。

 

『やられたぞ…か、かかれ!人数で押して殺せばいける!』

 

『殺せ!殺せぇぇぇ!』

 

『な!待てお前たち!』

 

走り出した2人に続いてその後に続くようにジールとクレーの部下たちは突撃した。

その集団をトウヤは見据え右腕を横に伸ばして何かをつぶやく。

 

「”―――――”」

 

すると後方からひとりでにククルカが飛んできて、まるでトウヤの手に吸い込まれるように収まった。

トウヤは掴むと同時に飛んできた勢いを利用して回転し向かってきた敵を一瞬で切り払った。

一度に10人の首が飛びその光景に思わず突撃をやめた部下たちだが、前列に近いものは恐怖で尻餅をついてしまい動けなくなる。

その隙を見逃さないかのようにトウヤは距離をつめククルカを上に投げると両手で敵を掴み倒し先ほどの男にしたように何かで侵食していく。

その行為が終わるとまた別の敵を掴み同じような行為を繰り返した。

たまらず後ろのほうにいた者たちは逃げるように引き返す。

ジールもクレーもそれを見て撤退しようと走り出した。

 

”ガンッ”

 

『何!?』

 

が、その行く手は先ほどトウヤが投げたククルカによって遮られさらに柄の上には梟のように佇むトウヤの姿があった。

 

『ま、待てよ!俺たちに手を出せばどうなるか分かってるのか!?そ、そうだ!オネスト様に掛け合ってやる!お前も一緒に―』

 

「”必要ナイ”」

 

ジールはその声に目を見開く。

まるでこの世のものとは思えない声だった。

そしてその言葉は、耳に最後まで残った。

 

「”ゴミクズ同然ノ害虫ト交ワス言葉ハ、生憎持チ合ワセテイナンデナ”」

 

足を止めてしまった彼らが次に見たのは鎌を振りかぶるトウヤと倒れて動かなくなったはずの味方が襲い掛かってくるという恐怖だった。

 

 

 

 

 

その後村の外れで待機していた襲撃本隊が謎の集団により襲撃され壊滅。

わずか3人の兵士だけが生き残る結果となったが、三人とも口を硬く閉ざしその一週間後、死亡した。

しかし、生き残った兵士の一人が死ぬ間際に議会の場でこう語ったと言う。

 

”我々は呪われた

 

生者が死者に成り代わり

 

死神が私を誘う

 

だがあれは死神ではない

 

あれは恐怖だ

 

あれは悪魔だ

 

近い未来この帝国を脅かす死の呪いだ

 

私にはもう平穏はない

 

やつこそが私たちをこれからも苦しめる"悪夢"だ”




プロローグ終了です。
時系列的に言えばタツミたちが村を出る一月前と言ったところでしょうか?
エスデス様が北の勇者をペットにするのにどれだけ時間が掛かったかどうか分かりませんし…
エスデス様は北の異民族の地で少しばかり遊んでもらうことになりました。はい。
とりあえず長かったプロローグも終わりましたし次からはようやく本編です。

さて、ここでトウヤが今回使った技。
何か分かった方いますかね…(汗)
一応シルヴィア姐さんのスタイルとBASARAキャラの一人の技を使ってます。
といっても技と言えるかどうかもあやしいところですが。
覚醒したトウヤ君ですがこの先に出てくる彼はとある理由で制約が消えてます。
三つの特典を自由自在に使います。
タグ変えないといけないかもなぁと思いつつ今回はここまでで。

あ、感想・指摘などはいつでもお待ちしております。というかください。
誹謗中傷だけはやめてください。お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。