なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた   作:オリウス

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試しに付き合ってみる?

 草薙栞との付き合いは中学から数えると四年目になる。なんとなく駄弁るようになって、一緒にいることが増えた俺の一番の女友達。

 いつもだるそうに話すが、美少女で、長い髪はさらさらだし、眠そうな目は大きい。

 

「今日も眠そうだな」

「眠いんじゃなくていつも低燃費なだけ」

 

 栞は机に頬杖をついたまま、俺、津城琢磨を見上げる。

 クラスの男子が噂しているのを俺は何度も耳にしている。

 ダウナー系美少女。確かに顔立ちは整っているし、伏し目がちな瞳は妙に色っぽい。

 

「琢磨。購買。クリームパン」

「俺はパシリじゃないんだが」

「お願い。あとコーヒー牛乳」

「増えてるんだが」

「成長期」

「お前もう成長しきっているだろ」

 

 栞の体は既に十分と言っていいほど発育している。その大きな胸はクラスの男子の視線を集めているし、俺も時々そういう目で見てしまう。

 栞とはなんでも話せる。好きなアニメの話も、家族とちょっとぎくしゃくしていることも、ちょっと過激な下ネタも、何でも話せる。

 俺も栞にだけは格好つけずに話せる。テストでやらかしたことも、夜中にふと怖くなることも。

 

「琢磨、昨日の子、どうなったの」

「どうもなってない。何で知ってる」

「見た」

「ストーカーか」

「観測者」

 

 淡々と訂正される。まあ特に隠しているわけじゃないから、別に構わないのだが。

 俺は昨日告白された。別によく知らない子だったから断ったけど、惜しいことをしたかもしれない。

 

「付き合わないの?」

「付き合わない」

「なんで?」

「誰かと付き合ったら、栞と駄弁れなくなるだろ」

「なるほど。確かにそれは嫌」

「だろ?」

 

 俺はこの栞との時間が大切だった。本当に通じ合える友人だと思っているからこそ、大事にしたい。

 

「琢磨」

「ん?」

「恋人ってなんなんだろ」

「さあな」

「そんなにいいものなのかな」

 

 興味があるのか。栞も男子からモテているのは知っているが、今のところ彼氏を作る気配はない。

 

「じゃあさ」

 

 栞はいつもの眠そうな目を見開いて、俺を見据えた。

 

「私と琢磨で付き合ってみる?」

「栞と俺が?」

「うん」

「正気か?」

「正気」

 

 まさか栞がそんなことを言い出すなんて思わなかった。

 

「お前俺のこと好きなのか」

「好き。友達としてだけど」

「俺もお前は友達としては好きだけど。あと体」

「私の体、興味あるの?」

「お前、自分のスタイルの良さ自覚してから言えよな」

「ん。結婚するなら琢磨がいい」

 

 確かに俺は栞とのこの時間を壊すつもりはない。確かに俺が彼女を作ろうと思ったら、栞の存在がネックだ。なら、栞と付き合うのが一番丸く収まるのではないだろうか。

 

「お試しで。合わなかったらまた友達に戻ればいい」

「確かにそうだな。じゃあ付き合ってみるか」

「ん。じゃあ契約成立」

 

 栞との間では恋愛の儀式も淡々と進む。普通はもっと勇気を振り絞って好意を伝えて、付き合うものだろうに。

 

「それで恋人って何するの?」

「セックスだろ」

「セックス……琢磨なら別にいいけど」

「いいのかよ」

「だって私の体好きなんでしょ」

「好きだな。はっきり言ってめちゃくちゃエロい」

「じゃあ今日する?」

「本気か?」

「いいよ。私の家、親いないし」

 

 淡々と進む。というかいきなり順序をすっ飛ばしすぎじゃないだろうか。

 普通はもっと手を繋いだり、デートをしたり、キスをしたりとかあるだろ。

 俺もなまじ栞が相手だから思っていることを素直に言ってしまう。男は正直、やりたいしか頭にないと思う。俺も男だし、性欲はある。年頃だしな。

 だが、同時にそんな簡単に体の関係になっていいのかという疑問が浮かぶ。

 

「いや、今日はやめとこう」

「なんで?」

「体の関係になっちまったら、そう簡単に友達に戻れなくなるから」

「一理ある」

「男女の友情が成立しないって言われるのって、結局体の関係になるからだと思うし」

「じゃあさ、何するの?」

 

 眠そうな目で栞は俺を見てくる。

 

「普通はデートとかするんじゃないか」

「デートって二人で遊び行くこと?」

「そうだな」

「いつもやってるし」

「確かにそうだな」

 

 いざ栞と付き合うってなっても、何をどう変えればいいのかわからない。

 

「いやでも、普段相手に見せないような格好すればいいんじゃないか」

「なるほど」

「というわけでデートをしよう」

「ん。了解」

 

 というわけでデートをすることになった。まあ栞と二人で遊びに行くのはいつものことだから、たいしていつもと変わらないだろうけど。

 

「じゃあ明日の朝十時に待ち合わせするか」

「駅前?」

「そうだな」

 

 俺たちはそう言って約束を交わす。人生初めての彼女だが、あまり実感が湧かない。

 でも、栞の彼氏になれたのは控えめにいって優越感がある。他の男子たちは絶対に羨ましがるだろうし、俺も好きでもない女から告白されることもなくなる。

 恋愛は面倒くさそうというイメージがあるし、セックスだけできればいいいのにと思うのが俺の素直な気持ちだ。だが、栞のことは大事にしたい。俺の大事な友達だから。栞とただ体の関係になるのはダメな気がする。そういうのはちゃんと正式に付き合ってからだな。

 だが、この時の俺は知らなかった。栞が最高のパートナーであることを。

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