なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた   作:オリウス

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知ってる?

 昼休み、俺は栞と一緒に昼食を摂る。栞が弁当を作ると言っていたが、今朝は作る時間がなかったので、俺も栞も食堂に出向いていた。

 

「ごめんね、お弁当」

「いいよ。お前が朝弱いのぐらい知ってる」

「次は作ってくるから」

「まあ明日から宿泊研修だし、帰ってきたからだな」

 

 栞と一緒に宿泊研修に出掛けるのは少しわくわくしている。これが個人で行く旅行であれば、同じ部屋で寝泊まりすることもできたのだろうが、今回は学校のイベントだ。男女の部屋は分けられる。だが、栞と接する機会が少ないのは寂しい。そこで、俺は栞に夜こっそり抜け出してくるように提案した。

 

「でもこういうお泊りのタイミングって女子同士で恋バナで盛り上がったりするんだよね」

「お前そういう話まざらないだろ」

「まあ雫も男が苦手だし、そういう話はしないだろうけど」

 

 そもそも栞が他の女子と喋っている姿を俺はあまり知らない。こいつは男友達みたいな感覚で俺は今まで接してきた。下ネタトークだって普通にできるし、なんだって話せる仲だった。今までは気にならなかったが、交友関係にも関心を持つべきだろう。

 

「天貝さんとはどういう経緯で仲良くなったんだ」

「雫が困ってたところを助けたら、懐かれた」

「あー、そういう始まりか」

 

 栞は人が困っていたら助ける傾向にある。基本的にいいやつなのだ。普段は眠そうにしていて活動的ではない栞だが、人が困っていたら手を差し伸べる優しさを持っている。

 だが、栞はその見た目もあって、女子からは煙たがられている。好きな男子の好きな人が栞だなんて話は何度も聞いてきたし、女子からすればおもしろくないだろう。

 だから意外と栞には友達が少ないのだった。それでも男子からは崇め奉られているが。

 

「夜逢引きするのドキドキするね?」

「そうだな。まあこういうイベントは楽しまなきゃ損だろ」

 

 宿泊研修は、キャンプ場を貸し切って行われる。男子と女子のテントは離れた場所に設置されるらしいが、共用のスペースはある。基本的には学校指定のジャージで過ごすことになるだろうが、見知らぬ土地での逢瀬は、恋を盛り上げてくれること間違いない。

 

「ジャージは残念?」

「そんなことないぞ。普段と違う格好が見られるのはおいしい」

「でも可愛くもエロくもないし」

「それはほら、あんまり可愛かったりエロかったりすると抱きしめたくなるから」

「抱きしめてくれないの?」

「抱きしめます」

 

 俺は何を言っているのだろう。こんな可愛い彼女を抱きしめない選択肢なんてないというのに。

 栞は俺と密着するのが好きだった。いつも手を繋げと要求される。俺は人にくっつかれるのが不快に感じる質だ。だが、不思議と栞だけはそういう不快感がない。俺はパーソナルスペースが人よりも広い自覚はあるが、栞はその中にいても気にならない。

 むしろ愛おしく感じる。

 

「宿泊研修、なんかいろいろあるみたいだね」

「そうだな。野外炊飯に肝試し、それからキャンプファイヤーか」

「肝試しはちょっと季節外れ感あるけどね」

「いうてまだ暑いから夏っぽいけどな」

「夜は少しずつ冷えてきてるよ」

 

 宿泊研修は一泊二日。社会性を身に付けるために行われる。俺も栞も社会性があるわけじゃないから、この宿泊研修は普通にきつい。だが、二人でなら乗り越えられるような気がする。幸い、グループは同じだし、サッカー部の連中もいいやつらだ。恵まれているとは思う。

 

「知ってる? 百年生きた大木の前で告白したら、永遠に結ばれるんだって」

「そういう伝説があるのか」

「うん。だからこの宿泊研修では毎年何組かのカップルが誕生するんだとか」

「そういうスピリチュアル的なやつあんまり信じないんだがな」

「琢磨はそうだろうね」

 

 とはいえ、恋愛的な噂は普通に気になる。栞と二人きりになれるのは夜の限られた時間に限る。その時間でその噂の大木を巡れたらいいなと思う。

 

「楽しみだね、宿泊研修」

「そうだな。付き合ってから最初の旅行だしな」

「いつかは二人きりで旅行に行きたい」

「そうだな。冬休みにでも企画するか」

「いいね。楽しみにしてる」

 

 今まで友達として栞と付き合ってきて、どこかに二人で旅行するなんてことはなかった。あくまで俺と栞は友達だった。たとえ栞を同性の友達のように感じていたとしても、さすがに異性tと二人で旅行に行くことはしなかった。その辺は俺たちも弁えていた。

 というか旅行に行ってしまったら変な感じになるんじゃないかという恐怖もあった。実際こうして付き合い出したわけだが、あの当時はまだ栞との関係性を壊すのが怖かった。

 思えば、中学の時初めて出会った時から、俺は栞に対して、どこか女性を感じていたのかもしれない。

 でなければ、そこまで意識することもなかったのだろうと思う。

 

「どうしたの?」

「栞と初めて出会った時のことを思い出してた」

「懐かしいね」

「そうだな」

 

 俺は懐かしい思い出に浸りながら、うどんを啜る。栞と今こうしていられるのはあの時、栞と友達になったからだろう。

 俺は過去の自分を称えながら、うどんを啜った。

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