なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた   作:オリウス

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幽霊って信じる?

 洗い物を終えると、今度は全員で集まって肝試しが待っている。コースはキャンプ場の近くにある古いお寺に入っていくという感じの道順だ。途中はけもの道を抜けていかなければならないので、明かりは必須だろう。

 男女で好きな奴とペアを組めと言われたので、俺は当然栞と組む。

 

「雫大丈夫かな」

 

 栞が心配そうに顔を歪める。確かに男子が苦手な天貝がペアを見つけるのは至難の業だろう。だが、俺たちも人のことを気にしてはいられないのだ。

 

「お前確か怖いの無理だったよな」

「無理」

「だよな」

 

 栞とはいろんなところに遊びに出掛けたが、お化け屋敷にだけは行ったことがない。栞が嫌がるからで、前に近くに期間限定のお化け屋敷ができたときも行かなかった。

 

「頼りにしてる」

 

 栞が俺の服の袖を遠慮気味に掴む。その手は震えていた。

 

「任せろ」

 

 ちなみに俺も怖いのはあまり得意ではない。ホラー映画とかも苦手だし、暗いのもそんなに好きじゃない。だが、彼女から頼られて情けないところを見せるわけにはいかない。俺は男で、栞は女だ。男は女を守る義務がある。

 ペアができた順に肝試しに出発する。俺たちもペアになったので、すぐに出発した。

 

「暗いね」

 

 周囲は木々で覆われ、空が見えにくい。空は満天の星空だが、綺麗だと感じる余裕がなかった。

 

「琢磨はさ、幽霊って信じる?」

「俺はどっちでもないかな」

「私はね、いると思ってる」

 

 栞がそんなことを言うのは珍しい。あまりオカルトなことは信じないタイプかと思っていたが、またしても栞の新たな一面を知ることになった。

 

「好きな人と別れるのって辛いじゃん」

「それは確かに辛いだろうな」

「死んだらお別れなんてそんなの寂しいよ」

 

 俺たちはまだ若い。だから死んだ後のことなんて考える機会はない。だが、栞は死んだ後のことを考えている。

 

「死んでも好きな人の傍にいたいと思う」

「それはそうかもな」

「だから幽霊はいるよ。きっと」

 

 栞は小さくそう言うと、歩みを止めた。どうしたのかと思って俺も歩みを止める。

 

「あそこ、なんか火の玉が見える」

「そんなバカな」

 

 栞の指さす方向を見ると、確かになにやら明るい光が浮かび上がっているのが見えた。ゆらゆらと揺れている。

 

「怖い」

 

 栞が震え出す。だがその表情にあまり変化はない。栞は顔にでにくいタイプなのだ。俺はごくりと生唾を飲むと栞の手を引き、ゆっくりとその火の玉に近づいてみる。

 

「お、来たか」

 

 物陰に隠れた先生が竿に括りつけた糸で、なにやら炎を揺らしていた。

 

「どうやってるんですかこれ」

「百均で売ってたぞ」

「へえ。世の中には便利なものがあるんですね」

 

 火の玉の正体は百均のおもちゃだったようだ。

 振り返ると、栞は地面に蹲っていた。

 

「どうした?」

「腰が抜けた」

「マジか」

 

 栞は泣きそうになりながら俺を上目づかいで見る。

 

「歩けない」

「しかたねえな」

 

 俺は溜め息を吐きながら栞をおぶる。背中に柔らかな感触が伝わり、嫌でも女を意識してしまう。栞の体は柔らかかった。栞は俺におぶられると、ぎゅっと抱き着いてくる。余程怖かったのか体は小刻みに震えていた。

 

「まあなんだ、すまんな」

 

 先生に謝られ、俺は苦笑する。先生に見送られながら先に進む。このけもの道を抜ければ、お寺があるはずだ。栞をおぶったまま歩く。

 

「重いでしょ」

「重くないよ」

「嘘。琢磨、そんなに力ないの知ってるんだから」

「バレたか。まあそれでも男には意地を張りたいときもあるわけで」

 

 俺はそう言うと微笑む。

 確かに体に負担はかかっている。だが、それでも俺は栞を重いとは言いたくなかった。あれだけ何でも言えるような間柄だったのにだ。

 

「自分の彼女をおぶれないなんてださい男にはなりたくないんだよ」

 

 俺はそう言って歩く。途中何度かお化け役で潜んでいた先生に驚かされて栞が悲鳴を上げたが、その度に俺にくっついてくれるので役得だった。

 そうして辿り着いたお寺で、俺は栞を下ろした。

 

「ありがと」

 

 栞は俺にお礼を言うと、溜め息を吐いた。

 余程怖かったのか、少しだけ顔色が悪かった。

 

「私ね、怖いとその場に固まってしまうの」

「わかるぞ。俺もそのタイプだ」

「悲鳴が出る時と出ないと気があって、その場から動けなくなっちゃう」

 

 栞は深く息を吐くと、俺の手をぎゅっと握ってきた。

 

「琢磨がいて良かった」

「俺も栞がいてよかった」

「なんだかデートみたいだったね」

「そうだな。二人だったしな」

 

 夜のデートは新鮮な気持ちになれる。夜道を栞と二人で歩くのは、なんだか心地よかった。

 お寺の札を回収し、俺たちはゴールした。既にゴールしていた天貝が栞を見つけるなり寄ってくる。

 

「栞ちゃん、怖かったよぉ」

 

 涙目になりながら栞にすがりついてくる。

 

「雫は誰と組んだの?」

「同じグループの篠田くん。同じグループの人ならマシかなって」

「ペア見つかって良かったね」

「うん。篠田くんにすっごく気を遣わせちゃった」

 

 天貝はそう言って溜め息を吐く。とりあえずこれで肝試しは終了だ。あとはキャンプファイヤーが待っている。

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