なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた 作:オリウス
「待った?」
「待ってない」
「琢磨ならそう言うよね」
栞は俺の前に歩みを寄せると、木を見上げた。
「大きいねえ」
「百年生きてるらしいからな」
「それはご利益ありそうだ」
夜中にこうして栞と二人きりの時間を作れたのは僥倖だ。
「琢磨、好き」
「俺も好きだぞ」
「琢磨がそう言うとは思わなかったなぁ」
「なんでだよ」
「だって私ばっかり盛り上がってる感じだと思ってたから」
「栞だって顔に出てないじゃないか」
俺もあまり表に気持ちを出すほうではないから、栞に伝わってないのかもな。
「いきなり告白してきたのは、この木の伝説を信じたからか?」
「そうだよ」
「伝説通りなら、これで俺たちは永遠に結ばれるわけか」
「あんまり信じてないでしょ」
「だって関係ないだろ。そんな伝説がなくたって、俺たちはずっと一緒だ」
俺の言葉に栞は顔を赤くする。
「そういうとこ……琢磨ってかっこいいこと平気で言うよね」
「自覚はない」
「他の女の子からもモテるわけだよ」
栞が妬いている。僅かに頬を膨らませ、いじけてみせる。可愛い。
「空気が上手いな」
「夜の空気はこの絶妙な感じがいいよね」
二人の吐息が混ざり合い、俺たちは顔を見合わせる。
「宿泊研修も終わりだね」
「なんだかんだあっという間だったな」
「琢磨と一緒だから楽しかった」
「俺も栞がいたから楽しめたな」
星空を見上げながら、俺たちは手を繋ぎ合う。近くのベンチに座り、俺たちはスマホで写真を撮る。
「こうやって思い出をたくさん残していきたいね」
「栞は写真を大事にするよな」
「ん。思い出は大事だからね」
栞はスマホを見ると、薄く微笑む。
「琢磨はさ、私が他の男の子に告白してきたらどうする?」
「そりゃ妬くだろうな」
「妬いてくれるの?」
「それで不安になる」
「不安になるの?」
俺はそれほど自分に自信があるわけじゃない。だから栞が他の男に靡くかもしれないという恐怖もある。
「あのさ、琢磨。琢磨は私の気持ちを舐めすぎ」
「別に舐めてないだろ」
「私が琢磨以外の男に靡くと思ってるじゃん」
「それは」
「私は琢磨に一途なの。だから、他の男になんて一切興味がない」
珍しく語気を強めて栞が訴えてくる。こんなにも栞が語気を強めることはあまりない。
「もしかして怒ったか」
「怒ってるよ」
「すまん。栞を信用していないわけじゃないんだ。ただ俺はそこまで自分に自信がないんだ」
「琢磨ってモテるのに自分に自信がないんだね」
「俺は別にイケメンってわけじゃないからな。栞を繋ぎとめておけるだけの魅力が俺にあるかわからないんだ」
栞が他の男にいくなんて思ってない。そういうやつじゃないこともわかっている。それでも不安を拭えないのはなぜなのだろう。友達でいた時はこんな不安を抱えたことはなかった。付き合い始めたからこそ、生まれた不安でもある。
栞は俺の顔をじっと見つめると、溜め息を吐いた。
「琢磨、こっち向いて」
栞の言葉に顔を上げる。栞は俺の頬に手を添えると、ぐっと自分の方に引き寄せた。
「んちゅ……」
重なる唇。目を閉じた栞の表情がとても緊張しているように見えて、俺は落ち着いた。まつ毛長いな。綺麗だ。
「わかった?」
唇を離した栞がじっと俺を見つめてそう聞いてくる。
今のキスには栞の気持ちが、熱量が伝わってきた。
「私の好きの気持ち。伝わった?」
「ああ。ありがとう」
俺は素直に頷いた。栞の気持ちがこれほど熱いなんて俺は想像すらしていなかった。俺の胸の高鳴りが、確かに俺に栞の気持ちを伝えていた。
「私をもっと信用して。私も琢磨の気持ちを信用するから」
「わかった」
俺は栞のこの言葉を一生忘れないだろう。
「大事なことは口に出さなきゃね」
「そうだな」
「今までなんでも言い合えてた仲だしね」
友達の頃はなんでも言い合えた。付き合うって難しいんだな。俺も初めての彼女だから、戸惑うことも多い。友達と恋人の違いはなんだろう。
「友達の時さ、ずっと私琢磨のこと好きだったんだよ」
「言ってたな」
「でも琢磨があまりにも友達として接してくるから、言い出せなかった」
「それはごめん。栞以上の友達いないと思ってました」
あんなに気を許せる友達は今後現れないだろう。それぐらい栞のことが大事だった。
今は恋人になって、大事の意味が変わった。俺はこれから一生をかけて栞を守っていかなければならない。
「栞、改めてよろしくな」
「どうしたの改まって」
「なんか言いたくなった」
「まあわかるけど」
栞は俺の肩に頭を乗せると、呟いた。
「まあ、楽しくやっていきましょう」
栞の言葉通り、これから楽しくやっていこうと思う。
まだまだ経験していないことがたくさんあるし、栞と一緒にいろいろ経験していきたいと思う。美味しいものもたくさん食べたいいし、いろんなところに旅行も行きたい。
「それじゃそろそろ戻ろっか」
「そうだな。気つけて戻れよ」
「ん。琢磨もね」
俺たちは最後にハグをして分かれる。来た道を戻りながら、俺は空を見上げる。空一面に星が広がり、綺麗な夜だった。