なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた 作:オリウス
翌朝、髪がぼさぼさの栞がテントから出てくる。眠たそうに瞼を擦りながら欠伸を噛み殺している。
「眠そうだな」
「やっぱり下がね。ごつごつしてて寝にくかった」
「確かにそれはあるな」
キャンプに慣れていない俺と栞は、テントで眠るのになかなか苦戦した。笹原たちはぐっすり眠っていたので、やはり馴れの問題だろう。
「朝食は目玉焼きとウインナーだな」
笹原たちが再び火を起こし、フライパンの上で調理している。俺と栞はそれを眺めながら欠伸を噛み殺した。
「二人とも眠そうだね」
天貝が声を掛けてくる。確かに昨日は夜更かししたうえに、テントが寝苦しかったこともあり、少しばかり寝不足だった。
「昨日夜どこ行ってたの」
天貝が栞に詰め寄る。
「あれ、起きてたの?」
「私、寝たふりは得意だから」
「なんで寝たふりするのさ」
栞が鋭く突っ込むと、天貝は頬を膨らませた。
「だって栞ちゃん、明らかに寝る気なかったんだもん」
「それはまあ、私にもいろいろあるからさ」
誤魔化し方が下手すぎる。
「わかった。津城くんと会ってたんでしょ」
「なんでわかったし」
本気で驚いている栞。その誤魔化し方なら誰でも見抜くだろ。
俺は溜め息を吐くと天貝に説明する。
「俺から誘ったんだ。夜抜け出してきてくれって」
「やっぱり男の人は破廉恥です。夜に男女で会おうなんて、恥ずかしい」
顔を真っ赤にして天貝が喚く。なにやらいかがわしい妄想をしているようだが、何も突っ込むまい。
「それでどこまでしたの? まさか体の関係になったんじゃ」
「こんな場所でどうやってセックスするってのさ」
「セッ⁉」
天貝が顔を真っ赤にして俯く。
「せいぜいキスぐらいだよ」
「キスはしたんだ」
少しも恥じらう様子を見せず、栞はそう豪語する。相変わらず俺と話す時みたいなノリで話すな。天貝に下ネタはちょっときついだろ。
「でもそれぐらいいいでしょ。雫も恋すればわかるって」
「私は恋なんて……まず男の子が無理だし」
「でも篠田とはいい雰囲気だったじゃん」
「あれはそんなんじゃなくて! ただ暗いのが怖かった時に優しくしてくれたというか」
「ふーん」
栞は口の端を緩めると俺を見てにやりと笑った。俺は篠田から天貝への想いを聞いている。だから天貝がどんな反応をしているのか少し気になっていたが、案外満更でもないのかもしれない。だが、いきなり距離を詰めると上手くいかなそうだ。徐々に関係を構築していく必要があるだろう。
「体痛い……帰ったら寝よ」
「また寝るのかよ」
「琢磨も一緒に寝る?」
「寝ねえよ!」
今栞と寝てしまったら確実に襲ってしまう。この山の朝の空気というのはひんやりとしいて気持ちいい。独特な雰囲気がある。
「できたよー」
笹原が人数分の皿に目玉焼きとウインナーを乗せて配る。俺たちはそれを受け取ると、並んで座った。
「いただきます」
栞は手を合わせると、箸で目玉焼きを潰す。
「半熟だ」
栞は満足げに舌なめずりすると、目玉焼きを口へ放り込む。
「うん、美味」
栞は頷くと、笹原に親指を立てる。
「なんか化粧していない栞を見るのは新鮮だな」
「あー確かにそうかもね。私のすっぴんどう?」
「可愛い」
「……お世辞はいいから」
自分から聞いた癖になぜか照れた栞は俺の脇腹を小突く。
実際、すっぴんの栞は普通に可愛いと思った。メイクをしている時はそりゃ美しいけど、すっぴんはすっぴんで見ていたくなるような素顔だった。もともと顔立ちは整っているし、肌質もいいから、すっぴんでも十分可愛いのだ。
「琢磨もメイクしてみる? きっとイケメンになるよ」
「いらん」
栞はじっと俺の顔を覗き込みながら、うんうんと頷く。
「私のメイク技術にかかれば、琢磨をアイドル並みの顔にすることも可能」
「別に俺はアイドルになりたいわけじゃないから」
「もったいない」
栞は目を光らせながら残念がる。栞が前々から俺の顔にメイクを施したがってるのは知っている。俺としては自分の顔が気に入っているので、あまり弄りたくはない。
「まあそのうち機会もあるか。今は引こう」
栞はそう言ってウインナーを頬張る。
朝食を終えると、テントを畳む作業に入る。笹原たちと協力しながらテントを畳んでいく。
テントを畳み終えると、グループごとに整列してバスに乗り込む。
バスに揺られながら山道を下っていく。
隣の栞は目を閉じて寝ようと頑張っていた。行きはバス酔いしていたから帰りも不安なのだろう。
俺は栞の背中を撫でながら励ました。
「隣が琢磨で良かった」
「お茶飲め。外はあまり見るなよ」
栞は頷くと、お茶を飲んでいた。そうしてバスに揺られること二時間。俺たちは学校に帰ってきた。
バスから降りると栞がぐっと伸びをする。
「なんとか酔わずに済んだ」
栞は深く息を吸うと、髪を掻き上げる。
担任から最後の話をされ、俺たちは解散する。栞と一緒に学校を出て帰路に就く。
栞の隣を歩きながら、俺は空を見上げる。雲一つない快晴だった。
「帰ったら寝る」
「俺も風呂にゆっくり入りたい」
俺たちはそんな話をしながら、帰り道を歩いた。