なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた 作:オリウス
カラオケで熱唱した後、店を出ようという話になった。
「じゃあ着替える」
栞がそう言うので、俺は後ろを向いて見ないようにする。
「なんで後ろを向くの?」
「だってさすがに着替えを見るのはまずいだろ」
「別に平気」
栞はそう言うと俺の肩を引く。
「むしろ琢磨に見せられないものはない」
そうして俺を振り向かせる。栞は恥じらう様子を見せながら、バニーの衣装を脱いでいく。あっという間に下着姿になり、俺は赤面する。
「やばいって。さすがに下着姿を拝むのは友達の範疇超えてるって」
「友達じゃない。彼氏」
そうだった。いきなり関係性が変わったから戸惑うな。それでも俺はなんとか視線を外そうと視線をさ迷わせる。だが、栞の見事な体は俺の視線を釘付けにする。圧倒的なボリュームの谷間。腰の括れ、それから魅力的な桃尻。こうして見ると改めて男好きのする身体だと思う。そのへんのグラビアアイドルよりいい体をしている。
「終わった」
普通の私服に着替え終えたところで、俺は溜め息を吐く。一気に精神がすり減った。まだ脳内で栞の白い素肌が焼き付いている。
「私の体、好き?」
「お前の体を嫌いな男はいないだろ」
「そう。琢磨が好きなら良かった」
こいつは付き合い出してから露骨に体のことを聞いてくるな。そんなに俺としたいのだろうか。いやいや。そもそもお試しで付き合っている段階で体の関係になるのは芳しくない。俺も理性をフル稼働させないと。
俺たちはカラオケを出ると街を練り歩く。
「カラオケで結構時間潰せたな。どっか行きたいとこあるか」
「琢磨に任せる」
基本的に栞はいつもこっちに丸投げだ。考えるのが億劫なのだろうが、俺も慣れている。いつも俺が行きたいところばかり行っているわけではない。ちゃんと栞の好みを考えて、連れて行ってやると嬉しそうな顔をするんだよな。
「猫カフェ行くか」
「ん。賛成」
栞は動物が好きだ。動物と触れ合える猫カフェは、栞にとって最高の場所である。
「ん。琢磨、手出して」
「なんだよ急に」
「いいから」
俺は言われた通りに手を出す。栞は俺の手指に自分の手指を絡ませてくる。
「おい」
「デートなんだから手は繋ぐでしょ?」
確かにそうだが、今まで友達として過ごしてきた分、いざ手を繋ぐとなると不思議な緊張が奔る。初めて繋ぐ栞の手はしっとりとしいて僅かに汗ばんでいた。
「お前、もしかして緊張してる」
「ん。男の子と手を繋ぐの、これが初めてだから」
「俺だって女の子と手を繋ぐのこれが初めてだぞ」
「じゃあ同じだね」
強く俺の手を握りしめてくる。というかこのつなぎ方、いわゆる恋人繋ぎってやつじゃないか。がっちりと手を握られ、俺は車道側を歩く。初めて触れる栞の手は、想像以上に柔らかかった。
「琢磨の手、がっしりしてるね」
「栞の手は柔らかいな」
「やっぱり私たち異性なんだね」
「そうだな」
こんなことで異性を感じるのは遅いのかもしれない。だが、今まで気の合う友達としてやってきたから、こういう時、どういう距離の詰め方をすればいいのかわからない。今のところ、栞がかなり積極的なのは間違いないが。栞のやつ、俺と本当に恋人をやるつもりなのだろうか。
街を歩いていると、露骨に路上でいちゃついてるカップルを見かける。
「まーくん、抱きしめて」
「もちろんさ、ハニー。いくらでも抱きしめてあげるよ」
……ああいうのは刺激が強いな。思わず目を背けたくなる。だが、隣を見ると栞はじっとバカップルを見ていた。
「恋人同士ってあんなことするの?」
「あれは極端な例だろ。普通はもう少し弁えてるものだぞ」
「でも、すっごく幸せそう。周りが何も目に入ってないみたい」
「そうだな。あれは周りが見えてないな」
「私もあんな気持ちになるのかな」
「栞が? 想像つかんな」
栞は基本的にいつも眠そうだ。気だるげに話すし、仕草もゆったりとしてマイペースだ。その栞があそこまでデレデレになる姿はちょっと想像できない。
「でも、ああいうのちょっと憧れる気持ちはある」
俺がそう言うと栞が振り返り俺をじっと見つめてくる。
「だってさ、それだけ好きな人に出会えたってことだろ。俺はあそこまで我を忘れることはないと思うけど、ああやって馬鹿できるのちょっと羨ましいよ」
「琢磨は、私のこと好きじゃない?」
「栞はなんていうか友達としての期間が長すぎたからな。なかなかそういう目で見るのは難しいっていうか」
「でも、私の体に興奮してたよ?」
「それは言わないでくれ」
確かにギンギンだったけども。
「私のこと、好きにしていいんだよ。だって琢磨は私の彼氏、なんだから」
栞が上目づかいで俺を見ながら言う。こいつ、可愛いんだよなぁ。思わずグッと来てしまった。
「前言撤回。やっぱり普通に女の子として見ちまうわ」
「そうなの?」
「だってお前可愛すぎだろ!」
「可愛い……」
俺の言葉を反芻し、俯く栞。思えば栞に直接可愛いって言うの、これが初めてだな。
栞は胸に手を当てながら俯いている。俺はそんな栞の様子を見ながら改めて可愛いと思うのだった。