なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた   作:オリウス

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私、琢磨のこと好きだよ?

 猫カフェに到着すると、栞は早足でドアを開ける。相変わらず動物のこととなると目の色が変わるな。

 俺は苦笑しながら遅れて店に入る。席に案内されると、栞がそわそわしながら店内を見まわす。

 店内には数匹の猫がまったりしており、構い放題なのだそうだ。

 栞は注文を済ませると、早速猫のもとに飛んで行った。

 いつもの気だるげな様子はどこへやら、興奮気味に猫に近づくと抱き上げて膝の上に乗せていた。

 

「琢磨、この子、すっごく人懐っこい」

「まあ猫カフェにいる猫なんだから当然じゃね」

「すっごくもふもふ」

 

 猫は大人しく栞の膝の上に収まっている。俺はスマホを構えると、写真を撮ってやる。

 

「ありがと。猫とのツーショット幸せ」

「お前のそんな幸せそうな顔、初めて見たわ」

 

 栞の家はアパートなので、動物は飼えないらしい。だから、栞は大人になったら絶対動物を飼うと意気込んでいる。

 

「琢磨、動物にはあまり懐かれないよね」

 

 猫が俺に向かって威嚇する。

 

「そうなんだよな。なんでかわからないけど、動物には好かれないな」

「じゃあ琢磨の良さをわかってるのは私だけってことだね」

「なんでそうなる」

「琢磨の隣にいると落ち着くんだ。安心できる」

 

 そんなことを言われたのは初めてだった。確かに栞の隣にいるのは俺も落ち着くが。なんというか気を遣う必要がないんだよな。普通女の子相手なら嫌でも気を遣わなければならないと思うのだが、栞相手だとそれは一切ない。

 これが相性というやつなのだろうか。栞に恋人になろうと提案された時、嫌じゃなかった。こいつとなら上手くやれるんじゃないかとそう思った。

 それに俺は栞の幸せそうな顔を見るのがなんだかんだ好きなのである。

 

「猫と俺ならどっち好きなんだ」

「琢磨」

「俺なのかよ」

「当たり前。琢磨は唯一無二」

「お前、結構男子に告白されてたのに全く靡かないと思ってたら、俺と駄弁るのが好きだったからか」

「それもある。一番は恋愛がよくわからなかった」

 

 確かに恋愛は俺もよくわからない。結局のところ、セックスするのが恋愛なのかという冷めた考えを持っている。所詮は性欲によるものだ。だが、恋愛しているやつはみんな幸せそうで、それでいて苦しそうだった。

 

「でも、琢磨なら恋ができるかもと思った」

「今まで一緒にいて恋心が生まれてないなら無理だろ」

「私、琢磨のこと好きだよ?」

「友達としてだろ」

「男の子としても」

 

 突然の爆弾発言。俺は一瞬言葉に詰まる。

 

「これが恋なのかはわかってなかったけど、琢磨といるとドキドキするし」

「そんな仕草見せたことねえじゃん」

「私、顔に出にくいから」

 

 いや、だとしてもだ。中学一年から三年間一緒にいて、もう四年目の付き合いだ。そんなに長く付き合っていて突然恋を自覚することなんてあるのか。

 

「私、鈍感だから。気付いてないだけだったんだと思う」

「おう。それは嬉しいけど。びっくりしたわ」

「お試しで付き合ってみよって言ったけど、今は本物になりたいと思ってる」

「マジか」

 

 まだお試しで付き合い始めて数日だ。そんなに早く結論が出るものなのか。だが、俺としても栞と付き合うのは悪くないと感じている。なにより気楽だし、一緒にいて安らげる。

 

「恋にはいろんな形がある。友達みたいな恋愛もあると思う」

「そうなのかな」

 

 俺は小首を傾げる。友情と恋愛感情は明らかに別種のものだと思うが。だが、俺は今のところ自分の感情がどっちに帰属するものなのかよくわかっていない。栞に好かれるのは嬉しい。今まで告白された女子とかとは明らかに違う感情だ。

 男女の友情は成立するか否かという議題がよく上がるが、俺は成立すると思っていた側の人間だ。だから、栞の突然の告白に戸惑っている。

 

「琢磨もそのうち私のこと好きになるよ」

「凄い自信だな」

「だって、私たち相性最高だから」

 

 薄く笑った栞の微笑に、俺は苦笑することしかできない。

 俺はカラオケで栞のファーストキスを奪った。無論俺も初めてだったが。そう簡単に体の関係にはならないと誓っておきながら、誘惑に抗えなかった。栞は女として魅力がありすぎる。俺が惹かれるのも仕方がないとさえ思える。

 だがこれが果たして恋なのかどうかは俺もよくわからない。

 ただ、栞が相性最高だということだけはわかる。

 

「さっきのバカップル覚えてる?」

「さっき見たばっかりだからな」

「私たち案外ああなるんじゃないかと思ってる」

「馬鹿な」

 

 俺は鼻で笑うが、栞はいたって真面目な顔だった。

 

「恋に鈍感な私たちだからこそ、恋を自覚した時は沼ると思うんだよね」

 

 栞の言葉は不思議と頭に強く残った。

 恋愛に鈍感だからこそ、恋愛に沼る。確かにそんな気がしてくる。

 栞の言うように俺も恋を自覚したら変わるのだろうか。

 

「琢磨は私のだから、私の好きにするね」

「ほどほどにしてくれよ」

 

 栞は猫の頭を撫でながら、俺を見て笑った。

 恋人になったら俺たちの関係性は変わるのだろうか。今のところ友達のときとあまり変わっていない感じだが。だが、俺は栞の中に潜む、甘えん坊な一面をこの時はまだ知らなかった。

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