なんでも話せるダウナー系の美少女と、「試しに付き合ってみる?」ってなって付き合ってみたら最高のパートナーすぎた   作:オリウス

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どんな彼女になってほしい?

 デートの翌日。瞼を開けると、栞の顔があった。

 

「なんでいる?」

「おばさんに起こしてきてって言われたから」

「母さんめ」

 

 うちの母親と栞は既に顔見知りだ。付き合う前から友達として何度もうちに遊びにきているから、常に家にいる俺の母親とも顔見知りというわけ。

 

「おばさんに付き合うことになったって言ったら喜んでた」

「お前は口が軽いな」

「むしろ言ってなかったんだ」

「だってお試しだし」

「お試しでも私、琢磨の彼女」

 

 自分を指さしながらそう言う栞。しかし、栞が朝に俺の家に来るのは初めてのことだ。いつもは放課後や休日に立ち寄っていたから、なんだか新鮮な感じになる。

 

「それで、何しに来たんだ」

「迎えに来た。一緒に学校行こうと思って」

 

 相変わらず眠そうな目だが、言葉は前向きだった。しかし寝間着姿を見られるのは少し恥ずかしい。

 

「とりあえず起きるから離れてくれ」

「おはようのキスは?」

「ねえよ!」

「ええー……」

 

 本気で残念そうな顔をするな。寝起きはほら、口の細菌がたくさんあるらしいから嫌だろうし。

 俺は体を起こすと、制服を手に取る。

 

「着替えるから」

「うん、見てる」

「出ていけって言ってるんだよ」

「私、彼女」

「それがなんだよ」

「彼女は彼氏の裸を見る権利があります」

 

 意味が分からない。そこまでして俺の裸を見たいものなのか。わからん。

 俺は溜め息を吐くと、栞に背を向けて服を脱ぎ捨てる。栞が後ろから覗き込んできて顎に指を添える。

 

「勃ってるね」

「朝勃ちってやつだ」

「ふーん。今はえっちな気持ちにはなってないってこと?」

「なってないな」

「なんだ。残念」

 

 なにが残念なのか。俺は溜め息を吐きながら着替えを済ませる。

 しかし、幼馴染がいない俺にとって、アニメみたいに女の子に朝起こされるシチュが叶うなんて思わなかった。

 一階に下りると、リビングからいい匂いが漂ってくる。リビングに入るとテーブルに朝食が並べられていた。

 

「起きたわね。早く食べて学校行ってらっしゃい」

 

 母さんが仁王立ちで俺を見据える。

 

「それにしてもやっと付き合ったのね」

「うるさいな」

「ヘタレなあんたのことだから、今まで栞ちゃんを待たせてたんでしょ」

「そんなんじゃねえよ」

 

 親に恋愛事情に首を突っ込まれるのは面倒だ。栞はと言えば、俺の隣に座って朝食を一緒に食べている。

 

「まあでもこれで安泰と思わないことね。恋愛は難しいんだから」

「母さんも失敗したもんな」

「うっさいわね」

 

 うちの親は離婚しており、俺は母さんのもとで暮らしている。もともとは一軒家に暮らしていたが、今はマンションの一室だ。

 食事を終えると、俺と栞は一緒に家を出て学校に向かう。

 

「一緒に登校するの初めてだな」

「そうだね。朝は私も弱いから」

 

 そうだ。栞は朝が弱い。寝坊して遅刻することも多かった。その栞が今日は朝早く起きて、俺を起こしにきた。それはつまり俺と一緒に登校したかったということで。少し嬉しい気持ちになる。

 

「今度から俺が起こしにいく」

「本当?」

「ああ。お前がこれ以上遅刻しないようにな」

「助かる」

 

 栞の家はそれほど離れてはいない。今までより少し早く起きて、迎えに行けば、十分学校には間に合うだろう。

 

「おばさん、喜んでたね」

「そうだな。まさか俺と栞が付き合うことを期待してたとは思わなかったが」

「私は知ってたよ。前に一度琢磨のこと聞かれたから」

「母さん、俺に隠れてなにこそこそ暗躍してんだよ」

 

 俺は苦笑し、溜め息を吐く。

 

「まあ、気楽にやっていこう」

「ん。琢磨が恋愛に沼るまで、一緒に付き合ってあげる」

「沼りたくねえ」

 

 俺は頭を掻いて栞を見る。今日も栞はビジュアルがいい。相変わらずエロい体に、整った髪。都会にいたら間違いなくスカウトされていることだろう。

 

「二学期が始まって、二週間か。どうだ。授業にはついていけてるか」

「寝てるからわかんない」

「少しは起きて授業聞いとけよな」

「琢磨が教えてくれるでしょ?」

「まあ付き合うが」

 

 これまでずっとそうしてきた。俺たちは高校受験の時も、同じ高校に行こうと約束した。それぐらい、栞とは心が通じ合っていた。最高の友達だと思っていた。

 

「最高の彼女になれるかな?」

「それはわからんが、少なくとも俺たちは友達としては最高だったろ」

「ん。だからそれを超えたい」

 

 栞は静かに闘志を燃やしていた。俺も栞にとって最高の彼氏になれるように努力したいところだが。

 自分の親の失敗を見ているからか、恋愛にはいまいち懐疑的だ。少なくとも結婚するぐらいお互いを愛し合っていたはずなのに、上手くいかなかった。それが俺は怖い。

 

「琢磨は私にどんな彼女になってほしい?」

「そうだな。お互い無言でも空気が悪くならない、そんな存在でいてくれたら」

「私も、琢磨に同じこと思ってた」

「以心伝心だな」

「私と琢磨の友情は強い」

 

 栞となら恋人としても上手くやっていけそうな気がする。栞がそっと俺の手に自分の手を絡ませてくる。俺はその手を握り返し、並んで歩いた。

 

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