「ゴプリンか?」 黄金の「ゴプリン」消失事件 ―初犯編― 作:Darth Tail
翌朝。ギルドの食堂を、凍てつくような緊張が支配した。
ゴブリンスレイヤーが、冷却箱の前で石像のように静止している。その手には、測量用の
「……在庫が四。『四(よん)プリン』になった。一個、足りない。」
その呟きは、
頂点の一基が消え、土台の四基だけが、
「えっ、ゴブリン!? ゴブリンが盗んだんですか!? ギルドの中にまで侵入したんですか!?」
遅れて食堂に現れた
その目は心なしか腫れており、寝起きの気配が色濃い。彼女の足元はふらついており、明らかに「朝の祈り」を済ませた後の清冽さがない。
「……ゴプリンか?」
「ご、ごぷりん?」
「……プリンの熱量のみを狙い、痕跡を消し、静止した五基重畳(ペンタ・スタック)を瓦解させる特殊個体。……あるいは、内部に『ゴプリン』に汚染された者がいる。……実験が必要だ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
騒ぎを聞きつけた
「あんた、またそんなバカげたことを。誰かが夜中にちょっと食べただけでしょ! ギルドには食い意地の張った冒険者なんていくらでもいるわ! 槍使いとか、重戦士とかさ!」
その言葉に、近くで朝酒を煽っていた槍使いが不機嫌そうに反応した。
「おいおい、エルフのお嬢ちゃん。俺をプリン泥棒扱いか? 俺がそんな女子供の食うようなもんを盗むわけねえだろ。」
「俺ならもっと、こう、景気のいい肉を食うぜ。……だいたい、小鬼殺しの『宝物』に手を出して、あいつの
「左様だ」
重戦士も、巨躯を揺らしながら頷いた。
「俺のこの重装甲が、その箱の前の狭い隙間に入り込めると思うか? 傷一つ付けずに中身だけを抜き取るなんて無理だ。」
「俺が動けば、床が鳴る。昨夜、宿直室にいた受付嬢が、俺の足音を聞いていないのがその証拠だ」
ゴブリンスレイヤーは、床に這いつくばった。彼の視線は、冷却箱の設置面、および床の埃の堆積状況に注がれている。
「……設置面から北西へ1ミリのズレ。垂直ではなく斜め後方より、土台の均衡を崩さぬよう精密に引き抜かれている。」
「これは、重力と摩擦の法則を熟知している者の仕業だ。指先の
「……さらに、気圧差による『吸着音』が発生したはずだが、隣室の宿直室で夜通し起きていた受付嬢は何も聞いていない。……隠密の奇跡、あるいは魔法の行使が疑われる」
彼は、周囲の関係者を円卓へと召喚した。槍使い、重戦士、女騎士。彼らは不機嫌そうに、あるいは面白がってそれに応じた。