魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう   作:偽りの名つむぎん

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1話 悪の魔法少女になっちゃいました

「やだっ! やだっ! 死なないで! 死なないでよアオイぃ……!」

 

 魔奏者(マギアアクター)という存在がいる。魔族と戦い、力なき人々の平穏と安寧を護る存在だ。俗にいう魔法少女という奴。

 

 僕――白銀アオイは魔奏者の幼馴染。なんの力も持たない一般人だ。そして、僕の幼馴染は現代最強の魔奏者。

 

 その現代最強の魔奏者、竜胆アカネは今、俺の目の前で大粒の涙を流している。

 

「ああなんで! なんで! 私の魔奏をアオイにわけられないの!? このままじゃ死んじゃうよ!!」

 

 アカネは凄い。どんな傷を負ってもすぐに再生する。アカネの使う魔奏はどんな魔族すらも倒してしまう。まさに完全無欠の存在だ。

 

 けれど、アカネだって人間だ。歳も十七になったばかり。当然、戦いの疲労やストレスで隙ができる。

 

「私を庇うなんて! アオイは普通の人なのに……! 私が護らなくちゃいけないのに、どうしてどうしてこんなことに!!」

 

 魔族の攻撃からアカネを庇った。それが偶々魔族の強力な一撃で、俺の半身が消し飛んだ。

 

 もう痛みとかそういったものを何も感じない。段々とアカネの声も聞こえなくなっている。

 

「……アオイ。……イ、んじゃ、や。アオイがいないと戦えないよお。生きていけないよお!!」

 

 最悪だ。最後に聞く言葉がそれなんて。

 

 何か気のいいことを言ってあげられたら良かったけど、そんなことはできないみたいだ。

 

 僕は幼馴染の腕の中で死んだ。

 

 

***

 

「被検体001。特級魔族の因子投与。適合。続いて魔族の因子を投与」

 

「肉体の再生を確認。魔力反応を確認」

 

「意識レベルの上昇を確認。目覚めます」

 

 目を覚ますと知らない天井よろしく、俺は拘束されていた。椅子に括り付けられた状態で、全身をガチガチに。

 

 周りには培養液に入った何かの肉片や、誰かのものかわからない魔奏具とかが入っている。どっからどう見ても怪しい研究所だ。

 

 え……? どういう状況? 僕死んだんじゃないの?

 

「やあ初めまして被検体001」

 

「あ、はい。初めまして。それと僕の名前は白銀アオイ……」

 

「いや、君の名前は被検体001だ」

 

 なんだこいつ。眼鏡をかけたインテリは頭が硬くて気難しそうだから嫌だ。

 

 って周りの人はみんな、ザ・研究者っていう人達だらけだ。それも怪しい組織の研究者っていう感じがぷんぷんとする。

 

「貴方達は誰ですか……? というかここは?」

 

「我々は【卑弥呼】だ。君も知っているんじゃないか?」

 

 魔奏者はみんな卑弥呼という組織に属する。卑弥呼は国が運営している組織で、魔奏者の管理を行うのが主な仕事だ。

 

「その卑弥呼の人が僕になんのよう? というか僕の身体に何をしたの?」

 

「軽い死者蘇生さ。君には魔奏者として生まれ変わったんだ」

 

「…………は?」

 

 魔奏者っていうのは魔法少女だ。つまり、女の子にしかなれない。

 

 男の魔奏者なんて聞いたことがない。

 

「信じられないという感じだな。男は魔奏者にはなれない。ならば簡単な話だ。男を女にすれば魔奏者を作り出すことができる」

 

「あなた何を言って……って!」

 

 僕は目の前の鏡に映る信じがたいものを見てしまう。

 

「なんじゃこりゃあ!?!?」

 

 元から塩顔の中性的な見た目って言われてきた。けれど、今の僕は違う。どっからどう見ても女の子だ。

 

 白いショートヘアーに、インナーカラーとして青く染められている。瞳は紫色に変色しており、顔立ちは丸みを帯びて女の子っぽさが三割増しだ。

 

 けどあんま変わってねえな。元の面影は残ったままだ。

 

 いや変わったのは顔だけじゃねえ。胸に膨らみを感じる。病衣みたいなダボっとした服装を着ているせいで目立たないけど、確かにある。

 

「人造魔奏者計画。通称ネクロマンス計画」

 

「計画名からしてろくなものじゃなさそうですね」

 

「そう言うな。これは戦力図を大きく変えるものだ。何せ死人を魔奏者として再利用できるのだから」

 

 倫理観ゼロかよこいつら。ドン引きの内容だったわ。

 

 悪の組織の研究者ってみんなこうなのか? 倫理観を子宮の中に忘れてきたのか?

 

「死人に魔族の因子、元魔奏者の魔奏具(マギカギア)を埋め込むことで魔奏者として生まれ変わらせる」

 

「え? じゃあ僕の身体に色々詰め込まれてるってわけ?」

 

「その通りだ。特級魔族の因子を始めとし、約五十の魔族の因子を埋め込んだ。心臓を改造した魔奏具に変えることで、常に魔奏者でいられる存在として改造したんだ」

 

「それって魔奏者って呼ぶのか? 半分以上魔族じゃねえ……?」

 

 魔奏者の状態――魔法少女でいうところの変身状態には時間制限がある。魔奏者は変身するだけで魔力を消費し、魔力を使い果たすと変身解除されてしまう。

 

 常に魔奏者でいられる人間はいない。というのが常識だったが、どうやらその常識は破られたみたいだ。

 

「魔族と魔奏者のハイブリッド。これは新たな名前が必要だな。さて、これから君には様々な実験に付き合ってもらう。有無は言わさないぞ」

 

「拒否権ないとか外道すぎて涙出てくるよ」

 

「ふふっ、そう褒めるな。先ずは脳に装置を詰め込むところから始めよう」

 

「え……マジ?」

 

 僕の脳みそに電極のような装置が無理矢理突っ込まれる。あ、でもこの身体死んでいるから痛覚とか感じないや。

 

 ともあれその日から地獄が始まった。

 

 一日目は肉体のあらゆるところを切り刻まれた。すぐに再生した。これだけの再生能力が生前にあれば良かったのになと思う。

 

 二日目は電撃を流され焼かれた。骨まで焼けたけど、次の瞬間には再生していた。臓腑が零れ落ちても、臓腑ごと再生するのだから凄い。

 

 三日目はありとあらゆる薬を投薬された。視界がグルグルと回ったり、凄まじい嘔吐感に襲われたり、結構きつかったけど、数時間を経つ頃には薬への耐性がついて、薬の効果が効かなくなっていた。

 

 四日目、五日目、六日目、七日目と様々な実験を行なわれた。電極をぶっ刺されたり、死んだ魔奏者の血液を取り込んだりと。

 

 死んだせいであんまり感情が動かなかった。何をやられても、ああまたかっていう感じ。

 

 そして十日目。

 

「そういやあんたに聞きたいんだけどさ」

 

「なんだ?」

 

「どうして最強の魔奏者を越えるなんて大層な目的を掲げているんだ?」

 

 冷静に考えて、そこが一番の疑問だ。いや、この人達が何者なのかも気になるんだけど、あんまり話してくれないし。

 

「魔奏者を粛清するためだ」

 

「……は?」

 

 予想もしていなかった答えが返ってきて、思考が止まる。そんな様子を知らないと言わんばかりに研究者は話をつづけた。

 

「現在の魔奏者は力を持ちすぎている。年々増加し、魔奏者が一致団結して国に攻め込むリスクは上がっている」

 

「だから魔奏者を粛清すると?」

 

「その通りだ。君はその一号なのだよ。魔奏者を滅ぼす魔奏者。滅魔奏者(アンチマギア)。アニメにもいるだろう? 悪の組織に造られた魔法少女という奴だ」

 

 なるほど。僕は魔奏者を殺す存在として生み出されたわけか。

 

 悪の組織に造られた魔法少女。言いえて妙だ。国家権力がこんなことを企んでいるなんて、魔奏者のみんなは知らないだろう。

 

 アカネも知らないはずだ。

 

「それをアカネ……いや、魔奏者達は知っているのか?」

 

「伝えるわけないだろう。君のことも、魔族に侵食されたため極秘裏に焼却処分したと、遺族や彼女には伝えたさ」

 

 ああ、なるほど。そういう理由にすれば確かに周囲の人は不審に思わないだろう。

 

「魔族による一般人の被害増加。これを仕組んだのは我々だ。あえて魔族の到来を知らせず、被害を拡大させた。こうすることで君の様な素体を効率的に手に入るからな」

 

「あんた達、結構外道だね」

 

「ふふっ。君もその一人になるのだよ」

 

 そんなこと、まっぴらごめんだ。外道の仲間なんて誰がなるものか。

 

「君は魔王ヨルに適応した唯一の存在。君の力を持って、竜胆アカネを殺すのだ」

 

「なんだと……っ!?」

 

 竜胆アカネを殺す? この僕が?

 

 いやそんなことはありえない。誰が幼馴染を手にかけるというのだ。

 

『では契約じゃ。妾の力をくれてやる』

 

「……え?」

 

 刹那、時が止まった。培養液の泡も、目の前で気持ちよく語っていた研究者もピクリとも動かない。

 

 僕の心臓から赤黒い霧みたいなものが出て、それは化け物の姿となる。

 

 この中で動いているのは僕と、霧だけだ。

 

「あんたは……一体? というかこれは?」

 

『妾の力じゃ。妾は魔王ヨル。かつて最強と呼ばれた魔族。お主の身体には妾の肉体が埋め込まれておる』

 

 そういやさっき、魔王ヨルに適応した唯一の存在とか言ってたな。魔族の因子をぶち込まれたとも。

 

『妾もこれ以上弄ばれるのは限界でな。お主さえ良ければ自由の身にしてやる』

 

「いいのかい? 随分と僕に有利すぎる契約だけど?」

 

『このまま誰かの言いなりというのもつまらん。そこはお主も同じところじゃろ?』

 

 卑弥呼の言う通りに動くのはごめんだ。

 

 なんなら会話でハッキリとした。卑弥呼は倒さなくてはならない巨悪だと。

 

 悪の組織に作られた魔法少女。それが反旗を翻す展開なんていくらでもあるだろう。

 

 そういう生き方をしてみてもいいかもしれない。

 

「わかった。契約する」

 

『ククッ。面白い。では使わせてやる』

 

 時が動き出す。赤黒い霧は消えて、僕の目の前にラピスラズリが散りばめられた毒々しいイバラを纏った手鏡が現れる。

 

「これは魔奏具っ!! 未知の魔奏具だ!! 我々の実験は成功したっ!!」

 

 魔奏具は魔奏者に選ばれると手に入る変身アイテムだ。

 

 アカネは魔奏具と魔奏者はセットで卑弥呼のデータベースに登録されるらしい。登録されていない存在は、危険な存在として扱われる。

 

 魔奏具を構えて、ある言葉を唱えると変身できる。僕はアカネがいつもやっているように、その言葉を紡ぐ。

 

魔奏開演(マギアアクト)

 

 手鏡が開いて赤黒い霧が僕の全身を覆う。

 

 そこから先、何が起きたのか僕にもわからない。ただ、目を覚ました時、僕の周りには研究所だった廃墟だけが残されていた。

 

「ハハ……ハハハハッッ!! 成功だ!! なんて凄まじい破壊力なんだ!!」

 

 瓦礫に押しつぶされた研究者が笑い声を上げる。命の危機に瀕しているというのに、研究者の笑みは凄まじいものだった。

 

「魔族と魔奏者の融合! これこそが滅魔奏者(アンチマギア)!! この力さえあれば竜胆アカネも……!!」

 

「そうはさせないよ。僕は僕の好きなように生きる」

 

 僕は自分の頭に手を突っ込んで、脳みそに突き刺さった装置を抜き出す。

 

 脳みそが多少ぐちゃぐちゃになったけど、すぐに再生した。うーん便利な身体だ。

 

「僕……僕らは君たちのような存在を潰す。外道な行ないをしている君たちを許さない」

 

「な……なにぃ!? お前には分からないのか! 我々が危惧している未来のことが!!」

 

「それを理由にしたって、君たちはやりすぎだ。それに……」

 

 悪の組織に改造された魔法少女。魔法少女ではないけど、仮面を被ったライダーなら原点とも言えるだろう。

 

 ならばやるべきことは一つだ。

 

「改造人間というのは、組織に反旗を翻すまでがセットだ。僕は君たち卑弥呼を許しはしない。ただ一人、真実を知る者として」

 

「ふ……ふふ。それがき、みの……」

 

 バタリと倒れる研究者。最後に何かを言おうとしていたけど興味はない。

 

「さーて、卑弥呼という組織をぶっ潰すために行動するか!」

 

『随分とノリノリじゃなお主』

 

「一応生き返ったからね。悪の組織に作られた正体不明の謎の魔法少女という立ち位置も悪くないな〜〜と思って」

 

『随分と楽観的よのぅ。じゃが、気に入った! それくらいが妾達にとってはちょうど良い!!』

 

 生きて何かをできるチャンスが巡ってきたんだ。今の自分を楽しまなくちゃ損だ。

 

「あ、そうだ。魔奏者としての名前を考えなくちゃ。滅魔奏者ブルーナイトとか?」

 

『いや、安直すぎるじゃろ。それは』

 

 解せぬ。

 

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