魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう 作:偽りの名つむぎん
「それでは参ります」
二丁の銃が火を吹く。光り輝く銃弾が複雑な軌道を描きながら、僕らへと突っ込んでくる。
「ぐっ……つよっ!?」
「これは防御や回避するよりも受けるべきでは?」
『お主、変に冷静じゃな』
アカネが大剣で受けきれていないところを見て、僕はライフ……ではなくてフィジカルで受けることにした。
右肩に命中し、右腕ごと吹き飛ばされる。うむ、30分早い方のニチアサでもやるかやらないかのラインだなこれ。
「え!? 片腕が!!」
「そう慌てないでよ。無事だからさ」
アカネが驚くのも無理はない。完全に右腕が消し飛んでいる。これで血液とかの描写があれば深夜アニメ帯になってた。
魔法的なエフェクトを発生させながら腕を生やす。このエフェクトがなければ、リアルににょきと右腕が生えてくる。
そんなことしたらお茶の間が凍りついてしまう。悪の魔法少女たるもの演出は大切だ。
「流石ですねお姉様。ですが、その再生能力がいつまで続きますか?」
「私のことを無視しないでよね!!」
アカネが炎の大剣をふるい、オパール・リコリスへと攻撃を仕掛ける。彼女はそれを軽々と回避して、アカネの横っ腹に蹴りを喰らわせる。
「ぐっ……重いし痛い……!!」
アカネはなんとか着地をする。偶然、僕の隣に着地した。
「それで? 今は味方って思ってもいいのかな? それとも敵?」
「それを決めるのは君自身だ」
意味深なセリフを吐きつつ、僕はオパール・リコリスへと攻撃を仕掛ける。
言葉ではなくて行動で示す! これもまた僕が目指す悪の魔法少女の理想像よ。
ただニチアサのお約束をちゃんと守らなくちゃいけない。
そのお約束というのが、強化フォームのお披露目会では絶対に敵は負けなくちゃいけないということ。
幸いにもオパール・リコリスのヘイトはこちらに向いている。市民へ被害が出ることはないだろう。
「あら、お姉様。そんなに情熱的に向かってきてくださるなんて嬉しいですわ」
「君のお姉ちゃんになったつもりはないんだけどね。ただ、君の相手は僕がさせてもらう」
「ふふっ。ですが、お姉様では私の相手になるのかしら?」
はっきり言って僕の方が劣勢だ。
理由は単純。強化アイテムの有無によるスペック差。
僕の滅魔奏者形態は他の魔奏者や滅魔奏者よりもスペックが高めだ。ヨルの因子を始めとして、色んな魔族の因子がぶち込まれているから。
けれど強化フォームには一歩劣るか、頑張ってギリ同格くらいの力の差がある。
魔奏戦姫……なかなかに厄介な力だけど面白い!
「
「させませんわ。
僕が魔奏を発動しようとすると、オパール・リコリスがそれよりも強い魔奏を打ち込んで無効化してくる。
すごいぞ……! 今、僕は負けそうだ!!
『妾に変わるか?』
「いや、いいよ。これはこれでやりたいことがある」
ここは徹底的に負けに向かって突き進んでいく。
さらなる強敵が出てきた時、それまでの敵役ができることといえば、あえて負けることで強化フラグを立てることだ。
オパール・リコリスが開発したという蕾。あれがあれば対等以上に戦えるだろう。
特にアカネ達魔奏者陣営と、滅魔奏者陣営に力の差が出過ぎてはいけない。
ここはアカネ達の強化フラグを立てることに注力する!!
そのためなら喜んで噛ませ犬にでもなってやろう!!
「なら……これはどうだい?」
魔奏具のボタンを押す。必殺技の応酬。ここで押し負けるのも悪の魔法少女としてやらなくちゃいけないことだ。
オパール・リコリスも拳銃についた開いた魔奏具にセットされた蕾のボタンを押す。
「
「ふふっ。可愛らしいお姉様。そんな技で対抗しようなんて。
無数のラピスラズリの剣を、リコリスの花びらが破壊していく。最後の大きな斬撃も、花びらを模した銃弾に破壊されて、その銃弾が僕の身体を穿つ。
「ずぅっ!!」
「嘘……あれだけ強かったあの子が……!?」
「さて、そこの魔奏者も始末しますか」
驚くアカネに対して冷たい視線を向けるオパール・リコリス。彼女は蕾のボタンを2回押す。
「
あ、あれは!!
強化フォームになると解禁される、二段階目の必殺技!! これはチャンスだ!!
「リコリス・ディザスターバレット!」
無数のリコリスの花弁が突風となって、アカネに襲いかかる。アカネは炎の大剣でそれを受け止めようとするが……。
その間に僕が割り込んだ。ニチアサの悪役特有の敵の時だけ使える高速移動を使って。
無数の花弁が僕の身体を抉る。大量の火花が散り、大爆発を起こす。
僕はアカネの前まで吹っ飛ぶ。ふっ、決まったぜ。後々に味方になる悪の魔法少女の、主人公を庇って敵の大技を喰らうムーブ!!
「ぐっ……あっ……!!」
こうして立ちあがろうとして立ち上がれないところでよりリアリティを増していくぅ!!
やっぱり、やってることは30分早い方なんじゃないだろうか……?
「ど、どうして!? なんであなたが私を庇ったの!?」
「何故ですかお姉様……。そんな、お姉様が魔奏者の味方を……? そんなの認められ……きゃあ!?」
二人が同時に困惑の表情を浮かべる。
オパール・リコリスに至っては、強化フォームの時間切れが来たのだろうか。蕾が魔奏具から外れて、元の姿に戻っていた。
「そんな……そんな嫌! 嫌だよ!! 私はあなたに聞きたいことが沢山……!!」
「竜胆アカネ……魔奏者ルビー・アマリリス。貴女の姿と名前は覚えましたわ。次こそは必ず仕留めてみせます。それまで束の間の平穏を享受することですね」
オパール・リコリスはそう言い捨てて、ゲートを使い姿を消してしまう。
ふふっ。概ね計算通りだ。大体、強化フォームの大技を放った後は敵は撤退していく。わざわざ主人公達にトドメを刺したりしないのだ。
それがこの世界のお約束というやつだろう。それが働いてくれてマジでよかった。
うまい具合に働いてくれたおかげで、僕の悪の魔法少女ムーブ(噛ませ犬バージョン)は成功に終わったのだから。
「どうして……!? 何か言ってよ!」
「さあ、なんでだろうね……? 僕にも分からないや。ただ身体が勝手に動いていたんだよ」
「身体が勝手に……!? もしかして、そんなことが? いや、でも」
ぶつぶつと何かを言い始めるアカネ。ふふっいいぞ。きっと謎が謎を呼ぶ展開に動揺しているに違いない!
「君と僕は……敵ではないけど同じ道を歩むことは許されない。だというのに変な気まぐれかな。君を庇ったのは」
「ちょっと待って! それだけの怪我を負ってどこにいくつもり!? そのままじゃ」
「君も見ただろう? 僕の身体は再生する。時間が経てばこの傷も治る……。だから、僕のことは気にしないでおくれ」
足を引き摺りながら、ゲートを潜って転移する。これこそ完璧な退場の仕方ってもんよ!!
「まって!! あなたには聞きたいことが沢山……!!」
その声を聞こえていないふりをしつつ退場する。
ふっ、悪の魔法少女ムーブをしながら、同時に改心&仲間化フラグまで立てる。なんて理想的な悪の魔法少女なんだっ!!
『それで? 本当は一緒に戦うつもりはないんじゃろ?』
「バレた? まだ一緒には戦うつもりはないかな。とはいえ、敵は強くなってきたしどうしたものか……」
ふといいことを思いつく。
そうだ。魔奏戦姫という形態は滅魔奏者側が初めて変身した姿!
アカネ達はきっと苦戦を強いられるだろう。その時に、強化アイテムを授ける悪役ムーブができるじゃないか!!!
『敵を強くするパターンとかあるのか?』
「結構あるよ。日曜の朝的な展開だと、味方と敵、両方が均等に強くなって初めて黒幕の計画が進むみたいなやつとかあるし」
『ほーん。んで? その強化アイテムとやらはどこで拾ってくるつもりなのじゃ?』
「そりゃあ当然。作ります」
『ほう、作るか……。いやいや、軽々しくいうな!! そんなことできれば苦労せぬぞ!!』
なんとかなると僕は信じている。悪役産強化アイテムはポッと出てくることが多い。
それにあの蕾を見た感じ、僕でも作れそうな気がした。
僕の魔奏を使えば。
『お主、いやまさか……できるな』
「でしょ!? なんでもモノは試し! やってみるべきだよ!!」
ふふっ。悪の魔法少女が出てきたところで、僕の悪の魔法少女ムーブが終わるわけではない!!
僕こそが真の悪の魔法少女に相応しいとあいつらに思い知らせてやろう!!!