魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう   作:偽りの名つむぎん

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2話 現代最強の魔法少女、曇る

「大丈夫だよ。僕は君の幼馴染だから」

 

 ずっと覚えている。私が魔奏者になって、アオイに助けられた時のことを。

 

 私の家系は魔奏者を輩出し続けている。お母さんも元魔奏者、お祖母ちゃんも、ひいおばちゃんも、そのおばあちゃんもずっとずっと。

 

 私も選ばれるべくして選ばれた。

 

 私には魔奏者としての才能がありすぎた。みんなは私のことを最強って呼んでくれた。

 

 みんなは私のことを化け物って呼んだ。

 

 お母さんもお父さんも、親戚の人も、卑弥呼の大人たちも、他の魔奏者達も。私のことを現代最強の魔奏者って呼んで、私を人間だと思ってくれない。

 

 だからきっと知らないよみんな。

 

 最強がどんな気持ちで戦っているかなんて、誰も知らない。みんなは私に期待を寄せる。みんなは私に責任を背負わせてくる。

 

 私が負ければ、他の魔奏者が全滅する。それがどれだけのプレッシャーなのかみんな分かっていない。

 

 みんなは私と違って気楽だ。だって戦う理由が、友達や家族を護るためなんだから。

 

 私が戦う理由は、名も知らないみんなを護るためだよ。私だけ背負っているものが大きすぎる。

 

 私のことを特別扱いするな。私だって普通に生きたいんだ。戦う理由も押し付けるな。

 

 そんなことを言えるはずもなく、私は日常を過ごしていた。

 

「僕は一緒にいるよ。だって僕は竜胆アカネの幼馴染だから。あ、でも僕が危なくなった時は護ってよね。代わりに僕が君の戦う理由になるから」

 

 顔も知らないみんなのためではなく、ただ一人の幼馴染のために。

 

 ああ、それことが私がずっと求めてきた戦う理由だ。白銀アオイ、私に戦う理由をくれた私の幼馴染。

 

 私のお母さんとお父さんは幼馴染同士だったらしい。お母さんは辛かったり苦しかった時、お父さんのことを想って戦ったって。

 

 私もそうなると思っていた。アオイのために戦って、ずっと変わることなくアオイと一緒にいる日常が何となく続くものだと。

 

 けれど違った。現実とは残酷なのだと。

 

「どうして、どうして私の前から消えちゃったの……? ねえ? どうして?」

 

 私の前にアオイはいない。アオイは死んだ。魔族に襲われて。

 

 半身が削り取られたアオイの姿を今でも鮮明に思い出せてしまう。どれだけ痛くて、どれだけ苦しかったか、私にはわからない。

 

 私は最強だから。魔族の攻撃じゃ傷はつかないから。

 

 だからアオイの痛みをわかってあげられない。どうしようもないクズなんだ。

 

「私は……何のために戦うの?」

 

 私が魔法少女として一番に護らないといけない人、私の戦う理由を失った。もう二度と戻ってこない。

 

 アオイが死んだ。アオイの死体は魔族に侵蝕された恐れがあるとして、卑弥呼が極秘裏に処理するらしい。

 

 卑弥呼の大人は言ってくれた。私のせいじゃないって。私が気負う必要はないと。これは不幸な事故で、二度と起こらないようにするって。

 

 違う! これは私の責任だ! 私が現代最強なんて言われるようになったから、魔族は狡猾になり始めたんだ!!

 

 魔奏者を避けて、一般人を狙うようになったのは全て私のせいだ……!

 

 ピロン。

 

 そんな瞬間、スマホが鳴り響いた。そういやもう数日もスマホを見ていないや。

 

『緊急要請。卑弥呼の施設が正体不明の敵により襲撃を受けている。魔奏者は直ちに出撃、敵を排除せよ』

 

 ほら。私を倒せないから、卑弥呼という善良な大人達を狙う。

 

 許せない。許せない。こんな行いをする全てが許せない。

 

「アオイ、安心して。私、ちゃんとアオイの分まで苦しむから」

 

 いくら悲しんで、いくら塞ぎ込んでもアオイは戻ってこない。私はちゃんとアオイの分まで苦しんで戦い続けないといけないんだ。

 

 それがアオイにできる唯一の贖罪だから。

 

「アオイ。また君に会えた時は笑ってくれるよね?」

 

 私の呟きに答えてくれる人はもういない。

 

 

 

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