魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう 作:偽りの名つむぎん
「おまえ、なに……も、の」
「
『随分とノリノリじゃなお主……』
ふふっ、決まった!
建物を廃墟に変えてからの名乗り! 全身には黒いローブ! 正しく悪の魔法少女そのものじゃないか!
「いや~~だってね、こんな美味しい展開早々ないと思っていてさ」
『お主、初見だと無感情系だったのに、随分と路線変更してきたな』
「魔奏者に合わせているだけだよ。悪の組織に造られた魔奏者。それも魔奏者を滅ぼすために造られた存在が、魔奏者を陰ながら助けているっていうのは中々面白いと思ってね」
魔奏者のノリはニチアサというよりも深夜番組のテンションなんだけど。まあ一般人が当たり前のように死んでいくからね。
「
炎の大剣が振り下ろされる。僕は手のひらから黒い球体を召喚して、それを受け止める。
「……止めたっ!?」
「へえ、これが魔奏者の攻撃か」
炎の大剣使いは飛び退いて僕と距離を取る。
白と赤を基調とし、ドレスと鎧を合体させた
現代最強の魔奏者であり、僕の幼馴染である竜胆アカネがそこにはいた。
竜胆アカネは炎の大剣を僕に向ける。
「魔奏者が卑弥呼を襲うなんてどういうつもり? 卑弥呼は敵じゃないよ!」
アカネは卑弥呼の信者だ。というか魔奏者の8割以上がそうだと言ってもいいだろう。
卑弥呼が魔奏者や人々に信頼を買われている裏で、外道な行いをしている。そんなことは誰も信じない。
アカネに僕の死体を使って、非道な実験を行った。なんて言っても信じないだろうし、信じたら信じたらで純粋で正義感の強いアカネの心が壊れてしまう。
ならここで取るべき行動は一つ。
悪の魔法少女もとい悪の魔奏者として振る舞うだけだ!!
「僕は闇の魔奏者。僕の使命を邪魔するというなら容赦はしない!」
「闇の魔奏者……!? もしかして魔族!?」
「
驚くアカネに向かって手を伸ばす。僕の掛け声に応じて、黒い球体が生まれる。
「
魔奏者には魔奏という力が与えられる。俗にいう魔法ってやつだ。
魔奏は様々な種類が存在し、それを扱う魔奏者も幅広い戦い方をする。
僕の魔奏は夜魂という物体を生み出す魔奏。これは僕の意思に応じて、様々な形に変化し、感触や硬度も自在に変化できる。
夜魂を黒い杭に変化させて、アカネに向けて射出する。アカネはそれを大剣で弾き返すが、片目を瞑りながら痛みを堪えるような表情を浮かべた。
「つぅ〜〜〜〜!!」
「これを防ぐとは。流石、現代最強の魔奏者。僕が造られたのも納得だ」
『やっぱりなんかノってきてないか!? お主!?』
ふふっ。ちょっと悪の魔法少女ムーブが楽しくなってきた。
「造られた……? 一体どういうこと!? 卑弥呼を狙うのにも理由があるっていうこと!?」
「僕は魔奏者と卑弥呼。それらが隠し続けた罪を裁き、滅ぼす者。僕の名は
「
『やっぱりちょっと勘違いされるような言い回しを狙ってるじゃろ』
だって〜〜、アカネが真実を知ったら心壊れそうだし。
ただでさえアカネのメンタルはボロボロのはずだ。アカネは強がりと責任感で無理して行動しようとする。
「だから僕の邪魔をしないでくれるかなぁ?」
「私が悪を……見逃すわけがないっ
アカネは大剣を振りかぶり、再び攻撃を仕掛ける。それを僕は黒い球体で受け止める。
「ここで私が退けば、死んだアオイに顔向できない!! 二度とあんな悲劇が産まれないように、貴女はここで倒す!!」
アカネの瞳に決意が宿る。次の瞬間、アカネは僕に向けて手を突き出した。その手に赤色の光が凝縮していく!
「
アカネの必殺技、ありとあらゆる敵を焼き尽くす灼熱!
それこそがアカネの魔奏詠唱だ!! 回避するのもいいけど、せっかくならあえて受けてみよう。
必殺技を受けて無傷でいるのも悪の魔法少女ムーブとしては必要なことだ。初登場は派手に、圧倒的な強さと異質さを見せつけないといけない。
僕はあえて回避せず、黒いローブで防御をする。赤色の光が炸裂し、爆発と業火が吹き荒れる。
「はあ……はあ……やった!?」
おお、流石はアカネ。ここでやったかフラグを立ててくれるとは分かっている。
僕は黒いローブをはためかせて煙を吹き払う。黒いローブが部分的に焼けこげただけで、僕は無傷のままだ。
「な、なんで……!? 並の魔族なら一撃で倒せるのに!?」
「現代最強の攻撃がどれくらいのものかと思ったけど……意外と拍子抜けだね」
「ぐっ! 言わせておけば、
「
アカネの周囲に予め配置していた夜魂を、魔奏で性質変化。重力場を生み出して、アカネを拘束する。
「う……あ、あああ! なんて魔奏……!?」
「僕はここで失礼させてもらうよ。僕の目的は達成できたことだしね」
「逃すかあ!!」
僕が夜魂で転移用のゲートを開けようとした時だ。
僕の目の前で小さな赤色の光が炸裂する。さっきの魔奏を時間差で発動させていたのか。
不意の攻撃だったせいでローブのフードのところが壊れてしまった。
……って、やべ。素顔バレたかな?
ちょっとだけ心臓が高鳴る感じがした。僕に心臓はないんだけど。
ボクがゲートを潜る直前、不意にアカネの顔が見える。驚きと別の感情が混ざったかのような複雑な表情。
流石にこの顔だけで白銀アオイだとは思わないだろう。他人の空似ということで片付けてくれるはずだ。
「君と僕の道が交わることはない。それだけは憶えておいてくれ……魔奏者」
こういう意味深な言葉も悪の魔法少女ムーブとしては必要なものだ。ふふっ、かっこよく決まったぜ。
***
「うそ……」
私は驚愕していた。いや、というか、思考が纏まらない。
なんで? どうして? あり得るはずがない。でも、でもでもでも!!
「魔奏ならありえるの……?」
魔奏者ルビー・アマリリスとしての自分が彼女の存在を肯定する。
魔奏とは人智を超えた超常の力だ。どんなことだって起こせてしまう。
私が知らないだけで可能だろう。性別を転換させることも。
あの素顔を私が見間違えるはずがない。だって十年以上、一緒にいた人の顔とそっくりだったから。
「なんで……アオイが、卑弥呼を……?」
私がアオイを殺したから?
私がアオイを助けられなかったから?
だからアオイは死後、悪の魔奏者として生まれ変わったの……?
全部、私への憎しみ?
わからない。何が起きているのか分からない。彼女の存在を否定したい。あれは白銀アオイなんかじゃないと思い込みたい。
けれど少しでもその可能性があるなら。
「私はどうすればいいの……? アオイ、なんでそこにいるの?」
私の言葉に答えてくれる人は誰もいなかった。