魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう 作:偽りの名つむぎん
「さて、アカネが力を取り戻したり、時を止める謎の魔奏者が現れたりしたから、物語的には大きな展開が起こると思うんだ」
アカネの戦いを見届けた直後、僕は滅魔奏者の姿のままそう口にする。
『はあ。で、具体的には何をするつもりなのじゃ?』
「ふふっ、よくぞ聞いてくれました」
『聞いてほしそうな口ぶりじゃったからな』
僕はアカネの戦いを見届けて思ったんだ。これは僕も物語を傍観している場合じゃねえと。
『それは本音の半分で、半分は卑弥呼の組織見つからねえ~~。なんか手がかり欲しいなっていう感じじゃろ』
「ギクッ!? い、いや~~序盤に飛ばしすぎた。まさか卑弥呼の雲隠れがこんなに早いなんて」
卑弥呼って一言にいっても、どうやら色々派閥があるみたい。僕にやったような外道で、非人道的な実験をしているのは全体の一部。
序盤に非人道的な実験組織を意気揚々と潰したせいで、そう言った派閥から雲隠れされてしまった。見つけようにも手がかりが少なすぎてお手上げ。しらみつぶしに探そうとしても、範囲が広すぎて色々無理だ。
それでいて、時を止める魔奏者の登場。意味深な発言も聞こえていたし、僕について何か知っているみたい。
「悪の魔法少女ムーブをするためには、深く物語に入り込む必要がある。だから、アカネ達が通う学校に転校生として転校しようと思って」
『……は? いやいやいやいや、は? お主マジ? え? 本当に?』
あまりにも唐突すぎる内容にヨルが驚いている。うんうん、気持ちはわかるぞ。僕も相当ぶっ飛んだことを言っている自覚はあるからな。
『お主言っていたじゃないか。真実を知れば幼馴染の精神が危ういと。自分からバレにいくつもりか?』
「魔奏でちょっと姿いじってバレないようにするよ。うーん銀髪ロングもいいけど、金髪ギャルでもいいな。夜魂があれば姿いじり放題~~」
『マジかお主。いや、いいんじゃけど。紫髪とかはどうじゃ? 妾の生前と同じじゃ』
「ありだな。それと偽名も考えなくちゃ」
偽名に偽装。外国人風の名前にすれば、悪の魔法少女感割り増しだ。悪の魔法少女が主人公達の通う学園に転入生として入学する展開。
「ふふっ、楽しみすぎて興奮してきた」
『マジでお主楽しそうじゃな』
女の子が着せ替え人形にハマる気持ちもよく分かる。こうして自分の身体を好きなように弄るのは楽しい。ふふっ、どんな転校生になってやろうか。楽しみだ。
***
「今日からこの学校に転校してきた生徒を紹介します。蒼崎さん、こちらへ」
「はい。
僕、ハーフの転校生になりました。ふふふっ! 紫がかった銀髪のロングのハーフ! まるで悪の魔法少女の中身が転校生として転校してきた! みたいな展開じゃないか!!
ちなみに戸籍とかの転校に必要な書類は全て魔奏で用意した。魔法少女的なご都合でそこら辺はなんとかした。結構頑張ったけど。
しかしアカネと同じクラスか。この世界の主人公(仮)のアカネと同じクラス……ふふっ、ドラマチックな運命を感じるな。
「では蒼崎さんは竜胆さんの隣で。竜胆さん、蒼崎さんの案内とかお願いね」
「は、はいっ! わかりました!!」
そして主人公の隣の席になるのもまた運命。流石にちょっと複雑な気持ちだな。まあここは他人として接するか。
「よろしくね竜胆さん」
「よ、よろしくね。というか、蒼崎さんどこかで会ったことある?」
……マジ? 結構ちゃんと凝って変装したのにバレかけてる?
いやいやそんなはずはない。今の僕は女の子だぞ?
「気のせいだと思いますよ。それとも日本ではそういう風に接するのが普通なんですか?」
「あ〜〜ごめんね。あはは。とにかく! これからよろしくね!」
「ええ、よろしくお願いします」
我ながら完璧すぎる演技だ。目指すは謎の転校生! 勉強も運動もトップの完璧超人現る!? だからな。
『お主まさか、魔奏を悪用する気ではないよな?』
「そんなことするはずないでしょ。こういうのは自力が大切なんだよ」
『ならいいのじゃが……』
ちなみに生前だと僕の成績は良くて上の下といったところだ。勉学でトップ争いできるほどの成績ではなかった。
だがしかしッッ!! 24時間フル稼働し続けられるこの身体があれば、どんな無茶だって叶えられる!!
勉強とはつまるところどれだけ時間を費やしたか! 睡眠時間がないという圧倒的なアドバンテージを得た僕に隙は無い! 生前取れなかった学年トップだって取れてしまう!!
この身体になったことを活かして、何が何でもトップになってやる……!!
と言ったところで僕の高校生活は始まった。完璧超人を目指す以上、魔奏で変なズルはしない。ただし身体の特性については存分に活用する。
……って決めていたんだけど。
「が、学年……二位だと……!?」
一学期の期末試験。そこで事件は起きた。
二十四時間活動可能なことをフルに利用して、勉学に励んだ。そのおかげで生前超えられなかった十位の壁は突破して、トップ争いに食い込むができたのだが。
オール100点のバケモンがいた。なんだぁ? こいつ? もしかして新手の魔奏者か?
「蒼崎さん凄いよ!! 学年2位なんて!」
「ありがとうございます。竜胆さん。竜胆さんは一位の人をご存知ですか?」
「あ〜〜天宮さんだね。別クラスだけど凄いよ。学校一の超人。体育で一度も勝てた試しがないもん」
アカネが一度も勝てない……だと!?
アカネは天然のゴリラだ。勉強はちょっと残念だけど、その分フィジカルに割り振ったような人間。
剣道部に所属していて、全国大会優勝常連とかいう訳わからない経歴を持っている。
そんなアカネが勝てた試しがない……!? アカネからそんな話聞いたことないから衝撃だ。
『魔族警報発令。魔族警報発令。至急市民の皆様は避難してください。繰り返します』
突如、学校中にサイレンの音と避難を促す放送が鳴り響く。懐かしいな。そういやこういう放送流れてたっけ。
「うげっ! 魔族か〜〜。蒼崎さんはみんなについて行ってシェルターに避難して!」
「竜胆さんはどうされるつもりなんですか?」
答えなんて分かりきっているけど、あえてこう聞くことで世間に疎い転校生感を演出しておく。
世間に疎いという要素は転校生兼悪の魔法少女として大切な要素だ。
「私は今から正義の味方をしてくるよ!
アカネはその場で変身をするとすっ飛んでいってしまう。なんか見慣れた光景だったからあれだけど、正体隠さなくていいって楽だよな~~。
……さて。
「ヨル。何匹だ?」
『デカいのが一つ。そして見たこともないゲートが開いておるのぅ』
「見たことがない……?」
ヨルがそんな意味深なことを言うなんて珍しい。何かありそうな予感がする。
『そうじゃな……。人間一人が通ったかのようなゲートじゃ。小さいゲートに比べてもずっと小さくて、誰も気づいておらん』
ゲートっていうのは小型でも最低二メートルから三メートルくらいある。魔族の肉体に合わせて形成されるからだ。
人間くらいの大きさのゲートというのは初めてだ。
「じゃあ僕らはそっちのようだね」
僕は物陰に隠れて夜魂を使い、ゲートの方へと転移する。
さて、どんなものが出てくるか。楽しみだ。