魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう 作:偽りの名つむぎん
あっっっぶねぇ〜〜〜〜!!!
ギリッギリ間に合った!!
あのワイバーン型魔族なんなんだよ!! めちゃめちゃ強えじゃねえか!!
『妾主導じゃなくてよいのか?』
「あれは僕がぶっ飛ばす! それにヨルの力の使い方も少しはわかったし」
『そうか。では好きにやってみせよ!!』
僕は滅魔奏者を見据える。スピネル・コリアンダー。アカネを傷つけようとした彼女を許すことはできない。
「ふふっ。あいつらを倒すなんてねえ。あれは魔界でも最新の魔奏を使って作ったんだよ? 卑弥呼から提供された魔奏者の力を借りてさ」
「やはり卑弥呼と魔族は繋がっていたのか」
僕もまた駅の上に立つ。……ん?
売り言葉に買い言葉のノリで話したけど、卑弥呼って魔族と繋がってたんだ……。
嫌な確信を得ちゃったな。
「ともかく……君は驚異だ。ここで終わらせる」
滅魔奏者が大弓を構えて放つ。再び八本のレーザーが枝分かれして、僕に襲いかかってきた。
僕は夜魂で作り上げた剣でそれを全て叩き落とす。やはり、これは魔奏か!
「無詠唱での魔奏発動。それが君の能力と言ったところか」
「流石だねえ。厳密に言うとちょっと違うんだけど、まあいいや。いくら君の方がスペックで上回っていたとしても、滅魔奏者としては私の方が上だ!!」
ん? どういうこと? ただの自信家っていうこと?
次はスピネルが弓を構える。しかしスピネル自身は弓の弦を引くのではなくて、詠唱を始めた。
「
レーザーと黒い炎の二重攻撃!
僕は両手に剣を作り出して、それを全て叩き落とす!
「すごい……なんて高レベルな戦い」
「私たちじゃついて行けそうにないわね」
「あーもう! どっちを応援すればいいの!?」
三人の声を聞きながら、僕はスピネル・コリアンダーを見据える。魔奏と武器による波状攻撃。流石にこれを捌くのはキツイな。
「しつこいね。じゃこれはどうだい?
風と炎とレーザーの三重攻撃……だと!?
流石にその三重攻撃は僕の身体を掠める。僕は驚きというか感動していた。あるいは嫉妬。
主人公組よりも多彩な技を繰り出せるなんて、向こうのほうがよっぽど悪の魔法少女じゃん!!!
僕は知っているんだ。いつだって悪の魔法少女や悪の仮面は主人公組よりもちょっと強めにデザインされているって。
主人公組はそう言った悪と対抗するために中間強化フォームをもらうんだ。
ならば、僕も悪の魔法少女として負けてはいられない。
二重に魔奏が使える。そのやり方を僕の前で見せたのは愚策だ。
「なるほど。そう言うふうに魔奏を使うのか」
両手の剣を夜魂に戻して、魔奏を発動する。
「
「と、トリプル……!? ダブルですら高度なのに、トリプルなんて無茶だよ!」
「あそこの赤い魔奏者のいう通りだ。私に対抗してムキになるのはいいけど、それは自滅を産むだけだよ。無駄な抵抗はやめたら?」
二つの魔奏を同時に使うという発想は僕にはなかった。夜魂の汎用性の高さゆえだろう。
二つ以上の魔奏を同時に使うことができれば、夜魂の可能性はさらに広がる。
「
夜孔は魔奏を飲み込む大穴を生み出す魔奏。
夜刃は見えない斬撃を放つ魔奏。
夜爆は魔奏による防御を無視する爆発を引き起こす魔奏。
これでスピネルの攻撃を無効化して、こちらが一方的に攻撃を喰らわせる!
「ぐっ……ああっ!? わ、私がこんな……!」
「さて、これでフィナーレだ」
腰につけた魔奏具のボタンを押す。魔奏具のボタンを押すと必殺技が放てるというギミック、今まで知らなかった。
ということで急遽腰部に魔奏具を出すように変身形態を改造したんだ。必殺技を撃つ方が魔法少女っぽいしね。
「
空から無数のラピスラズリが、スピネル・コリアンダーへと降り注ぐ。スピネル・コリアンダーがよろめいて前に出てきたところをキックでとどめを指す!
……うん、これ30分早い方のニチアサの必殺技だな。
「わ、私がこんな……やつに……負けるなんて!」
「彼女達に手を出したこと、反省してもらうよ」
ジジジ……ジジジっ! と今にも爆発しそうな音が出ているのに爆発しねえな。結構しつこいタイプの悪役か?
「
「私の邪魔をす……リコ……っ!!」
僕らの目の前からスピネル・コリアンダーが消える。ふむ、魔奏によって転移させられたのか。
「危ないところでした。彼女はわがままがすぎるとはいえ、我々の貴重な仲間」
「君も……滅魔奏者かい?」
別のビルの屋上に少女が立っていた。豪華なドレスを着ているけど、魔奏者の形態ではなさそう。もしかして私服?
「初めましてお姉様。そして愚かな魔奏者達」
……あん? お姉様? 僕が?
「私はリコ。またの名を
「滅魔奏者……!? あなた達は一体何人いるつもりなの!?」
新たな悪の魔法少女の登場にアカネがそう聞く。あ、あれぇ〜〜? 悪の魔法少女ってこんなにたくさんいるの?
もしかしてあれか? この世界はニチアサでいうところの実験作的ポジションなのか?
魔法少女VS魔法少女はエピソード的にあっても、話の根幹や大筋になることはあまりない。
これはそういうのをコンセプトにした世界観ということか? だからこんなにも沢山滅魔奏者が出てくるのか……!?
「黙りなさい。全く弱者はよく吠えますね。穢らわしい。私一人でも貴方達を全滅させるのは容易いというのに」
こ、このイキリムーブ! 悪の魔法少女のそれだ!!
や、やべえ。僕、悪の魔法少女力では負けているのでは!?
「随分と言うわね。ここで貴方と戦ってもいいのよ」
「あいにくと私は弱者をなぶる趣味はありませんの。せめて私たちと対等な力を得てから吠えてほしいですね」
「なんですって……!? 私達が貴方達滅魔奏者とやらよりも劣ってるって言いたいの!?」
「そう申し上げたのですが。まあいいです。今日はここで引かせてもらいます。それではお姉様、今度は貴方を迎えに行きますわ」
と僕にお辞儀して差っていった。それも魔奏で。僕がお姉様……そっかあ、なんか複雑だな。
「僕らも撤退するか」
「待って!」
僕が魔奏を使って撤退しようとした瞬間、アカネ達が僕の近くに駆け寄ってくる。
「二人には逃げられましたが、貴女を逃がすわけにはいかないわね」
「アオバちゃん! そういうこと言いたいんじゃなくて!」
「そーそー。アオバは突っ走りすぎ~~。ちょっと話を聞いてみたら?」
「悪の魔奏者なのよ! ここで逃がすわけにはいかないじゃない!!」
わーぎゃー、わーぎゃーと言い争いを始める三人。そうそうこれだよこれ! これこそ僕が求めていた魔法少女の主人公組っていう感じだ!
「前も言ったはずだ。僕と君の道は交わらない。彼女達を倒せないなら、僕が倒そう。君らが無理に関わる必要はない」
「違う! 私はただ貴女のことを知りたいだけ!」
このまま話していると、悪の魔法少女っぽくなくなるな。主人公組と悪の魔法少女の会話は必要最低限でいい。
僕は夜魂を使って転移用のゲートを開く。
「じゃあね。君達とまた会うことはないだろうけど」
「待って……! 君は白銀アオイっていう名前をしらない!?」
やっぱりバレてねえ!? 僕の正体!! いやいやここはなんとしてでも隠し通すんだ!
そうだ! こういう時は意味深な笑みを浮かべて、立ち去ることで正体を誤魔化すという方法がある。多くを語らず、静かに立ち去ることこそクールな悪の魔法少女だ!
「やっぱりあの笑い方……というか誤魔化し方……」
転移する直前。アカネが何かを言っていた気がする。流石に気のせいか。