魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう   作:偽りの名つむぎん

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8話 クール系魔法少女って意外と曇りやすいよね

「僕は知っているよ。アオバがどれだけクールに振舞っていても、裏でいっぱい努力していること」

 

 私にとってその言葉は戦う理由であり、私を形成する上で大切な言葉。

 

 留学していた時、彼の言葉、彼の笑顔を想いながら厳しい訓練と戦いに耐えていた。帰国した時、彼はなんて言うんだろうって、密かに微笑みながら。

 

「何がともあれ終わったわね。卑弥呼に要請をしたわ。後処理は卑弥呼に任せて、私達は帰るわよ」

 

「やっぱり……あの子は」

 

「ちょっと!? 聞いているのかしら?」

 

 私の親戚、竜胆アカネ。竜胆家は代々卑弥呼に仕える家系だ。同時に私達は巫女でもある。つまるところ実家が神社なのだ。

 

 アカネは正直、天性の才に恵まれている。魔奏者にならずとも人間離れした身体能力、獣のような直感。私に持ちえないものを持っている。

 

 その代わりなのか、ちょっと抜けているというか、時折ボーっとしているというか。頼りない一面を見せたりする。

 

「ご、ごめん。ちょっと考え事に夢中で」

 

「珍しいじゃんアカネが考え事に夢中になるなんてさ」

 

「いや~~、二人がいない間にも色々ありまして」

 

 アハハと笑うアカネ。その笑みがいつもとは違うのを感じた。

 

 ……無理をしている? 何か事情があるかのような笑みだ。けれど、それを追及したところで本人は何も答えてくれないだろう。

 

「そうだ! 二人とも帰ってきたしさ! 一緒にカフェでも行こうよ!」

 

「お、いいですな~~。アオバも来るやんね?」

 

「仕方ないから付き合ってあげるわ」

 

 とアカネとヒスイに連れられてカフェへと向かう。

 

 ……そういえば、帰国してから彼の姿を見ていない。いつも彼はアカネの傍にいたというのに。

 

 いやいや、あれだけの戦いの後だ。きっと避難していて、そのまま家に帰ったとかそういうのだ。

 

 明日、学校に行けば会えるはず。密かに彼と出会うことを楽しみにしていたんだ。なんて反応してくれるか、今から楽しみだ。

 

「あ! アオバが笑っている! ねえねえアカネ見た? 珍しくない?」

 

「本当だ。アオバも笑うんだね。何かいいことでもあった?」

 

「人が微笑んだくらいで大袈裟ね。私をなんだと思っているのかしら?」

 

 本当、私ってなんでこんなデリカシーの欠片もない人達と組まされているのかしら?

 

 

***

 

 

「留学から帰ってきた竜胆アオバです。これからよろしくお願いします」

 

 翌日、私はアカネ達が通う学校に帰ってきた。

 

 私はアカネと同じクラス。ヒスイは隣のクラスだ。ヒスイはクラスメイトと再会できることを楽しみにしていた。

 

 一方で、私も楽しみにしていたことがある。

 

 アカネと同じクラスには彼がいる。そう、ずっと会いたかった彼が。けれど。

 

「あれ……?」

 

 つい言葉を失った。彼はアカネの隣の席だったはずだ。なのに、その隣の席には別人が座っている。

 

 教室を見渡しても彼の姿がない。空席も私の分しかない。

 

 だというのにアカネも、クラスメイトも、それが自然かのように日常を過ごしている。それが私には受け入れ難いものだ。

 

「アカネ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「うん、そうだよね。そう言われると思ってた。放課後、ちょっとだけ時間をちょうだい」

 

 アカネの悲しみを押し殺したかのような表情。一体、アカネは何をしっているというの?

 

 その問いの答えが帰ってくるのは、放課後になってからだ。

 

 その日の授業は身が入らず、ただボーっとして過ごしていた。気がつけば放課後になっていて、私はアカネとヒスイと共にいつもとは違う帰り道を歩いている。

 

「着いたよ。言葉で説明するよりも、見てもらった方が早いと思って」

 

「なんで? 彼のことを説明するのに、どうしてこんなところに来ないといけないの?」

 

 アカネに連れられて着いた場所は霊園だった。なんで? いや、そんなはずはない。

 

 私が留学にいく半年前までは元気だったじゃない。そんな急に亡くなるなんてありえない。

 

「そうだよね。そう思うよね。けれど、ここにあるものが全てなんだ」

 

 私はそれを見た時、思考が止まった。目の前の現実を受け入れるのを拒否した。こんなの絶対におかしい。何かの間違いだ。

 

「アカネ。アオイの姿が見えなかったのって、もしかしてそういうこと?」

 

「うん。二人に話すかは悩んでいたんだ。けれど、隠し通せるものでもないから」

 

「そっか。何があったか聞かせて――」

 

 ヒスイの言葉を遮って、私はアカネに飛びかかっていた。アカネの胸倉を掴んで、地面へと押し倒す。

 

「どういうこと!? どうして!? あなたがいながら、なんで、なんで白銀君が死んでいるのよ!?」

 

 そこにあったのは白銀家之墓と書かれた墓石だった。墓石には白銀アオイの名前も刻まれている。

 

 許せない、許せない、認めたくない。

 

 なんで、この子は最愛の幼馴染を亡くして、平然といられたのか理解できない。今すぐにでも私は……!

 

「アオバやめなよ! アカネを責めたところで何も起きないじゃん!!」

 

「黙れ!! 私はそんなことが聞きたいんじゃない!! 現代最強と呼ばれている貴女がいて、どうして、人一人守ることすらできなかったのか!! それを聞かなくちゃならないのよ!!」

 

 私がこえだけ声を荒げて、怒りを表情に表しても、アカネの表情はピクリとも動かない。覚悟が決まった目で、私を射抜くだけだ。

 

「答えなさい。一体誰が!? どうして!? 一体何が彼を殺したというのよ!!」

 

「私だよ」

 

「…………は?」

 

 即答された答えに私の思考はフリーズした。

 

 私? 私って誰? 私ってアカネ? アカネがアオイを? そんなはずは。

 

「私がアオイを殺したんだ。嘘も否定もない」

 

「アカネエエエエ!!!!」

 

 私が拳を振り上げる。アカネを殴る直前に、ヒスイに止められてしまう。

 

「放しなさいヒスイ!! 私はこいつを許せない!!」

 

「落ち着けって言ってんじゃん!! こんなところで私達が争ったところで何も起きないよ!!」

 

「はあ!? 落ち着ける訳ないでしょ!? 私はあんたらのような冷血とは違うのよ!!!」

 

「ナマ言うのも大概にしなよアオバ。これ以上は本気でやらなくちゃいけなくなるじゃん」

 

「やってみなさいよヒスイ。私の邪魔をしないで」

 

 私は手首に巻いている魔奏具に手をかける。ヒスイも同じく、魔奏具に手をかけた。

 

「二人ともやめて。そんなことアオイが望まないよ」

 

 私達よりも早く、アカネは魔奏具を構えていた。このままでは先にアカネが変身して、私達は軽々と制圧される。

 

「私は決めた。アオイがいなくても未来に向かって歩き続けるって。魔奏者として戦い続けるって」

 

「随分ないいようね。人殺しの分際で。あなたがどんなご高説垂れ流そうとも、あなたの罪が消えるわけじゃないのよ!」

 

「アオバ、マジで言い過ぎ。考えたくないけど、こういうことは起きちゃうよ。二人の間にどんなことが起きたのか分からないけど」

 

 こういうこと……?

 

 こういうことって……ナニ?

 

 コウイウコトッテ、ナニ?

 

「私のことを恨んでもいいよ。憎んでもいい。魔奏者としての責務を果たせるなら、私はどんな言葉だって受け入れるよ」

 

 ナニヲ……なんで?

 

 なんであんたは今にも泣きそうな顔で、そんな強いことが言えるの? 私はあんたをそういう風に思いたいわけじゃ。

 

「魔族に隙を突かれないでね。滅魔奏者との戦いも始まったんだ。気は引き締めてね」

 

「なんで……どうしてあんたはそんな平気な顔で」

 

「平気なわけないよ。けれど、悲しむことも、涙を流すことも、全部やり終えたから。アオバやヒスイがそれを終えるまで、私が全部倒すから」

 

 そういってアカネが去っていく。

 

 私はその後ろ姿を何も言えないまま、見つめることしかできなかった。

 

 

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