魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう 作:偽りの名つむぎん
「気になって後をつけてみたんだけど……。まさか、僕の墓があるとは」
『そういや忘れがちじゃが、お主死んでるのよな』
「こんななりでも死人でございます~~。こんなこと、アカネの前じゃ言えないけど」
アオバは半年前から海外に留学していた。まさか僕の死について何も連絡がなかったとは。
まあアカネも立ち直るまでに結構時間かかっていたし、それどころじゃなかったんだろう。それにしても。
「うーん、流石にアオバと琴葉さんはしばらく戦えなさそうかな」
『んで、お主はどうするのじゃ? 滅魔奏者が増えた以上、戦いはますます過激になっていくと思うぞ』
そこなんだよな。まだ僕が主人公組に加わるのは早いと思っている。追加戦士あるいは光堕ちしたキャラクターが主人公組に合流するのは、中盤以降と相場が決まっているのだ。
「ふふっ。主人公組に加わるまでは、こいつは敵なのか? それとも味方なのか? 謎多き第三勢力キャラとしてやらせてもらおう」
『それって悪の魔法少女っていうのか? 主旨と外れておらんか?』
「ギクッ!? だってしょうがないじゃん。卑弥呼見つからねえもん」
卑弥呼と魔族が繋がっているのは、先日のスピネル・コリアンダーのセリフ的には確定だ。滅魔奏者のデータ、結構頑張って消したと思ってたんだけどな。
「卑弥呼探すなら、滅魔奏者経由の方が都合よさげなんだよね。ついでに魔族も倒せて一石二鳥! みたいな感じで」
『お主、悪の魔法少女言う割には人助けするよな』
「僕の悪の魔法少女像は、主人公と敵対しているだけで、一般人に危害を与えるようなことはしない。むしろ一般人を救うのが目的だけど、手段の違いで主人公組と敵対しているっていう感じだからね」
『それだけ聞くと立派なんじゃけどな』
卑弥呼をぶっ潰すぞ~~ってなっているのは、一般人に危害が出てしまうため。それを阻止するために僕は戦っている。
「きゃああああ!! 助けて!!!」
「魔族だ! 魔族が現れたぞ!!」
ふっ……。どうやら魔法少女を呼ぶ声が聞こえる。ここはいっちょ派手に活躍するとしようか!
「
僕は滅魔奏者の姿に変身し、街中の方に転移する。街中では相変わらず魔族が元気に暴れていた。
『ヴオオオオッッ!! 魔奏者とやらはどこにいる!? さっさと姿を現せ!! さもなくば!!』
高さ三メートルくらいの巨人がそう叫んでいる。赤い肌に大きな金棒。どこからどう見ても赤鬼をモチーフとした魔族だ。
そいつは金棒を振り回してあちこちを破壊している。どうやらアカネはまだ来ていないようだ。
「うわっちょ!?」
逃げようとしていた女子高校生が転んでしまう。あれって同じ学校の制服だよな。流石に一般人に被害が出るのは見過ごせないな。
女子高校生へ飛来してきた瓦礫を片手で受け止める。
「え……? あ、あなたは?」
「通りすがりの魔奏者っていうやつ。ここは危ないからさっさと逃げて」
「は、はい。そうさせてもらいます」
うむ、聞き覚えがよくて大変助かる。しかしあの子、動じなさすぎというか目の下のクマ凄かったな。寝不足か?
「さて……。邪魔もいなくなったし、思いっきり戦えるね」
『なんだお前。いや、お前から魔族の匂いを感じるぞ。お前は一体何者だ?』
「さあ? 口を割らせてみなよ!」
『愚か者め! 俺が何者か知らず、正面から戦いを仕掛けるとはな!!』
剣で一閃。しようとしたところを金棒で受け止められてしまった。中々力強いなこいつ。
『我は四魔将の一人、剛力のデモニオ!! 魔奏者の首、いただくぞ!!』
「バカ力だけで勝てると思われているなら心外だな」
金棒と剣が激突する。ここまで攻めきれないのは初めてだ。
先日戦ったスピネル・コリアンダーと名乗る滅魔奏者よりかはずっと強い。となるとこいつは魔族の幹部枠か?
となると勢力図は、魔奏者、滅魔奏者、魔族の三勢力となる。後ろ二つが協力しているとなると、アカネ達はかなり厳しい戦いを強いられるだろう。
「あまり長引かせたくないな」
腰につけている魔奏具のボタンを押す。魔奏具から魔法陣が浮かびあがり、必殺技の準備ができる。
「ここは禁断の技。初手必殺技で決めさせてもらうよ」
『なにッ!? させんぞ!!』
デモニオが金棒を振り回して必殺技を阻止しようとする。それを残像が出るほどのスピードで避ける。
僕の周囲にはラピスラズリで作られた無数の蒼い剣が浮遊していた。
「
『なにっ!? ぐわああ!!!』
無数の剣が射出して、デモニオの身体を貫く! デモニオが膝をついたところで、巨大な剣がデモニオを一閃しようと振るわれる。
「
大量の花びらが僕の必殺技を中断させる。クソっ! せっかくの決めシーンだったのに!!
そして大量の花びらと共に大きな日傘を刺した、赤黒いドレスを着た少女が現れる。確かリコって言ったか。
「ごきげんようお姉様。お楽しみのところ申し訳ありませんが、今、貴重な戦力を失う訳にはいかないのです」
『……リコ様。何故、貴女がここに』
「今日は私のお披露目ということでして。なので、デモニオ。帰ってもらっても?」
『ハッ。リコ様のご意向のままに』
デモニオがゲートを開けて去っていく。僕はその様子をただ眺めていた。
……クソッ! なんなんだあの子の悪の魔法少女力は!! 敵組織の幹部を従えていて、おまけになんだそのドレスと日傘!! ミステリアス路線を綺麗に走っているじゃないか!!
それは僕の立場だぞ!!
『え゛。お主、自認ミステリアスキャラってまじ?』
なんだよその驚いた声は。大真面目に自認ミステリアスキャラだぞこっちは。
『いや、もう妾が突っ込むことはせん。そうか、そうだったのか』
と! に! か! く!!
同じ悪の魔法少女として負けていられない。
「この街の人々に危害を与えるつもりなら、僕が許さない。当然、魔奏者にも手を出すつもりなら」
「残念です。お姉様は私達と同じ目的を抱くものと思っていましたが。まさか人間……それも魔奏者の味方をするなんて」
リコが胸元から魔奏具を取り出す。赤と黒、そしてオパールが埋め込まれた魔奏具だ。
「お姉様には分かってもらう必要があるようですね。いくら、魔王の魂を宿していても旧型の魔奏具では私達の相手にはならないということを」
「なに……?」
「
リコの姿が滅魔奏者の姿に変貌する。ドレスはあまり変わっていないけど、日傘がマスケット銃に変形している。
ああいうギミックを見ると自分も欲しくなるな……。ではなくて。旧型の魔奏具ってどういうことだ?
その意味を聞こうとした瞬間、オパール・リコリスの背後から強大な炎の気配を感じる。
「あら、貴女は」
「……竜胆アカネ」
アカネが制服のまま、僕らを見据えて魔奏具のボタンを押す。ルビーが彼女の身体を包み、魔奏者の姿へと変身する。
「アオバやヒスイちゃんが戦えない分、私がこの街を護る。アオイのためにも。だから」
アカネは大剣に炎を宿して、僕たちへと突き出す。
「なんの思惑があるか知らないけど、そこまでだよ滅魔奏者。貴女達には聞きたいことが沢山あるんだから。大人しくしてもらうよ」
「愚かな人間風情が。私と同列になったと思っているのか?」
オパール・リコリスの気配が一変する。彼女がアカネに向けている視線を言葉にするというのなら。
底知れない怒りと侮蔑を孕んだ視線だ。
「貴女はともかく、お姉様と同時に戦うとなると面倒ですね。いいでしょう。私が作りあげた魔奏者の真の姿について、特別に見ることを許してあげます」
オパール・リコリスが胸元から取り出したのは……クリスタルで作られた花の蕾のようなアイテムだ。も、もしかしてこれは……!
日曜朝の定番アイテム。強化アイテムという奴ではないだろうか!?
『凄いなお主。あながち間違いではないぞ。あそこからとてつもない魔力を感じる』
「……え? マジ?」
「貴女達は疑問に思いませんでしたか? 何故魔奏具が折り畳み式の手鏡の形をしているのか」
「どういうこと?」
アカネは大剣に取り付けられた魔奏具を見つめる。確かに、魔奏具を使って変身をする時、ボタンを押すだけで手鏡が開くようなギミックはない。
「何故、変身の時に魔奏具は開かないのか。何故、手鏡だというのに鏡がなくて空洞なのか」
オパール・リコリスが魔奏具を開く。彼女の言う通り、魔奏具の中は鏡の部分がくり抜かれていた。
「その答えはただ一つ」
オパール・リコリスがその空洞に先ほどの蕾をはめる。蕾から魔法陣が浮かび上がった。
「魔奏者とは自分の想い、願い、欲望、それらが形となった姿。そして、鏡がないのは人の中身とは簡単に変貌し、自分を映し出すことを忌避しているから」
オパール・リコリスの姿が変わっていく。先ほどの重厚感のあるドレスから、動きやすさを重視した軽装のドレスに。同時に武器もマスケット銃が二つに分割して二丁拳銃になっている。
「私が開発した
オパール・リコリスは僕とアカネ、二人に拳銃を突き付けながらこう告げる。
「この形態こそ、
……ま、まさか! 主人公組よりも悪の魔法少女の方が先に強化形態になるなんて!!