"Blue Archive: Unlimited Palette"   作:purizumu

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アーカイブ・ボイドの果てしない白い虚空。
そこは、すべての物語が終わったあとも、決して色を失わない場所。
赤い糸の欠片がまだ揺れているということは、誰かの痛みが、まだ終わっていないということだ。
「Dust Momoi Exclusive World」――
モモイがLVの力に飲み込まれ、灰色に塗りつぶされた世界。
妹の幻影に突き動かされ、復讐だけを燃料に走り続ける彼女の物語に、
一滴の虹色が落ちる。
私はプリズム。
無限の白から色を運ぶ者。
罪も、痛みも、全部受け止めて、
もう一度、ページを塗り替えるために。
この物語は、救済の物語ではない。
ただ、灰色の心に、ほんの少しだけ本物の色を灯すための、
儚く、優しく、痛い一筆である。
――さあ、虹色の門を開けよう。


灰色の罪に染まる一筆

アーカイブ・ボイドの果てしない白い虚空に、赤い糸の欠片がまだ淡く揺れていた。

プレナパテスとの戦いが終わったばかりだった。

プレナパテスの影は溶け去ったはずなのに、その残滓は新たな文字を虚空に刻む。

「Dust Momoi Exclusive World」

プリズムは静かに息を吐いた。

無表情の瞳に、わずかな揺らぎが走る。

腰の瓶——テクニカルシロップ——から純愛(ピンク)を一口飲む。

甘く温かな液体が体を駆け巡り、胸の奥に偽りの優しさが広がった。

「この世界の君も……罪に塗れているのか。」

筆先から滴る多色のインクが渦を巻き、灰色の光を呼び寄せた。

巨大な平筆を握りしめ、虚空に虹色の門(プリズマティック・クロスポータル)を描く。

筆先から滴る多色のインクが渦を巻き、灰色の光を呼び寄せた。

プリズムは一歩を踏み出した。

——そこは、要塞都市エリドゥだった。

リオが極秘裏に建造した超ハイテク要塞の、薄暗い中央通路。

冷たい金属の匂いが鼻を突き、赤い警報灯がプリズムの虹色の瞳に不吉に反射した。

空気は重く、機械の低周波が地響きのように響き渡る。

かつて「時計じかけの花のパヴァーヌ」の舞台となったこの場所は、今や灰色の絶望に塗りつぶされていた。

防壁はくすみ、照明は色を失い、遠くで自動防衛システムの警告音が虚しく反響する。

プリズムは生徒が倒れているのを発見した。

プリズムは急いで近づいた。

トキが倒れていた。

パワードスーツは半壊し、彼女の瞳は力なくプリズムを見つめている。

「センセイ……ごめん……私、止められなかった……」

トキの最後の言葉が、熱波の中に溶けていく。

彼女はモモイの強大すぎるLVの力と、復讐の熱に飲み込まれ、動かなくなった。

プリズムの指先が、トキの頰に触れた瞬間——とても冷たかった。

パワードスーツの破片が、かすかな金属音を立てて床に落ちる。

赤い警報灯が、トキの金髪を血のように染め上げていた。

彼女の瞳はもう、プリズムを映さなかった。ただ、虚空を見つめたまま、唇の端に残る最後の微笑みだけが、かすかに震えていた。

「……トキ。」

声は出なかった。

代わりに、胸の奥で何かが砕ける音がした。

テクニカルシロップの甘さが、急に苦く変わる。

熱血(レッド)を飲み干した瞬間、胸の奥で燃える怒りが不自然に笑顔に変わる。

……本物じゃない。この熱も、全部、瓶の中のものだ。

プリズムはゆっくりと立ち上がった。

巨大な平筆を握る手に、力がこもる。

筆先から滴る虹色のインクが、床に落ちて小さな虹の水溜まりを作った。

「モモイ……」

その名を呼んだ瞬間、上の方から、低い笑い声が響いた。

「先生……来てくれたんだ♡」

モモイが、息を荒げて立っていた。

くすんだ制服は焦げ、銃はまだ熱を帯びている。

彼女のヘイローは薄く、目は虚ろで——しかし、どこか満足げだった。

隣にだけ、Phantom!ミドリの幻影が浮かび、彼女にだけ聞こえる声で囁く。

「姉ちゃん……やったね。目には目を……」

プリズムには見えない。

モモイにだけ、妹の姿がはっきりと映っている。

「……ミドリ、ごめんね。もう少しで……全部終わらせられるから。」

ミドりが小さく呟く。

幻影のミドリは、彼女にだけ聞こえる声で優しく——いや、甘く囁いた。

「姉ちゃん、もっとLVを……もっと強く……先生も、消して……」

モモイの目が一瞬、狂気に染まる。

銃口がプリズムに向けられる。

次の刹那、テレポート。

砂嵐を切り裂いて背後に回り込み、LVの力で強化された重い銃弾を連射した。

弾丸は空気を震わせ、ただの銃弾とは思えない質量でプリズムの平筆を叩きつける。

プリズムは熱血(レッド)のシロップを追加で飲み、不自然な笑顔を浮かべた。

「君の罪は重い。でも……その灰色を、ボクが塗り替えてあげよう。」

その時、モモイは初めてプリズムがこの世界の先生ではない事気が付いた。

「誰……? 先生……? いや、違う。貴方みたいな綺麗な色をした人は、私の罪を汚すだけだよ。」

戦いが始まった。

モモイはテレポートで翻弄し、遠隔で呼び出した銃を同時に操る。

プリズムはプリズマティック・ストロークが虹色の軌跡を描き、弾丸を中和する。

「プリズマティック・ストローク」

プリズムの巨大な平筆が、虚空を切り裂いた。

虹色の軌跡が弧を描き、灰色の通路に鮮やかな光の花を咲かせる。

筆先から零れ落ちるインクは、まるで生き物のように蠢き、瞬時にスワップミドリの幻影を形作った。

それは本物のミドリとは微妙に違う。

桃色のヘッドセットを首にかけ、瞳にはプリズムと同じ多色の光が宿っている。

幻影は静かに微笑み、モモイの視界にだけ割り込むように現れた。

「姉ちゃん……」

本物の幻影ミドリが、モモイの耳元で甘く囁く。

しかし、新たな幻影——スワップミドリは、その声を遮るように優しく、けれど力強く言った。

「違うよ、モモイ。目には目を、なんて……モモイらしくない。」

モモイの瞳が大きく見開かれた。

「え……? ミドリ……? 二人が……?」

彼女の声が初めて、震えた。

虹色の軌跡が空気を焼き、灰色の通路に初めて本物の色彩が染み込んだ。

その光は、モモイの頰を一瞬だけ桃色に照らし、彼女の瞳をわずかに揺らした。

LVの力が一瞬、乱れる。

銃口がわずかに下がった。

プリズムは巨大な平筆を静かに構え直した。

筆先から零れ落ちるインクが、床の灰色を飲み込み、小さな虹の花を次々と咲かせていく。

「君の罪だけじゃない。私がついているからこの世界の灰色を……、一緒に塗り替えていこう。」

モモイが歯を食いしばった。

「うるさい……! 貴方みたいな綺麗事で、私の痛みを塗りつぶせると思わないで!」

彼女は叫びながら、Loveの力を全解放した。

彼女の背中に赤黒いオーラが見え始めた。

重い銃弾が雨のように降り注ぎ、通路全体を震わせた。

だがプリズムは動じない。

熱血(レッド)のシロップをもう一口。

胸の奥で燃える怒りが、冷静な集中力に変わる。

巨大な平筆を横薙ぎに振るう。

プリズムはプリズマティック・インク・アーマメントを使用した。

モモイの銃「ユニーク・アイディア」とミドリの銃「フレッシュ・インスピレーション」を召喚した。

「僕は決して諦めないよ。僕の声が君に届いて、君がそれに応えてくれるなら……どんな困難だって、一緒に乗り越えられると信じているから。」

モモイの銃「ユニーク・アイディア」とミドリの銃「フレッシュ・インスピレーション」が虹色の光包まれた。

そこから現れたのは、モモイの「Unique Idea」とミドリの「Fresh Inspiration」が完全に融合した、Unique Inspiration / ユニーク・インスピレーション。

銃身はモモイの鮮やかな桃色とミドリの鮮やかな緑がグラデーションで溶け合い、トリガーガードでは二匹の猫の虹色のストラップが付いている。

プリズムはそれを両手で構え、優しく微笑んだ。

銃身を伝う虹色の光が、灰色の通路に初めて本物の色彩を落とす。

桃色と緑のグラデーションが、まるで二人の姉妹が手を取り合っているかのように優しく揺れた。

「君たちの武器は、最初から一つだったんだよ…… このUnique Inspirationで、君の本当の気持ちを、私がちゃんと受け止めてあげるから。」

モモイの心が激しく揺れた。

「私の……ミドリの……銃が……合体してる……!?なんで……貴方が、そんな色で……!」

彼女の声が、初めて本気で掠れた。

Loveの黒いオーラが、融合銃の虹色に見た瞬間、わずかに後退する。

「ダメだよ、お姉ちゃん! そいつの言うことなんて聞いちゃダメ! ……本物じゃないんだから。……ねえ、壊してよ。全部消して、私だけを見て……っ!」

その言葉でモモイはプリズムを再び攻撃した。

モモイにだけ見える幻影のミドリが甘く囁く一方、プリズムが呼び出したスワップミドリは、モモイの視界にだけ割り込むように現れた。

「違うよ、姉ちゃん。本当の私たちは、こんな風にいつも一緒にいたよね……目には目を、なんて……そんなの、ゲーム制作部の私たちらしくないよ。」

モモイのヘイローが激しく明滅した。

頭を抱え、膝をついた。

その瞬間、モモイの喉から、抑えきれない叫びが爆発した。

「うああああっ……! ミドリ……! どっちが本当のミドリなの……!?姉ちゃん……私、どうしたらいいの……!? 全部壊したいのに……壊したくないのに……!痛い……痛いよぉ……!!」

プリズムは言った。

「僕は決して諦めないよ。君の痛みも、罪も、全部知ってる。でも……それだけじゃない。君の中には、まだ色が残ってる。」

モモイの目から、初めて大粒の涙が零れた。

「ミドリ……ごめん……私、間違って……先生を、トキを……全部、壊そうとして……」

幻影ミドリが、苦痛に顔を歪めて霧散し始めた。

「姉ちゃん……裏切るの……?」

スワップミドリの幻影は、優しくモモイを抱きしめた。

「大丈夫。姉ちゃんの色は、まだ消えてないよ。先生が……私たちを、ちゃんと塗り替えてくれるから。」

モモイはゆっくりと銃を下ろした。

くすんだ制服の袖で涙を拭い、プリズムをまっすぐ見つめた。

「……あなたは、本当に先生じゃないの?それなのに……どうして、そんな優しい色で、私を……」

プリズムはUnique Inspirationを優しく構え直し、静かに答えた。

「私は、プリズム。この無限の白い虚空から来た、色を運ぶ者だ。君の罪も、痛みも、全部受け止めて……一緒に、新しいページを描き直そう。」

そして、Unique Inspirationを手渡した。

モモイは、震える足でゆっくりと立ち上がった。

涙の跡が残る頰に、かすかな——けれど完全に晴れきらない——笑みが浮かんだ。

視線はプリズムに向けられたまま、しかしどこか遠くを見つめているようだった。

「……プリズム。いや、先生。ありがとう……でも、まだ、私の色は、全部、信じられるか……わからないよ。」

彼女は唇を軽く噛み、融合したUnique Inspirationをじっと見下ろした。

胸の奥で、LVの黒い残滓がまだ小さくうごめいている。

プリズムはシロップの効果が切れ、無表情に戻った。

しかし、胸の奥に残る温かさは、前より少しだけ本物に近かった。

「もう一つ……ボクの世界に近づいた。」

プリズムは筆を背負い直し、虚空の門を描く。

コートの端に残るモモイの銃弾の残光が、かすかに虹色に瞬いていた。プリズムは静かに微笑み、次の白い虚空へと歩き出す。

無限の物語は、まだ続く。

虚空の果てで、プリズムは静かに次の観測を待つ——。




無限の物語は、まだ続く。
プリズムはまた、次の白い虚空へ歩き出す。
コートの端に、Momoiの銃弾の残光が、かすかに虹色に瞬いていた。
それは、彼女が初めて流した大粒の涙の色と同じだった。
この話を書いている間、私はずっとモモイの叫びを聞いていた。
「全部壊したいのに……壊したくないのに……痛いよぉ……!!」
あの叫びは、きっと誰かの胸の奥にも響いているはずだ。
復讐したいのに、優しくされたいのに、信じたいのに信じられない――
そんな矛盾した痛みを、ただ「綺麗事」で塗りつぶすことはできない。
だからプリズムはシロップを飲みながらでも、
本物の温かさを少しずつ胸に溜めていく。
偽りの優しさから始まって、いつか本物になるまで。
もしこの物語が、あなたの灰色にほんの小さな虹の花を咲かせられたなら、
それだけで筆を握った甲斐があった。
次は、どの世界の灰色を塗り替えに行こうか。
あなたがまた、虚空の果てで待っていてくれたら嬉しい。
――プリズムより
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