超かぐや姫! 〜彩葉の幼馴染のかぐや姫物語〜   作:ソール

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一花の忘れるわけにはいかない過去

 

 

 

11年前 俺が6歳の頃

 

京都に住んでいた時、俺は家が近くで同い歳だった彩葉と毎日遊んでいた。特に彩葉の父である朝久さんに教わるピアノの練習が一番の楽しみ。彩葉と一緒にピアノを使った音楽をするのが毎日の楽しくて。コンクールも出たりして、彩葉と毎日競っていた。特に朝久さんの演奏が素晴らしくて、俺は朝久さんに憧れてピアニストを目指したくて、朝久さんに頼んでピアノを教わった。それで俺は彩葉に負けないくらい、コンクールで何度も優勝した。彩葉には一回も負けることはなかった

 

そんな感じで、俺は同じ幼稚園でありながら、朝久さんの教えのピアノの習い事をしてその時は過ごしていた

 

 

そもそも俺と彩葉が幼馴染なのは、単に家が近いからと同い歳が偶然彩葉だけしか居ないからではなく、彩葉と朝日さんの両親と俺の母さんが高校の同級生だった。その高校生の同級生繋がりで、親父は母さんが高校卒業して保育士だった時に職場で医療保育士になったばかりの親父と共に働き、恋に落ちて、結婚した。いわゆる職場恋愛だった。そして母さんは親父を、朝久さんと紅葉さんに紹介して、仲良くなり友人となり。友人同士の繋がりで、俺と彩葉は知り合った

 

それでから、朝日さんと彩葉でサッカーしたりと、お互い両親を連れて海で遊んだり、山でピクニックへ行ったり、バーベキューをしたりと

 

 

俺たち天人一家と酒寄一家はそれだけ親密な関係だった

 

 

幼稚園まではそれなりに楽しい日々を両家で送れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺があの『事件』を引き起こすまでは

 

 

 

 

 

それはある日のことだった。もう少しでコンクールが近い日の事、俺と彩葉と朝久さんは家に帰ろうと街を歩いていた。コンクール優勝のために、お互いピアノ教室のレッスン室で練習し終わって家に帰ろうとしたところ

 

 

『二人とも、今日はよく頑張ったね?』

 

『そりゃあ優勝目指してますからね!』

 

『一花。今度は負けないからね!』

 

『こっちだってな!』

 

 

お互いコンクールの優勝を目指して頑張っていた

 

コンクール優勝のために、今までずっと頑張っていた。その努力を無駄にしないためにお互い全力で勝負する。そんな決意をしながら帰るのだった。

 

 

『ふふふ、一花は本当に彩葉と仲良くしてくれるやね』

 

『彩葉くらいしか居ませんけどね』

 

『それでもウチの子と仲良くしてくれておおきに、これからも彩葉をよろしゅうな』

 

『俺で良ければいいですよ!彩葉と遊ぶの楽しいですし!』

 

『ま、まあ、私も一花と遊ぶのは楽しいどす』

 

 

 

その日は風が強かった。だから

 

 

ビュウウウウウウウウ!!!

 

バサ!!

 

 

『あ!楽譜が!?』

 

『な!?俺が拾う!!』

 

 

彩葉が大事に持っていた楽譜が強風で飛ばされた。その楽譜はコンクールで演奏する大事な楽譜だった。俺は急いで飛ばされた楽譜を取りに行く、何枚かかなりバラバラにかなり飛ばされていて、拾うのは一苦労だった

 

それでも全部拾うと頑張った。あと一枚

 

 

『あ!あそこに!もう!』

 

 

最後の一枚、最後の一枚を取りに行った先で問題が起きる

 

それが『この事件の始まり』。俺が無理して最後の一枚を取りに行った場所は

 

 

 

『道路』だった

 

 

 

そんな危ない場所に無理に行って通った。いつまた風を飛ばされて、取りに行けないような場所に行っても困るため、俺は無理に道路に入った

 

 

『よし、これで全部!』

 

 

最後の一枚を取った

 

 

その瞬間

 

 

 

キイイイイイイイイイイ!!!

 

 

『・・・・・え?』

 

『危ない!!!』

 

 

 

その隣でトラックが迫り来ていた。

 

 

運の悪いことに、トラックがこっちにもうそこまで迫って来ていた。その道は交差点でもない、普通の道路で、通る車も少ないような場所だ。そんな場所で運悪く、トラックが通り、俺はその前に出てしまった。もうすぐ目の前まで来ていた

 

もう避けられない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グイ!!!!!

 

 

『一花!!!』

 

『え?』

 

 

トラックに轢かれそうになる俺の背中を

 

 

 

 

朝久さんが押した

 

 

 

 

そのおかげで俺は道路の端に飛ばされて、俺は助かった

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン!!!!!!

 

 

『・・・・・・・』

 

『お父さん!!?』

 

 

朝久さんが代わりに轢かれた

 

トラックに轢かれて道路に横たわり、俺の目の前で頭から大量出血で血が流れる。道路一帯に流れるように、朝久さんは目を見開いたまま、道路の中心で倒れて彩葉が名前を呼んでも言葉にも反応しない

 

 

 

酒寄朝久さんは、俺を庇ってトラックに轢かれて亡くなった

 

 

 

『朝久さん?・・・・朝久さん!朝久さん!!朝久さん!!!』

 

『お父さん!お父さん!!お父さん!!!』

 

 

俺と彩葉は急いで道路で倒れている朝久さんの所に行き、体を揺すって起こすように両手で朝久さんの体を揺らす。そんな寝ている人を揺すって起こすようなことをしても。もう朝久さんは脈はトラックに轢かれただけで、もう脈まで機能しておらず、言葉さえ話さない。人間と言う生き物は車に撥ねられるだけで簡単に死ぬ、もう何をしてもダメだと悟る

 

それに気づいたのは、朝久さんの流れる血を、両手で触ったからだ

 

手一杯に、全体に付くように、朝久さんから流された血を見て、俺は涙を流して悲鳴をあげる

 

 

 

『あああ!ああああ!!あああああ!!!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

 

 

絶望的な悲鳴だった

 

朝久さんが亡くなったことを認識した俺は、絶望のあまり悲鳴を上げて泣き叫んだ。初めて6歳の時に身近な人が死に、その悲しみで心がいっぱいだった。それに

 

 

 

 

 

俺のせいで死んだ

 

 

 

 

俺が馬鹿みたいに親切な行動が人を殺した。これはどう考えても、いや、こんな状況でも。俺が原因であることが間違いない。俺が無理して楽譜を取りに行かなければこんなことにならずに済んだ。

 

朝久さんはトラックの運転手が救急車を頼み、病院に搬送する。しかし、もう心臓は動いておらず、しかも心停止で脳死。もう手術しようにも運んだ時には死んでいだ。その時の俺は何も喋れなかった。俺のせいで朝久さんは死んだ。そんな言葉を自身の心に打ちながら絶望していた

 

俺が余計なことをしていなければ、こんなことにならずに済んだ。何度も後悔し続けた。何より彩葉や朝日さんですら俺を責めなかった。俺のせい死んだのに、それでも俺を責めなかった。紅葉さんは

 

 

『あんたのせいやない。気にしたらあかへんよ』

 

 

と、慰めの言葉だけが送られた。親父や母さんでも何も言わずに責めもしなかった。絶望をした俺に、気が抜けて何を言っても無駄だと思ったのか、あの人を亡くした悲しみで抜け殻となった今の俺には何も言うことはなかった

 

ただ抱きしめられた。

 

俺の両親としてただ無言に抱きしめられていた。そして涙が流れる。俺はなんてことをしたのか。後悔するばかりの俺に、ただ抱きしめて慰めてくれるのみだった

 

 

その一週間後で朝久さんの葬式にも出た。それでも俺は眼に光が持てないほど絶望が続いていた。

 

 

彩葉が泣いているのに、俺は涙が流れない。ただ思うのは俺のせいだと。罪の意識を持つのみ。

 

 

 

 

この頃からだ。俺が朝久さんを殺した罪人、もしくは咎人のように思うようになるのは

 

 

 

 

朝久さんを殺したことで、もう何もかも喜べなくなった。罪の意識を自責するようになったのも。俺が幸福を得てはならないと思うようになったのも。俺が人殺しであることを自覚するようになったのも

 

 

 

 

全てはここからが始まりだった。彩葉と朝日さんの父、紅葉さんの夫である、酒寄朝久さんを殺してから

 

 

 

 

俺の咎人となった瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

「一花はそんな昔に・・・・」

 

「彩葉のお父さんを・・・・」

 

「6歳の時に・・・・・・・」

 

「先輩にそんな過去が・・・」

 

「そんな辛い過去が・・・・」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

かぐや達は、俺と彩葉の過去を知って、輝夜でさえ何も言えない

 

輝夜たちも驚くだろう。まさか俺が過去で誰かを死に追いやっていたなんて、輝夜達には想像できないだろう。事件の発端とはいえ、善意の行いで身近な人間を死なせるなど、なんの天罰なのか。あまりにも残酷過ぎて、輝夜でさえ笑顔を出せなくなっていた

 

何より

 

 

 

幼馴染の父を死なせた

 

これが大きい

 

 

 

幼馴染である彩葉と朝日さんの父を死なせた。そのせいで彩葉達の生活がかなり変わった。彩葉の面倒でサッカーができない朝日さん。そして朝久さんが亡くなったことで、紅葉さんがシングルマザーとなって二人を養う。朝久さんが居なくなったことで、何もかも酒寄家の全てが変わった

 

そうなったのも俺のせいだ

 

 

「ああ、言わなくてもわかっとる!だがな一花!何度も言うとるやろ!!」

 

「わかっていますよ。何度も言われていましたから・・・・」

 

「今の話を聞くと、先輩は直接朝日のお父さんに手を出してはいません!それは緊急避難ですよ!先輩が殺したわけじゃあありません!!」

 

「ああ、お前は朝日の妹の楽譜を取りに行って、偶然トラックが通り掛かっただけだ。お前に罪はない」

 

「そうや!それに親父はお前を守るためにもそんなことをしたんや!親父のその行動は、当時に聞いていた俺でも、間違っとらんと思っとる!!こんな所で親父の死で落ち込むなんて、親父のしたことを無駄にすんなや!!」

 

「わかっている・・・・・・・・・・・」

 

 

朝日さんを始め、ブラックオニキスのメンバーである乃依と雷さんからも、俺が悪いわけじゃあないと慰める。

 

確かに直接俺が手を出しているわけじゃない。偶然そのトラックに轢かれそうになって、朝久さんに庇って貰っただけ、あの事故の後も俺には非難はないとして、緊急避難としてまだ俺の年齢が小さいとして、俺に罪はなかった

 

 

だけど・・・・・・・・

 

 

 

「一花。そんなに自分を責めても、彩葉のお父さんは喜ばないよ。ここは彩葉のお父さんの分も生きるべきだよ」

 

「そうだよ。彩葉のお父さんだって恨んでないよ。そんなことを」

 

 

「わかっているよ・・・・・・」

 

 

芦花も真美もを慰める

 

もし朝久さんに会えたなら、今の情けない俺の姿を見れば、どんなことを言われるか、あの人の性格を知り尽くしている俺なら。きっと俺にそんなことで落ち込むなと何度も怒るだろう。確かにもう亡くなったあの人のために、落ち込んでも意味がないって、自分を責めたって意味がないってわかっている

 

 

だけど・・・・・・・

 

 

 

「一花、11年前も仮想世界からあなたを見てました。あの時は仮想空間で見ていることしかできなかったけど、あの時しか言えなかったことをここで言うね。あなたのせいじゃないよ。一花」

 

「八千代・・・・・・・」

 

「うん、一花。輝夜と出会う前にそんなことがあったなんて知らなかったけど、でも、一花がそこまで気に病む事ないよ。今だって、みんな・・・・輝夜も・・責めずに一花を守っているよ?」

 

「輝夜・・・・・・・」

 

「一花・・・・・・あの・・・・その・・・・・・」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

八千代は八千年前から地球に降りて、俺が生まれた頃も仮想空間で俺を見ていた。その時は仮想空間に居て、現実に居る俺には声は届かなかったが、今は言える。朝久さんを殺したのは俺じゃないと慰める

 

輝夜もそれに続いて慰める。みんなが言う通りで、俺が気にするべきじゃないと慰め、何かあってもかぐやもみんなも守ってくれると言う

 

彩葉は何か言おうとしているけど、今の俺の落胆を見て、何も言えない様子

 

 

それもそのはず

 

 

だって。それでも俺は

 

 

 

 

「わかってるよ!!!」

 

 

 

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

「みんながそんな風に俺を慰めるのも!俺のせいじゃないって言うのも!俺が殺したわけじゃないってわかっているよ!!でも・・・・・でも・・・・・俺のせいとしか『俺には』思えないんだよ・・・・」

 

「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」」

 

 

ああ、わかっているさ。俺が朝久さんを殺したわけじゃないのも、でも、でも、でも

 

 

 

 

それでも俺の魂には、己への『憎悪』『後悔』『恨み』でしかなかった。俺のせいにしなきゃ。あの人が浮かばれないと、朝久さんの殺しの罪で心は一杯だった

 

 

 

 

涙が流れる。そんなことを言われなくてもわかっている。俺が殺したわけじゃないのも、俺のせいで死んだわけじゃないのも、みんながどれだけ慰めるのもわかっている

 

それでも拭いきれなかった。この悲しみからは、あの人を死なせた時からこの痛みがどうしても消えなくて、いつもいつも思い出しては苦しんでいた。それが最近まで消えていたのは。輝夜が居たから

 

あいつが毎日俺に楽しい日々を用意してくれる。輝夜と一緒に遊ぶことで、段々と俺にもそんな幸せを得てもいいと思えた

 

 

だけど、別世界の俺が来たことで、再び、朝久さんを殺した罪を向き合わされる

 

 

正直言うと、逃げていたのかもしれない。幸せになることで、朝久さんを殺した罪から逃れようとしていたのかもしれない、忘れようとしていたのかもしれない。それを向き合わせるためにも、別世界の俺がやってきて、別世界の俺が再び罪と向き合わせると言う、罰を受けた

 

 

だとするなら、やっぱり俺は罪人と言う名の咎人でしかない

 

 

 

「俺が朝久さんを殺さなければ!朝日さんが好きなサッカーをやれていた!紅葉さんが無理してシングルマザーにならずに済んだ!そんな生活に追いやられたのを聞いて、俺が普通に生きろって本気で言っているんでしか!!朝日さん!!」

 

「それは・・・・・・・」

 

 

朝久さんが亡くなったことで、酒寄家の生活が変わった。朝日さんは実はサッカーが好きだった。でも彩葉の面倒とかで、中学も部活でサッカーに入れずに、家でゲームするしかなかった。紅葉さんもシングルマザーでいつも夜が遅い。そんな大変な生活を送らせたんだ。むしろ自分のせいじゃないと、どう気にせずに生きろと言うんだ

 

俺にとっては無茶だった

 

 

「あの人に報いるために、そのためにピアノを始めたんだ。小学六年生で辞めさせられたけど、それでも何か、あの人に報いるために、いろんなことをしてきた。そのためにピアノのコンクールだって優勝した」

 

「え!?そうなの!?」

 

「一花って、ピアノのコンクールに優勝したことあるの!?」

 

「朝日。本当?」

 

「ああ、一花は小学一年から小学六年までのコンクールを連続優勝しているんだ」

 

「す、すごい!?」

 

「朝久さんの代わり、もしくはあの人を越えたくて、ピアノを小学生になっても続けた」

 

 

償いになるとは思っていない。けどピアノを続けた。あの人を超えたいのと同時に、あの人の代わりになれるようなピアニストになるために動いた。今ではシンガーソングライターになって輝夜と八千代と彩葉を人気にさせるためにやっているけど、昔は朝久さんのようなピアニストになりたかった

 

だけど

 

 

「でも、一花の部屋にはトロフィーとか表彰状もなかったけど・・・・」

 

「親父と母さんに全部捨てられて、ピアノも辞めさせられた。あれだけ優勝していたのに」

 

「え!?パパ、ママ、なんで!?」

 

「朝久君のことで、また思い出して気に病まれても困るからな」

 

「ピアノも強制的に辞めて貰ったわ。朝久君を事故に合わせたことで、完全に自分に罪があると思うのか、ピアノをやることが使命としてやっているようで、見ててとても心配になったの。実際、その話で何度も口喧嘩もしたしね」

 

「あの一花がご両親に口喧嘩とか全然信じられない!?」

 

「それだけ、一花は親父を事故に合わせたことで、自責するばかりで、小学生の時のあいつは酷かった」

 

「毎日毎日。ピアノの練習するばかりで、私やお兄ちゃんと遊ぶ時はいつも遊んでくれるけど、それ以外の友達には相手すらしなかったから」

 

「そこまで酷かったの!?」

 

「八千代も。小学生の一花を仮想空間で見てましたが、とてもお辛い顔をしていました。彩葉のお父さんを事故に合わせたことで、まるで罪人と思うように、何一つ笑顔を晒さず、クラスメイトに遊ぼうって誘っても『ピアノの練習があるから』と、彩葉のお父さんのためにピアノを上手くなろうと、小学生の時は毎日毎日必死だった」

 

「あの時の一花は、本当にお父さんの事しか考えてなかった。小学生の時の一花は、本当に良い思い出がないくらい、お父さんに追いつくのに、ピアノのことばかり考えていた。そんなあいつが見たくなくて、私は何度も違うことで遊びに誘った」

 

 

「でも、小学六年最後のコンクールで、彩葉に負けたけどな」

 

 

「え?」

 

「初めてだよ。あんなに彩葉と朝日さんに遊びに誘われる以外の毎日はピアノの練習していたのに、あの人みたいになるって決めたのに、最後の最後で彩葉に負けたよ」

 

「一花、でもそれは・・・・・」

 

「わかっている。俺からピアノを辞めさせたかったんだろ?親父と母さん、もしくは紅葉さんに頼まれたんだろ?俺を辞めさせるために、『小学最後のコンクールは俺に勝て』って」

 

「知っていたのか?」

 

「いや、予想だよ親父。そうでもしなきゃ、俺・・・・・ピアノを辞めなかったと思う。その負けた後で、親父や母さんに辞めるよう強制された時は、盛大に俺は怒ったよ」

 

 

 

嗚呼、小学最後のコンクールは彩葉に負けた

 

使命でやるピアノを、俺から外したかった。そんな惨めなピアノの演奏をする俺に親父も母さんも見てられなくなった。でも、言ったところで聞くような奴じゃないって、両親ながら俺の気持ちをよくわかっている

 

 

だから彩葉に小学最後のコンクールで実力で勝って辞めさせるしかないと、彩葉に頼んだ

 

 

最後に彩葉に負ければ、もうピアノをやらずに済む。朝久さんの娘にピアノで負けるなら、憧れの娘にやられるなら本望だろうと、親父、母さん、紅葉さんが計画して彩葉に頼んだのだろう。あいつも朝久さんの娘であるから、朝久さんのように歌が上手いからあいつは

 

 

でも

 

俺は、当時は納得してなかったから、親父と母さんと口喧嘩した。そのコンクール会場の入り口前で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五年前

 

 

小学最後のピアノのコンクールが終わった後

 

 

 

『・・・・・・・・・は?』

 

『聞こえなかったか?ピアノを今日で辞めて貰う』

 

『は?・・・なんでだよ・・・・なんで!?俺が優勝できなかったからか!?』

 

『違う!そんな意味で言っているんじゃない!!』

 

『一花、お父さんはね?これ以上あなたにピアノをやって貰いたくないの!』

 

『なんでだよ!?今までだって俺は優勝してきた。今回は彩葉の方が上手かった。偶然だ!!もっと俺が練習していれば・・・・・そうすれば俺は・・・』

 

 

『いい加減にしろ!!!』

 

 

『っ!?』

 

『一花。お前がそこまでピアノをするのは、朝久のためだとわかっている。だけど・・・・・』

 

『朝久君のために、あんな『楽しくもないピアノの演奏』をしてて。天国に行った朝久くんが喜ぶと思うの?』

 

『そんなことわかっている!それでも・・・・俺がやらなきゃいけないんだ!!俺があの人の代わりになるんだ!!これは俺の罰なんだ!こうでもしなきゃ・・・・・俺は!!!』

 

 

小学生の俺は、何かと朝久さんの代わりになろうと、必死になっていた

 

 

理由はもちろん償いだ

 

 

子供とは思えない使命感を抱いて、毎日ピアノを練習して、早くあの人みたいになろうとした。それで浮かばれるわけないって、どこかで思っているけど。それでも俺は朝久さんを事故に追い込んだあの日のことを忘れられず、報いろうと必死だった。でも俺は当時はまだ小学生。報いるためにできることは少ない

 

 

だからピアノで報いろうとした

 

 

ピアノなら、あの人みたいに上手くなれば。報われるはずだと。そんなことばかり考えて、小学六年の人生を全部費やして、ピアノに使った。

 

ここでピアノを辞めたら、これ以外で何を償えばいいのか、わからない。今俺に償えることはこれしかない。だから辞めたくなかった。あの人に償えるのがこれしかないから

 

 

と、そう叫ぼうとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タ  タ  タ  タ  タ

 

 

バシン!!!

 

 

『ぐう!?』

 

 

『紅葉!?』

 

『紅葉君!?』

 

 

『はあ・・・・・はあ・・・はあ・・・』

 

 

『お母さん!?』

 

『母さん・・・・・』

 

 

『紅葉・・・・さん』

 

 

横から、こっちに歩いてきて、俺の頬を叩いてきた女の人が居た

 

 

それは酒寄紅葉さん、朝久さんの妻だ

 

 

そんな人が血相を変えて、今にも俺に怒鳴り散らすような怒った顔をしていた。おそらく言いたいことはこうだろう、『お前なんかが、私の夫を報いろうとするなや』と。俺如きがそんなことをするなと、そんなことをしても報われないと、何度も怒鳴りつける状況だった

 

だが

 

 

ガシ!!

 

 

『っ!?』

 

『『紅葉・・・・』』

 

『『お母さん・・・』』

 

 

 

『あんたのせいやない。私の夫は死んだのは・・・・一花くんのせいやない』

 

 

 

『・・・・・・・』

 

 

ただ、抱きしめてくれた

 

そして慰めてくれた。朝久さんと亡くなった時と同様に、抱きしめて慰めてくれた。俺のせいじゃない。俺が殺したわけじゃないと、当時の俺の気持ちがわかる紅葉さんが。俺の心の闇を晴らしてくれる

 

それでも俺は

 

 

 

『何を言っているんだよ・・・紅葉さん・・・俺が・・・俺が!!朝久さんを殺したんだ!!俺のせいで死んだんだ!!俺が悪いんだああああああ!!!あああああああ!!ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

もう我慢できずにまた泣いた

 

どうしても拭いきれなかった。あの人を殺したこの苦しみから、どうにかして報いろうと必死だったのに、紅葉さんがこうしてくれるから、あの人の妻だったから、この人の言うことを聞いて、ピアノは辞めた

 

あの人に報いることなんて、何をしても無駄だよと教えてくれた。俺が殺したのに、俺が事故に合わせたのに。それでも報いることすらできないなんて、こんな簡単に許されていいのかよと、俺は泣き叫んで嘆いた

 

その姿に、いつもニコニコ笑っている朝日さんが珍しく泣き、彩葉も泣いた。親父も母さんも涙が出る

 

 

俺のしたことは間違っているのだろうか

 

 

だったら俺のこの『消えない罪』はいつ消える?永遠に消えないのか?死んだ人に報いることなんて、生きている人間にはできないのだろうかと

 

 

 

小学生の俺は、小学生活を無駄にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、ピアノのコンクールで優勝したトロフィーも表彰状も全て捨てた。これ以上、朝久さんのことでトラウマになっても困ると、昔の家にピアノもあったけど、それも全て捨てて、俺はピアノを辞めた」

 

「そうだったんだ・・・・・」

 

「昔の家?あ、そういえば一花も京都生まれだよね?なんで東京に?」

 

「それも俺が朝久さんのことで思い出さないように、親父が配慮して。中二の時に、親父が転勤を使って、東京に引っ越した。京都には朝久さんの思い出でいっぱいだったから。どうしても俺に忘れさせようと、東京に引っ越したんだ」

 

「それだけ一花は・・・・・・・彩葉のお父さんが好きだったんだだね?」

 

 

「ああ、輝夜を拾って、八千代と彩葉と一緒になって、やっと・・・・・俺も幸せになっていいのかと思えた。でも違うんだよ。本当は『逃げていたんだ』。朝久さんの死から忘れて逃げようとした。そして、結局拭いきれなかったんだ!あの人を殺した罪悪感から!あの人を殺めたことから、俺は全然己を許していなかった!自殺だって考えた程に!!」

 

 

「「「一花・・・・・・」」」

 

 

「別世界からやってきた俺の言う通りだ。俺は向き合っているようで向き合っていない。そして本当は、俺はそれでも求めている。朝久さんに償う方法を!!」

 

 

あれからどれだけ経っても、やっぱり忘れることができない。

 

 

あの人を殺めたことを、どれだけみんなに慰めても。己を許すことが、俺の心ができない

 

 

どうしたらいいのだろうな、本当に自殺すればよかったのかな?

 

 

でもそれをしようとする度に、考えようとしたりすると、思い出す

 

 

 

 

『彩葉のことを頼んだやで』

 

 

 

その言葉が頭の中で思い出す、聞いて。俺は何度も彩葉のために生きようと自殺などできなくなっていた。それが俺の頭の中で響くから、俺は死ねないと。我慢し続けたんだよな。本当にどうしたら、どうすれば

 

 

 

この悲しみと憎しみから和らぐ事ができるんだ?

 

 

 

別世界の俺も、きっと今もどこかで苦しんでいる。あの人を殺したことを、どうしても忘れる事ができない。消えないんだよ。

 

 

 

「なあ?教えてくれよ。どうしたらいいんだ?このおかしくなった心はどうすれば、みんなみたいに普通に戻れるんだ?どうすれば幸せになれるんだ?どうすれば俺は生きていけるんだ?どうしても消えないんだよ!酒寄朝久さんを殺したこの痛みが消えないんだ!!!」

 

 

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

別世界の俺がそうだったように、この憧れを殺してしまったこの悲しみと言う痛みが消えない

 

 

親父、母さん、真実、芦花、乃依、雷さん、朝日さんでさえ

 

彩葉、八千代、輝夜でさえ、その答えは手に入らなかった

 

 

こればかりは、この一番信頼してきたこの仲で、言いたくもない一言を思い浮かべる

 

 

『俺の気持ちなんてわからない』『人を殺めてしまった気持ちなどわからない』

 

 

口には出したくないが、心ではそう思っていた。これを言う勇気はないけど、今だけは俺の味方なんてしないで欲しいと、悩むときは悩ませて欲しいと、親である親父や母さんにまで対して。こんな事を思っていた

 

独りよがりなのはわかっている。それでも人を殺めてしまったこの重い罪悪感をどうにもできる奴なんていないだろう。あの輝夜や八千代でさえ、その答えが出てこない。ああ、やっぱり俺ってどうしようもなく救いようがないとわかった

 

 

結局、俺は人殺しとして情けないクズだったことが、これで証明された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

「では一花よ。其方はどうしたい?」

 

 

「っ!それは・・・・・・・」

 

 

「我は神であり、人の気持ち、人を斬った気持ちなど、神である我でもわからん。もはやそれは其方だけのものだ。其方以外に答えを求めても、答える者などいない。月の民でもある月姫や八千年月姫であろうとな」

 

「月読様」

 

 

「其方は過去に酒寄君の父を殺めた。殺めたその罪をどうしたい?我は神として人に問う。人を殺め、その殺められた者に許しを求めるか?それとも誠意となる謝罪がしたいのか?どうなんだ?」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「これは言わなくてもだが、別世界からやってきた。其方の肩に傷を入れて斬りつけた別の其方は、『死を求めている』。殺められた者に報いることなら、殺めた者も心中するしかないと考えておる。其方はどうする?」

 

 

「俺は・・・・・・・・」

 

 

「言っておくが、死んだ者に何をしても届かない。それでも其方はどうしたい?」

 

 

「それは・・・・・・・」

 

 

 

月読様は答えではなく、俺に問い求めた

 

神として人を殺めてしまった懺悔をする人の気持ちなど、神とはいえ、わからぬと言った。そもそも答えたとて、受け入れる気もないと、月読様は俺の神として理解した

 

では、どうしたいと聞かれる

 

別世界での俺は死を求めている。憧れを殺したからには罰を受けるには心中するしかないと考えている。もう生きることに希望を持っていない。その上で俺はどうするかと問われる

 

 

許しか、謝罪か

 

 

酒寄朝久が天国で今の俺を見ているなら、どんなふうに思われているのか、当然ながら情けないと思っている。嘆くのは構わないだろうけど、ならこれからどうしたいのか。酒寄朝久を殺してしまった、その気持ちを今度こそ拭うために、どうするか

 

その答えに俺は

 

 

 

 

 

「俺が生きていいよって言える理由が欲しいです。あの人を殺したことは変わりないとしても、それでも生きていける理由と価値が欲しいんです」

 

 

「それが其方の答えか」

 

 

 

これが答え、生きるのが苦しいからどうしたらいいかと、理由と価値が欲しい

 

もう死んでもいいと思うような罪悪感しかほとんどない。けど、死んだ人に報いることなんて、死んだ人には届かない。それは自己満足でしか満たせない。ならもう自分が満足にできる、自分の罪が拭えるような事をするしかない

 

殺めた罪悪感を受けてでも、前を向うと生きていける気力である理由と価値を俺は求めた

 

別世界の俺とは異なることで、あの人の罪滅ぼしを求めた

 

 

 

「そうか、では、一度墓参りに行ったらどうだ?」

 

「墓参り?」

 

「其方はもうこの世に入らぬ者に、勝手な報いをしようとするのだ。遺骨が入っている墓に報告するのは当然だろう?」

 

 

「そうですね。明日はちょうど学校が休みですし、行ってみようと思います」

 

 

「京都に!?」

 

「ああ、朝久さんの所に行く」

 

「それで答えを得るために、どうするか、それでから別世界の其方と向き合うがよい」

 

「はい、一度、頭を冷やして、あの人の所へ行こうと思います」

 

 

ここから自分の満足のままに動くしかないと、自分の望むままに動きなさいと月読様に言われる

 

死んだ者に報いることなど、届く事もないという、確かにその通りだ。俺の意思が脆いからこその、この事件の始まりだ。俺があの人に何を望むのか、それを決めるのが今回の選択だ。俺はかぐやに救済を求めた。ヤチヨには永遠の絆を求めた。彩葉は常に変わらない俺を求めた

 

 

 

なら俺は、生きる理由を求めたい

 

 

そのために

 

 

 

あの人の墓である京都に戻ることを選んだ

 

 

これからどうするかを考えるために、まずはあの人の元に行って、考えたいから

 

 

 

 

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