朝起きて。赤ん坊のかぐやが彩葉くらいの年齢にまで大きくなっていた。そんな信じられない出来事にただ驚くことしかできない
しかもちゃんと喋れている。目覚めた瞬間、俺を名前で呼んだ。俺を名前で呼んだなら間違いなくかぐやだろう。しかもかぐやが付けていた腕輪もしている
これはかぐやだ
「あーーん!うう!美味しい!美味しいよ!ママ!」
「それはよかったわ。まだあるからいっぱい食べてね?かぐや」
「うん!あ!一花!これ美味しいよ?」
「あ、ああ。母さん、親父。驚かないのか?」
「医師をやっていると、驚くような手術をしているから、かぐやがいきなり赤ん坊からお前と同じくらいの歳に成長しても驚かないな」
「マジかよ!?普通は驚く所だぞ!?」
「医者やっていると驚くことが毎日ある。全身セメントで固められた人の治療とか、ラッサ熱を出した患者を一人で手術したり、五千万するような手術をタダで一人でしたりとか、驚くことが多いから、かぐやちゃんがかぐや姫でも俺は驚かないよ」
「親父はなんとかXか!?なんとかジャックか!?『俺、失敗しないので』とでも言いてえのか!?」
「それより、これがお前と彩葉ちゃんの子供で、成長姿とかじゃないのか?」
「ひつけえよ!!何度言っても俺と彩葉の子供じゃねえよ!?親父は何回その話をする気だ!?」
親父と母さんは然程驚いていない
なんで?
普通かぐやが赤ん坊から成人前まで急激に成長したら誰だって驚くと思うけど、なんで俺の両親は驚かないわけ?親父は医者だから驚くような手術はしているとは思うけど、それでもこれは驚くだろ?なんで母さんも気にせずに朝飯出しているんだ?マジで俺の両親意味わかんねえ。
そういや、俺がいきなりかぐやを連れてきた時も全然驚いている様子はなかったな。マジでなんで?
まあいい。まずはかぐやにいろいろ聞かないと、喋れるようだし、俺の名前も呼んでた。それなりに知識はありそうだし、聞けることはあるはずだ。
「かぐや?お前は何者なんだ?どこから来た?」
「どこから?・・・・・・お月様」
「お前、本当にガチのかぐや姫?」
「なに?かぐや姫って?」
「自覚はねえのかよ。これだよ」
そう言ってタブレットに『かぐや姫・竹取物語』を検索して、どんな物語か、かぐや姫とはなんなのか、彼女にその詳細を教えた
月から来た自覚はあるのに、かぐや姫の自覚はないのか、その物語を知らないってなると、本当に生まれたばかりの少女ってところか
てか、彼女が月から来たってことは、月に人が居るって事?え?そんな宇宙人かと思うような話を信じるべきなのか?そこはまあ、今は置いておくか
かぐやはタブレットで竹取物語を読んでいくと
「ええ!!なにこれ!?バットエンドじゃん!こんなのヤダよ!!!」
「咄嗟に見せたとはいえ、一応字も読めるのか・・・・バットエンドって言っても、これがかぐや姫の物語だし・・・・」
「てことは、いつかかぐやは月に帰るってこと!?」
「まあ・・・・お前が本物のかぐや姫なら・・」
「嫌だ!帰りたくない!!一花の所に居る!!」
「何をワガママなことを・・・・お前がかぐや姫かどうかは知らないが、かぐや姫ならそういう運命だ」
「なんであんな毎日が超つまんない所に戻らないといけないの!?」
「月に居た時の記憶はあるんだな?」
かぐやは、人間ではなく、本物のかぐや姫だと信じた方がいいかもしれないとわかった
信じられないが、かぐやは本当に竹取物語に出てくるかぐや姫だと判断するべきだ。月に居たことを覚えていて、月が毎日つまらない所だと言うなら、かぐや姫は月では仕事をしていた。その記憶を持つなら、間違いなくかぐや姫なのだろう
だが、これは昔の話なんだが。なぜこの現代にもかぐや姫が地球に降りてくるのだろうか、現代版かぐや姫とか?なんなんだ、マジで
そう、考えていると。かぐやが竹取物語の結末を望まないのか、こんなことを言い出す
「あんな月に帰りたくない。そうだ!!自分でハッピーエンドを作ろう!!!」
「は?なんだって?」
「だから自分でハッピーエンドを作るの!そして月に帰らない!!」
「つまり月に帰らないよう、何かこの地球で止まるような事をするって事かい?」
「うん!そうだよパパ!私は一花とこれからも一緒に居たいもん!」
「あらあら一花。貴方は随分とかぐやに愛されているのね?」
「なんで俺とそこまで居たいんだ?お前?」
「え?かっこよくて、本当は優しくて、偶然私を拾ったのに責任持って面倒を見てくれるし・・」
「かぐやちゃんは、お前のことをよく見ているようだな、赤ん坊の時から・・・」
「それだけで俺と一緒に居たいのか?」
かぐやは竹取物語のような、最後は月に帰るなどしたくなかった。理由は俺と居たいからだと。
赤ん坊の時から物心があったのか、俺と過ごした昨日一昨日程度でしか過ごしていないのに、俺のことをわかった気で話していた。親父はその通りだと言うが、俺はあまり認めていない。会って日も浅い奴に、俺のことをわかって貰ってウザいだけだしな
まあ、偶然拾って責任を持って面倒を見たのは事実だが
それでも俺にそんな価値はないと、大人しく月に帰ったほうがいいと思った。俺はそこまで良い男じゃないし、にも関わらず一緒にいたいとは、変な女だなと思う
「それで?どんなハッピーエンドを望むんだ?」
「それはね・・・・・」
かぐやの目的はわかった
では月に帰らないよう、どんなハッピーエンドを迎えたいのか方法を聞く。月に帰らないようどうするんだろうかと、俺も母も父も真剣にかぐやの答えを聞く
そしてその答えにかぐやは
「私は結婚する!!一花と!!!」
「・・・・・・・・・は?」
「あらあら・・・・」
「ほう、そう来たか・・・・」
それはとんでもない提案だった
俺と結婚する。それで月に帰るのを阻止するそうだ。本気かと思うくらい、俺は呆然した。なんで俺と結婚するんだ?
それでなぜ月に帰る必要がなくなるのか、俺にはわからない
「おい、どういうことだ?かぐや?」
「今、竹取物語を読んでわかったんだけど、かぐや姫は結婚はしないで月に帰った。じゃあ結婚すれば月に帰らなくて済むわけじゃない!」
「竹取物語でならな、だけど、なんで俺なんだ!?」
「だって・・・・かっこいいし、優しいし、面倒見いいし、責任感あるし、結婚するなら一花が良いし」
「そんな理由で俺を選ぶのか?」
「うん、一花だってこんなに可愛いかぐやと結婚できて嬉しいでしょ?」
「いや、全然」
「なんで!?」
「いくら見た目が可愛いとは言っても、よくわからない奴と結婚するつもりはない」
かぐやは竹取物語を知って、地球の人間と結婚しないで月に帰ったことに対して、なら地球の人間と結婚してしまえば月に帰らずに済むと、安直な方法を選ぶ
だからって俺と結婚するとは、なんで俺を選ぶのか俺には理解できない
もっと別の人間を選べってんだ。かぐやがどんなに美しい美少女でも俺は選ばない。竹取物語に出てくるかぐや姫は誰もが欲しがる絶世の美女と言われるが、俺にとってはただの女だ。しかもあまりよくわかってない彼女を嫁にする気など、俺にはなかった
「かぐやちゃん、それは難しいわね」
「え?どうして?」
「一花には、彩葉ちゃんと言う幼馴染が居るんだ。将来その子と結婚するかもしれない」
「おい親父!母さん!また勝手なことを言うな!」
「は!?昨日一花を振り回したあの子!?」
「振り回したと言うか・・・俺に頼んで来ただけで・・・・振り回されたわけじゃあ・・・」
「酷いよ!私の方が可愛いでしょ!?あの昨日のなんかキーホルダーを貰って喜んでいる子より!私の方がいいでしょ?」
「お前、彩葉に対して酷いな」
親父と母さんが余計なことを言ったせいで、かぐやはヒートアップする程、怒りを露わにする。
俺に相手が居ることにかぐやは納得しないのか、自分の方が良いと、自身の自己PRをし始める。どうしても俺が誰かに取られたくないのか、自分の魅力を俺に伝える
しかし
「悪いが、俺は結婚自体望んでいない。それに・・・・月に帰るって決まっているわけじゃないだろ?迎えが来ることも?」
「そ・・・・・そうだけど・・・・」
「結婚はしないけど、この家に居ていいから、別に無理して結婚する必要はないと思うが」
「なんで結婚してくれないの?かぐやがこんなにも可愛いのに!」
「だとしても、俺は誰かと結婚したりしない」
かぐやが本物のかぐや姫だったとしても、本当に結末までそうなるかなんてわからない。無理して結婚する必要はない
俺も会って間もない奴と結婚するつもりはない。しかもかなり謎だしな。かぐやがどんな存在なのかよくもわからない奴と結婚するつもりはない
と同時に、俺は誰かと結婚したいと言う欲がない。今までにも彼女が欲しいとか思ったことはないからな
そんな話をしていると
「もしかして、その彩葉って言う子の方が好きなの?」
「あいつか、いや・・・・俺とあいつはそんなんじゃない。ただの幼馴染だよ」
「いつも遊んでいるのにかい?」
「それでもだよ母さん。俺は誰かと結婚したいと言う気持ちはない。かぐや、別に無理して結婚しなくても月に帰るかはわからないんだから。今は普通にここで過ごしてもいいんじゃないか?」
「それは・・・そうだけど」
「今はまだこの世界で生きていろんなことを知るべきだ。母さん。ご馳走様。部屋に戻って宿題片付ける」
俺はそれだけ言って朝食を済まして部屋に戻る。俺はかぐやのことは妹にしか見えない
嫁にしたい気持ちはない。誰かを好きになったり恋をしたいなんて言う気持ちは今までなかった。かぐやがどれだけ可愛くてもだ
見た目がいいから結婚するじゃあ意味がない。もっとそれなりの理由がなければ、結婚したいなんて思わない。それはただの不純でしかない。誠実な愛が必要なはずだ。かぐや姫なら、それをかぐや姫自身が起こそうとしているが
そんな感じで、かぐやには俺を諦めて貰い。今はまだこの世界を知るために生きればいいと言い聞かせる
ところが
「何をしているんだ?後ろから抱いたりして?」
「かぐやがこうすることで、喜ばない人は居なかった」
「誰かにしたのか?それ?」
「したよ。さっきパパとママに!そうしたら一花のことはかぐやに頼もうかなって!」
「親父と母さんめ。かぐやを甘やかしたな?俺はウザいからやめろ」
「どうして結婚してくれないの一花!こんなにもかぐやが好きだと言っているのに!」
「俺にとってお前は妹だ。嫁としてなんて見れない」
「なんで!なんで!!やっぱりその彩葉って子が好きなの!?」
「そういうわけじゃあない。いいから、俺の部屋で遊んでいいから、抱きつくのはやめろ」
宿題を終わらせている最中にかぐやが後ろから抱きついてくる。
そんなことをしてまで俺がかぐやを好きになって貰いたいのだろうと誘惑してくる。なんでそこまで俺を好きになって貰いたいのかわからない。しかもまだ俺は17歳だ。結婚できる年齢ではない。誰かを好きになったことはない俺には恋愛感情がない。どんなに誘惑しても無駄だった
宿題の邪魔をされては困るため、俺の部屋にある物で遊んでいいからと、かぐやを離す。俺の部屋にはゲーム機もあるからそれで遊んでいいからとかぐやを放置する
すると
「ねえ一花。これ見て?」
「なんだ?ん?これは・・・・・犬?」
「これは『犬DOGE』。ちょっと作ってみたんだ!」
『ワン!!』
「これって・・・動いている・・・まさかAI!?お前・・・・パソコンも弄れるのか!?」
「まあね。パソコンの中にいろんなゲームが入ってて、ちょっとキャラクターを作ってみたくて、一花の携帯の中にも入れるよ!」
「な!?」
『ワン!』
「凄い・・・・なんなんだお前は・・・」
かぐやは放置していると勝手に俺のデスクパソコンでAIキャラクターを作った
名前は『犬DOGE』
体に竹を巻いた柴犬のキャラクター。俺のパソコンで作ったようだ。しかもこの犬DOGE、俺のパソコンからスマホにも入れる。とんでもないAI機能だ。それを作るかぐやも凄い
だから尚更、かぐやが何者なのか気になる
本当にかぐや姫ならこんなことをできるはずがない。こんな現代の道具まで使いこなせるなんて、しかも俺のパソコンでAIを作るなんて。そんな高性能なことをできるなんて謎すぎる
かぐやは何者なんだ
「ねえ一花?これなに?」
「なんだ?いつの間に俺のパソコンを、あ、それは・・・・」
「もしかして一花が作った曲?」
「まあな・・・・・・・・」
そのままかぐやを放置していると。今度はデスクのパソコンではなく、もう一つのノートパソコンを勝手に開いて、適当にゲームでもしているのかと思いきや、俺が作曲した曲のファイルを開いていた
今でも作っているオリジナル曲の入ったファイル。まさかこれを開くとは
「へえ!聞いてもいい?」
「まあ、俺の面白くない曲だと思うが」
「うん!聞いてみよう!」
かぐやが興味津々で俺の作曲を聞いてみたいと思って、ヘッドホンを出して聴く
朝久さんに憧れて今でも作曲し続けたファイルの一覧、俺ここまで作曲し続けたんだなと、改めて見て思う。それだけシンガーソングライターになるためにかなり努力をしたんだなと思う
そしてかぐやは聞くと
「うう!!すごい!みんな良い曲だ!」
「そうか・・・・全然良い曲ではないと思うが?」
「そんなことはないよ!みんな!良い曲だよ!」
かぐやはかなり喜んで俺の曲を聴いて楽しんでいた
そういえば人に聞かせるのも初めてだな。彩葉にすら聞かせていないからな。フレーズとかが朝久さんの作曲に似ているから、彩葉に聴かせたら一発で父親と同じ作曲の仕方をしているとバレるだろう。こんな普通のような曲を人が聴いて楽しんでくれるの光景を見るのは、俺としても嬉しかった
いつもは配信にしか、載せてないんだがな
「ねえ?配信用ってなに?」
「ああ、それか。ツクヨミって言う仮想空間、いわばネットの世界に入れるVRコンテンツがあって、アバターと言うキャラクターを作って、創作活動やゲームをして楽しむ。そこでライバーって言うアイドルになることもできる。その曲は俺がライバーになって投稿した曲だ」
「へえ、なんか楽しそう!」
この曲は全部、配信用の曲だ。まだ投稿していないのもあるが、俺もツクヨミの世界でライバーとして活動はしている。とは言っても雑談は大してせずに、音楽ばっか投稿しているけどな
かぐやがツクヨミの話に興味を湧いたのか。ツクヨミに行きたい様子、宿題はもう終わったし、そんなに気になるなら
「行くか?ツクヨミに?」
「え?いいの!?」
「こんなこともあろうかと、予備のスマコンがある。これがツクヨミに行くための電子機器だ」
ツクヨミに入るための電子機器。『スマートコンタクト』略してスマコン
コンタクトレンズ型デバイスなんだが、これを目に付けると仮想空間に入ることができる。触覚や味覚までは再現できないが、意識はそれなりに仮想空間に馴染むことができる、値段もかなりする、一つ『¥124400』だ。高一の時にバイトを毎日にしてなんとか貯めたからな。親父と母さんは優しいから買ってあげようかと言われたが。予備も欲しいから自分で稼ぐと、今は違うが毎日バイトを入れて無理して二つ買った
その予備をかぐやにあげる
「これでツクヨミに行くの?」
「ああ、コンタクトレンズ型で、目に付けて『ログイン開始』って言うだけで起動する、そして意識がツクヨミに入っていく。だがお前は初めてのユーザーだから、まずは自身のアバターって言うキャラクターを作ってから入ることになる、そこはヤチヨが教えてくれるだろう」
「ヤチヨ?」
「月見ヤチヨ。そのツクヨミのAIトップライバーで。そのツクヨミの管理者でもある。チュートリアルで教えてくれるから問題ないはず。まずは試せ。俺は先に行く」
「ああ、待って!かぐやも行く!」
かぐやは初めてのユーザーであるため、まずは自身のキャラクターである体を作ってからスタートだ。
そこはチュートリアルを案内してくれるから問題ないだろう。言ってもわからないだろうから、まずは試せとかぐやに進める
「付けたか?違和感は?」
「大丈夫だよ」
「よし、やるぞ?」
「うん」
「「ログイン開始!!」」
ログインを開始すると、俺の目に映る世界が完全に変わり、別の世界ヘと飛ばされるように風景画広がる
そこは朝など存在しない、ずっと夜の都、和風ファンタジーと近未来ネオンが融合した空間、それがツクヨミである
変わったのは世界だけでなく。自分の姿もだ
「衣装を変えたけど、これ作るの大変だったな」
侍の格好をし、肩に羽織を羽織っている、頭に竜の角を生やした姿へと変化する。ここはバーチャルの世界であるため、仮想空間に合わせて自分のキャラクターを作ってここで参加するのが遊びでもある
もちろん自身のユーザー名も入れて遊ぶのだが。まあ、ここは大抵オリジナルの名前を付けるのが一般的なのだが、仮想空間で本名を付けるなどあまり居ないだろう
そんな俺は『天龍・一千花』
天の川を渡る竜として名付けたこの名前。苗字は別名だが、名前は少し漢字を足してそのままだ。今では随分と盛り込んだ名前だなと思う。少し恥ずかしさもあったが、彩葉がいいじゃんと、かなり褒めてくれた
「あとはかぐやだが」
俺はチュートリアルをしてから出てくるかぐやを待つ
かぐやはそれなりに、衣装はかなり可愛くすると思うが、問題は名前だ。かぐやのことだから、そのままの名前を使うと思うが、果たして
「うおおお!?おっと!」
「チュートリアルは済んだな?」
「え?一花?うえ!?凄くカッコイイ!龍人みたい」
「そういうモチーフなんでな。兎モチーフにしたか」
チュートリアルの門から彼女が出てきた。転ぶ前に俺がキャッチして彼女の衣装を見る
かぐやのアバターモチーフは、ウサギ
なだらかなロングヘアに、ウサギの耳。服は朱色と若草色のコーデ、金の月の髪飾り、背中には大きな水引をしている。靴はスニーカーか
「似合っているぞ。かぐや」
「本当?可愛い?」
「ああ、とてもな」
「やった!!一花に褒められた!」
『ワンワン!』
「っ!お前も来たのか?」
「うん!連れて来られるようで、連れてきた!」
犬DOGEもこのツクヨミにやってきた
携帯ゲームのキャラクターを作ってここへ連れてくることもできると言うが、まさか犬DOGEまで連れてこれるとは思いもしなかった。そう考えたらツクヨミはなんでもありだ
「チュートリアルをしたからとわかっている思うが。こっちの世界ではアバター名として名前を名乗るんだ、身バレを防ぐためだ。俺は『天龍・一千花』と言う偽名でここでは名乗る。苗字を変えて名前の漢字を追加しただけで名前は変わらないから大丈夫だ。お前はなんの名前にしたんだ?」
「え?かぐやだけど?」
「いや、名前は変えないのか?」
「かぐやはかぐやだもん!一花が考えてくれたこの名前で名乗る!!」
「まったく、名前をそのまま使うとは珍しいな。まあ、本名をそのまま使っている人が居るなんてそんな簡単に思うわけないか」
かぐやはアバター名は変えずに、そのままかぐやにする
俺の考えてくれた名前が気に入ったのか、このツクヨミでもかぐやを名乗るようだ。まあ、アバター名でそのまま本名を使っている人は居るし、それが本名だとわかる人はあまりいないから大丈夫だろう
念の為、現実に戻ったら、親父と母さんにかぐやの名前を『輝夜』と漢字にして住民票に入れておくよう頼んでおく
「うわああ!ここがツクヨミなんだ!綺麗!」
「ここでみんなは遊ぶんだ」
「へえ、あとこれ何?ログインボーナスとか言って貰えたんだけど、『ふじゅ〜』って言うんだって?」
「このツクヨミで使うお金だ。大事にしろよ。ここではそれを使った遊びがいっぱいある。もちろん現実のお金に換金することもできる。ちゃんとしまっておけ」
「え!?そんなこともできるの!?」
「ああ、だから現実に就職しないで、ここで金稼ぎする奴も居る。とは言っても人気にならないと難しいけどな」
「一千花もしてる?」
「まあ、一応チャンネルも作ってライバーはしている。最近はあまり投稿してないから。数万くらいしかしてないな」
ログインボーナスとして、江戸時代で使われたかのような金貨『ふじゅ〜』が支給される
このツクヨミでは当然お金も存在する。お金を使ったコンテンツもあり、クリエイターが作ったアバターの衣装を買ったり、何かの依頼をしたり、アイドルの応援の投げ銭をしたり、これが誰もが最も重要な話、現実のお金にして変換することも可能
しかし、これはかなりの人気ライバーにならないと、生活費まで稼ぐのは難しい。それができるのは俺の知り合いで朝日さんの『ブラック・オニキス』くらいだな
俺はそこまで稼いでいない。一応ライバーでチャンネルも作ってあるとはいえ、作曲した音楽を投稿しているくらいだから、全然人気はない方だ
「ここでは面白いことがあるの!」
「ああ、宿題も終わらせたし、今日は夕飯になるまで遊ぶか?」
「うん!遊ぶ!」
夕飯までこのツクヨミで遊ぶ
ここはかぐやが楽しめるような場所がいっぱい存在する。退屈に悩む彼女を、この皆が楽園と思うような夜の世界を案内するのだった