異世界現場監督の定時退勤プラン ~魔法が神秘? バカ言え、ただの設備不良(バグ)だ。物理法則と工学知識でファンタジーを完全論破(デバッグ)する~   作:ゆばのくさ

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※朝礼(ご挨拶)
本話を持ちまして、第1学期(学内インフラ掌握編)が完結となります。

ただのDランクの落ちこぼれが、現場の理屈と物理法則だけで、学園の腐敗したシステムを根本から「オーバーホール」するまでのお話でした。

魔法(ファンタジー)を現場知識(ロジック)で殴り倒す、という作者の趣味全開の工事にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

それでは、第1学期最後の現場、着工します。本日もご安全に!


# 第27話「外部監査と匿名の称賛 〜または、掲示板に刻まれる非公式ログ〜」

 学園という巨大な魔導回路の「澱み」が、一人の現場監督の手によって物理的に掻き出されたあの日から、学園内を流れる空気は、目に見えてその透明度を増していた。

 

 だが、その変化を最も如実に、そして無秩序に記録しているのは、公式な学園報ではなく、匿名という盾に守られた地下の広場――学園内掲示板であった。

 

---

 

### 【アストラル・レジメン学園生活板:その342】

 

1 :名無しの大魔導候補

【悲報】管理局の『聖域(笑)』、ついに逝く。

今日の午後、事務局直属の憲兵騎士団が管理局本部に突入。

汚職どろどろの主幹連中が、芋づる式に封魔の手錠をかけられて連行された模様。

バルドス主任、連行される時に「私は現場の安全を……!」とか叫んでたけど、

それを聞いた騎士団員が「お前の言う安全は予算の安全だろ」って一蹴してたの最高に草。

 

2 :名無しの大魔導候補

マジかよ。あの難攻不落の利権団体がついにメスを入れられたのか。

三年前の第十四プラントの隠蔽工作から、今回の排水溝への不法投棄まで、

全部裏が取れたらしいな。

誰だよ、あんな鉄壁のブラックボックスを物理的にこじ開けた有能は。

監査のプロでも雇ったのか?

 

3 :名無しの大魔導候補

噂じゃ、例の『A組の異端児』が事務局に提出した一冊の『報告書』が発端らしい。

ほら、入学試験で神の石碑(モノリス)をコンコン叩いて、

「ゼロ点較正完了」とか言って直したっていう、あの変な新入生。

 

4 :名無しの大魔導候補

ああ、あの『計装(計装士)』とかいう謎スキル持ちか。

あいつ、最近じゃ『一条の氷姫』と『北条のゴリラ姫』、

それに『謎の無口ロリ(リリスちゃん)』を配下に従えて、

学園中の腐った配管とか、誰も触れなかった高圧電線を平気で弄り回してるらしいな。

 

5 :名無しの大魔導候補

>>4

ゴリラ姫はやめて差し上げろw でも、あながち間違いじゃないのが怖い。

今日、作業服(あの機能性の塊みたいな紺色のツナギ)を着た一条さんと北条さんが、

あのカビ臭かった旧資材倉庫から、清々しい顔で出てくるのを見たぞ。

一条さんの白い頬に煤(スート)がついてたけど、

なんか、高貴なドレスを着ていた時よりずっと、生きてる人間って感じのいい顔してた。

 

6 :名無しの大魔導候補

倉庫の中、覗き見た奴いる?

俺、たまたま扉が開いた瞬間を見たんだけど……。

あそこ、以前は触れただけで呪われるって言われた「産廃の墓場」だったのに、今はなんか……

床が鏡みたいにピカピカで、荷物がセンチ単位で整列してた。正直、学園の図書館より綺麗だった。

全ての棚に『ロケーション管理番号』とかいう謎の数字。

あれ、あいつが提唱してる「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」って技術らしいぜ。

 

10 :名無しの大魔導候補

というか、あのA組の佐藤。

あいつが作った『遠心分離型・魔導煤精製機』の噂、聞いたか?

管理局が「ただの不浄なゴミ」として捨ててた廃棄物から、

ギルドの最高級品を超える純度の魔導塗料(ポリマー)を精製して、

「これはただの副産物(リサイクル)です」とか言って、

自分たちの予備パーツのコーティングに使ってたらしい。

錬金術師の連中が「俺たちの存在意義を返せ」って、研究室で泡吹いて倒れてるぞ。

 

11 :名無しの大魔導候補

あいつ、自分じゃ「ただの雇われ作業員(現場監督)」とか自称してるけど、

客観的に見て、やってることは完全に『世界のシステムのデバッグ(修理)』だよな。

古い神秘がバグって動かなくなった場所を、物理法則という名のパッチで力ずくで直していく。

あいつの周りだけ、世界の解像度(グラフィック)が上がってる気がする。

 

12 :名無しの大魔導候補

【速報】

佐藤工務店、次は学園の『中央大動脈(セントラル・マナ・ライン)』の受注を内定したらしい。

あそこ、「原因不明の魔力漏れ」で数十年放置されて、

「怨霊の住み処」ってオカルト扱いされてた場所だろ?

佐藤に言わせれば「ただのバルブのパッキン摩耗か、キャビテーションによる減肉です」

とか一秒で断定されそうw

 

14 :名無しの魔導候補

もうあだ名、確定でいいんじゃないか?

A組の『影のシステム管理者(サイトマネージャー)』。

学園が崩壊へのカウントダウンを始めたら、あいつがレンチ一本持って、

「定時までに終わらせるぞ」って言って現れてくれるよ。

 

15 :名無しの大魔導候補

>>14

それ、もはや救世主より頼もしいなw

よし、俺も明日から、自分の杖(デバイス)をただ磨くんじゃなくて、

「メンテナンス」って呼ぶことにするわ。

ご安全に!

 

16 :名無しの大魔導候補

ご安全に!w

 

18 :名無しの大魔導候補

ご安全に!

 

---

 

 夕闇の迫る拠点(本部の空き教室)。

 画面を横目に、佐藤航は使い込まれたパイプ椅子に深く沈み込み、リリスが淹れてくれた設定温度80度の完璧なコーヒーを口にしていた。

 

「……影のサイトマネージャー、か。勝手なことを言ってくれる。俺はただ、不安全な環境から逃げ出して、定時に安定して帰りたいだけの、しがない作業員なんだがな」

 

 航は手元の端末を閉じ、結露した窓の向こう、正常な輝きを取り戻した時計塔を見上げた。

 かつて死にかけた第十四プラントが送り出す安定したエネルギーが、学園の毛細血管を隅々まで満たしている。その当たり前を維持するために、どれだけのLOTOタグを切り、どれだけの絶縁破壊と戦ったかを知る者は、この部屋にいる数人だけだ。

 

「佐藤さん! さっきの計算、検算が終わりましたわ! 誤差(エラー)は〇・〇二パーセント……いえ、〇・〇一八パーセントにまで絞り込めました!」

 

 隣のデスクでは、北条凛が数学の魔導演算機を叩き、鼻の頭にチョークの粉をつけたまま、会心の笑みを浮かべてこちらを振り返った。

 一方、葵は慣れない手つきで、しかし確実に、本日交換した不適合部品のBOM(部品構成表)を最新版へと更新している。その傍らでは、リリスが明日使う予定の、高精度魔力テスターのゼロ点較正(キャリブレーション)を無心に進めていた。

 

「影で支えるなんて、佐藤さんらしくないですわ。……わたくしたちは、この学園をより強固な、より安全な現場へと造り変えるパートナーですもの! もう誰にも、私たちの施工(仕事)を邪魔させませんわ!」

 

「……ああ。だが、明日からはさらに厳しくなるぞ。……榊さんから回ってきた次の案件、聞いたか? ……次は女子寮の耐震補強と、魔力漏洩の徹底調査だ。……全系、ご安全にな」

 

「「「ご安全に!!!」」」

 

 三人の力強い返事が、夜の学園に響き渡った。

 それは、古い神秘と怠慢が朽ち果てていく音であり、新たな技術(エンジニアリング)と責任が芽吹く音でもあった。

 

 学園という巨大なシステムの、本当の大規模修繕工事は、まだ第一期工程(フェーズ1)を終えたばかり。

 現場監督・佐藤航の、定時退勤への戦いは、明日もまた、朝一番のラジオ体操と「指差し確認」から始まるのだ。

 

(第1学期:学内インフラ掌握編・完)




※終礼(あとがき)

これにて「佐藤工務店」の第1学期の業務はすべて完了(検収)いたしました。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!

最初は「定時で帰りたい」と小手先の修理(デバッグ)だけをしていた佐藤ですが、終わってみればSランクのお嬢様をパッキンにし、先輩をデジタル制御に書き換え、学園の裏の支配者(サイトマネージャー)になってしまいました。

(現場を知る人間の最強の武器は、魔法ではなく『エビデンス(証拠)』と『コンプライアンス(法令遵守)』です)

次回は、第2学期に入ります。
が、他PFや他作品の事もあり、再開時には活動報告などでお知らせします。

もし本作の施工内容を少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひ【評価】や【ブックマーク】でのご支援(設備投資)をよろしくお願いいたします!

皆様の応援が、作者の最大の栄養ドリンクになります。

それでは、また次の現場でお会いしましょう。

ご安全に!
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