原罪 諦囚者 【アキラメニトラワレタモノ】 作:oldsnake
「かえして…かえして……!かえせかえせかえせかえせ!」
斬り飛ばした筈の暗いヒビの入った少女の首。しかし此方を睨み呪詛を吐いている。さっきまで血が湧き立ち興奮し【笠井アリス】の腕や首を斬り飛ばしたという事実が私に襲い掛かりは一気に血の気が引いて吐いてしまった。ってかさっき吐いた。
私は刀の刀身に着いた血を振り払い鞘にしまい牢屋敷に走っていた。手には人を斬った感覚が残っている。
それと、少しの間だが殺し合いを楽しんでいた自分。
今は考える事をやめよう。私は牢屋敷まで走り抜けた。
牢屋敷の門の前には全員集まっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。逃げてきた……。はぁ、はぁ、はぁ……。」
「きゃぁぁ!!」
「ち、チサトさん……!それ……!」
「剣士殿!? それはどうしたのだ!?」
周りが悲鳴をあげている。恐ろしい物を見ているかの様な目で此方を見ている。私は自分の服と身体をみる。
斬った時に血が吹き出して血がべっとりと全身に着いていた。ホラー映画に出てくるサイコキラー並に血がべっとりと……。あ、これはやっべ…。
「私は……。」
「アリスちゃんを……。もしかして……。」
「確かに斬った。だが…!」
「チ、チサトさん……。」
「斬った!? こ、殺したって事!?」
不味い不味い不味い不味い。これはヤバい。周りの目が……。思い出したくない記憶が……。薄れてきた記憶が……。
いや、客観的にみたら返り血浴びて来たのだなら疑われて当たり前だ。この反応も当たり前だ。だから受け入れなければならない。しかし、弁明はしないとダメだ。
その時、全員のスマホにフクロウの鳴き声の着信が鳴り響いた。混乱の中、気になり私はスマホの画面を覗いた。
『はぁ…。えー……。藤宮チサトさん、藤宮チサトさん。
あっ…来ない場合は看守が強制的に連れて行きます…。』
このゴクチョーからのメッセージが届いた後、誰も話しかけてくれなかった。同調圧力やら色々で話しかけづらいから仕方ない。
血のついた上着を脱ぎ、牢屋敷の入り口の隅へと固めて置いた。
火精の間へ着くと看守が入り口の前で待機していた。【危険予知】の反応はないから大丈夫だろう。私は扉を開けてコテージの中へ入った。
「あ、来ましたかチサトさん。」
「私はこの後、死ぬの?」
「死にませんよ。想定外の事が起きて調べないといけないだけです。
ほんと、仕事が増えるのでやめて欲しいものですよ。」
口調が少しイライラしてる様な言い方だった。
「笠井アリスさんを斬ったのは間違いありませんよね?」
「はい。」
「魔女化してたのは此方でも確認しておりますが……。
どうやって魔女化した少女を行動不能までたんですか?」
「攻撃避けて斬っただけです。」
「はぁ………。
貴方は本当に色々厄介な問題児ですね…… 魔女化した少女を返り討ちにした。なんて滅多にない事で色々と面倒なんですよ。
まぁ、よしとしましょう。次この様な事をしたら懲罰房行きですからね。」
「善処します。」
「何の為に看守がいると思ってるんですか…?
全く…… 色々と面倒なんで、ほんとお願いしますね。」
声から本当にやめて欲しいというオーラが伝わるくらいにやめてくれって思ってるらしい。
「あと……。22時過ぎにまたここへ来てください。自由時間外ですが特別に許可します。来なかったら看守が強制的に連れて行きますからね。」
「分かった。」
嫌な予感がするが従うしかなさそうだ。
規則にある魔女裁判は開かれる事はなかった。だがあの後、話しかけてくれたのはミオ、セラ、クロノだった。心配して声を掛けてくれて心がホッとした。
22時になり私は先に
しばらく待っている【危険予知】の魔法が反応すると共にドアが開いた。
「チサトちゃん、待たせた?」
「やっぱりか……。」
桜羽エマがそこにはいた。
後ろには看守がいる。明らかに看守を従えている。
本当に黒幕だった。こいつが……。
「何が目的?」
「そんなに急かさないでほしいな。ボクの魔法は【幻視】だからキミの事はだいたい分かるんだ。」
「単刀直入に教えて。エマ。何が目的なんだ?」
軽く刀に手を掛けて圧を掛ける。
この距離なら殺れる。看守は後に対処する。
「ボクともう一人の共犯の正体。分かってるんだよね? チサトちゃん。」
「知らない。もう一人いたんだ。」
「嘘付くんだ。
ボクだってこんな事したくないよ?…でも仕方ないんだ。」
見透かす様に言い放つエマ。ハッタリじゃなくてバレている雰囲気だ。
私は改めて言う。
「知ってた。」
「うん、ありがとう。
…でチサトちゃん、この写真見て?」
「嘘だろ……。」
エマのスマホに映し出された写真を見た。私が撮った黒部ナノカのメッセージの写真が映っていた。
まてまて…… もしかして………。嘘だろ?
「皆んなのスマホを勝手に見れるし操作が出来るんだ。…だからこの画像を見た瞬間ビックリしたよ。でもそれよりビックリした事があるんだ。
2回も殺人事件を防いでみせて、魔女化したアリスちゃんの手足と首を斬って。それでもって魔女化の兆候がない。」
「何が言いたいの?」
「これはボクの推察でしかない事なんだけど。
チサトちゃんは殺し合いを楽しんでない?」
コイツ、鋭いな。思ってる事を言い当てやがった。…ならもう気にする必要はないな。
「なら、どうする?
口封じに私を殺すの?私が黒幕側ならそうするが。」
「うん、…でも勝負しないチサトちゃん?」
「勝負?」
エマは小悪魔の様に微笑みながら提案して来た
「看守と勝負して勝てたらチサトちゃんを生かしてあげるよ。でも手は出さないで欲しいけど。…でも負けたら、分かってるよね?」
「いいよ。」
「え?」
「看守を斬ればいいんだな?」
「そ、即答過ぎない?」
頭使う会話とか情報戦だの嘘だのハッタリだのもう面倒臭い、それで済むならもうそれでいいや。
それに……。【殺し合いが楽しんでいる】か。そう言われたのならそうなのだろう。それなら、その手段で解決出来るのなら解決してやる。
「さっさと表に出てやろうか。頭使うより簡単な事で良かったよ。」
エマを見たら心なしか引いていた。まぁ、どうにでもなってしまえ。どうせ、ここに呼び出された時点で言いなりの奴隷になるか殺されるかのどっちかだ。はぁ…、
よかった。こう言う展開になって。心置きなく殺りあえる。
私はふと、口に手を当てた。口角が上がっていた。
そうか、私はこの牢屋敷の満ち足りない非日常的な生活を楽しんでいたのかと。
それと、今から行われる看守との命のやり取りも私は多分楽しむのだろう。