原罪 諦囚者 【アキラメニトラワレタモノ】 作:oldsnake
今、私は心から楽しんでいるのだろう。
この非日常を…。
この何もかも不足し命の危険が付き纏い満たされない牢屋敷を心の底から楽しんでいるのだろう。
やっぱり、私は社会不適合者だ。現代じゃ生きれない。生きる時代を間違えた哀れな存在なのだろう。
「看守に勝てたら生かしておいてあげる。
…けど手を出さないでほしい。手を出したら殺さないといけないから。」
「状況次第だけど分かった。看守を斬って来る。」
表に出て改めて言ってくるエマに私は即答する。困惑しドン引きしていた。黒幕を把握してるし厄介過ぎる。だから脅して手駒にする。どうにかならなかったら殺せばいいとでも思っているのだろう。
それに、私がいるだけで邪魔なのだから看守に勝ったとしても油断はしない方がいいだろう。だから残心を意識しないと。
色々と考えながら私と看守はコテージの前の石畳の道に立った。
「じゃ、ボクが、スタート。って言ったら初めてね。」
「うん」
…
…
…
「スタート」
エマのスタートの掛け声と共に看守は大鎌を振り上げて物凄い勢いで向かってくる。改めて見ると人外のスピード、おそらく力も途轍もないのだろう。
【危険予知】の魔法が先を鮮明に映し出す。首に赤色の一閃の予告線が入る。
刀で受けなが…… すッッ!!
受け流して看守の大鎌を逸らす。やっべ。一撃受けただけなのに骨身に染みる重撃。マトモに受けていたら首が飛んでいた。
「はぁ… エマの言った通りだね。
確かに私は殺し合いを楽しんでる…!」
それは変えようがない事実だ。受け入れないといけない。否定する事を諦めないといけない。…でも私は血肉湧き踊り高まってる。久々に生を実感出来ている。
私の人生は、どうせくだらない人生だ。
ならせめて楽しませてくれ。
太く短く行こう。
刹那主義で。
命のやり取りを。
沢山ある腕で掴もうとしてくる。
同時に鎌は縦に力任せに振るわれる。人外の速さと力で迫り来る看守はまさに絶望そのものだ。【危険予知】の予告線、いや【即死線】とでも言うべきか?
看守に飛び込む、懐に入り腕を切り落とす。再び首筋に一閃【即死線】が見える。受け流して隙を作る。出来てもあと2回が限界か。
大鎌を振う手を突き刺してから一気に引いて斬る。看守の指が落ち【即死線】は薄くなる。更に腕ごと斬り飛ばし距離を取る。
大鎌は地面に突き刺さるも沢山ある腕でまた引き抜かれて看守は即座に向かってくる。
どれだけ斬っても腕は生えてきてキリがない。やっぱり首を斬り落として缶蹴りみたいに蹴り飛ばすしかないのか? しかし、やたら滅多に大鎌を振り回し沢山ある手で掴もうとしてくる。しかも疲れ知らずで不死身なのをいい事に距離を詰めて延々と向かってくる。
一気に決めないと死ぬ。しかし、大量に生えてくる手で防がれる。
土でも石でも顔面に投げつけようとは思ったが小細工が通用するとは思えない。腕を斬っても痛みを感じてないみたいに平然と反撃してくる相手だ。
これは確かにエマもドン引きする訳だ。
普通なら勝てる訳がない不死身の看守なのだから。
いけるか? いや行くしかないか。
【藤宮流和洋剣術】の奥義。多少はアレンジと追加の一撃が必要だけども…。
「やるか……。」
死ぬのは怖い。しかし、抗う手段があるのは全力で抗わせてもらおう。
看守へ向かって距離を詰める。大鎌が振り上げて首を狙い横に一閃【即死線】がくっきり見える。
振るわれる直前に下にしゃがみ込み躱しながら腹に向かって身体全体を使って水平一閃、間髪入れず肘と手首を回し高速の水平一閃。
そのまま勢いを殺さずに刀を後ろへ回し流れる様に全力で縦一閃。
2回連続の横一閃の勢いを殺さずに強引に加速させた縦一閃は袈裟斬りの様に看守が斬り刻まれる。流石に看守も怯み隙が出来た。
藤宮流和洋剣術
本来は西洋大剣で繰り出される剣術を日本刀で再現し活用した技。衝撃と連続した攻撃で強制的に受けに強いる攻め技だ。
「アァァァァァ!!」
さらに追加で身体の負荷を気にせず首を狙い斬り飛ばさんと刀を振う。身体のバランスを崩しながらも刃が入るも首は飛ばなかった。
これは……。ほんの少し刃の入りが浅くて首が繋がったのか!?
更に無理して回し蹴り、首の皮一枚繋がっていた首を蹴って飛ばす。しかし、【即死線】が胸に映り転がって避ける。避けた場所を見ると大鎌が突き刺さっている。看守は首を飛ばされても身体は再生し始めて大鎌を手に持ち振るって来る。
「流石に勝ちだろ!これ!」
「まだ看守は動いてるから勝負は終わってないよ。がんばれチサトちゃん。」
こうなる事を分かってやがったな!この野郎…!
不死身だから勝てないだろうってか。肉片になるで解体してやればいいんだろうがよ…!この邪悪がよ……!鬼かよ魔女かよマジ死にくたばれ!
兎に角、腕を斬り落とす。攻撃をさせない。徹底的に動きを封殺し尽くすしかない!
「ここで処分しておきたかったですが……。……でも気になった事があるのでエマさん。すこし待ってもらってもいいですか?」
「え? ………… 仕方ないな〜… もう勝ちでいいよ。
2時まで殺し合いを出来たねチサトちゃん。でもこの事を口外したら今度は処分するから。」
二人とも冷淡で口調が冷たい。あと、いつのまにかメルルも見ていたらしい。私はその言葉を聞いた大の字に倒れ込んだ。指一本も動かせない。疲れ過ぎて吐く気すら起きない。22時から深夜の2時までずっと看守を斬り続け全身に血を浴びていた。
ふと、転がっていた看守の首が目に入った。看守の仮面は落ちた時に半分に割れたらしく仮面の下の顔があらわになったいた。
顔に黒いヒビが入り目が虚の白髪の少女の首が此方をずっと見ている。感情は一切感じない瞳でずっと見ている。しかし、それを見てエマは話しかけてきた。
「守るものが増えていくと大変だね。まぁ、それよりキミの魔法を教えてよ。分からないってウソついてるよね?」
「【危険予知】だ。危険が分かる。」
もうこの場で嘘ハッタリは付くと死にかねない。
流石に正直に話す。
「本当に【危険予知】なの?危険が分かってるからといってあんなに避けれるものなのかな?
どんな攻撃が来るか分かってる動きしてたから本当は【未来予知】だったりしない?」
「今、嘘を吐く理由はない。本当の事を言ってる。」
「そう、分かった。
あとメルルちゃんに感謝した方がいいよ。メルルちゃんが止めに入ってなかったら処分してたから。」
「感謝しとく。あと絶対に口外はしない約束は守る。死にたくないから。」
少し強がりながらも大の字になりながら回復を待つ。看守を見ると首が繋がっており服や傷は元通りになっていた。
これマジの不死身だ……。
私はこの後、看守に無理矢理シャワー室に連れ込まれた。
冷水のシャワーを浴びせられ血を洗い流し身体を洗ってもらった。そして懲罰房に連れていかれた磔刑台にロープで拘束された。疲れから拘束具に身を任せてウトウトしている。
拷問されて私はこの後死ぬのかな?
黒幕を知ってるし看守を行動不能まで追い込める人なんているだけで邪魔でしかない。
やだな…-
この先の事を考えたくない。
でも… ここまで来たら様にしかならないか。
激しい疲労感に私は………… 眠い………… 寝よ……。